免疫チェックポイント阻害薬と1型糖尿病|オプジーボなどのリスク

📘 要点

  • 免疫チェックポイント阻害薬は、副作用で1型糖尿病を起こすことがあります
  • 発症率は約0.28%とまれですが、発症は急激で重症化しやすいです
  • 来院ごとの血糖測定と、1〜3ヶ月ごとのHbA1c測定が推奨されています
  • 症状がなくても発症するため、定期検査による早期発見が重要です
  • 血糖200mg/dL以上や口渇が続くときは、早めに専門医へご相談ください

免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ®、キイトルーダ®など)はがん免疫療法に革命をもたらしましたが、副作用として1型糖尿病を発症するリスクがあります。発症率は約0.28%とまれですが、発症は急激で重症化しやすい点に注意が必要です。しもやま内科では、抗PD-1抗体薬投与患者さんの血糖モニタリングと、発症時の迅速な糖尿病治療を行っています。

免疫チェックポイント阻害薬とは

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、がん細胞が免疫システムから逃れる仕組みをブロックすることで、患者さん自身の免疫細胞ががんを攻撃する力を回復させる薬剤です。従来の抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)とは全く異なる作用機序を持ち、進行がんに対しても効果が期待できることから、がん治療の選択肢として広く使用されています。

代表的な薬剤としては以下のものがあります。

  • ニボルマブ(オプジーボ®):抗PD-1抗体。適応:悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、頭頸部癌、胃癌、肝癌など
  • ペムブロリズマブ(キイトルーダ®):抗PD-1抗体。適応:非小細胞肺癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、尿路上皮癌など
  • アテゾリズマブ(テセントリク®):抗PD-L1抗体
  • デュルバルマブ(イミフィンジ®):抗PD-L1抗体
  • イピリムマブ(ヤーボイ®):抗CTLA-4抗体

免疫チェックポイント阻害薬による1型糖尿病(ICI-DM)とは

ICI-DM(Immune Checkpoint Inhibitor-Induced Diabetes Mellitus)は、免疫チェックポイント阻害薬の副作用として発症する1型糖尿病です。自己免疫機序により膵臓のβ細胞が破壊され、インスリン分泌が急激に低下します。

特徴

  • 発症率:ニボルマブ投与例で約0.28%(まれだが重要な副作用)
  • 発症時期:投与開始後から数週間〜1年以上と幅広い。一定のパターンはない
  • 病型:劇症1型糖尿病または急性発症1型糖尿病が多い
  • 症状:口渇・多飲などの典型的高血糖症状を認めない「無症候性」の症例も多い
  • 重症度:発症が急激で、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)に至る症例が少なくない

なぜ発症するのか——メカニズム

免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞の抑制シグナルを解除することで抗腫瘍免疫を活性化します。しかしこの過程で、膵臓のβ細胞を攻撃する自己反応性T細胞も同時に活性化されることがあり、その結果、β細胞が破壊されて1型糖尿病が発症します。PD-1/PD-L1経路は膵島炎の制御に重要であり、この経路を阻害することで膵島炎が顕在化すると考えられています。

予防と早期発見のための推奨対応

日本糖尿病学会からは「免疫チェックポイント阻害薬使用患者における1型糖尿病の発症に関するRecommendation」が示されています。主な推奨事項は以下の通りです。

  1. 投与開始前:血糖値(空腹時血糖または随時血糖)を測定し、ベースラインを確認
  2. 投与開始後:来院ごとに高血糖症状(口渇・多飲・多尿・体重減少)の有無を確認
  3. 来院ごとに血糖値を測定(少なくとも随時血糖)
  4. 異常時:血糖値が高値を示した場合は、速やかに糖尿病専門医へコンサルテーション
  5. HbA1cの定期測定:1〜3ヶ月ごとにHbA1cを測定

発症時の治療

ICI-DMと診断された場合、インスリン治療が必要になります。発症の仕方や重症度に応じて治療方針を決定します。

  • ケトアシドーシス(DKA)を伴う場合:緊急入院し、インスリン持続静注と補液による治療を行います
  • DKAを伴わない場合:外来でインスリン導入が可能なケースもあります。CGM(持続血糖モニター)を併用しながら、基礎インスリンと追加インスリンの調整を行います

ICIによる糖尿病発症後も、ICI治療を継続できるケースがあります。糖尿病の管理を適切に行いながら、腫瘍治療を継続するかどうかは、主治医(腫瘍内科医・糖尿病専門医)と相談して決定します。

しもやま内科での取り組み

しもやま内科では、他科(腫瘍内科・呼吸器内科・皮膚科など)からのコンサルテーションに対応しています。糖尿病専門医・指導医がICI-DMの診断から治療開始、長期的な血糖管理まで一貫して行います。また、CGMやインスリンポンプなどの最新デバイスを用いた治療も提供しています。

ICI-DM(免疫チェックポイント阻害薬関連糖尿病)FAQ

オプジーボを使うと必ず糖尿病になりますか?
いいえ、発症率は約0.28%です。ほとんどの方は発症しませんが、定期検査でモニタリングすることが重要です。
どのような症状が出たら要注意ですか?
口渇、多飲、多尿、体重減少などの症状があれば要注意です。ただし、症状がないまま発症する場合もあるため、定期検査が重要です。
発症したらインスリン治療が必要ですか?
はい、1型糖尿病と診断された場合、インスリン治療が必要になります。当院では外来でのインスリン導入や、CGM・インスリンポンプを用いた治療も行っています。
ICI-DMはがん治療をやめる必要がありますか?
必ずしもやめる必要はありません。糖尿病の管理を適切に行いながらICI治療を継続できるケースが多いです。腫瘍内科医と糖尿病専門医で連携して方針を決定します。
ICI-DMは治りますか?
一度破壊された膵臓のβ細胞は再生しないため、寛解(インスリン不要となる状態)はまれです。しかし適切なインスリン治療により、血糖値を良好にコントロールし、日常生活に支障なく過ごすことが可能です。
CGMはICI-DMでも使えますか?
はい、CGMは血糖変動が大きいICI-DMの管理に非常に有用です。特に発症初期の血糖不安定期には、低血糖・高血糖の早期発見に役立ちます。
ICI-DMはどのくらいの頻度で血糖検査が必要ですか?
ICI投与開始前のベースライン測定に加え、投与開始後は来院ごとの血糖測定と、1〜3ヶ月ごとのHbA1c測定が推奨されています。
ICI治療中に糖尿病専門医を受診するタイミングは?
血糖値の上昇(随時血糖200mg/dL以上)や高血糖症状が出現した時点で、早めに糖尿病専門医に相談することをおすすめします。

監修:しもやま内科 院長 下山立志(総合内科専門医・糖尿病専門医・循環器専門医・甲状腺専門医)

主な参考資料:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」(南江堂、2024年5月30日発行)/日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本循環器学会・日本甲状腺学会・日本高血圧学会等の診療ガイドラインおよび厚生労働省の公表資料

作成・更新:2026-08-28|本ページは一般的な医学情報の提供を目的としたものです。診断・治療については受診のうえご相談ください。

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最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

06/03/2026