1型糖尿病|インスリン治療・CGM・自己管理

📘 要点

  • 1型糖尿病は、自己免疫でβ細胞が壊れインスリンが不足する病気です
  • 診断では血糖値126mg/dL以上やHbA1c 6.5%以上を参考にします
  • 治療はインスリン注射が中心で、1日4〜8回以上の血糖測定が推奨されます
  • 管理目標はTIR 70%以上、HbA1c 7.0%未満が目安です
  • 食事が摂れないときも基礎インスリンを継続し、2〜4時間おきに測定します
  • 高熱やケトン体陽性が続くときは、早めにご相談ください

1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が自己免疫機序により破壊され、インスリンが絶対的に不足する病気です。一生を通じたインスリン治療が必要ですが、CGM・インスリンポンプなどの技術進歩により、多くの患者さんが健やかな日常生活を送っています。しもやま内科では、糖尿病専門医が1型糖尿病患者さんの治療と自己管理を総合的にサポートしています。

1型糖尿病とは

発症メカニズム

1型糖尿病は、自己免疫により膵臓のインスリン産生細胞(β細胞)が破壊されることで発症します。体内でインスリンがほとんど産生できなくなるため、外来からのインスリン補充が必須です。

発症には以下の因子が関与すると考えられています:

  • 遺伝的要因:HLA遺伝子(DR4、DR9、DQ6など)が関連
  • 環境要因:ウイルス感染(エンテロウイルスなど)が引き金となることがある
  • 自己抗体の出現:抗GAD抗体、IA-2抗体、ZnT8抗体などが発症に先行して検出される

β細胞が80〜90%以上破壊されて初めて高血糖が出現するため、診断時にはすでにインスリン分泌が著明に低下していることが特徴です。

1型糖尿病の分類

分類 特徴 発症様式
急性発症1型 抗GAD抗体陽性、急速にインスリン不足 数週〜数ヶ月
劇症1型糖尿病 抗GAD抗体陰性、発症後1週間以内にケトアシドーシス 数日(超急性)
SPIDDM(緩徐進行1型) 抗GAD抗体陽性、比較的ゆっくり進行 数年単位
免疫チェックポイント阻害薬関連 がん免疫治療薬投与後に発症 投与後数週〜数ヶ月
二次性1型(膵炎・外傷) 膵切除・慢性膵炎などによるインスリン不足 病態による

1型と2型の違い

項目 1型糖尿病 2型糖尿病
主な発症年齢 小児・若年〜成人 中高年(最近は若年化)
発症メカニズム 自己免疫・膵炎など インスリン抵抗性+分泌低下
インスリン産生 著明低下〜消失(絶対不足) 初期は正常や亢進(相対不足)
治療 インスリン必須 内服薬・生活習慣改善
肥満 やせ型が多い 肥満型が多い
自己抗体 抗GAD抗体など陽性 陰性

診断のポイント

1型糖尿病の診断では以下の項目を評価します:

  • 血糖値:空腹時126mg/dL以上、または随時血糖200mg/dL以上
  • HbA1c:6.5%以上(NGSP値)
  • 抗GAD抗体:1型糖尿病の診断に有用(急性発症型で高率に陽性)
  • 血清Cペプチド:インスリン分泌能の指標(低値=内因性インスリン不足)
  • 尿中Cペプチド:1日尿中Cペプチド20μg/日未満
  • ケトーシス/ケトアシドーシス:発症時のケトン体上昇

1型糖尿病患者さんの治療

インスリン治療の基本

1型糖尿病の治療はインスリン治療が中心です。以下の治療法から患者さんのライフスタイルに合わせて選択します:

自己血糖測定とCGM(持続血糖測定)

1型糖尿病では、血糖値の細やかな管理が治療の成否を分けます。

  • SMBG(自己血糖測定):指先穿刺での血糖測定。1日4〜8回以上の測定が推奨されます。
  • CGM(持続血糖測定):フリースタイルリブレ・Dexcom G7などで24時間の血糖変動をリアルタイムに把握可能。CGMデータはインスリン量の調整や生活習慣の改善に役立ちます。
  • TIR(Time In Range):目標範囲(70〜180mg/dL)内の滞在時間を指標とする管理目標。TIR 70%以上が推奨されています。

免疫チェックポイント阻害薬関連1型糖尿病

近年、がん免疫治療薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブ、デュルバルマブなど)の使用により、1型糖尿病を発症する症例が報告されています。

低血糖対策とシックデイルール

1型糖尿病では低血糖が最も注意すべき急性合併症です。重症低血糖は意識障害を引き起こす可能性があるため、予防と対策が極めて重要です。

低血糖の予防

  • インスリン量と食事量・運動量のバランスを常に意識する
  • 血糖自己測定の徹底(とくに就寝前・運転前・運動前後)
  • 糖質の携帯(ブドウ糖タブレット・ジュースなど)
  • 周囲への周知(家族・職場・学校に低血糖症状と対処法を伝える)
  • グルカゴン注射(重症低血糖時の緊急処置として処方可能)

シックデイルール(体調不良時の対応)

  • 食事が摂れない時も基礎インスリンは継続(ケトアシドーシス予防に必須)
  • 血糖・尿ケトン体の頻回測定(2〜4時間おき)
  • 十分な水分補給(経口補水液やスポーツドリンク)
  • 高熱・嘔吐・高血糖(250mg/dL以上)・ケトン体陽性時は早めの受診

長期管理とQOL

運転免許と1型糖尿病

1型糖尿病で運転される場合、低血糖による事故防止が最優先です。運転前の血糖測定、2時間以上の運転時の中間測定、糖質の携行が推奨されます。意識障害を伴う低血糖を起こした場合は医師への相談が必要です。

就学・就労・旅行

1型糖尿病があっても学校生活や仕事、旅行は十分可能です。学校や職場への適切な情報共有、旅行時のインスリン・測定器の倍量携行、タイムゾーン変更時のインスリン調整などを計画的に行います。

成人期への移行(トランジション)

小児期に発症した1型糖尿病患者さんが成人診療科へ移行する際は、自己管理の継続と医療者の引継ぎが重要です。しもやま内科(中学生以上診療対象)では成人期の1型糖尿病診療に対応しています。

1型糖尿病の治療目標

項目 目標値
空腹時血糖 80〜130 mg/dL
食後2時間血糖 180 mg/dL未満
HbA1c 7.0%未満(個別化。高齢者・重症低血糖リスク大は8.0%未満など)
TIR(Time In Range) 70%以上(目標範囲70〜180 mg/dL)
TBR(Time Below Range) 4%未満(70 mg/dL未満)、1%未満(54 mg/dL未満)
低血糖 最小限に(意識障害を伴う低血糖は完全回避)

よくある質問(FAQ)

Q1. 1型糖尿病は治りますか?

現時点で根治する治療法はありません。しかし、適切なインスリン治療と自己管理により、健やかな生活が可能です。膵島移植や人工膵臓の研究も進んでおり、治療選択肢は年々拡大しています。

Q2. インスリン注射は痛いですか?

現代の注射針は非常に細く(4mm程度)、痛みは軽微です。痛みはごく軽く、多くの方にとって負担は小さいとされています。インスリンポンプならさらに注射の回数を減らせます。

Q3. 食事は制限されますか?

絶対的な禁忌はありませんが、インスリン量と食事量・タイミングを合わせる必要があります。カーボカウント(炭水化物計算法)を習得すれば、柔軟な食事が可能です。

Q4. 運動はできますか?

もちろん可能です。運動は血糖コントロールに有益ですが、血糖が下がりすぎる可能性があるため、運動前後の血糖測定と必要に応じた糖質補給が重要です。

Q5. 妊娠・出産はできますか?

可能です。ただし妊娠前・妊娠中は血糖管理をより厳密に行う必要があり、産科・糖尿病内科の連携が重要です。計画的な妊娠と妊娠前からの血糖コントロールが推奨されます。

Q6. 1型糖尿病の人は新型コロナワクチンを接種できますか?

接種可能です。血糖コントロールが良好な状態での接種が推奨されます。ワクチン接種後は一時的な血糖変動に注意し、シックデイルールに準じた対応を行います。

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    主な参考資料:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」(南江堂、2024年5月30日発行)/日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本循環器学会・日本甲状腺学会・日本高血圧学会等の診療ガイドラインおよび厚生労働省の公表資料

    作成・更新:2026-08-28|本ページは一般的な医学情報の提供を目的としたものです。診断・治療については受診のうえご相談ください。

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    最終更新日:2026-08-28

    👨‍⚕️ この記事の監修医師

    監修・執筆:しもやま内科 院長(日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医/日本老年医学会 老年科専門医・指導医)
    糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

    07/03/2026