「先生、内分泌って何が関係ある病気なんですか?」——先日、甲状腺検査を受けた50代の女性患者さんが、不思議そうに尋ねられました。「内分泌」という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどんな病気が含まれるのか、意外とわからないものです。実は、甲状腺・副腎・下垂体・副甲状腺・膵臓などのホルモンに関係する病気は、血糖・血圧・骨・体重・疲労・月経など、体のあらゆる部分に影響を与えることがあります。
内分泌疾患(ホルモンの病気)について
内分泌疾患(ホルモンの病気)には、甲状腺疾患・糖尿病・副腎疾患・下垂体疾患・性ホルモン異常などがあります。症状は全身に現れるため、早期発見・早期治療が重要です。疲れやすさ・体重変化・動悸・イライラなど、気になる症状があれば早めの受診をおすすめします。
🔎 要点まとめ
- 内分泌疾患は甲状腺・副腎・下垂体・副甲状腺・性腺など、ホルモンを分泌する臓器の異常によって全身に症状が現れる病気の総称です。
- 代表的な疾患の症状・検査・治療を臓器別に一覧で比較できます。
- しもやま内科では、初診当日の採血や甲状腺エコーなど迅速な評価に対応。予約はお電話で受け付けています。
内分泌疾患とは?—ホルモンの乱れが全身に及ぼす影響
内分泌疾患とは、ホルモンを分泌する臓器(内分泌腺)に何らかの異常が生じ、ホルモンの過剰分泌または不足が起こることで、代謝・成長・生殖・血圧・体温調節など全身の機能に影響を及ぼす病気の総称です。
人体の主要な内分泌腺には、視床下部・下垂体・甲状腺・副甲状腺・副腎・膵臓(ランゲルハンス島)・卵巣・精巣があります。これらは互いに密接に関連し合い、いわば「全身の調整役」として働いています。
視床下部-下垂体-標的器官の関係
内分泌の司令塔は視床下部と下垂体です。視床下部がホルモン分泌の指令を出し、下垂体が各臓器(甲状腺・副腎・性腺)に信号を送ります。各臓器から分泌されたホルモンが血中濃度を一定に保つよう、視床下部・下垂体にフィードバックされます。この精巧なシステムのどこかに異常が生じると、全身にさまざまな症状が現れます。
視床下部-下垂体-標的器官の関係図
視床下部
│
▼
下垂体(前葉) ──┬── TSH ──▶ 甲状腺(T3・T4)
├── ACTH ─▶ 副腎皮質(コルチゾール)
├── LH/FSH ─▶ 性腺(エストロゲン・テストステロン)
└── GH ──▶ 全身(IGF-1を介して成長・代謝)
各ホルモンは標的器官で作用した後、その産生量に応じて視床下部・下垂体にフィードバック(抑制または促進)されます。
甲状腺の病気
甲状腺はのどぼとけの下に位置する蝶形の臓器で、代謝を調整する甲状腺ホルモン(T3・T4)を分泌します。甲状腺疾患は内分泌疾患の中でも最も患者数が多く、日本人の約10人に1人が何らかの甲状腺疾患を抱えるともいわれています。
バセドウ病(Basedow病)
症状:動悸・息切れ・手指の震え・発汗過多・体重減少・イライラ・眼球突出・頻脈
検査:血中TSH低値・FT3/FT4高値・TSH受容体抗体(TRAb)陽性・甲状腺エコーで血流増加
治療:抗甲状腺薬(メルカゾール®・プロパジール®)、放射性ヨウ素内用療法、甲状腺亜全摘術
橋本病(慢性甲状腺炎)
症状:倦怠感・寒がり・体重増加・むくみ・便秘・皮膚乾燥・脱毛・抑うつ気分
検査:血中TSH高値・FT4低値・抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体陽性・甲状腺エコーでびまん性低エコー
治療:甲状腺ホルモン補充療法(チラーヂンS®)、定期的な甲状腺機能モニタリング
甲状腺結節(しこり)
症状:多くは無症状。のどにしこりを触れる・飲み込みにくさ・声のかすれ
検査:甲状腺エコー(良性・悪性の鑑別)、穿刺吸引細胞診(必要時)
治療:良性なら経過観察、悪性疑いなら手術
甲状腺炎(亜急性甲状腺炎・無痛性甲状腺炎など)
症状:首の痛み・発熱・甲状腺の圧痛(亜急性)→一時的な甲状腺機能亢進→低下
検査:CRP上昇・甲状腺エコーで低エコー領域・RI摄取低下
治療:消炎鎮痛薬(亜急性)、経過観察またはβ遮断薬(一過性亢進期)
副甲状腺(上皮小体)の病気
副甲状腺は甲状腺の裏側に4つある米粒大の臓器で、血中のカルシウム濃度を調整する副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌します。
原発性副甲状腺機能亢進症
症状:高カルシウム血症による倦怠感・食欲不振・吐き気・便秘・多尿・腎結石・骨粗鬆症
検査:血中カルシウム高値・PTH高値・骨密度低下・腎エコー
治療:外科的摘出(副甲状腺腺腫の場合)、シナカルセト(瀕腺腫非適応例)
副甲状腺機能低下症
症状:低カルシウム血症による手指・口囲のしびれ、テタニー(筋肉のけいれん)、不整脈
治療:活性型ビタミンD製剤・カルシウム補充
副腎の病気
副腎は両方の腎臓の上に位置する小さな臓器で、皮質(コルチゾール・アルドステロン・副腎アンドロゲン)と髄質(アドレナリン・ノルアドレナリン)の2層構造を持ち、生命維持に不可欠なホルモンを分泌します。
原発性アルドステロン症
症状:高血圧(特に治療抵抗性)・低カリウム血症による脱力感・筋肉痛・多飲多尿
検査:血中アルドステロン/レニン比(ARR)高値・塩化ナトリウム負荷試験・副腎CT
治療:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(エプレレノン・スピロノラクトン)、腹腔鏡下副腎摘出術(腺腫の場合)
クッシング症候群
症状:満月様顔貌・中心性肥満・皮膚線条・易出血性・高血圧・糖尿病・骨粗鬆症・月経異常
検査:日内コルチゾール変動消失・低用量デキサメタゾン抑制試験・ACTH測定・副腎CT/MRI
治療:原因別(下垂体腺腫→経蝶形骨洞手術、副腎腺腫→腹腔鏡下副腎摘出術、薬剤性→ステロイド漸減)
褐色細胞腫(パラガングリオーマ)
症状:発作性の激しい頭痛・動悸・発汗・高血圧・不安感・顔面蒼白
検査:血中/尿中カテコラミン高値・MIBGシンチグラフィ・CT/MRI
治療:α遮断薬(ドキサゾシンなど)→β遮断薬による術前管理後、外科的摘出
副腎偶発腫(インシデンタローマ)
症状:無症状(CTやMRIで偶然発見される)
検査:ホルモン機能評価(コルチゾール・アルドステロン・カテコラミン・性ホルモン)・MRI・経過観察用CT
治療:機能性腫瘍または径4cm超や増大傾向で手術。非機能性かつ小さければ経過観察
▶ クッシング症候群の詳細 / アジソン病の詳細 / 副腎腫瘍の詳細
下垂体の病気
下垂体は脳の底部にあるエンドウ豆大の臓器で、「ホルモンの司令塔」として全身の内分泌腺をコントロールしています。
下垂体腺腫(非機能性・機能性)
症状:頭痛・視野障害(両耳側半盲)・ホルモン過剰または低下による全身症状
検査:頭部MRI・各種ホルモン負荷試験・視野検査
治療:経蝶形骨洞手術、薬物療法(機能性腺腫の種類による)、放射線治療
プロラクチノーマ
症状:女性:月経不順・乳汁漏出・不妊/男性:性欲低下・勃起障害・女性化乳房
検査:血中プロラクチン高値・頭部MRI
治療:ドパミン作動薬(カベルゴリン・ブロモクリプチン)
先端巨大症(成長ホルモン分泌過剰)
症状:手足の肥大・顔貌変化(額・鼻・下顎の突出)・睡眠時無呼吸・関節痛・耐糖能異常
検査:IGF-1高値・75gOGTTでGH抑制不良・頭部MRI
治療:経蝶形骨洞手術、ソマトスタチンアナログ(オクトレオチド)、GH受容体拮抗薬(ペグビソマント)
ACTH産生腫瘍(クッシング病)
症状:上記クッシング症候群と同様(満月様顔貌・中心性肥満など)
検査:ACTH高値+コルチゾール高値・CRH負荷試験・下垂体静脈サンプリング・頭部MRI
治療:経蝶形骨洞手術が第一選択
性ホルモン異常
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
症状:月経不順(稀発月経・無月経)・多毛・にきび・肥満・不妊・インスリン抵抗性
検査:血中LH/FSH比高値・遊離テストステロン高値・腟エコーで多数の卵胞
治療:生活習慣改善(減量)・インスリン抵抗性改善薬(メトホルミン)・排卵誘発・低用量ピル
男性更年期障害(LOH症候群)
症状:性欲低下・勃起障害・倦怠感・抑うつ・筋力低下・ほてり・睡眠障害
検査:血中遊離テストステロン低値・問診票(AMSスコア)
治療:テストステロン補充療法(保険適用は限定的)、生活習慣改善
高プロラクチン血症
症状:女性:月経不順・乳汁漏出・不妊/男性:性欲低下・勃起障害
検査:血中プロラクチン高値・甲状腺機能(原発性甲状腺機能低下症による二次性も)・頭部MRI
治療:原因精査(薬剤性・下垂体腫瘍など)に基づく。ドパミン作動薬が有効
疾患別 症状・検査・治療 一覧表
| 疾患名 | 主な症状 | 主な検査 | 治療の概要 |
|---|---|---|---|
| バセドウ病 | 動悸・体重減少・手指振戦・眼球突出 | TSH・FT3/FT4・TRAb・甲状腺エコー | 抗甲状腺薬・RI内用療法・手術 |
| 橋本病 | 倦怠感・寒がり・体重増加・むくみ | TSH・FT4・抗TPO抗体・エコー | チラーヂンS®補充 |
| 原発性アルドステロン症 | 高血圧・低K血症・脱力感 | ARR・NaCl負荷試験・副腎CT | エプレレノン・腹腔鏡下摘出 |
| クッシング症候群 | 満月様顔貌・中心性肥満・皮膚線条 | コルチゾール日内変動・DST・ACTH | 手術(原因部位摘出) |
| 褐色細胞腫 | 発作性頭痛・動悸・発汗・高血圧 | カテコラミン・MIBG・CT/MRI | α遮断後β遮断→手術 |
| 下垂体腺腫 | 頭痛・視野障害・ホルモン異常 | 頭部MRI・ホルモン負荷試験 | 経蝶形骨洞手術・薬物療法 |
| プロラクチノーマ | 月経不順・乳汁漏出・性機能低下 | プロラクチン・頭部MRI | カベルゴリンなど |
| 先端巨大症 | 手足肥大・顔貌変化・睡眠時無呼吸 | IGF-1・75gOGTT・頭部MRI | 手術・ソマトスタチンアナログ |
| PCOS | 月経不順・多毛・不妊・肥満 | LH/FSH・テストステロン・エコー | 減量・メトホルミン・排卵誘発 |
| 男性更年期障害 | 性欲低下・倦怠感・抑うつ・ほてり | 遊離テストステロン・AMSスコア | テストステロン補充・生活改善 |
受診の目安チェックリスト
以下の項目に複数当てはまる場合は、内分泌疾患の可能性があります。
- ☐ 理由なく体重が増えた/減った(3ヶ月で5kg以上)
- ☐ 疲れやすく、休んでも回復しない
- ☐ 動悸や息切れがする
- ☐ 手の震えがある
- ☐ 寒がりになった/暑がりになった
- ☐ のどにしこりを触れる
- ☐ 血圧が高い(特に薬が効きにくい)
- ☐ 月経が不順になった(女性)
- ☐ 性欲や性機能の低下を感じる
- ☐ イライラしやすくなった/気分の落ち込みがある
- ☐ 顔つきや手足が大きくなった気がする
- ☐ どんどん毛が抜ける/肌が乾燥する
3つ以上当てはまる方は、一度内分泌内科(または甲状腺内科)での受診をご検討ください。
FAQ(よくある質問)
Q. 内分泌疾患とは何ですか?
内分泌疾患とは、ホルモンを分泌する臓器(内分泌腺)の異常により、ホルモンの過剰または不足が生じ、全身にさまざまな症状を引き起こす病気の総称です。代表的なものに甲状腺疾患、糖尿病、副腎疾患、下垂体疾患、性ホルモン異常などがあります。
Q. 内分泌の病気の症状は?
症状は原因となるホルモンによって異なります。体重変化(増加または減少)、倦怠感、動悸、発汗、寒がり・暑がり、月経不順、高血圧、イライラ、抑うつなど、全身に多彩な症状が現れます。症状が漠然としていることが多いため、見逃されやすいのも特徴です。
Q. ホルモン異常の検査方法は?
血液検査で各ホルモンの値を測定するのが基本です。甲状腺ホルモン(TSH・FT3・FT4)、副腎ホルモン(コルチゾール・ACTH・アルドステロン)、性ホルモン(LH・FSH・テストステロン・エストラジオール)、プロラクチン、成長ホルモン(IGF-1)などを測定します。必要に応じて負荷試験(抑制試験や刺激試験)や画像検査(エコー・CT・MRI)も行います。
Q. 内分泌内科は何科ですか?
日本では「内分泌内科」または「糖尿病・内分泌内科」と呼ばれる診療科が該当します。しもやま内科では、総合内科専門医・甲状腺専門医・糖尿病専門医が内分泌疾患全般の診療を行っています。かかりつけ医から紹介状を持参いただくことも可能ですが、直接のご予約も受け付けています。
Q. 甲状腺・副腎・下垂体の関係は?
視床下部-下垂体-標的器官の軸(HPA軸・HPT軸・HPG軸)と呼ばれる関係にあります。下垂体が甲状腺刺激ホルモン(TSH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、性腺刺激ホルモン(LH/FSH)を分泌し、それぞれ甲状腺・副腎・性腺をコントロールしています。これらのどこかに異常が生じると連鎖的に他の臓器にも影響が及びます。
Q. 疲れやすいのはホルモンのせい?
はい、可能性があります。甲状腺機能低下症(橋本病)では強い倦怠感が特徴的です。また、副腎不全(アジソン病)や成長ホルモン分泌不全症でも慢性的な疲労感が現れます。十分な睡眠をとっても疲れがとれない、日中強い眠気がある場合は、ホルモン検査を検討する価値があります。
Q. 体重増加はホルモン異常?
甲状腺機能低下症では代謝が低下し体重増加やむくみをきたします。クッシング症候群では中心性肥満(体幹部に脂肪がつく)が特徴です。また、PCOSではインスリン抵抗性により肥満を伴いやすくなります。ただし、体重増加の多くは生活習慣が原因であるため、医師の診断が重要です。
Q. 内分泌疾患は治りますか?
多くの内分泌疾患は適切な治療で症状のコントロールが可能です。バセドウ病は薬物治療で寛解(症状が落ち着いた状態)を目指せます。橋本病や副腎不全はホルモン補充療法で普通の生活が送れます。下垂体腺腫や副腎腫瘍は手術で治癒が期待できます。早期発見・早期治療が鍵です。
Q. 内分泌の薬の副作用は?
ホルモン補充療法は適切な量であれば重篤な副作用は稀です。抗甲状腺薬(メルカゾール®)では初期に無顆粒球症(発熱・のどの痛み)という重大な副作用に注意が必要です(初回処方時に説明します)。ステロイド薬の長期使用では感染症リスク増加・骨粗鬆症・糖尿病悪化などに注意します。
Q. 内分泌外来では何をしますか?
初診では詳しい問診(症状・経過・家族歴)と必要な血液検査・尿検査を行います。甲状腺が疑われる場合は同日中に甲状腺エコーを実施可能です。検査結果に基づいて診断し、治療方針(薬物療法・手術紹介・経過観察など)を決定します。定期的な通院でホルモン値のコントロール状態を確認しながら治療を継続します。
参考文献・ガイドライン
- 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診療ガイドライン2023」
- 日本内分泌学会「内分泌疾患診療マニュアル」
- 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2025」
- 日本老年医学会「高齢者甲状腺疾患診療ガイドライン」
- 米国甲状腺学会(ATA)「甲状腺機能亢進症・機能低下症ガイドライン」
⚡ どのタイミングで受診すればいい?
🚨 すぐに救急受診(119)
- 意識障害がある
- 呼吸が苦しい
- 激しい頭痛・胸痛
- けいれんが止まらない
📅 早めに予約を
- 動悸・息切れが続く
- 体重が急に増減した
- 強い倦怠感が続く
- のどのしこりが気になる
📋 通常予約でOK
- 健康診断で甲状腺の数値を指摘された
- 血液検査でホルモン値が異常だった
- 定期的な経過観察・処方
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👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。年間約480件の甲状腺診療実績を有します。
診療時間・アクセス
診療時間
月・火・木・金:9:00~12:00 / 14:45~17:30
土:9:00~12:00(水・日・祝休診)
アクセス
住所:千葉県船橋市芝山4-33-5
最寄駅:高根木戸駅(京成電鉄松戸線)・飯山満駅(東葉高速鉄道線)各徒歩15分
駐車場:7台完備(予約不要・無料)
電話:047-467-5500
最終更新日:2026-08-26
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。