📘 要点
- 脳梗塞は、脳の血管が詰まって脳の細胞に酸素が届かなくなる病気です
- 症状は「突然」始まり、「体の片側」に現れることが多いのが特徴です
- 顔のゆがみ・片側の手足の麻痺・言葉の出にくさは脳卒中のサインです
- 数分から1時間ほどで消えてしまう症状はTIA(一過性脳虚血発作)の可能性があります
- 高血圧・心房細動・糖尿病・脂質異常症・喫煙は主な危険因子です
- 急な症状があるときは119番(救急車)へのご連絡をおすすめします。数日かけてのしびれは早めにご相談ください
【緊急】次の症状が急に現れた場合は、すぐに119番へのご連絡をおすすめします:顔の片側のゆがみ、片側の手足の麻痺やしびれ、言葉が出ない・ろれつが回らない、急に見えにくい・ものが二重に見える、急に歩けない・体が傾く、これまで経験したことのない激しい頭痛。脳梗塞の治療は発症からの時間が大きく関わります。症状が出た時刻を控えておくと、その後の対応がスムーズになります。
脳梗塞とは——脳の血管が詰まる病気
脳梗塞は、脳に酸素と栄養を運ぶ動脈が詰まり、その先の脳の細胞が障害される病気です。脳卒中(脳血管障害)のうち最も多く、およそ7割を占めます。脳の細胞は血流が途絶えると数分で障害が始まるため、どれだけ早く血流を戻せるかが、その後の経過に影響します。
詰まり方によって、大きく3つのタイプに分けられます。
ラクナ梗塞
脳の深い部分にある細い血管が詰まるタイプです。長年の高血圧が主な原因とされています。梗塞の範囲が小さいため症状が目立たないこともありますが、繰り返すと認知機能や歩行に影響することがあります。
アテローム血栓性脳梗塞
頸動脈や脳の比較的太い血管に動脈硬化(プラーク)が進み、そこに血栓ができて詰まるタイプです。頸動脈エコーで狭窄の程度を評価できます。糖尿病・脂質異常症・喫煙がある方に多く見られます。
心原性脳塞栓症
心臓の中にできた血栓が血流にのって流れ、脳の血管を詰まらせるタイプです。原因として最も多いのが心房細動です。詰まる血管が太いため、症状が重くなりやすいのが特徴です。
一過性脳虚血発作(TIA)——消えても「済んだ」わけではない
脳梗塞と同じ仕組みで血流が一時的に途絶え、症状が短時間(多くは数分から1時間ほど)で消えるものを、一過性脳虚血発作(TIA)といいます。画像検査で梗塞が見つからないこともありますが、症状が出た後の数日間は脳梗塞を起こす危険が高い状態です。「話せなくなったが、5分で戻った」という場合も、その日のうちに医療機関へご相談ください。
脳梗塞の症状——「突然」「片側」が特徴
脳梗塞の症状は、多くの場合、秒から分単位で突然始まり、数分のうちに最も強くなります。そして体の片側に現れることが多いのが特徴です。現れ方は、詰まった血管が脳のどの部分を養っているかによって変わります。
| 現れる場所 | 症状の例 |
|---|---|
| 顔 | 顔の片側がゆがむ、口から水が漏れる、片方の目が閉じにくい |
| 手・腕 | 片側の手に力が入らない、物を落とす、箸やボタンが使いにくい |
| 足 | 片側の足が重い、引きずる、階段でつまずく、立っていられない |
| 言葉 | 言葉が出ない、ろれつが回らない、相手の話が理解できない |
| 感覚 | 片側の手足や顔のしびれ、触られても分かりにくい |
| 目 | 片目が見えない、視野の半分が見えない、ものが二重に見える |
| バランス | 急にふらつく、歩けない、体が片側に傾く、強いめまい |
| 頭痛 | 突然の激しい頭痛(くも膜下出血では多い症状です) |
しびれだけで力の入りにくさを伴わないこともありますが、脳梗塞では、しびれと麻痺が同時に起きたり、顔・手・足のうち複数の場所にまたがったりすることが多く見られます。また、症状が数分から1時間ほどで消えてしまう場合も、TIAの可能性があるため「様子を見る」のではなく、早めにご相談ください。
手足のしびれで脳梗塞を疑うとき——他の原因との見分け方
「手がしびれる」という症状で脳梗塞を心配される方は多くいらっしゃいます。見分けるときの手がかりは、出方(急か、ゆっくりか)、範囲(片側か、両側か)、広がり(手だけか、顔や足にも及ぶか)の3点です。
| 考えられる原因 | しびれ方の特徴 |
|---|---|
| 脳梗塞・TIA | 突然始まる。片側の顔・手・足にまたがる。麻痺や言葉の症状を伴うことが多い |
| 手根管症候群 | 母指から中指にかけて。夜間に強く目が覚める。両側のこともある |
| 頸椎症性神経根症 | 首の高さで範囲が決まり、肩から腕・手指へ広がる。首を後ろに反らせると悪化し、痛みを伴いやすい |
| 糖尿病性多発神経障害 | 両足の先から左右対称に始まり、足から手へ広がる。数か月以上かけて進行 |
| ビタミンB12欠乏・甲状腺機能低下症など | 両手足の先に左右対称。だるさやむくみ、寒がりなどを伴うことがある |
手根管症候群と診断されていた方でも、急にしびれが強くなったとき、力が入らない・歩きにくいといった症状が加わったときは、脳梗塞を疑って評価が必要です。また、糖尿病や甲状腺機能低下症のある方は手根管症候群を合併しやすいことが知られており、しびれの背景を整理する目的で検査を行います。詳しくは手根管症候群と糖尿病・甲状腺、手足のしびれの原因と見分け方をご覧ください。
受診のタイミング——「急」か「ゆっくり」かで判断する
しびれや麻痺の相談では、症状の出方が最も重要な判断材料になります。
- 急に始まった(秒〜分単位):脳梗塞や脳出血、くも膜下出血の可能性があります。119番へのご連絡をおすすめします。
- 数分から1時間で消えた:TIAの可能性があります。症状が消えていても、その日のうちに医療機関へご相談ください。判断に迷う場合は救急相談窓口(#7119)もご利用いただけます。
- 数日から数週間かけて:脳梗塞以外の原因(神経の圧迫、代謝・内分泌の異常など)が多い状態です。まずは内科の外来でご相談ください。
- 数か月以上かけて、両側に、少しずつ:末梢神経障害や頸椎・手根管の問題などが考えられます。経過を確認しながら検査を進めます。
急な症状で受診される際は、症状が出た時刻と、内服中のお薬(特に血液を固まりにくくする薬)を分かる範囲でお持ちください。治療の選択に直接関わる情報です。夜間・休日の急な症状は、119番または救急外来へご連絡ください。
当院で行う検査
当院では、しびれや麻痺の背景を整理するために、次の検査を行います。目的は、脳梗塞かどうかの判断だけでなく、脳梗塞を起こしやすい状態が隠れていないかを調べることにあります。
| 検査 | 分かること |
|---|---|
| 問診・診察 | 症状の出方と経過、既往歴(高血圧・糖尿病・心房細動など)、内服薬、喫煙・飲酒の状況 |
| 血液検査 | コレステロール・中性脂肪、血糖とHbA1c、肝臓・腎臓の機能、貧血、凝固能、甲状腺機能など |
| 心電図(12誘導) | 心房細動の有無、不整脈、心筋のダメージの有無 |
| ホルター心電図 | 発作的に起きる心房細動の検出(24〜48時間の記録) |
| 頸動脈エコー | 頸動脈のプラークと狭窄の程度。脳梗塞の原因検索と再発予防の判断に有用です |
| 心エコー | 心臓の中の血栓、弁膜症、心機能の評価 |
| 睡眠時無呼吸の評価 | いびき・日中の眠気がある場合、脳卒中の危険因子として確認します(睡眠時無呼吸) |
頭部のCT・MRI(MRA)は当院には設備がなく、頭部の画像検査や急性期の評価が必要な場合は、連携する医療機関へご紹介します。超音波検査(頸動脈エコー・心エコー)は当日の枠状況によりご案内します。
治療——急性期の治療と、再発を防ぐ治療
急性期の治療
発症から4.5時間以内であれば、血栓を溶かす薬(t-PA)による静注療法が検討されます。条件を満たす場合は、カテーテルで血栓を取り除く機械的血栓回収療法が選択されることもあります。いずれも入院設備のある専門医療機関で行う治療で、当院では行っておりません。疑われる場合は、発症時刻をお聞きしたうえで連携先へご紹介します。
再発を防ぐ治療
急性期を過ぎた後は、再発を防ぐための治療を当院でも継続できます。
- 抗血小板薬(アスピリン・クロピドグレルなど):アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞などで用いられます。
- 抗凝固薬(DOAC・ワルファリンなど):心房細動による心原性脳塞栓症で用いられます。原因によって薬の種類が異なります。
- 危険因子の管理:血圧・コレステロール・血糖の管理、禁煙、減塩(1日6g未満が目安)、節酒、適度な運動、体重管理。
内服は自己判断で中断せず、続けていただくことが大切です。あざが増えた、出血が止まりにくい、黒い便が出たといった変化がある場合はご相談ください。当院の診療は保険診療のみです。
予防——危険因子を一つずつ減らす
脳梗塞は、危険因子を管理することで起こりにくくできる病気です。特に次の項目は見逃されやすいため、確認をおすすめします。
- 高血圧:最も大きな危険因子です。家庭血圧の記録と内服の継続が基本になります(血圧の正常値と測り方)。
- 心房細動:動悸や脈の乱れを感じたときは早めにご相談ください。検診の心電図で指摘されることもあります(心房細動・不整脈)。
- 糖尿病:血糖の状態を継続して確認します(糖尿病の診療・HbA1cの検査)。
- 脂質異常症:コレステロールの管理は、頸動脈のプラーク進行を抑える目的でも行われます。
- 喫煙・過度の飲酒:禁煙は脳梗塞の危険を下げることが知られています。
- 睡眠時無呼吸:いびきや日中の強い眠気がある場合は、確認をおすすめします。
持病がある方、健診で血圧や血糖を指摘された方は、症状がなくても定期的な受診を続けていただくことが、結果として脳梗塞の予防につながります。
よくある質問(FAQ)
脳梗塞の前兆にはどのようなものがありますか?
突然の片側の手足のしびれや麻痺、顔の片側のゆがみ、言葉が出にくい・ろれつが回らない、片目が見えにくい、急なふらつきなどが前触れとして現れることがあります。特に数分から1時間ほどで消えてしまう場合は、TIA(一過性脳虚血発作)の可能性があり、症状が消えていても早めの受診が必要です。
片側の手だけがしびれる場合も脳梗塞ですか?
片側だけのしびれは脳梗塞でも起こりますが、手根管症候群や頸椎症性神経根症でも見られる症状です。急に始まったか、ゆっくり進んだか、顔や足にも及ぶか、力が入りにくいかが見分けの手がかりになります。脳梗塞では、しびれと麻痺が同時に現れたり、顔・手・足の複数の場所にまたがったりすることが多い傾向があります。
症状が数分で消えた場合も受診したほうがよいですか?
はい、ご相談をおすすめします。症状が消えていても、TIAの後は数日間、脳梗塞を起こす危険が高い状態が続きます。症状が出た時刻を控えて、その日のうちに医療機関へご連絡ください。診療時間外で判断に迷う場合は、救急相談窓口(#7119)もご利用いただけます。
脳梗塞かどうかは、どのような検査で分かりますか?
頭部の画像検査(CT・MRI)が中心になりますが、原因や危険因子を調べるために、血液検査・心電図・ホルター心電図・頸動脈エコー・心エコーを組み合わせます。当院では頭部のCT・MRIは行っておらず、画像検査が必要な場合は連携する医療機関へご紹介します。
当院で頭のCTやMRIはできますか?
当院にはCT・MRIの設備はありません。頭部の画像検査が必要と判断した場合は、連携する医療機関へご紹介します。当院では、問診・診察に加え、血液検査・心電図・ホルター心電図・頸動脈エコー・心エコーで、原因や危険因子の評価を行います。
心房細動があると脳梗塞になりやすいのですか?
心房細動では心臓の中に血栓ができやすく、それが脳の血管に流れて詰まる心原性脳塞栓症の原因となります。脳梗塞の中でも症状が重くなりやすいタイプです。心房細動と分かった場合は、脳梗塞の危険を評価したうえで、抗凝固薬による予防を検討します。動悸や脈の乱れを感じたときは、早めにご相談ください。
脳梗塞の再発を防ぐにはどうすればよいですか?
原因に応じた薬(抗血小板薬または抗凝固薬)を継続することと、血圧・コレステロール・血糖の管理、禁煙、減塩、節酒、適度な運動を組み合わせることが基本になります。内服は自己判断で中断せず、気になる変化があればご相談ください。
家族が急にしびれや言葉の出にくさを訴えたら、どうすればよいですか?
症状が出た時刻を確認し、すぐに119番へのご連絡をおすすめします。救急隊に症状と時刻を伝えると、受け入れ先の調整がスムーズになります。内服中のお薬やお薬手帳があれば、持参してください。
まとめ:症状の「出方」で受診先を決める
脳梗塞は、急に、片側に、そして数分のうちに完成する症状が特徴です。この3つに当てはまるときは、119番へのご連絡をおすすめします。症状が数分で消えた場合もTIAの可能性があるため、その日のうちにご相談ください。一方、数日から数週間かけて進むしびれは、神経の圧迫や代謝・内分泌の異常など、脳梗塞以外の原因が多い状態です。まずは内科でご相談いただき、必要な検査を組み合わせて原因を整理します。
しもやま内科では、血液検査・心電図・ホルター心電図・頸動脈エコー・心エコーを用いて、しびれや麻痺の背景と脳梗塞の危険因子を確認し、必要に応じて専門医療機関と連携します。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
監修:しもやま内科 院長 下山立志(総合内科専門医)
しもやま内科での診療
診療時間
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受診をご検討の方、お気軽にご相談ください
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診療時間外の緊急時は、119番へのご連絡をおすすめします。
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最終更新日:2026-09-25
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。