副甲状腺ホルモン(PTH)と副甲状腺機能亢進症|高カルシウム血症・症状・検査・治療

🔊 このページの要点

副甲状腺はカルシウムの量を調節する臓器です。カルシウムが高すぎたり低すぎたりすると、だるさ・のどの渇き・尿の回数が多い・骨がもろくなる・手足のしびれやけいれんなど様々な症状が出ることがあります。副甲状腺機能亢進症はカルシウムが高くなりPTHも高くなる病気で、原因の多くは良性の腫瘍(副甲状腺腺腫)です。このページでは、高カルシウム血症・PTH高値の原因と検査の流れ、しもやま内科での対応について専門医がわかりやすく解説します。

parathyroid gland disorders and calcium metabolism 副甲状腺とカルシウム代謝

カルシウムが高い・PTHが高いのはなぜ?原因と見分け方

健康診断や人間ドックの血液検査で「カルシウム(Ca)が高い」と言われると、多くの方がびっくりされます。しかし、指摘を受けても症状がないことも多く、放置してしまいがちです。ここでは、カルシウムが高い・PTHが高いときに考えられる原因と、その見分け方についてご説明します。

カルシウムだけ高い場合とPTHも高い場合の違い

高カルシウム血症の原因を調べるにあたって、最も大切なのが副甲状腺ホルモン(PTH)の値です。カルシウムとPTHをセットで測ることで、原因を大きく絞り込むことができます。

  • カルシウム高+PTH高:副甲状腺機能亢進症(原発性または三次性)が代表的な原因です。副甲状腺が過剰に働いて、骨や腎臓からカルシウムを血液中に増やし続けています。
  • カルシウム高+PTH低:副甲状腺以外の原因です。悪性腫瘍(特に肺がん・乳がん・血液のがんなど)からカルシウムを上げる物質(PTHrP)が出ている場合や、過剰なビタミンD摂取、サルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患、甲状腺機能亢進症などが考えられます。

つまり、「カルシウムとPTHの組み合わせ」が、原因を探す最初の手がかりになります。

PTHが高いときの主な原因

  • 原発性副甲状腺機能亢進症:副甲状腺自体に良性の腫瘍(副甲状腺腺腫など)ができ、必要以上にPTHが分泌されるタイプ
  • 二次性副甲状腺機能亢進症:慢性腎臓病(CKD)やビタミンD不足などによりカルシウムが下がり、その代償としてPTHが高くなるタイプ
  • 三次性副甲状腺機能亢進症:二次性の状態が長年続いた結果、副甲状腺が自律的に働くようになり、カルシウムが高くなってしまうタイプ
  • 家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(FHH):まれな遺伝性の疾患で、無害のことが多いが専門的な鑑別が必要

副甲状腺とカルシウムの関係

副甲状腺は、甲状腺のうしろ側にある小さな臓器で、通常は4つあります。ここから分泌される副甲状腺ホルモン(PTH)が、血液中のカルシウムの量を細かく調節しています。

副甲状腺ホルモン(PTH)の主な働き

  • 骨からカルシウムを血液中に動員する
  • 腎臓でカルシウムを再吸収し、尿に出ていく量を減らす
  • 活性型ビタミンDを増やし、腸からのカルシウム吸収を高める

この働きにより、血液中のカルシウム値が低くなるとPTHが増え、高くなるとPTHが抑えられるようになっています。つまり、カルシウムとPTHはシーソーのような関係にあります。

カルシウム・リン・ビタミンDのバランス

カルシウムの調節には、PTHだけでなくリンビタミンD、腎臓の働きも深く関わっています。慢性腎臓病(CKD)があるとリンがたまりやすく、ビタミンDが不足し、結果としてPTHが高くなることがあります。ビタミンDは腸からのカルシウム吸収に欠かせないホルモン様物質で、不足するとカルシウムが低くなり、それを補おうとPTHが上がります。

緊急度の目安:すぐに受診すべきケースは?

高カルシウム血症の中には、緊急に治療が必要な場合があります。以下のような症状がある方は、遠慮なく当院までご相談ください。

⚠️ すぐに受診・119番(緊急性が高い)

  • 意識がもうろうとする・意識を失いそうになる
  • 強い吐き気や繰り返す嘔吐
  • 極度の脱力感で動けない
  • 手足のけいれん(テタニー)で呼吸も苦しい

🕒 なるべく早く通常外来を受診(数日中)

  • だるさ・倦怠感が続く
  • のどの渇きや尿の回数が多い
  • 便秘や食欲低下が目立つ
  • 健診でカルシウムが高く、PTHも高いと言われた
  • 手足のしびれやこむら返りを繰り返す

📅 通常予約でよい(日をあけて)

  • 自覚症状はないが、健診でカルシウムが軽度高いと言われた
  • 骨粗鬆症の定期検査のついでに相談したい

副甲状腺で起こる主な病気

副甲状腺機能亢進症

PTH過剰により高カルシウム血症・骨粗鬆症・腎結石が起こる病気。多くは副甲状腺腺腫が原因です。

副甲状腺機能低下症

PTH不足により低カルシウム血症が起こる病気。手術後や自己免疫性が原因のことがあります。

よくみられる異常①:高カルシウム血症と副甲状腺機能亢進症

血液中のカルシウムが基準値より高い状態を高カルシウム血症といいます。原因はさまざまですが、代表的なもののひとつが副甲状腺機能亢進症です。

原発性副甲状腺機能亢進症(腺腫など)

副甲状腺自体に良性の腫瘍(副甲状腺腺腫など)ができると、PTHが必要以上に分泌され、カルシウムが高くなります。比較的若い方から高齢の方まで幅広い年齢でみられますが、特に閉経後の女性に多いとされています。多くは単発の腺腫ですが、まれに複数の腺が腫れることや、副甲状腺癌というごくまれな悪性腫瘍による場合もあります。

二次性・三次性副甲状腺機能亢進症(慢性腎臓病など)

  • 二次性副甲状腺機能亢進症:慢性腎臓病(CKD)などが原因で、低カルシウム・高リンの状態が続き、その「二次的な反応」としてPTHが高くなるタイプ。カルシウム自体は正常〜低めのことが多い
  • 三次性副甲状腺機能亢進症:二次性の状態が長年続いた結果、副甲状腺が自律的に働くようになり、カルシウムが高くなってしまうタイプ

高カルシウム血症やPTH高値で出やすい症状

  • だるさ、倦怠感
  • のどの渇きや尿の回数が多い(多飲・多尿)
  • 便秘・食欲低下・吐き気
  • 骨がもろくなり、骨粗鬆症や骨折のリスクが上がる
  • 尿路結石(腎結石・尿管結石)

よくみられる異常②:低カルシウム血症と副甲状腺機能低下症

カルシウムが基準値より低い状態を低カルシウム血症といいます。副甲状腺ホルモンが十分に出ていない副甲状腺機能低下症のほか、ビタミンD不足やマグネシウム不足なども原因になります。

手足のしびれ・こむら返り・テタニー

  • 手や口のまわりのピリピリしたしびれ
  • ふくらはぎのこむら返り
  • 手がこわばって開きにくい、筋肉のつっぱり感
  • 重症では全身のけいれん(テタニー)

甲状腺術後などの副甲状腺機能低下症

甲状腺の手術後に、副甲状腺が一時的または持続的に働きにくくなり、低カルシウム血症をきたすことがあります。この場合は、カルシウム製剤やビタミンD製剤(活性型ビタミンD)による内服治療が必要になることがあります。

副甲状腺疾患の症状チェック

以下の症状がある場合は、副甲状腺疾患の可能性があります:

  • 高カルシウム血症:倦怠感、便秘、多尿、腎結石
  • 低カルシウム血症:手足のしびれ・こむら返り・けいれん
  • 骨症状:骨粗鬆症、骨折、骨痛
  • 精神神経症状:うつ、認知機能低下、記憶障害

副甲状腺・カルシウムの検査:当院で行う評価

血液検査

  • 血清カルシウム・補正カルシウム
  • リン
  • 副甲状腺ホルモン(PTH)
  • ビタミンD(25(OH)D など)
  • クレアチニン・eGFRなど腎機能
  • アルブミン、ALP など

画像検査

  • 頸部エコー:副甲状腺腺腫などの有無を確認
  • 骨密度検査:骨粗鬆症になっていないか評価
  • 腎・尿路のエコー:尿路結石の有無を確認

副甲状腺機能亢進症の治療と経過観察

副甲状腺機能亢進症の治療方針は、カルシウムの高さ・症状の有無・骨密度・腎機能・年齢などを総合して決めます。

手術(副甲状腺摘出術)が検討される場合

  • カルシウムが基準値より明らかに高い
  • 腎結石がある、または腎機能が低下している
  • 骨粗鬆症・骨密度低下が明らかで骨折リスクが高い
  • 高カルシウム血症による症状が目立つ

このような場合は、CTやシンチグラフィーなどで腫瘍の場所を特定したうえで、外科(甲状腺・内分泌外科)へご紹介します。

経過観察・内服治療が可能な場合

症状がなく、カルシウムの高さが軽度で、骨や腎臓に異常がない場合は、定期的な血液検査と骨密度測定による経過観察で対応することもあります。また、骨折リスクが高い骨粗鬆症を合併している場合などには、ビタミンD製剤の補充や、必要に応じて薬物治療を検討します。

二次性・三次性の場合

慢性腎臓病による二次性副甲状腺機能亢進症では、リンの摂取制限やリン吸着薬、活性型ビタミンD製剤などで腎機能の進行に応じた治療を行います。腎臓内科と連携して管理することが大切です。

しもやま内科で対応できること・紹介の流れ

  • 血液検査:カルシウム、リン、PTH、ビタミンD
  • 骨密度測定(DXA):骨粗鬆症の評価
  • 画像検査の紹介:副甲状腺エコー、シンチグラフィー
  • 治療:経過観察、薬物治療、手術紹介

初診ではこれまでの検査結果や健診結果をお持ちいただけると、より正確に評価できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 健診でカルシウムが少し高いと言われました。すぐに治療が必要ですか?

A. 一度だけの軽度の高値で、症状もない場合、すぐに治療が必要とは限りません。再検査で本当に高い状態が続いているか、アルブミンやPTH、腎機能、ビタミンDなどを合わせて評価することが大切です。

Q2. 副甲状腺機能亢進症は必ず手術になりますか?

A. すべての方が手術になるわけではありません。カルシウムの高さ、症状の有無、骨密度、腎機能、年齢などを総合して判断します。条件によっては、経過観察や内服治療で様子を見る場合もあります。

Q3. 骨粗鬆症と副甲状腺の病気には関係がありますか?

A. はい、関係があります。PTHが高い状態が続くと、骨からカルシウムが溶け出しやすくなり、骨粗鬆症の悪化につながると考えられています。

Q4. 副甲状腺機能亢進症の検査方法を教えてください

A. まず血液検査でカルシウム、PTH、リン、ビタミンD、腎機能を確認します。その後、原因を特定するために頸部エコーや骨密度測定、必要に応じてCT・シンチグラフィーなどを行うことがあります。

Q5. PTHの基準値はどれくらいですか?

A. PTH(intact PTH)の基準値は施設によって異なりますが、おおむね10〜65 pg/mL(または15〜65 pg/mL)程度が目安です。カルシウムとセットで評価し、基準値の上限を超えている場合や、カルシウムが高いのにPTHが抑えられていない場合は注意が必要です。

Q6. 副甲状腺機能亢進症の食事で気をつけることはありますか?

A. まずはご自身でカルシウムを過度に制限しないことが大切です(過度な制限はかえってPTHを上げることがあります)。水分をしっかり摂り、慢性腎臓病がある場合はリンの多い食品や塩分の摂りすぎに注意しましょう。食事制限が必要かは血液検査の結果に基づいて個別に判断します。

Q7. 副甲状腺機能低下症の治療方法はありますか?

A. はい。カルシウム製剤と活性型ビタミンD製剤を中心とした内服治療で、血液中のカルシウムを目標範囲に保ちます。定期的な血液検査で薬の量を調整しながら、長期的に管理することが一般的です。

Q8. 高カルシウム血症はがんと関係がありますか?

A. まれですが、可能性はあります。悪性腫瘍(肺がん・乳がん・腎細胞がん・血液のがんなど)がカルシウムを上げる物質(PTHrP)を産生して、高カルシウム血症になることがあります。PTHが低いのにカルシウムが高い場合は、がんとの関連を含めて精査が必要です。

Q9. 副甲状腺の病気とビタミンDの関係を教えてください

A. ビタミンDは腸からのカルシウム吸収に欠かせません。ビタミンD不足が続くとカルシウムが上がりにくくなり、それを代償してPTHが高くなることがあります(二次性副甲状腺機能亢進症)。逆にあまりに過剰なビタミンDは高カルシウム血症の原因になることがあり、バランスが重要です。

Q10. 手足のしびれやこむら返りは、低カルシウムが原因のことがありますか?

A. はい、その可能性があります。低カルシウム血症では、手や口のまわりのしびれ、筋肉のつっぱり、こむら返り、けいれんなどがみられることがあります。


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最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

08/03/2026