ビグアナイドの作用機序
ビグアナイドは、薬用植物「ガレガソウ」の有効成分グアニジンの誘導体です。1960年代に、フランスではメトホルミンが、米国ではより血糖降下作用の強いフェンホルミンが導入されました。しかしその後、乳酸アシドーシスの報告が相次いだフェンホルミンは、1970年代にはほぼ市場から姿を消すことになったのでした。
同時期にドイツで開発されたブホルミンは、フェンホルミンに比べ作用は弱いものの毒性が低く、現在も使用可能ですが、その使用は極めて限定的です。現在、ビグアナイドとして広く臨床応用されているのはメトホルミンです。
ビグアナイドにはインスリン分泌作用はない
血糖降下作用の発現にはインスリンの存在が必要ですが、その詳しい作用機序はいまだ十分に解明されていません。
グルコースクランプ法での検討で、メトホルミンは筋肉へのブドウ糖取り込みを促進させ、肝からの糖放出を抑制する作用が示されていますが、主な作用は糖新生の抑制と考えられています。近年、その作用の少なくとも一部はAMPキナーゼを介することが証明されました。
メトホルミンはミトコンドリアの過呼吸、特にComplex Ⅰを一過性に抑制し、細胞内AMP/ATP比を上昇させ、AMPキナーゼを活性化させます。AMPキナーゼは一般的にATPを産生する異化反応を促進し、ATPを消費する同化反応を抑制します。肝では、糖新生および脂肪酸合成が抑制され、β酸化を促進します。骨格筋や脂肪組織ではGLUT4の細胞膜へのトランスロケーションを促し、ブドウ糖の取り込みを促進します。機序は不明ですが、腸管からのブドウ糖の吸収を抑制することも血糖降下作用に貢献していると考えられます。
Millerらは、AMPキナーゼを介さない作用機序として、肝細胞内でのサイクリックAMP産生を減少させることによって、肝におけるグルカゴン作用に拮抗する可能性を示唆しています。
このように、発売後半世紀以上が経過してもメトホルミンには新たな発見があります。
- インスリンとは
- インクレチンとは(GLP-1とGIP)
- SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の併用
- スルホニル尿素薬(SU剤)
- 速効型インスリン分泌促進薬
- α-グルコシダーゼ阻害薬
- ビグアナイド系(メトホルミン)
- DPP-4阻害薬
- SGLT2阻害薬
- ピオグリタゾン(チアゾリジン薬)
- インスリン治療について
- GLP-1受容体作動薬
- SU剤と心筋の虚血プレコンディショニング
- 持続性GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(商品名マンジャロ)は、2型糖尿病患者さんが保険診療で使用できる薬剤です。
- ビグアナイドの作用機序
- メトホルミンの大腸ポリープ抑制効果
- ピオグリタゾン(アクトス)の多面的効果
- ミグリトール(セイブル)は消化管ホルモンの分泌動態を変化させ、食欲を抑制する。
- ボグリボースのエビデンス(Victory Study)
- アカルボースのエビデンス