📘 要点
- 日中の強い眠気と夜間の覚醒は、睡眠障害の代表的な症状です
- SASの潜在患者は約940万人で、治療率は8%にとどまります
- 簡易PG検査は約2,700円、在宅PSG検査は約6,540円(3割負担)です
- ESSは11点以上で病的な眠気と判断し、初診時に記入します
- カフェインは午後3時まで、就寝前1時間はスマホを控えます
- 居眠り運転や朝の頭痛があるときは、早めにご相談ください
「夜、眠れない」だけでなく、「昼間に猛烈に眠い」「疲れが取れない」「いびきがひどい」「夜中に何度も起きる」——これらの症状は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)をはじめとする睡眠障害のサインかもしれません。国内に約940万人の潜在患者がいるSAS(治療率はわずか8%)、単なる「寝不足」と軽視できません。このページでは、昼間の眠気と夜間覚醒を引き起こす代表的な疾患について、内科専門医が症状の特徴・検査方法・治療法を解説します。
昼間の眠気と夜間覚醒——主な原因疾患
「昼間に猛烈に眠い」「夜中に何度も起きる」という症状には、いくつかの代表的な原因が考えられます。複数の要因が重なることも多く、適切な診断には問診と検査が欠かせません。
| 疾患 | 昼間の眠気 | 夜間覚醒 | 特徴的なサイン |
|---|---|---|---|
| 睡眠時無呼吸症候群(SAS) | ◎ 強い眠気 | ◎ 無呼吸による覚醒 | 大きないびき・呼吸停止の指摘・朝の頭痛・口渇 |
| 慢性不眠症 | △ 疲労感主体 | ◎ 中途覚醒・早朝覚醒 | ストレス・不安・うつ症状を伴うことが多い |
| むずむず脚症候群(RLS) | △ 睡眠不足による眠気 | ◎ 足の不快感で覚醒 | 夕方〜夜間に脚のむずむず感・動かすと軽快 |
| ナルコレプシー | ◎ 突然の眠気発作 | △ 睡眠はまとまりやすい | 情動脱力発作・入眠時幻覚・金縛り |
| 概日リズム睡眠覚醒障害 | △ 朝起きられない | △ 寝つきが極端に遅い | 夜型生活・月曜朝の強い辛さ |
昼間の眠気——「ただの寝不足」と感じたときの注意点
「昼間に眠い」という症状は多くの人が経験しますが、以下のような場合は寝不足だけではなく、SASなどの疾患が隠れている可能性があります。
| 原因 | 特徴 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| SAS | いびき・無呼吸・睡眠の断片化 | 家族から呼吸停止を指摘されたことがある |
| ナルコレプシー | 突然の眠気発作、情動脱力発作 | 笑ったときに脱力する、入眠時幻覚がある |
| うつ病 | 気分の落ち込み・意欲低下・早朝覚醒 | 朝が特に辛い、以前楽しめていたことが楽しめない |
| 反応性低血糖 | 食後2〜3時間後に眠気・脱力感 | 食事の後に特に眠くなる、甘いものを摂ると改善する |
| 睡眠不足症候群 | 慢性的な睡眠時間不足 | 休日に寝だめをすると改善する、平日の睡眠時間が6時間未満 |
特に注意が必要なのは運転中の眠気です。「信号待ちの間に一瞬寝てしまった」「高速道路でウトウトした」——これはSASの典型的なサインであり、重大な事故リスクです。SASのある方の交通事故リスクは約2.4倍(未治療では2〜7倍)と報告されています。
夜中に何度も起きる——代表的な4つのパターン
パターン①:睡眠時無呼吸症候群(SAS)
SASでは無呼吸によって脳が覚醒し、睡眠が分断されます。患者さん自身は「目が覚めた」という自覚がなくても、脳波上では一晩に数十〜数百回の覚醒反応が起きています。SASによる中途覚醒の特徴は、自分では「ずっと寝ている」と思っているのに朝まで眠った感覚がないことです。
パターン②:前立腺肥大・夜間頻尿
夜中にトイレに行きたくなって目が覚める——中年以降の男性に多いパターンです。SASそのものが夜間頻尿を引き起こすことも知られており、SAS治療により夜間頻尿が改善したとする報告もあります。
パターン③:むずむず脚症候群(RLS)・周期性四肢運動障害(PLMD)
RLSの「むずむず感」で寝つけなかったり、睡眠中に足がピクピク動くPLMDで目が覚めてしまうケースがあります。家族に「寝ている間に足が動いている」と指摘されることが受診のきっかけになります。
パターン④:不眠症(ストレス・うつ病・不安症)
心配ごとやストレスが原因で夜中に目が覚めてしまい、その後なかなか寝つけなくなるタイプ。うつ病では早朝覚醒(朝の4時〜5時に目が覚めて二度寝できない)が特徴的です。
SASの3主徴と重症度
- 大きないびき:「ゴーッ」という連続したいびきの後、突然止まり(無呼吸)、「プハッ」という大きないびきで再開するパターン
- 呼吸停止(無呼吸)——家族が「息が止まっている」と心配するのが典型的。10秒以上の呼吸停止が一晩に何度も起こる
- 昼間の強い眠気——夜間に十分な睡眠が取れていないため、日中に強い眠気。昼寝をしてもすぐにまた眠くなる
| 重症度 | AHI | 症状の目安 | 治療の目安 |
|---|---|---|---|
| 軽症 | 5〜15未満 | いびきのみ、眠気は軽い | 生活改善+経過観察、または口腔内装置 |
| 中等症 | 15〜30未満 | 明らかな昼間の眠気、運転に注意 | CPAPまたは口腔内装置を検討 |
| 重症 | 30以上 | 強い眠気、高血圧・心疾患リスク高い | CPAP治療が第一選択 |
睡眠障害の検査方法
① 簡易PG検査(自宅で実施)
指先にセンサーを装着し、1泊の睡眠中の酸素飽和度・脈拍・呼吸の変化を記録。SASのスクリーニングとして有用。費用は約2,700円(3割負担)。2026年6月の改定でAHI 30以上でCPAP保険適用となり、簡易検査のみで治療を始められるケースが増えています。
② 在宅PSG検査(精密検査)
脳波・呼吸・心拍などを自宅で詳細に測定。費用は約6,540円(3割負担)。SASの確定診断や他の睡眠障害の鑑別に必要です。
③ ESS(エプワース眠気尺度)
日常生活の8つの場面で眠くなる頻度を自己評価するアンケート。11点以上で「病的な眠気がある」と判断。当院の初診時には必ず記入いただいています。
④ 血液検査
睡眠障害の背景にある貧血(フェリチン)、甲状腺機能異常、糖尿病などを調べます。特にRLSが疑われる場合は血清フェリチン値の確認が重要です。
睡眠障害の治療方法
CPAP療法(SASの第一選択)
CPAP(シーパップ)は、睡眠中にマスクを装着し、気道に空気を送り込むことで無呼吸を防止する治療法です。高い効果が認められており、保険適用で月々4,500〜5,500円程度(3割負担)。治療を始めると、多くの場合で朝の疲れや日中の眠気が改善します。当院ではCPAP導入後のフォローアップも行い、継続をサポートしています。
口腔内装置(マウスピース)
軽症〜中等症のSASやCPAPが合わない場合に選択します。歯科と連携して作成します。
薬物療法
不眠症に対しては、必要最小限の薬物療法を検討します。RLSに対しては鉄剤(フェリチン値が低い場合)やドパミン作動薬を使用します。当院ではできるだけ少量・短期間で済ませる方針です。
生活改善・睡眠衛生指導
薬や機器に頼らずとも、生活習慣の見直しだけで睡眠の質が改善することは少なくありません。
睡眠衛生の向上——今日からできること
- 起床時間と就寝時間を一定に——休日も平日と同じ時間に起床。休日の寝だめは月曜朝のつらさを強くします
- 就寝前1時間はスマホ・PC・テレビを見ない——ブルーライトはメラトニン分泌を抑制します
- カフェインは午後3時までに——コーヒー・緑茶・エナジードリンクの覚醒効果は5〜8時間持続します
- 寝室を「寝るだけの場所」に——寝室で仕事や食事をしない
- 適度な運動を朝〜午後に行う——夕方までの有酸素運動が深い睡眠を促進します
- 夕食は就寝2〜3時間前までに——満腹のまま寝ると消化活動が睡眠を妨げます
- 「眠れない」と焦らない——20分以上眠れない場合は一度起きて、リラックスしてから再び床に就く
受診のタイミング
以下のような症状に心当たりがある方は、医療機関の受診をおすすめします。
- 「昼間に猛烈に眠くて困っている」
- 「いびきを家族に指摘されたことがある」
- 「寝ている間に息が止まっていると言われた」
- 「朝起きたときに頭が痛い・口が渇いている」
- 「夜、足がむずむずして眠れない」
- 「運転中や会議中に居眠りしてしまう」
自覚症状が乏しい方では、アップルウォッチ(Apple Watch)の無呼吸通知をきっかけに受診されることもあります。一方で通知が出ない場合もあり、通知の有無だけで判断はできません。気になる症状があれば検査をご検討ください。
しもやま内科では、内科専門医として睡眠障害の診断から治療まで一貫して対応しています。オンライン診療によるSAS外来は行っておりませんが、対面での丁寧な診察を大切にしています。まずはお気軽にご相談ください。
日中の眠気はSASだけではない——薬・貧血・甲状腺の影響
日中の強い眠気というと真っ先にSASが疑われますが、実際には複数の原因が重なっていることが少なくありません。SASの検査で説明がつかない眠気がある場合は、次のような要因も確認します。
① 薬による眠気(薬剤性)
市販薬・処方薬の中には、眠気を引き起こすものがあります。眠気は薬によって出方や強さが異なります。
| 薬の種類 | 例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 抗ヒスタミン薬 | 花粉症・アレルギーの薬、かゆみ止め | 脳内の覚醒に関わるヒスタミンを抑えるため眠気が出ます。世代(第1世代/第2世代)や成分で出方が異なります |
| 総合感冒薬 | 市販の風邪薬 | 抗ヒスタミン薬を含むものがあり、服用後の眠気に注意が必要です |
| 抗うつ薬・抗不安薬・抗てんかん薬など | — | 目的以外の受容体にも作用して眠気を生じることがあります |
| 一部の降圧薬など | — | だるさ・眠気として感じられることがあります |
添付文書に運転や機械操作を避ける記載がある薬では、眠気がある状態での運転は危険です。自己判断で中断・減量せず、処方元または当院にご相談ください。症状や生活に合わせた薬の選び直しが可能な場合があります。
② 鉄欠乏性貧血による眠気
「鉄剤を飲むと眠くなる」と感じる方がいますが、眠気は鉄剤そのものより、貧血そのもの(酸素を運ぶヘモグロビンの不足)による疲労感・眠気であることが一般的です。鉄が不足すると全身が酸素不足となり、疲れやすさ・息切れ・めまい・動悸・日中の眠気が現れます。治療は鉄剤による補充が中心で、不足が改善すると眠気も軽減することが期待できます。女性は月経による出血で鉄が失われやすいため、注意が必要です。
③ 甲状腺機能低下症による眠気
甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節しており、不足すると代謝が低下して、疲れやすさ・だるさ・寒がり・便秘・体重増加・むくみ・日中の眠気が現れます。症状はゆっくり現れるため気づきにくいのが特徴です。当院は甲状腺専門医が診療しており、血液検査(TSH・FT3・FT4)で確認できます。SASと甲状腺機能低下症が併存すると、両方の治療が必要になります。
④ 高血糖・糖尿病による眠気
血糖値が高い状態が続くと、だるさや眠気を感じることがあります。また、SASと糖尿病は互いに悪化させ合う関係にあり、睡眠の質が下がると血糖コントロールも乱れやすくなります。当院は糖尿病専門医が診療しており、睡眠と血糖の両面から評価できます。
眠気の原因を整理する
| 確認する項目 | 見えてくるもの |
|---|---|
| いびき・呼吸停止の指摘、夜間の覚醒 | SAS |
| 服用中の薬(市販薬を含む) | 薬剤性の眠気 |
| 採血(血算・フェリチン) | 鉄欠乏性貧血 |
| 採血(TSH・FT3・FT4) | 甲状腺機能低下症 |
| 血糖・HbA1c | 糖尿病・高血糖 |
| 気分の落ち込み、意欲の低下 | うつ病などの気分障害 |
眠気の背景は一つとは限りません。当院では、問診・採血・睡眠検査を組み合わせて原因を整理し、必要な治療につなげます。
鉄欠乏による貧血や血糖変動など、睡眠時無呼吸症候群(SAS)以外が原因の眠気については、日中の強い眠気|見逃されやすい3つの原因と当院でのアプローチで詳しく説明しています。貧血の検査・治療については貧血のページもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
Q. 昼間に眠いのは病気ですか?
日常生活に支障が出るほどの眠気がある場合は、SASやナルコレプシーなどの疾患が隠れている可能性があります。特に「運転中に眠くなる」「昼寝をしてもすぐにまた眠くなる」という方は、一度検査をご検討ください。
Q. 睡眠障害は何科に行けばいいですか?
一般的な不眠やいびき・SASの疑いがある場合は、まず内科(できれば睡眠外来を標榜している医院)を受診されるのが良いでしょう。しもやま内科では内科専門医として、不眠症・SAS・RLSなど幅広い睡眠障害に対応しています。
Q. 睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックはありますか?
以下の項目で当てはまる数が多いほど、SASの可能性が高まります:大きないびき・呼吸停止の指摘・昼間の強い眠気・朝の頭痛・高血圧または肥満・首周囲が太い。3つ以上当てはまる場合は、簡易検査をご検討ください。当院では匿名2分のセルフチェックもご用意しています。
Q. むずむず脚症候群(RLS)とは?
夕方〜夜間にかけて脚に「むずむず」「虫が這うような」不快感が生じ、じっとしていられなくなる病気です。原因として鉄欠乏が最も多く、血液検査でフェリチン値の確認が重要です。
Q. 睡眠障害は全身にどんな影響がありますか?
SASを放置すると高血圧(約2.9倍)・脳卒中(約2.9倍)・心臓突然死(約2.6倍)のリスクが上昇します。また、睡眠障害はインスリン抵抗性を高め糖尿病を悪化させ、うつ病や認知機能低下のリスクにもなります。
Q. オンライン診療での睡眠障害の相談はできますか?
当院ではオンライン診療によるSAS外来は行っておりません。睡眠障害の診断には正確な問診と検査が必要であり、対面での診察を大切にしています。
Q. 鉄剤を飲むと眠くなります。鉄剤の副作用でしょうか?
眠気は鉄剤そのものより、貧血(酸素を運ぶヘモグロビンの不足)による疲労感・眠気であることが一般的です。鉄剤の主な副作用は胃の不快感・便秘・下痢などです。不足が改善すれば眠気も軽減することが期待できますが、眠気が続く場合はSASや甲状腺機能低下症など他の原因も確認しますので、ご相談ください。
Q. 眠気が出る薬を飲んでいますが、やめたほうがいいですか?
自己判断での中止・減量はおすすめしません。眠気は薬の種類や成分によって出方が異なり、症状や生活スタイルに合わせて選び直せる場合があります。花粉症の薬であれば眠気の出にくい種類への変更、鼻炎があれば点鼻薬の併用といった選択肢もあります。処方元または当院にご相談ください。なお、眠気がある状態での運転は控えてください。
Q. 鉄剤を飲んでいても、眠気やだるさが続くのはなぜですか?
鉄剤そのものが眠気を起こしているというより、貧血の改善の途中であることが多いと考えられます。ヘモグロビンやフェリチンが戻るまでには時間がかかり、自覚症状の改善に数週間〜数か月かかることもあります。また、鉄欠乏と同時に甲状腺機能低下症・糖尿病・睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れていると、眠気が残ることがあります。鉄剤の副作用としては、胃の不快感・吐き気・便秘・便が黒くなることなどが知られており、眠気は一般的ではありません。改善が乏しい場合は、採血の再評価と睡眠の検査をご提案します。詳しくは日中の強い眠気の原因をご覧ください。
Q. 食後に強い眠気が出ます。原因は何でしょうか?
食後の眠気は、食事に伴う血糖の変動(反応性低血糖)や、炭水化物の量・食べ方、SASの合併などが関係します。当院では、必要に応じて血糖・HbA1cの確認や、血糖の変動を確認する検査を行い、原因に応じた対策をご提案します。食後の強い眠気が繰り返す場合は日中の強い眠気のページもご参照ください。
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このページの監修・出典
監修・執筆:しもやま内科 院長(日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医/日本老年医学会 老年科専門医・指導医)
主な参考資料:
- 日本睡眠学会「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」/内山真 編「睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第3版」(じほう、2019)
- 厚生労働省 診療報酬点数表・診療報酬改定通知(在宅持続陽圧呼吸療法関係)
- 厚生労働省 睡眠時無呼吸症候群に関する情報
- 日本呼吸器学会・日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本甲状腺学会の診療ガイドライン
作成・更新:2026年10月4日|このページは一般的な医学情報の提供を目的としたもので、診断・治療方針は診察に基づいて判断します。
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最終更新日:2026-10-04
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。