妊娠中の甲状腺結節|エコー検査(TI-RADS)・良性悪性の見分け方・穿刺(FNA)

甲状腺のことでお悩みの方へ

甲状腺は喉の下にある小さな臓器で、体の代謝(エネルギーの使い方)を調整する「甲状腺ホルモン」を作っています。妊娠・不妊治療中は、このホルモンのバランスが特に大切になります。

船橋市のしもやま内科では、甲状腺の血液検査とエコー検査を行い、必要に応じて薬の調整を行っています。

このページの役割

妊娠中に甲状腺の結節(しこり)が見つかったときの管理(検査のタイミング、穿刺吸引細胞診の適応)をまとめています。結節の検査方法と良性・悪性の見分け方は、関連ページで解説しています。

関連ページ

▼ 詳細な医療情報(医療従事者向け)

妊娠中の甲状腺結節:エコー所見でリスクを見極め、FNAは「必要性×安全性」で判断します

  • 第一選択は頸部超音波(被ばくなし)で、形態所見とリンパ節を評価します。
  • 悪性が強く疑われる所見・急速増大・圧迫症状がなければ、妊娠中は経過観察第2三半期以降のFNA、または産後評価が実務的です。
  • FNAが必要な場合は安全性を担保できる連携施設で実施し、結果に応じて妊娠中の方針(待機/第2三半期手術検討)を整理します。

このページで確認できること(外来3分)

  • 妊娠中に見つかった甲状腺結節のエコー評価ポイント(悪性疑い所見・リンパ節)
  • FNAを急ぐ条件/待てる条件、実施するなら第2三半期を中心に考える理由
  • 産科外来で迷いやすい紹介の目安(急速増大・嗄声・圧迫症状など)
  • 妊娠中に避ける検査(放射性ヨウ素関連、造影CTの扱い)

※本ページは医療者向け(for-obgyn)の初期対応メモです。患者さん向け説明は必要に応じて別紙化してください。

産婦人科外来の内科合併症 初期対応ハブへ戻る

1. まず何をするか:産科外来の初動(結節を見つけた当日)

⏱ 1分クイックリファレンス(迷うところだけ)

  • 頸部エコー(結節+リンパ節)を最優先:被ばくなしで形態評価。
  • TSH+FT4(必要に応じFT3):機能異常の併存を確認(結節評価と並行)。
  • 赤旗(急速増大/嗄声/圧迫症状/病的リンパ節)なら早期に内分泌へ相談。
  • 問診・診察:増大速度、疼痛、嗄声、嚥下障害、呼吸苦、頸部被ばく歴、家族歴(甲状腺癌/多発性内分泌腫瘍など)。
  • 検査(基本):TSH・FT4(必要に応じFT3)。
  • 画像(基本):頸部超音波(結節:サイズ・性状+頸部リンパ節)。

2. 頸部エコーで見るポイント(悪性疑い所見の拾い上げ)

妊娠中の結節評価は「形態(悪性疑い所見)+リンパ節」が軸です。スコアリング(TI-RADS等)まで厳密に行わなくても、まずは高リスク所見の有無に集中すると実務的です。

高リスクを疑う所見(例)

  • 微細石灰化、縦長(taller-than-wide)、不整な辺縁、被膜外進展疑い
  • 著明低エコー(参考)
  • 病的リンパ節(丸い、門部消失、嚢胞変性、石灰化など)

※体系化はATA結節ガイドラインやACR TI-RADSの白書が参考になります。

3. 妊娠中に避けたい検査/代替案

  • 放射性ヨードを用いる検査・治療(シンチ、RAI)は妊娠中は避けます。
  • 造影CTは原則「必要最小限」(緊急性・代替可否・施設方針で調整)。
  • 超音波で不十分で深部進展評価が必要な場合は非造影MRIを検討(個別判断)。

4. FNA(穿刺吸引細胞診)の時期と考え方

FNAは妊娠中でも適応があれば実施可能です。一方、緊急性が低い場合は第2三半期産後に回して安全性と実務性を両立させる戦略が一般的です。
(ATA 2017)PubMed

妊娠中でもFNAを積極的に検討

  • 高リスク所見(微細石灰化・縦長・不整形など)
  • 急速増大
  • 嗄声など神経症状(反回神経麻痺疑い)
  • 圧迫症状(呼吸苦・嚥下障害)
  • 病的リンパ節を伴う
FNAを待てる(産後/第2三半期以降で可)

  • 良性を示唆する所見でサイズ安定
  • 圧迫症状なし
  • リンパ節異常なし
  • 産後精査でも臨床的不利益が少ないと判断

細胞診で悪性が示唆されても、腫瘍の挙動・週数・合併症を踏まえ、妊娠中は経過観察で産後手術を選ぶこともあります。手術を行うなら第2三半期が検討されます。

5. どの時点で内科(内分泌)へ紹介するか:判断基準

以下のいずれかに該当する場合は、早期の相談・紹介が実務的です。

  • 高リスク所見(微細石灰化・縦長・不整形・被膜外進展疑い 等)
  • 病的リンパ節を疑う
  • 急速増大嗄声圧迫症状(呼吸苦・嚥下障害)
  • 機能異常(TSH/FT4の逸脱)を伴い、治療要否や鑑別に迷う
  • 「FNAを今やるべきか」「産後まで待つか」の意思決定が難しい

6. 当院で可能な検査・対応(産科連携の実際)

  • 採血:TSH、FT4、FT3、TPOAb、TgAb、TRAb など(週数・背景に応じて)。
  • 甲状腺エコー:当日実施可(結節性状+頸部リンパ節)。
  • FNA(細胞診)が必要な場合:安全性を担保できる連携医療機関へ紹介します。

🚨 緊急を要する場合: 妊娠中に急に息苦しくなる・声がかすれる・首のしこりが急に大きくなる場合はためらわずに 119番(救急車)へのご連絡をおすすめします。

ご紹介・ご相談(産科の先生方へ)

しもやま内科(甲状腺内科)
TEL:047-467-5500 FAX:047-467-7500
「妊娠中の甲状腺結節(エコー/FNA相談)」とお伝えください。

※ Web予約のご案内は行っていません。お電話にてご連絡ください。

実際の外来診療では、結節の「悪性疑い所見」と「増大速度・症状」をまず整理し、緊急度が低いケースほど妊娠経過を優先して、FNAの時期や実施施設(連携先)を一緒に決めています。

FAQ(妊娠中の甲状腺結節についてよくある質問)

妊娠中に甲状腺結節が見つかったらどうする?
妊娠中に甲状腺結節(しこり)が見つかった場合の流れ:(1)まず甲状腺エコーで結節の性状評価(TI-RADS分類)(2)エコーで悪性が疑われる場合(TI-RADS 4以上):穿刺吸引細胞診(FNA)を検討(3)エコーで良性が疑われる場合(TI-RADS 2〜3):経過観察、妊娠中は3〜6ヶ月ごとにエコー(4)細胞診で悪性・疑悪性の場合:手術が必要かどうか妊娠週数と悪性度を考慮して判断。妊娠中でも甲状腺エコー・FNAは胎児に影響なく安全に行えます。まずは慌てずに甲状腺専門医に相談しましょう。
妊娠中の甲状腺結節のエコー検査は安全?TI-RADSとは?
はい、妊娠中の甲状腺エコー(超音波検査)は安全とされています。超音波は放射線ではなく、胎児への影響はありません。TI-RADS(Thyroid Imaging Reporting and Data System)は甲状腺結節の悪性度をエコー所見で評価する国際分類です。評価項目:(1)結節の構成(嚢胞性・充実性)(2)エコー輝度(低エコー・高エコー)(3)形状(縦横比1以上=悪性疑い)(4)辺縁(不明瞭・突出)(5)エコー輝度(微小石灰化の有無)。合計スコアでTR1(良性)〜TR5(高度悪性疑い)に分類され、TR4以上で穿刺(FNA)を推奨します。
妊娠中に甲状腺の穿刺(FNA)はできる?胎児への影響は?
妊娠中の甲状腺穿刺吸引細胞診(FNA)は安全に行えます。重要なポイント:(1)局所麻酔のみで行うため全身麻酔不要→胎児への影響なし(2)穿刺針は細い(22〜25G)ため母親への負担も少ない(3)穿刺中は仰向けで行うが、妊娠後期は上半身を挙上して体位調整(4)エコーガイド下で行うため正確で安全(5)合併症(出血・感染)のリスクは極めて低い。妊娠中にFNAが推奨される場合:(1)TIRADS 4以上の悪性疑い結節(2)結節が急に増大(2mm/月以上)(3)頸部リンパ節腫大を伴う(4)反回神経麻痺の症状あり。結果が出るまで2〜3週間程度です。
妊娠中に甲状腺がんと診断されたらどうする?手術は?
妊娠中に甲状腺がん(主に乳頭がん)と診断された場合の対応は、がんの進行度と妊娠週数によって異なります:(1)妊娠初期(〜12週):低リスク乳頭がん(1cm未満、リンパ節転移なし)→経過観察、妊娠中期以降に再評価(2)妊娠中期(13〜27週):手術が必要な場合はこの時期が最も安全(3)妊娠後期(28週〜):帝王切開または自然分娩後、産後に手術。多くの妊娠中の甲状腺がんは低リスクで、妊娠中に急激に進行することは稀です。適切な管理で妊娠を継続しながら、産後に長期的なコントロール的手術を行う方針が一般的です。内分泌外科医・産婦人科・甲状腺専門医の連携が必要です。
妊娠中に良性の甲状腺結節は大きくなる?経過観察の頻度は?
妊娠中はホルモン変化(hCG・エストロゲン)の影響で甲状腺結節が増大・新たに出現することがあります。経過観察の目安:(1)良性(TI-RADS 2〜3):妊娠中は3〜6ヶ月ごとにエコーでサイズチェック(2)増大がない場合:産後も年に1回のエコー継続(3)増大(2mm/月以上)やエコー所見の悪化(石灰化出現・低エコー化)があればFNAを検討。良性結節のほとんどは妊娠・出産に影響しません。大きな結節(4cm以上)で気道圧迫症状(息苦しさ・飲み込みにくさ)がある場合は、産後の手術を検討します。
妊娠中の甲状腺結節の治療は薬でできる?
甲状腺結節は基本的に薬で縮小させることはできません。可能な対応:(1)良性結節:基本的には経過観察のみ。(2)機能性結節(甲状腺ホルモンを産生する結節でTSH低値):甲状腺機能亢進症を伴う場合は抗甲状腺薬やβ遮断薬で症状コントロール。(3)悪性疑い結節:手術(甲状腺切除)が必要。(4)大きな良性結節で圧迫症状がある場合:手術またはラジオ波焼灼術(RFA)を産後に検討。(5)チラーヂンSによる抑制療法:以前は行われていたが、現在は効果が限定的で推奨されない。結節の縮小を目的とした薬物療法はないため、定期的な経過観察が基本です。
妊娠中の甲状腺結節とがんの見分け方は?エコーでわかる?
甲状腺エコーである程度の鑑別は可能です。悪性を疑うエコー所見(TI-RADS高スコア因子):(1)低エコー(充実性の低エコー域)(2)縦横比>1(結節が縦に伸びている)(3)辺縁不明瞭・不整(4)微小石灰化(砂粒状石灰化)(5)内部血流の増加。良性を示唆する所見:(1)嚢胞性(液体で満たされている)(2)スポンジ状(蜂の巣構造)(3)粗大石灰化(卵殻状)(4)高エコー(5)辺縁明瞭。ただし、エコーのみで100%の診断はできず、悪性疑いの場合はFNAによる細胞診が必要です。エコーとFNAの組み合わせで診断精度は95%以上になります。
妊娠中の甲状腺結節の症状は?痛みはある?
甲状腺結節の多くは無症状で、健診やエコー検査で偶然見つかることがほとんどです。症状が出る場合:(1)頸部の違和感・圧迫感(2)飲み込みにくさ(大きな結節の場合)(3)息苦しさ(気管圧迫)(4)声のかすれ(反回神経圧迫)(5)首のしこり(自分で触れて気づく)。痛みは基本的にありません。痛みを伴う場合は甲状腺炎(亜急性甲状腺炎など)の可能性が高いです。妊娠中に首のしこりや違和感を感じたら、放置せずに甲状腺専門医を受診しましょう。早期発見・早期対応が、妊娠中も安心して過ごすための鍵です。
甲状腺結節がある人の妊娠・出産の注意点は?しもやま内科の対応は?
甲状腺結節がある方の妊娠・出産の注意点:(1)ほとんどの良性結節は妊娠・出産に影響しません(2)妊娠中はエコーで結節のサイズと性状を3〜6ヶ月ごとにチェック(3)増大傾向があれば追加検査(FNA)(4)産後も年に1回のエコー継続を推奨。しもやま内科の特徴:(1)院長が甲状腺専門医で妊娠中の甲状腺結節に精通(2)TIRADS分類を用いた正確なエコー評価(3)妊娠中のFNAも対応可能(必要時、連携病院紹介)(4)エコーを同日実施し即日結果説明(5)産婦人科との連携で一貫管理。船橋市で妊娠中の甲状腺結節の管理をお考えの方はお気軽にご相談ください。

関連ページ(産科×内分泌:初期対応)


参考文献

  • Alexander EK, et al. 2017 ATA Guidelines for the Diagnosis and Management of Thyroid Disease during Pregnancy and the Postpartum.
    PubMed
    Publisher
  • ATA Patient summary: Thyroid nodules during pregnancy
    公式ページ
  • Tessler FN, et al. ACR TI-RADS White Paper (2017).
    PDF
  • 甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024
    PDF
    Minds
  • 日本甲状腺学会:甲状腺疾患診断ガイドライン(医師向け)
    公式

監修:しもやま内科 院長 下山立志(総合内科専門医・糖尿病専門医・循環器専門医・甲状腺専門医)

最終更新日:2026年8月23日

産後の健康管理関連情報

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最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

01/10/2025