高プロラクチン血症 × 月経異常・不妊:婦人科と内分泌の接点
軽度高PRLの再検基準、薬剤性鑑別、下垂体MRIの適応目安、妊娠希望/授乳期の運用を実務目線で整理します。
プロラクチノーマ、二次性高PRL(甲状腺機能低下症など)、マクロプロラクチンも考慮します。
しもやま内科は、産婦人科(OBGYN)連携の一環として、
高プロラクチン血症(HPRL)に伴う月経異常(無月経・希発月経・黄体機能不全)や不妊に対する
PRL再検・薬剤性鑑別・TSH/FT4評価・下垂体MRIの判断を、外来実務に落とし込んで整理しています。
※ガイドライン/コンセンサスに基づく一般的な考え方です。個々の症例は背景(妊娠希望、薬剤、腫瘍サイズ等)により最適解が変わります。
1. PRL「再検」の考え方と採血条件(実務)
- 採血条件:可能なら午前中に、採血前は安静を確保します。ストレス・疼痛・激しい運動・乳頭刺激などはPRL上昇の一因になり得ます。
[1] - 軽度高PRL:血中PRLが軽度上昇(例:上限の〜数倍程度)なら、まず条件を整えて再検し、再現性を確認する流れが推奨されます。
[2] - マクロプロラクチン:症状とPRL値が合わない場合は、マクロプロラクチン(PEG沈殿など)を考慮し、不要な画像検査や治療を避けます。
[1] - 高値なのに症状が軽い/画像所見と乖離:まれにフック効果(プロゾーン)で低く見積もられることがあるため、必要時は希釈測定を検討します。
[3]
2. 薬剤性高PRL:まず疑う薬と実務対応
- 代表薬:抗精神病薬(例:リスペリドン等)、制吐薬(例:メトクロプラミド/ドンペリドン)などは薬剤性高PRLの原因になり得ます。
[1] - 対応:可能なら主治医(精神科等)と連携し、減量・切替を検討します。切替困難な場合は、妊娠希望・不妊治療計画と整合させて個別化します。
[1]
3. 二次性高PRL(内分泌・全身性):見落としを減らす
- 甲状腺機能低下症:PRL上昇の原因になり得るため、まずTSH/FT4を確認します。
[1]
(→ 妊活TSH最適化) - 腎機能低下など全身性要因も鑑別に入れます。
[1] - 妊娠・授乳:生理的にPRLは上昇します。授乳期は「数値を下げる」よりも、症状と背景(腫瘍サイズ等)で運用を組み立てます。
[4]
4. 下垂体MRIの適応目安(OBGYN→内分泌連携の要点)
- 反復して高値が持続し、薬剤性・二次性が否定的(または説明困難)な場合、下垂体評価を検討します。
[1] - 神経症状:頭痛、視野障害などがあれば、より積極的に画像評価を考えます。
[4] - プロラクチノーマの評価:micro(<10mm)/ macro(≥10mm)で妊娠期のリスクと監視項目が変わるため、サイズ評価は実務上重要です。
[4]
5. 妊娠希望/妊娠中/授乳期:ドパミン作動薬の基本戦略
- 妊娠希望:ドパミン作動薬(例:カベルゴリン/ブロモクリプチン)でPRL正常化と排卵回復を目標にします。
[1][2] - 妊娠判明後:多くの症例(特に微小腺腫)では、妊娠判明後に中止して経過観察する方針が一般的です(腫瘍径・症状で個別判断)。
[1][4] - 妊娠中の監視:macroadenoma等では、視機能評価を含め多職種・専門施設連携での管理が推奨されます。
[4] - 授乳期:原則として授乳は可能です。治療再開は症状・PRL・腫瘍径を総合して判断します。
[4]
6. 当院の役割(OBGYN ⇄ 内分泌の接点)
- 再検の整理:採血条件の最適化・再検タイミング・マクロPRL/希釈測定の提案
- 薬剤性の見直し支援:主治医(精神科等)と情報共有し、切替可否を検討
- TSH/FT4評価:二次性高PRLの除外(→ 妊娠中の甲状腺管理)
- MRI適応の提案:要否とタイミングの提示、紹介状FAXの即応
- 妊娠希望・ART前:PRL制御〜妊娠判明後の中止/監視プランの作成
FAQ
軽度高PRLの“要再検”ラインは?
おおむね25–50 ng/mL程度の軽度上昇は、採血条件(午前・座位安静、直前のストレス/疼痛、性交・乳頭刺激、激運動など)を整えて1–2週間以内に再検します。再現性がある場合は、薬剤性・妊娠/授乳・甲状腺機能(TSH/FT4)・腎肝機能の確認に加え、必要に応じてマクロプロラクチン評価も検討します。
甲状腺機能低下による二次性高PRLは?
甲状腺機能低下症ではTRH上昇を介してPRLが上がることがあります。まずTSH/FT4で甲状腺機能を評価し、機能低下があれば甲状腺治療を優先します。甲状腺機能の是正によりPRLが改善することがあります。
カベルゴリンと妊娠希望の扱いは?
妊娠希望時はカベルゴリンまたはブロモクリプチンで排卵回復・月経再開を目標にします。妊娠反応陽性となった後は多くで中止を検討しますが、腫瘍径(特に巨大腺腫)や症状(頭痛・視野障害)により継続/中止を個別化します。妊娠中は症状(頭痛・視野)を中心にモニターし、必要時は専門施設と連携します。
薬剤性高PRLが疑われる代表薬と、実務での進め方は?
抗精神病薬、制吐薬(メトクロプラミド等)、ドンペリドン、抗うつ薬(SSRI/SNRI)、エストロゲン含有薬などが代表です。まず原因薬の有無を確認し、主治医と連携して切替・減量の可否を検討します。切替困難な場合は、月経異常/排卵障害の程度や妊娠希望の有無を踏まえて内分泌と婦人科で方針を共有します。
下垂体MRIはどのようなときに検討しますか?
採血条件を整えてもPRL高値が反復して持続し、薬剤性・妊娠/授乳・甲状腺機能低下などの二次性要因が否定的な場合に検討します。加えて、PRLが高値(例:100–150 ng/mL以上が持続)や、頭痛・視野障害、無月経+乳汁分泌など症候がある場合はMRIの優先度が上がります。
腫瘍が大きいのにPRLがそれほど高くない場合は?(フック効果)
腫瘍サイズに比してPRL上昇が軽度〜中等度にとどまる場合、免疫測定での高濃度フック効果によりPRLが過小評価されることがあります。このような不一致があるときは、希釈測定(例:1:100など)で再測定を検討します。
関連:
妊活TSH最適化 /
妊娠中の甲状腺管理 /
妊娠希望・不妊Q&A
監修医・連携連絡先(E-E-A-T)
下山 立志(しもやま たつし)/しもやま内科 院長
専門:内分泌・甲状腺内科/総合内科
資格:総合内科専門医・糖尿病専門医・循環器専門医・老年病専門医・甲状腺専門医
実務:高PRLの再検・薬剤性鑑別、TSH/FT4評価、下垂体MRI適応判断、ドパミン作動薬の運用、妊娠/授乳期の管理
- 連携直通:047-467-5500
- 紹介状FAX:047-467-7500
- 所在地:千葉県船橋市芝山4-33-5(駐車場あり)
連携・ご相談:
047-467-5500(しもやま内科)|紹介状FAX:047-467-7500
参考文献
- Endocrine Society Clinical Practice Guideline: Diagnosis and Treatment of Hyperprolactinemia (2011).
https://www.endocrine.org/clinical-practice-guidelines/hyperprolactinemia
(背景と実務フローの標準) - Pituitary Society Consensus Statement: Diagnosis and management of prolactin-secreting pituitary adenomas (2023).
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37670148/
(再検・画像・治療の要点) - StatPearls: Hyperprolactinemia(フック効果/希釈測定の注意点を含む).
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK537331/ - European Society of Endocrinology (ESE) Clinical Practice Guideline: Pituitary adenomas in pregnancy (2021).
https://academic.oup.com/ejendo/article-abstract/185/3/G1/6654478
(妊娠中・産後の監視と連携)