CGMで運動中の血糖変動を見える化|安全な運動調整法|しもやま内科(船橋市)

「先生、ジョギングを始めたいんですが、運動中に血糖が下がるのが怖くて……」——先日、30代の男性患者さんが、インスリン治療中に運動を始めたいと相談されました。運動は糖尿病治療の三本柱の一つですが、インスリンやSU薬を使用中は低血糖リスクが高まるため、不安を感じる方は少なくありません。CGM(持続血糖測定器)を活用すれば、運動中もリアルタイムで血糖値を確認でき、安全かつ効果的に運動療法に取り組めます。

✅ このページでわかること

  • CGM(FreeStyleリブレ・Dexcom G7)の基本的な仕組みと運動時の使い方
  • 有酸素運動と筋トレで血糖応答がどう違うか
  • 運動前の目標血糖値と補食のタイミング・量
  • CGMのアラート機能で低血糖を未然に防ぐ方法
  • ウォーキング・水泳・筋トレなど運動種別ごとの血糖変動パターン
  • 装着位置の注意点と水仕事・入浴時の取り扱い
  • 運動中の低血糖症状と緊急対応

CGM(持続血糖測定器)とは——FreeStyleリブレ・Dexcom G7の基本

CGMは、皮下に挿入した微小センサーで数分ごとに間質液中のグルコース値を測定し、スマートフォンや専用リーダーに表示する医療機器です。指尖穿刺血糖測定(SMBG)と違い、測定のたびに指を穿刺する必要がなく、24時間の血糖変動をグラフで確認できます。

現在、国内で広く使用されている機種は以下の2つです。

  • FreeStyleリブレシリーズ(アボット): センサーを上腕後面に装着し、スマートフォンをかざす(スキャン)ことで血糖値を読み取ります。リブレ2/Plusは Bluetooth対応で、低血糖・高血糖時にアラートが届きます。生活防水(1m/30分)対応のため、水泳中の使用も可能です。
  • Dexcom G7(デックスコム): 上腕後面に装着し、自動的に5分ごとに血糖値を送信。スキャン不要でリアルタイム表示が可能です。アラートのカスタマイズ性が高く、運動中の急激な下降トレンドも検知しやすい特徴があります。防水性能は2.4m/24時間と高く、入浴・水泳でも装着したまま使用できます。

運動中の血糖変動パターン——有酸素運動 vs レジスタンス運動

運動の種類によって血糖の応答パターンが異なります。この違いを理解しておくと、自分に合った運動の組み立てがしやすくなります。

有酸素運動(ウォーキング・ジョギング・水泳・自転車)

有酸素運動では、筋肉が持続的に糖を取り込むため、血糖値は緩やかに低下します。インスリン感受性が向上するため、運動中から翌日にかけて血糖値が下がりやすくなります。特に30分以上の持続的な有酸素運動では、低血糖リスクが高まるため注意が必要です。

レジスタンス運動(筋力トレーニング)

筋トレなどの無酸素運動では、交感神経の亢進やカテコラミン分泌により、一時的に血糖値が上昇することがあります。しかし、運動後には筋肉の糖取り込みが促進されるため、下降に転じるのが一般的です。有酸素運動と筋トレを組み合わせると、相乗効果が期待できます。

運動前の血糖値チェック——目標値と判断基準

CGMで運動前の血糖値を確認してから運動を開始しましょう。以下の基準を目安にしてください。

  • 100〜250 mg/dL: 安全に運動を開始できます。
  • 70〜99 mg/dL: 補食(15〜30gの糖質)を摂取してから開始してください。
  • 70 mg/dL未満: 低血糖です。まず補食(15gの速効性糖質)で回復させてから、運動は見合わせてください。
  • 250 mg/dL超: ケトン体の有無を確認。ケトン体陽性の場合は運動を中止し、医療機関に相談してください。

CGMのトレンド矢印も必ず確認しましょう。矢印が水平(→)なら安定、斜め下(↘)ならゆっくり下降中、垂直下(↓↓)なら急激な下降を示します。急下降中は運動前に補食が必要です。

運動前の補食——タイミングと量の目安

補食は運動開始20〜30分前に摂るのが理想的です。直前すぎるとインスリン分泌が追いつかず、運動中に高血糖になるリスクがあります。

  • 軽度の不足(70〜99 mg/dL): 糖質15g(ブドウ糖3〜4錠、スポーツドリンク150mL、バナナ1/2本)
  • 中程度の不足(運動強度が高い場合): 糖質20〜30g(バナナ1本+スポーツドリンク、あるいは小さなおにぎり1個)
  • インスリン使用者: 医師と相談のうえ、運動前のインスリン減量も検討します。特に超速効型インスリンの投与量調整は重要です。

なお、脂肪やタンパク質が多い食品は消化に時間がかかり、運動中の胃腸障害の原因になるため避けてください。

CGMアラート機能の活用——低血糖を未然に防ぐ

CGMの最大のメリットの一つがアラート機能です。閾値を設定しておけば、低血糖や高血糖の手前で警告を受けられます。

  • 低血糖アラート: 70 mg/dL以下で通知。運動中は振動や音で気づけるため、スマートフォンをポケットやアームバンドに入れておきましょう。
  • 急下降アラート(Dexcom G7のUrgent Low Soonなど): 15〜20分後に低血糖が予測される場合に警告。まだ血糖値が正常範囲でも、予防的な補食が可能です。
  • 高血糖アラート: 250 mg/dL以上で通知。運動強度が高すぎるサインかもしれません。
  • リブレ2/PlusのBluetooth機能: スキャンしなくてもアラートが届くため、運動中でも安心です。ただしリブレはスキャンしないとトレンドグラフの全体像は表示されないため、こまめなスキャンも併用しましょう。

運動中の低血糖を予防するための4つのルール

  1. 運動前に必ずCGMを確認する: 血糖値とトレンド矢印の両方をチェック。急下降中なら運動前に補食を。
  2. 補食を携行する: ブドウ糖(3〜5錠)、スティックシュガー、スポーツジェルなど、携帯しやすい速効性糖質を必ず持ち歩きましょう。
  3. 運動中はこまめに確認する: 20〜30分ごとにCGMをチェック。特に強度を変えたときや疲れを感じたときは要注意です。
  4. 運動後の遅発性低血糖に備える: 激しい運動や長時間の運動後は、6〜15時間後に低血糖が出現することがあります。就寝前にもCGMを確認し、必要に応じて就寝前に補食(ゆっくり吸収される糖質:牛乳・ヨーグルト・全粒粉パンなど)を摂りましょう。

運動種別ごとの血糖応答——具体的な目安

運動種別 血糖への影響 注意点
ウォーキング 緩やかに低下。持続的に安定して下がる。 20〜30分以上の持続で低血糖リスク増加。食後30分〜1時間の開始がおすすめ。
ジョギング・ランニング 強度が高いほど一時的に上昇→後に下降。強度変動で血糖も変動しやすい。 インスリン使用者は特に注意。ウォームアップ中の血糖チェックが必須。
筋力トレーニング セット中は上昇傾向→セット後に下降。全体としては安定しやすい。 高強度セット後の急な低血糖に注意。休憩中にCGMを確認。
水泳 水温によるエネルギー消費増で血糖低下が加速しやすい。 CGMの防水深度・時間を確認。プールサイドにスマホを置いてアラートを聞こえるように。
自転車(サイクリング) 持続的な有酸素運動で緩やかに低下。 長時間ライドではこまめな補給が必須。スマホをハンドルマウントに固定して視認しやすく。

持続血糖測定器の装着位置——運動に影響しないために

センサーの装着位置が適切でないと、測定値が不安定になるほか、装着部位の違和感で運動に集中できません。以下の点に注意してください。

  • 推奨装着部位: 上腕後面(リブレ・Dexcom G7共通)。腹部や臀部への装着は機種によって認められていない場合があるため、必ず添付文書を確認してください。
  • 避けるべき部位: 筋肉の盛り上がる部位(肩・上腕前面)、関節付近、皮膚のしわや傷のある場所。
  • 左右交互に: 毎回同じ腕に装着すると皮膚トラブルのリスクが高まります。左右交互に装着部位を変えましょう。
  • 圧迫・摩擦に注意: ランニング時のウェアの縫い目や、リュックのストラップがセンサーを圧迫しないよう、位置を調整しましょう。腕時計バンドなども同様です。
  • 入浴・水泳時: リブレシリーズは1m/30分まで防水(それ以上は専用カバー推奨)。Dexcom G7は2.4m/24時間まで防水。高温(サウナ・長時間の入浴)はセンサーが外れやすくなるため注意。

緊急時の対応——運動中の低血糖を見逃さない

⚠️ こんな症状が出たら運動を中止してください

  • 冷汗・動悸・手指の震え
  • 強い空腹感・めまい
  • 集中力の低下・意識がもうろうとする
  • 顔色が青白い・脱力感

【応急処置】
1. すぐに運動を中止する。
2. ブドウ糖3〜5錠(またはスティックシュガー2〜3本、または果汁100%ジュース150mL)を摂取する。
3. 15分後にCGMで再確認。血糖値が70mg/dL未満のままなら、再度補食を繰り返す。
4. それでも改善しない、または意識障害がある場合はすぐに救急要請(119番)してください。

糖尿病でない周囲の方から見ると低血糖症状は「酔っている」ように見えることがあります。運動中に同行者がいる場合は、あらかじめ自分の疾患と低血糖時の対応を伝えておくことをおすすめします。

CGMに関するより詳しい情報はこちら

CGMの基礎知識や日常的な使い方、食事との関係について詳しく知りたい方は、以下のサブページもご参照ください。

運動記録+血糖の「見える化」で継続を

運動療法を習慣化するには、記録をつけることが効果的です。以下のセルフチェックシート(理学療法士:加瀬勝之監修)を活用して、1週間ごとに運動内容・体調・血糖変化を振り返りましょう。

糖尿病 運動療法セルフチェックシート(PDF)をダウンロード

最終更新日:2026年8月25日|監修:しもやま内科

最終更新日:2026-08-25

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

13/05/2025