妊娠糖尿病と糖尿病合併妊娠|診断基準・管理・出産後のケア

🤰 妊娠糖尿病(GDM)の検査と治療

妊娠中に初めて高血糖が見つかった場合の検査・治療について詳しく解説しています:


糖尿病と妊娠の2つのパターン

糖尿病と妊娠には、大きく分けて2つのパターンがあります。それぞれで管理のアプローチが異なるため、正確な診断と適切な対応が重要です。

1. 妊娠糖尿病(GDM:Gestational Diabetes Mellitus)

妊娠中に初めて発見・診断された糖代謝異常を妊娠糖尿病と呼びます。妊娠前から糖尿病と診断されている場合や、妊娠中に「明らかな糖尿病」と診断された場合はこれに含まれません。

  • 日本の妊婦さんの約5~10%が発症
  • 多くの場合、出産後に血糖は正常化
  • ただし、将来の2型糖尿病リスクが約7倍に上昇するため、産後のフォローアップが極めて重要

🔍 詳細情報:
GDMの検査・治療・FAQについては妊娠糖尿病検査ページGDM FAQページをご覧ください。

2. 糖尿病合併妊娠(PGDM:Pregestational Diabetes Mellitus)

妊娠前から1型または2型糖尿病をお持ちの方の妊娠です。妊娠中のホルモン変化(ヒト胎盤ラクトゲン・エストロゲン・プロゲステロンなどのインスリン拮抗ホルモンの増加)により血糖コントロールが難しくなるため、妊娠前からの準備(プレコンセプションケア)と妊娠中の緻密な血糖管理が不可欠です。

「近いうちに妊娠を考えている」「将来の妊娠に備えてコントロールを整えたい」という方は、妊娠前の糖尿病相談としてお気軽にご相談ください。

妊娠糖尿病(GDM)の診断基準 – 75gOGTTのカットオフ値

妊娠糖尿病の診断には、妊娠24~28週に75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)を行います。以下の3項目のうち、1項目でも基準値を超えた場合に妊娠糖尿病と診断されます。

測定時期 診断基準値
空腹時血糖 92 mg/dL以上
負荷後1時間値 180 mg/dL以上
負荷後2時間値 153 mg/dL以上

75gOGTTの検査の流れ・準備・注意点については、妊娠糖尿病検査(75gOGTT)のページで詳しく解説しています。

糖尿病合併妊娠(PGDM)の管理目標

妊娠前から糖尿病がある方が妊娠する場合、妊娠前・妊娠中・産後それぞれで異なる管理目標があります。

妊娠前のHbA1c目標(プレコンセプションケア)

糖尿病合併妊娠では、計画的に妊娠する前に血糖コントロールを良好にしておくことが最も重要です。

  • 目標HbA1c:7.0%未満(可能であれば6.5%未満が望ましい)
  • 神経管閉鎖障害などの先天異常のリスクを低減するため、妊娠成立前から少なくとも3ヵ月間の安定したコントロールが必要
  • 妊娠を考えている方は、必ず事前に受診し、現在の治療内容(内服薬・インスリン)の見直しを行いましょう

💡 妊娠前の相談はこちら:
糖尿病をお持ちで妊娠を計画されている方は、妊娠前の糖尿病相談をご予約ください。

妊娠中の血糖管理目標(PGDM・GDM共通)

妊娠中の血糖の厳重な管理が最も大切です。以下の目標値を目安に管理を行います。

測定時期 管理目標
空腹時血糖 100 mg/dL未満
食後2時間血糖 120 mg/dL未満

血糖管理が大切な理由

妊娠中の高血糖は、母体と胎児の双方に影響を及ぼす可能性があります。

  • 胎児への影響:巨大児(肩甲難産のリスク)、出生時低血糖、新生児呼吸窮迫症候群、先天異常(特に糖尿病合併妊娠の場合)のリスク増加
  • 母体への影響:妊娠高血圧症候群、早産、羊水過多症、帝王切開率の上昇
  • 将来への影響:妊娠糖尿病の方は、将来2型糖尿病を発症するリスクが約7倍に高まります

しかし、適切な血糖管理を行うことで、これらのリスクを大幅に減らすことができます。合併症リスクについては、糖尿病の合併症(目・腎臓・神経・心血管)のページで詳しく解説しています。

⚠️ 妊娠中の腎機能管理:
妊娠中は腎臓への負担が増加します。糖尿病をお持ちの方は糖尿病腎症(DKD)の進行に注意が必要です。

しもやま内科での診療・サポート

精密な血糖モニタリング

当院では、自己血糖測定(SMBG)に加え、CGM(持続血糖測定)も導入しています。24時間の血糖変動をグラフで確認できるため、食事・運動・インスリンの効果を詳細に把握し、より精密な治療調整が可能です。

CGMやセンサー治療については、持続血糖測定(CGM)のご案内もあわせてご覧ください。

食事・運動療法の指導

妊娠中に必要な栄養を確保しながら血糖コントロールを行う食事療法を指導します。無理な食事制限ではなく、妊娠中でも続けられる現実的な食生活を一緒に考えます。基本的な考え方は、当院の糖尿病教室(全6回)でお伝えしている内容とも共通しており、妊娠中の状況に合わせてアレンジしていきます。

食事療法では4~6分割食(1日の総摂取カロリーを分割して摂取)が推奨されます。これにより食後の急激な血糖上昇を抑え、空腹時のケトン体産生を防ぎます。

インスリン治療

食事療法・運動療法だけで目標血糖値に達しない場合は、インスリン治療を検討します。妊娠中に使用可能なインスリン製剤(ヒトインスリン製剤や一部のインスリンアナログ)を選択し、胎児への影響を最小限に抑えながら血糖コントロールを行います。妊娠が進むにつれてインスリン必要量が増加しますが、ほとんどの場合産後には減量あるいは中止できます。

妊娠中に経口血糖降下薬を使用することは制限されており、第一選択はインスリンです。すでにインスリン治療中の方は、妊娠前後で単位数や打ち方の調整が必要になることがあります。インスリン治療のページも参考にしてください。

産科との連携

船橋市および周辺地域の産科医療機関と密に連携し、母体・胎児の状態を総合的に判断します。分娩計画の作成や、妊娠高血圧症候群・胎児発育遅延などの合併症への対応体制も整えています。

💡 妊娠高血圧症候群の予防:
糖尿病と高血圧が合併するとリスクが増加します。血糖と血圧の両方を管理することで予防できます。

緊急時の対応 – 妊娠中の高血糖・低血糖

妊娠中はホルモンバランスの変化により、血糖値が大きく変動することがあります。以下のような症状がある場合は、早めに医療機関に相談してください。

高血糖の警告サイン

  • のどが異常に渇く(口渇)
  • トイレが近い(頻尿)
  • 倦怠感・体重減少
  • 吐き気・嘔吐
  • 視界がぼやける

低血糖の警告サイン

  • 冷や汗・動悸
  • 手指の震え
  • 強い空腹感
  • 意識がぼんやりする
  • ふらつき・めまい

🚨 緊急時の連絡先:
妊娠中に意識障害がある場合や、血糖値が安定せず困った場合には、119番へのご連絡をおすすめします。

出産後のフォローアップ

妊娠糖尿病(GDM)と診断された方の多くは、出産後に血糖値が正常化します。しかし、そのまま放置せず、以下のフォローアップを受けることが重要です。

産後6~12週:再評価

  • 75gOGTTを実施し、糖代謝が正常化したか確認
  • この時点で糖尿病や境界型と診断された場合は、継続的な治療・経過観察が必要

長期的なフォロー

  • 妊娠糖尿病の既往がある方は、約7倍の高頻度で将来2型糖尿病を発症します
  • 年1回の血糖検査(HbA1c・空腹時血糖)を継続的に受けることをお勧めします
  • 健康的な体重維持・定期的な運動が発症リスクを低減します

📋 産後のフォローアップ:
糖尿病リスクが高い方は、定期検査スケジュールに従って年1回の検診をお勧めします。

いつ受診すべきですか?

次のような場合には、早めの受診をおすすめします。

  • 妊娠検査薬で陽性が出たら、できるだけ早く受診してください(糖尿病合併妊娠の方)
  • 妊娠24~28週の血糖スクリーニングで異常が指摘された場合
  • 妊娠期間中、いつもの血糖値が高いと感じるとき
  • 糖尿病があり、妊娠を計画されている方(妊娠前の相談をお勧めします)

受診の目安については、初めて受診される方へのページもご参照ください。

🔍 検査の詳細:
GDMの検査時期・流れについては妊娠糖尿病検査ページをご覧ください。

よくある質問(FAQ)

妊娠糖尿病になると赤ちゃんに影響はありますか?

はい、適切に管理されない場合、巨大児(出生体重4,000g以上)、新生児低血糖、呼吸窮迫症候群などのリスクが高まります。しかし、血糖管理をしっかり行えば、ほとんどの方は健康な赤ちゃんを出産できます。

産後、妊娠糖尿病は治りますか?

多くの場合、出産後に血糖値は正常化します。ただし、将来の2型糖尿病リスクが約7倍に高まるため、産後6~12週の再評価と、年1回の定期的な血糖検査が必要です。

食事はどうすればいいですか?

栄養バランスを保ちながら、血糖の急上昇を抑える食事が大切です。具体的には、3食を4~6回に分割して少量ずつ食べる分割食や、低GI食品を中心とした献立が推奨されます。当院では個別の食事指導を行っています。

妊娠中にインスリンは安全ですか?

はい。妊娠中に使用可能なインスリン製剤は胎盤を通過しにくく、胎児への影響を最小限に抑えられるよう設計されています。妊娠中の高血糖を放置するリスクと比較すると、インスリン治療のメリットがはるかに大きいことが確認されています。

妊娠前のHbA1c目標はどれくらいですか?

糖尿病合併妊娠の場合、妊娠を計画する段階でHbA1cを7.0%未満(可能であれば6.5%未満)にすることが推奨されています。少なくとも3ヵ月間安定したコントロールを維持してから妊娠することが、先天異常のリスク低減に重要です。

糖尿病の薬(飲み薬)は妊娠中も続けられますか?

経口血糖降下薬は妊娠中の使用に制限があり、多くの場合インスリンに切り替える必要があります。妊娠が判明したら自己判断で服用を中止せず、必ず医師に相談してください。

妊娠中に運動しても大丈夫ですか?

医師の許可があれば、ウォーキングなどの軽い運動は血糖コントロールに有効です。ただし、妊娠中は運動療法のみに頼ることは難しく、食事療法と併用することが基本です。激しい運動や転倒リスクのある運動は避けてください。

妊娠糖尿病と診断されましたが、何に気をつければいいですか?

まずは自己血糖測定(SMBG)を習慣化し、血糖値のパターンを把握することが第一歩です。食事内容・時間と血糖値の関係を記録し、医師と共有することで、最適な治療計画を立てられます。

妊娠糖尿病の検査はいつ受けるのですか?

一般的には妊娠24~28週に行います。ただし、肥満・高齢出産・家族歴などのリスク因子がある場合は、より早期(妊娠初期)に検査を行うことがあります。詳細は妊娠糖尿病検査ページをご覧ください。

2人目の妊娠でも妊娠糖尿病になりますか?

既往がある場合、次回の妊娠でも妊娠糖尿病を発症するリスクが高まります(再発率30~50%)。次回の妊娠時には、早期からの血糖管理と検査が推奨されます。

妊娠糖尿病の人は帝王切開になりやすいですか?

血糖コントロール不良により胎児が巨大児化すると、肩甲難産などのリスクを避けるために帝王切開を選択することがあります。適切な血糖管理により、このリスクは低減できます。

妊娠糖尿病の予防はできますか?

妊娠前に適正体重を維持し、バランスの良い食事と適度な運動を習慣化することで、妊娠糖尿病の発症リスクを低下させることができます。特にBMI 25以上の方は妊娠前からの体重管理が重要です。

診療時間・アクセス

しもやま内科
千葉県船橋市芝山4-33-5
電話:047-467-5500

診療時間や休診日、駐車場などの詳細は
アクセス・診療時間のページにまとめています。

ご不明な点やご心配なことがあれば、お気軽にお電話でご相談ください。糖尿病と妊娠に関する不安を一緒に整理しながら、安心して妊娠・出産を迎えられるようサポートいたします。


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最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

03/03/2026