糖尿病性高血圧の治療|血糖と血圧の管理目標・薬物療法|しもやま内科(船橋市)

「糖尿病と言われて血糖値だけ気にしていればいいと思っていませんか? 糖尿病の約60〜70%の方が高血圧を合併します。血糖と血圧の両方が高い状態は、心筋梗塞・脳卒中・腎不全のリスクを劇的に高めます。しもやま内科(船橋市)では、糖尿病専門医と循環器専門医が連携し、血糖・血圧の両方を最適に管理する包括的な治療を提供しています。」


糖尿病と高血圧の関係〜インスリン抵抗性・レニン・血管障害〜

糖尿病の患者さんの約60〜70%が高血圧を合併します。この二つの病気は独立しているわけではなく、複数のメカニズムで密接に関連し合っています。

インスリン抵抗性と血圧上昇

インスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)になると、膵臓から過剰なインスリンが分泌されます。高インスリン血症は以下の経路で血圧を押し上げます。

  • ナトリウム貯留:腎臓でのナトリウム再吸収が促進され、体内の塩分量が増加
  • 交感神経活性化:心拍数・心拍出量が増え、血管が収縮
  • 血管平滑筋の増殖:血管壁が厚くなり、血圧が上がりやすくなる

レニン・アンジオテンシン系の異常

高血糖状態は腎臓のレニン分泌を亢進させ、アンジオテンシンIIの産生が増加します。アンジオテンシンIIは強い血管収縮作用を持ち、血圧を直接上昇させるだけでなく、腎臓の糸球体に負荷をかけて腎症を進行させます。

血管内皮障害

高血糖により血管内皮細胞が傷害されると、血管拡張物質(一酸化窒素:NO)の産生が減少します。血管が拡張しにくくなることで、血圧が上がりやすくなります。

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糖尿病合併高血圧の診断基準

糖尿病の患者さんにおける高血圧の診断は、一般の高血圧診断と同じ血圧値で判定しますが、家庭血圧測定と診察室血圧の両方を重視します。

測定条件 高血圧の診断基準
診察室血圧 ≧ 140/90 mmHg
家庭血圧 ≧ 135/85 mmHg
24時間自由行動下血圧(ABPM) ≧ 130/80 mmHg

糖尿病の患者さんでは白衣高血圧(診察室でのみ血圧が高い)の頻度が高いため、家庭血圧の記録が診断に不可欠です。当院では家庭血圧測定器の選び方や測定方法の指導も行っています。


治療目標〜血糖値と血圧の両方を同時に管理〜

糖尿病性高血圧の治療では、血糖コントロールと血圧コントロールを同時進行で行うことが極めて重要です。片方だけ改善しても、もう片方が悪ければ合併症リスクは低下しません。

血圧の管理目標

日本糖尿病学会・日本高血圧学会のガイドラインでは、糖尿病合併高血圧の患者さんに対して一般の高血圧よりも厳格な目標値を推奨しています。

測定場所 目標血圧 備考
診察室血圧 < 130/80 mmHg 糖尿病学会・高血圧学会推奨
家庭血圧 < 125/75 mmHg 朝・晩の測定値の平均
高齢者(≧75歳) < 140/90 mmHg 低血圧による転倒リスクに注意

重要:一般的な高血圧(< 140/90 mmHg)よりも、糖尿病がある場合はさらに厳しく管理する必要があります。

血糖の管理目標

指標 目標値 備考
HbA1c < 7.0% 基本的なコントロール目標
食後血糖(2時間値) < 180 mg/dL 食後の急激な上昇を防ぐ
空腹時血糖 130 mg/dL 未満 (個別に設定)

糖尿病性高血圧の治療戦略〜薬物+生活習慣の両輪〜

1. 非薬物療法(生活習慣改善)

すべての患者さんに必須の治療です。薬物療法と並行して行うことで、より少ない薬剤量で目標達成が可能になります。

減塩(最重要項目)

  • 目標:塩分 6g/日以下(理想は5g以下)
  • 外食・加工食品の見直し(インスタント食品、漬物、パン類に注意)
  • 味付けは「酢・レモン・香草・香辛料」で工夫
  • 醤油は減塩タイプに変更、量を半分に

🧂 減塩の実践方法:
減塩のコツページで、外食・加工食品の選び方や調味料の工夫を詳しく解説しています。

運動療法

  • 有酸素運動:週5日以上、1日30分以上の歩行や水泳
  • 血圧低下効果:運動直後から約24時間持続
  • 注意:血圧が高い時(≧180/110 mmHg)は運動を控える
  • 目標心拍数:最大心拍数の約50〜60%(目安:220−年齢×0.6)

体重管理

  • 体重1kg減少で血圧は約1 mmHg低下
  • 内臓脂肪を減らすことが血圧改善に特に有効
  • 目標BMI:25 kg/m²未満

禁煙・節酒

  • 喫煙は血管収縮・動脈硬化を促進するため、禁煙が必須
  • 飲酒はエタノール換算で男性20〜30g/日以下、女性10〜20g/日以下

2. 薬物療法(降圧薬+糖尿病薬の統合戦略)

【第1選択】腎保護効果のある降圧薬

糖尿病性高血圧では、腎臓を保護する効果のある降圧薬を優先的に使用します。

薬剤クラス 代表薬(商品名) 特徴と注意点
ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬) ロサルタン(ニューロタン)、オルメサルタン、テルミサルタン(ミカルディス)、カンデサルタン(ブロプレス) 腎保護・心保護効果。咳の副作用が少ない。ACE阻害薬と同程度の効果
ACE阻害薬 エナラプリル(レニベース)、イミダプリル(タナトリル) 腎保護・心保護効果。乾性咳嗽の副作用に注意
Ca拮抗薬 アムロジピン(ノルバスク)、ベニジピン(コニール) 強い降圧効果。ARB/ACEiとの併用で相乗効果
少量の利尿薬 トリクロルメチアジド(フルイトラン) ARB/ACEiと併用で効果増強。低K血症に注意

【1日1回・1週1回の配合剤で服薬アドヒアランス向上】

複数の薬を服用する負担を減らすため、配合剤が積極的に用いられています。

  • ARB+Ca拮抗薬配合剤:オルメサルタン+アゼルニジピン(レザルタス配合錠)、テルミサルタン+アムロジピン(ミカムロ配合錠)— 1日1回で血圧を安定管理
  • ARB+利尿薬配合剤:ロサルタン+トリクロルメチアジド(ロサトリック配合錠)— 減塩効果を補完
  • エプレレノン(セララ):選択的アルドステロン拮抗薬。ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬として降圧+臓器保護効果。ARB/ACEiと併用でさらに腎保護効果が期待できる

これらの配合剤は1日1回の服用で済むため、飲み忘れ防止・アドヒアランス向上に大きく貢献します。

【併用推奨】血糖降下・血圧改善効果のある糖尿病薬

薬剤クラス 血圧低下効果 主な効果
SGLT2阻害薬 -3〜-5 mmHg 血糖降下+心不全予防+腎症進行抑制
GLP-1受容体作動薬 -2〜-3 mmHg 血糖降下+体重減少+心血管保護

❤️ 心血管リスクの管理:
糖尿病と高血圧が合併すると心筋梗塞・脳梗塞のリスクが大幅に上昇します。循環器内科との連携で総合的なリスク管理を行っています。
関連ページ:高血圧症の治療高血圧の食事療法(DASH食)心房細動の治療


ARBとACE阻害薬の違い

どちらもレニン・アンジオテンシン系を抑制する薬ですが、作用点が異なります。

項目 ARB ACE阻害薬
作用機序 アンジオテンシンII受容体を直接ブロック ACE(アンジオテンシン変換酵素)を阻害
代表的な副作用 比較的少ない 乾性咳嗽(約10〜20%に出現)
腎保護効果 あり あり
使い分け 咳が出る・ACEi不耐容の場合に第一選択 ARBで効果不十分な場合や併用でさらに効果

当院では、患者さんの状態に応じてARBまたはACE阻害薬を第一選択とし、効果不十分な場合はCa拮抗薬や利尿薬を追加します。


合併症予防〜心血管イベント・腎症・脳卒中〜

糖尿病と高血圧が合併すると、以下の合併症リスクが飛躍的に高まります。同時管理の最大の目的はこれらの予防です。

心血管イベント(心筋梗塞・狭心症)

糖尿病患者の死因の約40%は心血管疾患です。高血圧の合併でリスクはさらに上昇。ARB/ACEiによる降圧治療でリスクを約20〜30%低減できることが多くの大規模臨床試験で示されています。

糖尿病腎症(DKD)

高血圧は糖尿病腎症進行の最大の危険因子です。腎症による腎機能低下は、やがて透析療法が必要になる可能性があります。血糖管理に加えて、血圧を130/80 mmHg未満に保つことで腎症の発症・進行を抑制できます。

糖尿病腎症(DKD)の詳細はこちら →

脳卒中

糖尿病患者の脳卒中リスクは非糖尿病者の約2倍。高血圧の合併でさらに上昇します。厳格な血圧管理により脳卒中リスクを約30%低下させることが可能です。

糖尿病網膜症

高血圧は網膜症の進行リスクでもあります。血糖・血圧・脂質の3つの管理(トリプルケア)が目の健康維持に重要です。


当院での診療〜糖尿病×高血圧の専門的な管理〜

1. 精密な血圧評価

  • 診察室血圧測定(両上肢・座位・臥位)
  • 家庭血圧測定の指導(測定方法・記録の仕方)
  • 必要に応じて24時間血圧測定(ABPM)

2. 合併症のスクリーニング

  • 腎機能・尿たんぱく(年1回以上)
  • 眼底検査(年1回)
  • 心電図・頸動脈エコー(年1回)
  • 下肢血管・神経検査(必要に応じて)

📋 定期検査スケジュール:
糖尿病の定期検査ページで、年1回の検査タイミングを確認できます。

3. 薬物療法の最適化

  • 腎保護効果のあるACE阻害薬/ARBの優先使用
  • SGLT2阻害薬による血糖降下+腎保護+血圧低下
  • 必要に応じた配合剤の導入(アドヒアランス向上)
  • 低血糖リスクを考慮した個別の血糖目標設定

4. 生活習慣の個別指導

  • 減塩指導(塩分6g/日以下を目標)
  • 運動処方(週5日以上、1日30分以上)
  • 禁煙支援(血管保護のため)

よくある質問

Q: 糖尿病と高血圧の関係は?

A: 糖尿病の約60〜70%の方が高血圧を合併します。インスリン抵抗性によるナトリウム貯留・交感神経活性化、高血糖による血管内皮障害、腎臓でのレニン分泌亢進など、複数のメカニズムで血圧が上昇します。両方の管理が極めて重要です。

Q: 目標血圧はいくつですか?

A: 糖尿病の患者さんでは診察室血圧で130/80 mmHg未満が目標です(一般的な高血圧の140/90よりも厳格)。家庭血圧では125/75 mmHg未満を目指します。高齢者(75歳以上)は転倒リスクを考慮して140/90未満とすることがあります。

Q: 減塩はどれくらいすればいいですか?

A: 目標は塩分6g/日以下(理想は5g以下)です。日本人の平均摂取量は約10gとされているため、半分近くに減らす必要があります。外食・加工食品・パン類に注意し、調味料は酢や香辛料で工夫しましょう。減塩のコツページで具体的な方法を解説しています。

Q: どんな薬を使いますか?

A: 第一選択は腎保護効果のあるARBまたはACE阻害薬です。効果不十分な場合はCa拮抗薬や少量の利尿薬を追加します。またSGLT2阻害薬は血糖を下げながら血圧も下げるため、併用が推奨されます。配合剤で1日1回の服用にまとめることも可能です。

Q: ARBとACE阻害薬の違いは?

A: 両方とも腎保護・心保護効果がありますが、ACE阻害薬は約10〜20%の患者さんに乾性咳嗽(空咳)が出ることがあります。咳が出る場合やACE阻害薬が合わない場合はARBを選択します。作用機序が異なるため、併用することでさらに効果が高まることもあります。

Q: 血糖と血圧、どちらを優先しますか?

A: 両方を同時に管理することが基本です。どちらか一方だけ改善しても、もう片方が悪ければ合併症リスクは十分に下がりません。当院では血糖・血圧・脂質の3つを総合的に管理する包括的ケアを提供しています。

Q: 降圧薬は一生飲み続けなければなりませんか?

A: 基本的には長期服用が必要ですが、減塩や運動・体重減少で血圧が改善すれば、減薬や休薬の可能性も検討できます。ただし自己判断での減薬は禁物です。必ず医師の指導のもとで行ってください。

Q: 血圧が下がりすぎると危険ですか?

A: はい。特に高齢者では、降圧薬による過度な血圧低下で 転倒・骨折のリスク が増加します。当院では年齢・歩行能力・認知機能に応じた個別の目標値を設定し、安全な降圧治療を行っています。

Q: 運動はどのくらいすれば血圧に効果がありますか?

A: 週5日以上、1日30分以上の有酸素運動(歩行・水泳・サイクリングなど)を継続することで、収縮期血圧で約5〜7mmHgの低下が期待できます。運動による血圧低下効果は約24時間持続するため、毎日継続することが重要です。

Q: 糖尿病性高血圧を放置するとどうなりますか?

A: 心筋梗塞・脳卒中・腎不全(透析)・網膜症による視力低下・下肢切断など、生命や生活の質に直結する重篤な合併症リスクが大幅に上昇します。早期からの血糖・血圧の両方管理が、これらの予防に不可欠です。

Q: 市販の血圧計は信頼できますか?

A: 上腕カフ式の医用電子機器認証(SG認証など)付き製品であれば信頼できます。手首式や指先式は正確性に欠けるため避けてください。当院では家庭血圧測定に適した機種の選び方も指導しています。


こんな症状がある方は早めの受診を

🚨 すぐに受診が必要なサイン

  • 測定した血圧が180/110 mmHg以上
  • 急激な頭痛・めまい・吐き気
  • 胸の痛み・圧迫感
  • 息切れ・呼吸困難
  • 片方の手足の麻痺・しびれ
  • ろれつが回らない・言葉が出にくい

上記の症状がある場合はすぐに当院または救急(119番)にご連絡ください

📞 受診の目安
通常の予約でOK:血糖・血圧のコントロール状況を確認したい方、処方薬の調整が必要な方
早めの受診を推奨:最近血圧が上がり始めた・家庭血圧で130/80を超えることが増えた
⚠️ 至急受診:自覚症状があり血圧が高い・服薬しても下がらない

ご予約はお電話で:047-467-5500


参考文献

  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
  • 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン(JSH 2025)」
  • KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for Diabetes Management in CKD
  • EMPAREG OUTCOME試験・DECLARE-TIMI 58試験(SGLT2阻害薬心血管アウトカム)

最終更新日:2026年8月25日


診療時間・アクセス

しもやま内科
千葉県船橋市芝山4-33-5
電話:047-467-5500

「糖尿病と高血圧が両方ある」「血糖は安定しているのに血圧が高い」「どんな薬を選べばいいかわからない」——お悩みの方はぜひご相談ください。糖尿病専門医と循環器専門医が、血糖・血圧の両方を最適に管理する治療をご提案します。

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最終更新日:2026-08-25

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

22/03/2026