「夜中にトイレに3回も起きて、朝までぐっすり眠れない…」——診察室でよく伺うお悩みです。夜間頻尿は「年のせいだから仕方ない」と諦めている方が非常に多いですが、原因をしっかり調べて治療することで改善できるケースがたくさんあります。特に睡眠時無呼吸症候群(SAS)は夜間頻尿の隠れた原因の一つで、国内に約940万人の潜在患者がいるSAS、治療率はわずか8%です。この記事では、夜間頻尿の定義・原因・関連する病気・治療法までを、総合内科専門医がわかりやすく解説します。
夜間頻尿とは?
夜間頻尿(nocturia)とは、夜間に排尿のために1回以上起きる状態を指します。国際禁制学会(ICS)の定義では1回でもあれば夜間頻尿とされますが、加齢とともに夜間排尿回数は自然に増えるため、受診の目安は「毎晩2回以上」と考えられています。
「夜中に何度もトイレで目が覚める」「朝までぐっすり眠れない」——この状態が続くと、日中の眠気や集中力低下、転倒リスクの増加にもつながります。「年のせいだから」と放置せず、原因を探ることが大切です。
夜間頻尿の4大原因
原因によって治療法が大きく異なるため、正確な診断が重要です。複数の原因が重なっているケースがほとんどです。
| 原因タイプ | 説明 | 主な背景疾患 |
|---|---|---|
| 多尿(24時間全体の尿量増加) | 1日の尿量が3,000mL以上と過剰 | 糖尿病、尿崩症、過度の水分摂取 |
| 夜間多尿(夜間のみ尿量増加) | 夜間の尿量が24時間尿量の33%(若年者)または20%(高齢者)以上 | 心不全、睡眠時無呼吸症候群(SAS)、腎機能低下 |
| 膀胱容量減少 | 膀胱にためられる尿の量が減っている | 前立腺肥大(男性)、過活動膀胱、膀胱炎 |
| 睡眠障害 | 睡眠そのものが浅く、少しの尿意でも目が覚めてしまう | 不眠症、SAS、むずむず脚症候群 |
男性と女性での原因の違い
男性の場合——前立腺肥大が最大の要因
50歳以上の男性に特に多いのが前立腺肥大症です。前立腺が大きくなると尿道が圧迫され、尿が出しにくい・残尿感がある・トイレに行った直後にまた尿意を感じるなどの症状が現れます。
女性の場合——骨盤底筋と加齢の影響
女性の夜間頻尿の原因はより多様です。閉経後のエストロゲン低下により尿道や膀胱の粘膜が萎縮し、過活動膀胱を起こしやすくなります。また出産経験による骨盤底筋のゆるみが膀胱の支持を弱め、少しの尿量でも尿意を感じやすくなります。さらに女性は男性に比べてSASが見逃されがちで、SASが夜間頻尿の原因になっているケースも少なくありません。
生活習慣による原因
- 就寝前の大量の水分摂取:就寝2〜3時間前からは水分を控えめに
- カフェイン(コーヒー・緑茶・紅茶):利尿作用と膀胱刺激作用があります。夕方以降は避けるのが理想的
- アルコール:抗利尿ホルモンの分泌を抑制し、尿量を増やします
- 塩分の摂りすぎ:特に夕食の塩分を控えると夜間頻尿が改善することがあります
病気との関係——夜間頻尿は全身のサイン
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
SASでは睡眠中に呼吸が止まるたびに胸内圧が大きく変動し、心臓に負担がかかります。その結果、利尿ホルモン(ANP)が分泌され、夜間に尿量が急増します。SASを放置すると高血圧(約2.9倍)・脳卒中(約2.9倍)・心臓突然死(約2.6倍)のリスクが上昇しますが、CPAP治療により夜間頻尿が改善するケースが多くあります。いびきが大きい方や日中の眠気が強い方は、SASによる夜間頻尿の可能性があります。2026年6月の診療報酬改定で簡易検査の基準が緩和され、より受けやすくなっています。
糖尿病
血糖値が高いと尿中に糖が漏れ出し、浸透圧の作用で水分が一緒に排出されます。のどが渇く+夜中にトイレに行く——この組み合わせがある方は血糖値をチェックすることをおすすめします。
心不全
心不全では日中に足などにたまった水分が、夜間横になることで腎臓に戻り尿として排出されます(夜間多尿)。足のむくみや階段での息切れがある方は注意が必要です。
緊急性の高い症状がある場合
夜間頻尿に加えて血尿や排尿痛がある場合は、尿路感染症や膀胱炎の可能性があります。早めに医療機関を受診してください。
夜間頻尿の検査方法
- 問診・排尿日誌:いつ・どのくらいの量を・何回排尿したかを記録
- 尿検査:尿中の糖・タンパク・潜血・感染の有無をチェック
- 血液検査:血糖値(HbA1c)、腎機能、心不全マーカー(BNP)などを測定
- 腹部エコー:膀胱や腎臓の状態、前立腺の大きさ(男性)を確認
必要に応じて、簡易SAS検査(自宅でできる睡眠時無呼吸検査)を実施する場合もあります。
夜間頻尿の治療法
行動療法・生活指導
- 就寝2〜3時間前からの水分制限
- 夕方以降のカフェイン・アルコールを控える
- 減塩(特に夕食)
- 就寝前に必ずトイレに行く習慣づけ
薬物療法
- 夜間多尿症:抗利尿ホルモン薬(デスモプレシン)
- 前立腺肥大:α1遮断薬
- 過活動膀胱:抗コリン薬やβ3作動薬
原因疾患の治療
- SAS:CPAP療法で夜間頻尿が大きく改善するケースがあります
- 糖尿病:血糖コントロールにより改善
- 心不全:循環器治療で改善
夜間頻尿は何科を受診すべき?
まずは内科(総合内科)を受診することをおすすめします。夜間頻尿の背景には糖尿病や心不全、SASなどの全身疾患が隠れている可能性が高いためです。しもやま内科では総合内科専門医・糖尿病専門医・循環器専門医・甲状腺専門医が在籍しており、関連する生活習慣病を総合的に評価できます。必要に応じて泌尿器科へ適切に紹介します。
よくあるご質問
Q. 夜間頻尿の原因は何ですか?
主に4つのメカニズムがあり、背景には糖尿病・心不全・SAS・前立腺肥大などさまざまな疾患が隠れています。複数の原因が重なっていることも多いです。
Q. 男性と女性で原因の違いはありますか?
はい。男性は前立腺肥大が最大の要因です。女性は閉経後のホルモン変化や骨盤底筋のゆるみ、見逃されがちなSASが原因になることが多いです。
Q. 夜間頻尿は何科を受診すればいいですか?
まずは内科がおすすめです。全身疾患の可能性を評価した上で、必要に応じて泌尿器科などへ紹介します。
Q. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)と夜間頻尿の関係は?
SASでは呼吸停止による胸内圧変動で利尿ホルモンが分泌され、夜間多尿を引き起こします。CPAP治療で頻尿が改善するケースが多くあります。いびきや日中の眠気がある方は、SASの検査もご検討ください。
Q. 夜間頻尿は年のせいですか?
年齢とともに増えやすいのは事実ですが、「年のせい」と諦める必要はありません。多くの場合、治療可能な原因が見つかります。
Q. オンライン診療での相談は可能ですか?
当院ではオンライン診療によるSAS外来は行っておりません。夜間頻尿の診断には正確な問診と検査が必要であり、対面での診察を大切にしています。
関連ページ
- SAS総合トップ – 症状・検査・治療まとめ
- SAS総合ガイド – 症状・検査・CPAP治療
- SASの検査方法
- SASと糖尿病・高血圧の関係
まずは一度ご相談ください
夜間頻尿は「年のせい」と片付けず、原因をしっかり調べることで睡眠の質が大きく改善する可能性があります。お気軽にご相談ください。
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最終更新日:2026-09-05
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。