糖尿病内科

スルホニル尿素薬(SU剤)

25/09/2018

SU剤(スルホニルウレア薬)

SU剤の特徴

スルホニル尿素薬

スルホニル尿素薬(SU剤)

SU薬は膵臓のランゲルハンス島という組織にあるインスリンを分泌するβ細胞に直接働きかけて分泌を促進して血糖を下げます。インスリン分泌は持続的に促進されるため、比較的効果が高いです。その反面、本来はインスリン分泌が抑えられるはずの空腹時、絶食時にもインスリン分泌がなされてしまうため、低血糖のリスクは高くなります。

SU剤の作用

SU剤の作用

SU剤は、インスリンが分泌される膵臓のβ細胞・細胞膜のSU受容体(SUR1)に直接結合します。ATP依存性K+チャネルに隣接しており、これを閉じる作用があります。​ATP依存性K+チャネルを閉じることで、インスリンの分泌を促進します。​

SU受容体のサブタイプ

SU受容体のサブタイプ

SU受容体のサブタイプ

SU剤が作用する受容体SUR1は、膵β細胞の他、大脳皮質や視床下部に分布しています。

SUR2は心筋、骨格筋、平滑筋、血管平滑筋に分布しています。特に心筋に発現しているSUR2Aは虚血プレコンディショニングという心筋保護作用に関わっていると考えられています。

心筋のKATPチャネル(SUR2A)は通常はほとんど閉口されていますが、心筋が虚血状態(心筋内ATP濃度低下)となったときには、KATPチャネルが開口することで心筋収縮力を低下させて心筋を保護します。これを、虚血プレコンディショニングといいますが、心筋のSUR2Aに親和性をもつSU薬は心筋KATPチャネルの開口を阻害し、心筋障害を助長してしまう可能性があります。

SU剤の分類

SU剤の分類

SU剤の分類

登場時期から、第1世代、第2世代、第3世代に分類されます。

第1世代は古典的薬剤で、臨床ではもはやほとんど使用されなくなっています。​

第2世代は効果が強く、作用時間が非常に長くなっています。低血糖の危険が高いのが弱点です。​インスリン分泌促進作用が強くかつ長い第2世代SU剤のグリベンクラミドは低血糖のリスクが高いため、最近では推奨されなくなってきています。虚血プレコンディショニングを抑制するため、心筋虚血のある患者さんに使用する際には注意が必要です。逆にグリクラザイドは膵SUR1受容体に選択性が高いという報告があり1)、心筋梗塞など虚血性心疾患の既往のある患者さんに対して安全性が高い可能性があります。

第3世代の代表格のグリメピリドは作用がマイルドでインスリン抵抗性改善作用もあり、使いやすくなっています。虚血プレコンディショニングを抑制しないという報告があり2)、虚血性心疾患の既往のある患者さんに対して安全性が高い可能性があります。

グリメピリドは虚血プレコンディショニングを抑制しない

グリメピリドは虚血プレコンディショニングを抑制しない

1) Mortality and cardiovascular risk associated with different insulin secretagogues compared with metformin in type 2 diabetes, with or without a previous myocardial infarction: a nationwide study.
Eur Heart J. 2011 Aug;32(15):1900-8.

2) Sulfonylureas and ischaemic preconditioning; a double-blind, placebo-controlled evaluation of glimepiride and glibenclamide.
Eur Heart J. 1999 Mar;20(6):439-46.

SU剤の副作用

SU剤の副作用として最も注意が必要なものは低血糖です。特に相対力価の高いもの、作用持続時間の長いもので発生頻度が高いので注意が必要です。軽度の低血糖の発生頻度は服用者の数%、入院を要する重症低血糖の頻度は1,000人・年あたり0.2-0.4との報告があります。また、糖尿病薬以外の薬剤との併用においても、相互作用により低血糖の頻度、強度を増加させる場合があるため注意が必要です。高齢者では低血糖のリスクが高いため、SU剤を使用する場合、作用持続時間の短いものが推奨されます。また、腎機能・肝機能障害の進行した患者でも低血糖の危険性が増大するため、ほとんどのSU剤は高度の腎機能・肝機能障害者への投与は禁忌となっています。また、高インスリン血症をきたしやすいことから、体重が増加しやすいこともSU剤の短所の1つです。

低血糖を助長する可能性がある薬剤

NSAIDs、ワルファリン、β遮断薬、MAO阻害薬・・・などに注意しましょう。

DPP-4阻害薬との併用時には量を少なくする

SU剤とDPP-4阻害薬の併用

SU剤とDPP-4阻害薬の併用

SU剤と併用される機会の多い薬剤にDPP-4阻害薬があります。併用によって効果が増強し、低血糖をきたしやすくなります。そのため、以下のように減量しましょう。

第2世代:グリクラザイド・グリベンクラミド​

グリクラザイド:40㎎/日を超えて使用している場合は40mg/日以下に減量する。​

グリベンクラミド:1.25mg/日を超えて使用している場合は1.25㎎/日以下に減量する。​

第3世代:グリメピリド

2mg/日を超えて使用している場合は2mg/日以下に減量する。

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