シックデイ時の対応

"

シックデイ(体調不良時)は、1型糖尿病管理において特に注意が必要な時期です。感染症や発熱により血糖が不安定になりやすく、ケトアシドーシス(DKA)のリスクが高まります。正しい対応ルールを知っておくことが大切です。

シックデイ(体調不良時)の考え方

糖尿病のシックデイ

糖尿病のシックデイはどう対応する?

風邪・インフルエンザ・新型コロナ・胃腸炎などで熱や吐き気・食欲低下があり、「いつものように食べられない」「水分もつらい」という状態を、糖尿病では「シックデイ」と呼びます。

糖尿病の方、とくにインスリン注射やSGLT2阻害薬を使用している方にとって、シックデイは糖尿病性ケトアシドーシスや重症低血糖のリスクが高まる“要注意のタイミング”です。
ふだんと同じ感覚で「食べられないから薬もインスリンもお休み」で済ませてしまうと、命に関わる場合があります。

シックデイ

シックデイ

なぜシックデイで血糖が乱れるのか

シックデイでは、次のような要因が重なります。

  • 感染症や炎症でストレスホルモン(コルチゾール・アドレナリンなど)が増える → 血糖を上げる方向に働く
  • 発熱・嘔吐・下痢などで脱水になりやすい → 血液が濃くなり、血糖がさらに高く見える
  • 食事が取れない → いつもの内服薬やインスリンの「効き方」が変わる

これらは、糖尿病性ケトアシドーシスや、SGLT2阻害薬を使用中であれば「正常〜軽度高血糖でも起こるケトアシドーシス」の引き金になることがあります。
そのため、シックデイでは「脱水を防ぐ」「高血糖(とケトン)をモニタリングして対応する」ことが重要になります。

シックデイに注意

シックデイに注意

シックデイルール(基本方針)

シックデイルール

シックデイルール

シックデイのときに共通して大切なのは、次の4点です。

  • ① 水分と電解質をこまめに補う(脱水予防)
  • ② 炭水化物を少量でもよいので摂る(低血糖とケトン増加を防ぐ)
  • ③ 血糖と、可能なら尿ケトン・血中ケトンをこまめに測る
  • ④ 基礎インスリンは自己判断で中止しない

食べられる範囲で、うどん・お粥・ゼリー飲料・スポーツドリンク(必要に応じてOS-1など)を少しずつ摂取し、「まったく糖質ゼロ」にならないようにします。
飲める量・食べられる量が極端に少ない場合は、早めの受診や点滴も検討します。

血糖測定は、ふだんより頻度を増やし、可能であれば尿ケトンや血中ケトンも確認します。
「いつもより高い」「300mg/dL以上が続く」「ケトン陽性」がそろう場合は、特に注意が必要です。

追加インスリン(食前インスリン)の考え方

超速効型・速効型インスリンなどの「食前インスリン(追加インスリン)」は、「どれくらい実際に食べたか」に応じて調整します。

  • まったく食べられない:その食事分の追加インスリンは原則中止
  • いつもの半分未満:食前量の「半分」を目安に(※個別指示があればそちらを優先)
  • いつもの半分以上:通常どおり、あるいは少し減量して投与

ただし、血糖が300mg/dL以上など明らかな高値の場合は、主治医から「補正インスリン(修正インスリン)」の指示が出ていることもあります。
個々の「シックデイ時の補正ルール」がある場合は、その指示を優先してください。

基礎インスリンは中止してはいけません

シックデイ時のインスリン

シックデイ時のインスリン

持効型インスリン(基礎インスリン)は、摂食量にかかわらず生命維持に必要な「ベースのインスリン」です。
「食べられないから全部お休み」は危険で、糖尿病性ケトアシドーシスの引き金になります。

  • 基礎インスリンは原則として中止しない
  • 主治医から「シックデイ時は○割程度に減量」など具体的指示がある場合は、その範囲で調整

基礎インスリンを自己判断でゼロにすることは避けてください。

糖尿病の飲み薬(経口薬)・注射薬の扱い

糖尿病治療薬は作用がさまざまで、シックデイ時に「続けるべきもの」「中止した方がよいもの」が分かれます。
以下は一般的な目安であり、実際には主治医の個別指示を優先してください。

比較的続けやすい薬(インスリン分泌を直接増やさないタイプ)

ただし、浮腫・心不全悪化のリスクがある方では、シックデイに限らず慎重判断が必要です。

原則として中止を検討する薬

  • SU剤グリニド系
    → 食事が取れないと低血糖リスクが高くなるため、一時中止が無難です。
  • DPP-4阻害薬
    → 経口摂取が極端に少ない場合は「効果が乏しい+負担になる」ため、一時中止を検討します。
  • SGLT2阻害薬
    → 脱水やケトアシドーシス(特にeuglycemic DKA)のリスクがあるため、シックデイでは原則中止が推奨されます。
  • α-グルコシダーゼ阻害薬
    → 下痢・腹部膨満感など消化器症状を悪化させるおそれがあるため、中止が無難です。
  • ビグアナイド薬(メトホルミンなど)
    → 脱水や腎機能低下が重なると乳酸アシドーシスのリスクがあるため、シックデイでは中止が推奨されます。

GLP-1受容体作動薬(注射)など、ここに挙げていない薬剤については、個別に主治医と相談してください。

シックデイの時に気を付けること

シックデイの時に気を付けること

こんなときは「自己判断せず相談・受診」を

次のような場合は、自宅で様子を見るよりも、早めの相談・受診(場合によっては救急受診)を検討してください。

  • 吐き気・嘔吐・下痢が強く、水分がほとんど取れない
  • 38℃以上の発熱が続き、ぐったりしている
  • 血糖が300mg/dL以上でなかなか下がらない
  • 尿ケトン・血中ケトンが陽性になっている
  • 強い腹痛・呼吸が速い・意識がぼんやりする など

シックデイは、「少しの工夫で自宅で乗り切れる場合」と「入院治療が必要な場合」の線引きがとても大事です。
迷ったときは、「食事量」「水分量」「血糖・ケトンの値」「症状の強さ」をメモしたうえで、お電話でご相談ください。


← 糖尿病の緊急症トップへ戻る


← 糖尿病緊急症へ戻る

"

10/05/2019