女性の睡眠時無呼吸症候群(SAS)|症状の特徴・診断・治療

📘 要点

  • 女性のSASはいびきより不眠・疲労として現れます
  • 国内のSAS潜在患者は約940万人、治療率は8%です
  • 閉経後はエストロゲン減少でSASリスクが2〜3倍になります
  • 放置すると高血圧2.9倍・脳卒中2.9倍のリスクが上がります
  • 甲状腺機能(TSH・FT3・FT4)も同時に調べます
  • 不眠や朝の疲労が続くときは、早めにご相談ください

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は「男性の病気」と思われがちですが、女性にも多く、見逃されているケースが少なくありません。女性のSASはいびきが目立たず、不眠・疲労・うつ症状・朝の頭痛として現れるため、気づかれにくいのが特徴です。国内に約940万人の潜在患者がいるSAS、治療率はわずか8%。更年期のホルモン変化や甲状腺疾患、妊娠と深く関係しています。このページでは女性のSASについて専門医が解説します。

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女性のSASはなぜ見落とされるのか

症状の違い:「いびき」より「不眠・疲労」

男性のSASは大きないびきや呼吸停止が目立ちますが、女性のSASは以下の症状が中心です:

  • 入眠困難・中途覚醒(不眠)
  • 朝の疲労感・だるさ(スッキリしない目覚め)
  • 日中の眠気(特に午後)
  • 朝の頭痛
  • うつ症状・イライラ
  • 夜間頻尿

これらの症状は「ストレス」「年齢のせい」「更年期」として片付けられがちで、SASの検査が遅れることがあります。

女性の気道の特徴

女性は男性に比べて上気道が狭く、閉塞が完全閉塞ではなく部分閉塞になりやすいため、検査機器の反応が軽度に出ることがあります。症状が強いのに検査結果が軽症——そんなギャップが女性のSASでは珍しくありません。

女性のライフステージとSAS

女性のSASリスクは、年齢とホルモンの変化とともに変動します。

① 妊娠期

妊娠中は体重増加とプロゲステロンによる上気道粘膜のむくみにより、SASのリスクが高まります。妊娠中のSASは早産リスクや妊娠高血圧症候群の悪化と関連することが知られています。在宅睡眠検査(簡易PG)は妊娠中も安全に行えます。

② 更年期(閉経後)——リスクの急上昇

女性ホルモン(エストロゲン)は上気道の筋肉を緊張させる作用があり、閉塞を防いでいます。更年期に入るとエストロゲンが減少し、SASのリスクが2〜3倍に上昇します。更年期のSASは不眠・ホットフラッシュ・血圧上昇・うつ症状として現れ、「更年期だから」と諦められているケースが多く見られます。

③ 甲状腺疾患との深い関係

甲状腺疾患は女性に多く、SASと悪循環を生むことがあります。橋本病(甲状腺機能低下症)では粘液水腫による上気道狭窄でSASが悪化し、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)では甲状腺腫大が気道を圧迫します。院長は甲状腺専門医でもあり、甲状腺疾患とSASの両方を診療できます。

女性に多いSASのタイプ

① 上気道抵抗症候群(UARS)

完全な無呼吸ではなく、呼吸は浅いまま続く状態です。検査ではAHIは正常範囲でも、睡眠中の覚醒回数が多く睡眠の質が著しく低下します。いびきは小さいか、またはなし。

② 体位性SAS

仰向けで寝ると症状が悪化し、横向きだと改善するタイプです。女性に多く、体位療法(横向きを維持する装置)や口腔内装置が有効です。

しもやま内科での診療

院長は総合内科専門医・糖尿病専門医・循環器専門医・甲状腺専門医であり、SASと甲状腺疾患の両方を診療。甲状腺の検査(TSH、FT3、FT4)と睡眠検査を同時に行い、総合的な治療計画を立てます。妊娠期・更年期の総合管理も含め、女性のライフステージに応じた医療を提供します。

診断の流れ

  1. 問診・診察:症状、月経歴、妊娠・出産歴、更年期の有無、甲状腺の既往を詳しくヒアリング
  2. 甲状腺検査(必要時):血液検査(TSH、FT3、FT4)と甲状腺エコー
  3. 睡眠検査:在宅簡易検査(簡易PG)で評価。2026年6月の改定でAHI 30以上でCPAP保険適用となり、簡易検査のみで治療を始められるケースが増えています
  4. 治療計画:CPAP、口腔内装置、体位療法、甲状腺治療の組み合わせを提案

更年期の不眠とSASの見分け方——「更年期だから」で終わらせない

更年期は、のぼせ・発汗・不眠・気分の落ち込みなど、SASと似た症状が重なりやすい時期です。そのため「更年期の症状」として片付けられ、無呼吸が見逃されることがあります。両者は併存することも多く、区別ではなく「見分けながら確認する」ことが大切です。

症状の出方の違い

項目 更年期症状として説明しやすい場合 SASを疑う場合
目が覚める理由 のぼせ・発汗で目が覚める 呼吸が止まる・浅くなることで目が覚める(本人は気づきにくい)
いびき 目立たない 小さいことも多いが、家族に「呼吸が止まる」と言われたことがある
朝の状態 寝汗・ほてり 頭痛・口の渇き・強いだるさ
日中の症状 気分の波・イライラ 会議中や運転中の強い眠気
夜間のトイレ 変化が乏しい 夜間頻尿が増えた

チェックのポイントは「のぼせや発汗がなくても、夜中に何度も目が覚める」「睡眠時間は足りているのに朝から疲れている」という場合です。このパターンでは、無呼吸による覚醒が隠れている可能性があります。

閉経後は「体重が増えていないのにSAS」がある

閉経後はエストロゲンの低下により、上気道の筋肉を支える働きが弱まり、肥満がなくても気道が閉塞しやすくなるとされています。また、閉経後は体重が増えやすく、脂肪のつき方も変化するため、二重にリスクが上がります。「やせているから大丈夫」とは言えない点が、女性のSASの特徴です。

女性のSASは診断が遅れやすい

女性のSASは、いびきが目立たず、不眠・疲労・気分の落ち込みとして現れるため、本人も周囲も気づきにくい傾向があります。また、検査でAHIが軽度に見えても症状が強いことがあり(上気道抵抗症候群など)、数値だけで判断すると見落とされ得ます。症状が続く場合は、数値が軽くても一度ご相談ください。

閉経後のSASが体に及ぼす影響

SASを放置すると、高血圧(約2.9倍)・脳卒中(約2.9倍)・心臓突然死(約2.6倍)などのリスクが上昇します。閉経後は女性ホルモンによる心血管保護作用も減るため、血圧や血糖の管理と合わせた評価が重要になります。当院では、睡眠検査と血圧・血糖・甲状腺の評価を組み合わせて方針を立てます。

よくあるご質問

Q. いびきをかかないのにSASってありますか?

はい、女性に多いです。特にUARS(上気道抵抗症候群)では完全な閉塞ではなく気道の抵抗が増すだけなので、大きないびきは出ません。代わりに不眠、朝の疲労、日中の眠気が主症状になります。

Q. 更年期の不眠はSASの可能性がありますか?

あります。更年期になるとエストロゲン減少によりSASリスクが2〜3倍に上昇します。「ホットフラッシュで目が覚める」と思っていても、実は無呼吸で覚醒していることもあります。

Q. 妊娠中にSASの検査は安全ですか?

在宅睡眠検査(簡易PG)は妊娠中も安全に行えます。検査機器は非侵襲的で、赤ちゃんへの影響はありません。妊娠中のSASは早産リスクや妊娠高血圧症候群と関連するため、早めの検査をおすすめします。

Q. 甲状腺の病気とSASは同時に治療できますか?

はい、しもやま内科では院長が甲状腺専門医でもあり、甲状腺疾患とSASの両方を診療できます。橋本病の治療で甲状腺ホルモン補充を始めると、SASも軽減することがあります。

Q. SASを放置するとどうなりますか?

SASを放置すると高血圧(約2.9倍)・脳卒中(約2.9倍)・心臓突然死(約2.6倍)のリスクが上昇します。また、睡眠障害はインスリン抵抗性を高め、糖尿病の悪化やうつ症状の原因にもなります。

Q. オンライン診療での相談は可能ですか?

当院ではオンライン診療によるSAS外来は行っておりません。正確な診断には対面での問診と検査が必要です。お電話でご予約の上、ご来院ください。

Q. 更年期の不眠とSASはどう見分ければいいですか?

のぼせや発汗がなくても夜中に何度も目が覚める、睡眠時間は足りているのに朝から強い疲労がある、家族に「呼吸が止まっている」と言われたことがある——このような場合はSASも疑われます。更年期症状とSASは併存することも多いため、切り分けずに一度検査で確認するのが確実です。

Q. 閉経後はやせていてもSASになりますか?

なります。閉経後はエストロゲンの低下により、肥満がなくても上気道が閉塞しやすくなるとされています。また閉経後は体重が増えやすく、脂肪のつき方も変化します。「やせているから大丈夫」とは言えない点が、女性のSASの特徴です。いびきが小さくても、不眠や日中の眠気があれば検査をご検討ください。

まとめ

女性のSASは「いびき」より「不眠・疲労」として現れ、見落とされがちです。更年期、妊娠、甲状腺疾患と深く関係し、放置すれば高血圧や糖尿病のリスクを高めます。以下の方はぜひ検査をご検討ください:

  • 朝スッキリ目覚められない
  • 不眠や日中の眠気でお悩みの方
  • 更年期でホットフラッシュと不眠の両方がある
  • 橋本病やバセドウ病を持っている
  • 妊娠中でいびきや日中の眠気が増えた

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このページの監修・出典

監修・執筆:しもやま内科 院長(日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医/日本老年医学会 老年科専門医・指導医)

主な参考資料:

  • 日本睡眠学会「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」/内山真 編「睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第3版」(じほう、2019)
  • 厚生労働省 診療報酬点数表・診療報酬改定通知(在宅持続陽圧呼吸療法関係)
  • 厚生労働省 睡眠時無呼吸症候群に関する情報
  • 日本呼吸器学会・日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本甲状腺学会の診療ガイドライン

作成・更新:2026年9月13日|このページは一般的な医学情報の提供を目的としたもので、診断・治療方針は診察に基づいて判断します。

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最終更新日:2026-09-13

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

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