妊娠糖尿病(GDM)は、妊娠中に初めて発見される糖代謝異常で、日本人妊婦の約5〜10%に認められます。放置すると母体・胎児に様々なリスクが生じるため、妊娠24〜28週を中心としたスクリーニングが全ての妊婦さんに推奨されています。船橋市のしもやま内科では、診断のゴールドスタンダードである75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)を実施し、GDMのスクリーニング・診断から治療まで一貫して対応しています。このページでは、検査の目的・タイミング・具体的な流れ・診断基準・陽性時の対応を、専門医の立場から詳しく解説します。
妊娠糖尿病(GDM)とは——なぜスクリーニングが必要か
妊娠糖尿病(Gestational Diabetes Mellitus: GDM)は、妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常で、明らかな糖尿病とは異なり、多くの場合は出産後に血糖値が正常化します。しかし、適切に管理されない場合、以下のリスクが有意に上昇することが知られています。
- 母体への影響:妊娠高血圧症候群、羊水過多症、帝王切開率の上昇、将来の2型糖尿病発症リスク増加
- 胎児・新生児への影響:巨大児(出生体重4,000g以上)、肩甲難産、新生児低血糖、新生児高ビリルビン血症、将来の肥満・耐糖能異常
これらのリスクは、GDMを早期に発見し適切に管理することで大幅に低減できることが複数の大規模臨床試験で示されています。そのため、日本糖尿病・妊娠学会のガイドラインでは、全妊婦に対する妊娠24〜28週のスクリーニングを推奨しています。
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GDMスクリーニングのタイミング——いつ受けるべきか
【標準】妊娠24〜28週に全妊婦でスクリーニング
胎盤から分泌されるヒト胎盤ラクトゲン(hPL)やエストロゲン・プロゲステロンなどのホルモンは、インスリン抵抗性を亢進させます。これらのホルモン分泌がピークに達する妊娠24〜28週は、GDMを検出する最適なタイミングとされています。この時期を逃すと診断の感度が低下するため、推奨期間内の検査が重要です。
- 妊娠24〜28週:全妊婦に75gOGTTを実施(推奨)
- この時期を過ぎてもGDMのリスクが高い方は随時検査を検討
【早期検査が必要な方】妊娠初期(12週前後)
以下のリスク因子に該当する方は、妊娠初期(初診時または12週前後)にスクリーニングを実施することが推奨されます。
- 前回妊娠でGDMの既往がある
- 肥満(BMI 25以上、特に30以上)
- 糖尿病の家族歴(両親・兄弟姉妹)
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の既往
- 前回出産で体重4,000g以上の児を分娩した
- 35歳以上の高齢出産
- 妊娠高血圧症候群の既往
早期検査でGDMが否定された場合でも、妊娠24〜28週に再検査を行います。
GDMのリスク因子——当てはまる項目を確認しましょう
以下のリスク因子が多いほどGDMの発症確率が上昇します。ただし、リスク因子がなくても発症するため、「自分は大丈夫」と思わずにスクリーニングを受けることが大切です。
| リスク因子 | リスク上昇の程度 |
|---|---|
| 前回妊娠でGDM既往 | 約5〜10倍 |
| 肥満(BMI 30以上) | 約3〜5倍 |
| 糖尿病家族歴(第1度近親者) | 約2〜3倍 |
| 35歳以上の高齢妊娠 | 約2倍 |
| PCOS(多嚢胞性卵巣症候群) | 約2〜4倍 |
| 巨大児分娩歴(4,000g以上) | 約2〜3倍 |
「当てはまるかも」と感じたら、まずはセルフチェックでリスク確認。
簡単なチェックリストで、受診の目安が分かります。
匿名セルフチェック(診断ではありません)
妊娠糖尿病が心配な方向けの簡単なチェックです。回答は匿名で、メールアドレス収集は行いません。
フォームを開いてセルフチェックする → (所要1〜2分/スマホで回答しやすい表示で開きます)
※強い症状や急な体調変化がある場合は、フォームより先に医療機関へご相談ください。しもやま内科 ☎ 047-467-5500
75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)の検査手順
検査前日〜当日の準備
正確な検査結果を得るために、以下の準備が必要です。
- 前日の夜9時以降は絶食(水・お茶はOK、ただし糖分・カフェインを含まないもの)
- 前日の食事は軽めに(特に炭水化物を極端に制限しないようにしてください。通常通りの食事で構いません)
- 当日朝は何も食べずに来院(薬は検査後の服用をお勧めしますが、持病で朝の内服が必要な方は事前にご相談ください)
- 検査中は安静にする(歩き回ったり激しい動きをすると結果に影響することがあります)
- 喫煙は検査前日から控えてください
- 所要時間:約2時間半(朝9時開始推奨、11時半頃終了)
検査当日のスケジュール
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 0分 | 空腹時血糖(採血) |
| → | 75gのブドウ糖溶液を5分以内に飲む(レモン風味で比較的飲みやすいです) |
| 60分後 | 1時間後血糖(採血) |
| 120分後 | 2時間後血糖(採血) |
採血は計3回(0分・60分・120分)です。糖液を全て飲みきり、嘔吐しないようリラックスしてお過ごしください。もし嘔吐してしまった場合は、医師にご相談ください(再検査となる場合があります)。
📋 OGTTの詳細:
一般的な75gOGTTの解説もご覧ください。
75gOGTTの診断基準——この数値が目安です
以下の3つの血糖値のうち、1つでも基準値を超えた場合、妊娠糖尿病(GDM)と診断されます(日本糖尿病・妊娠学会 2025年ガイドラインに基づく)。
| 測定時期 | 基準値 |
|---|---|
| 空腹時血糖 | 92 mg/dL 以上 |
| 1時間後血糖 | 180 mg/dL 以上 |
| 2時間後血糖 | 153 mg/dL 以上 |
なお、空腹時血糖が126 mg/dL以上、または随時血糖が200 mg/dL以上の場合は、「妊娠中の明らかな糖尿病」(overt diabetes in pregnancy)と診断され、より厳格な管理が必要です。しもやま内科では、結果が出次第、医師が詳しい説明と今後の方針についてご案内します。
スクリーニング陽性(GDMと診断された場合)の次のステップ
Step 1: 食事療法の開始(診断日〜1週間)
- 個別栄養食事指導
- 1日の食事を4〜6回に分割(3食+補食2〜3回)
- 食事の順序法:野菜 → たんぱく質 → 炭水化物の順で食べると食後血糖の上昇が緩やかになります
- 炭水化物の質にも注目:精白米→玄米・全粒粉パンなど低GI食品への置き換え
Step 2: 自己血糖測定(SMBG)の開始
- 空腹時血糖と各食後2時間血糖を毎日測定
- 管理目標:空腹時 95 mg/dL未満、食後2時間 120 mg/dL未満
- 測定記録をつけて、定期的に医師の評価を受ける
Step 3: インスリン療法(食事療法で目標血糖に達しない場合)
- 妊娠中は経口血糖降下薬の使用が原則不可(胎盤通過による胎児影響の懸念)
- インスリンは分子量が大きいため胎盤を通過せず、胎児への影響は極めて少ない
- 産後は多くの方がインスリン不要となり、元の生活に戻れます
- インスリン自己注射の方法は、医師・看護師が丁寧に指導します
💡 GDMと診断されたら:
診断後の治療・食事療法・インスリン療法についてはGDM FAQで詳しく解説しています。
🤰 妊娠中の血糖管理:
糖尿病と妊娠・出産ページで、妊娠中の食事療法・インスリン治療・産科との連携について解説しています。
スクリーニング陰性でも注意すべきポイント
75gOGTTで陰性(基準値以下)だった場合でも、以下の点に注意が必要です。
- 妊娠後期にも血糖上昇リスクは継続:妊娠28週以降も胎盤ホルモンの影響は続くため、健診で随時血糖や尿糖をチェックしてもらいましょう
- 急な体重増加やむくみ:これらはGDMのサインである可能性があります。気になる症状があれば早めに相談を
- 産後6〜12週の再検査:GDMの既往がある女性は将来の糖尿病リスクが高いため、産後に75gOGTTまたはHbA1c検査を受けることをお勧めします
- 次回妊娠時の注意:一度GDM陰性でも、次回妊娠時にGDMを発症する可能性は十分あります。妊娠のたびにスクリーニングを受けましょう
緊急時の対応——こんな症状があればすぐに受診を
妊娠中の高血糖または低血糖が疑われる以下の症状がある場合は、緊急性があります。すぐに医療機関に連絡するか、救急外来を受診してください。
⚠ 高血糖の緊急サイン
- 強い口渇・大量の飲水
- 頻尿(トイレの回数が極端に増えた)
- 吐き気・嘔吐
- 意識がぼんやりする
- 呼気が甘酸っぱい(アセトン臭)
⚠ 低血糖の緊急サイン
- 冷や汗・動悸・手の震え
- 強い空腹感
- めまい・ふらつき
- 意識消失・けいれん
しもやま内科:047-467-5500(診療時間外はお近くの救急医療機関へ)
よくある質問(FAQ)
Q1: 妊娠糖尿病の検査はいつやるのですか?
A: 妊娠24〜28週が標準的なタイミングです。ただし、肥満や糖尿病家族歴などのリスク因子がある方は、妊娠初期(12週前後)にも早期スクリーニングを受けることが推奨されます。早期検査で陰性でも、24〜28週に再検査を行います。
Q2: 検査前の食事はどうすればいいですか?
A: 前日の夜9時以降は絶食が必要です。水やお茶(糖分・カフェインなし)は飲んでも構いません。前日の食事は普段通りで大丈夫です。炭水化物を極端に制限すると、かえって正確な評価ができなくなるため注意してください。
Q3: 75gOGTTの基準値を教えてください。
A: 空腹時血糖92 mg/dL以上、1時間後180 mg/dL以上、2時間後153 mg/dL以上のいずれか1つ以上該当すると妊娠糖尿病(GDM)と診断されます。
Q4: 検査は痛いですか?
A: 採血の針による痛みのみで、検査自体に苦痛はほとんどありません。糖液はレモン風味で比較的飲みやすいです。検査時間は約2時間半ですが、待合室で静かに過ごしていただきます。スマートフォンや本をお持ちいただくと良いでしょう。
Q5: 検査の費用はいくらですか?
A: 健康保険適用で、3割負担の場合で約2,000〜3,000円程度です。妊娠中の検査で医師が必要と判断した場合、保険適用となります。自治体によっては妊婦健診の補助制度がありますので、お住まいの市区町村にお問い合わせください。
Q6: スクリーニングで陽性(GDM)と言われたらどうなりますか?
A: まず食事療法を開始し、自己血糖測定(SMBG)で血糖コントロールを確認します。目標の血糖値に達しない場合は、インスリン療法を検討します。妊娠中は経口血糖降下薬は使用しませんが、インスリンは胎児に影響しないため安全に使用できます。出産後は多くの方がインスリン不要になります。
Q7: GDMと診断されても自然分娩はできますか?
A: 血糖管理が良好であれば自然分娩は十分可能です。ただし、血糖コントロールが不十分な場合や巨大児の疑いがある場合は、母子の安全を最優先に、帝王切開を検討することもあります。産科医と連携して最適な分娩方法を決定します。
Q8: GDMは出産後に治りますか?
A: ほとんどの方は出産後に血糖値が正常化します。しかし、GDMの既往がある方は将来2型糖尿病を発症するリスクが約7倍高いことが知られています。そのため、産後6〜12週間後に再検査(産後OGTTまたはHbA1c検査)を受け、その後も年に1回の血糖チェックを継続することをお勧めします。
Q9: GDMの赤ちゃんへの影響は?
A: 適切に管理されていないGDMでは、巨大児(出生体重4,000g以上)や肩甲難産、新生児低血糖のリスクが高まります。しかし、きちんと血糖管理を行えばこれらのリスクは大きく低減できます。スクリーニングで早期発見し、治療することが赤ちゃんを守ることにつながります。75gOGTTは胎児に直接の影響はありません。
Q10: 妊娠中に糖尿病の薬は飲めないのですか?
A: 妊娠中は経口血糖降下薬(内服薬)の使用は原則推奨されていません(胎盤を通過して胎児に影響を与える可能性があるため)。その代わりにインスリン注射を使用します。インスリンは胎盤を通過せず、胎児に影響しないため、妊娠中の血糖管理には最も安全で確実な方法です。
Q11: 糖液を吐いてしまったらどうなりますか?
A: 検査中に糖液を嘔吐してしまった場合は、正確な評価ができなくなるため、別日の再検査となります。気分が悪くなった場合は無理せずスタッフにお伝えください。ゆっくり飲む・検査中はリラックスして過ごすことで、吐き気を予防できます。
Q12: 妊娠糖尿病は予防できますか?
A: 完全な予防は難しいですが、妊娠前からの適正体重維持(肥満予防)やバランスの良い食事、適度な運動はリスク低減に役立ちます。妊娠中の急激な体重増加にも注意が必要です。特にリスク因子がある方は、妊娠前からかかりつけ医に相談することをお勧めします。
📚 その他の質問:
食事療法の詳細・インスリン療法の不安・産後のフォローアップなど、詳しくはGDM FAQをご覧ください。
診療時間・アクセス
しもやま内科
千葉県船橋市芝山4-33-5
電話:047-467-5500
アクセス:新京成線「高根木戸駅」より徒歩圏内/「飯山満駅」からもアクセス可能
駐車場:あり
「妊娠糖尿病の検査を受けたい」「健診で血糖を指摘された」「妊娠中の血糖が気になる」など、お気軽にご相談ください。当院では75gOGTTを実施し、GDMの診断・治療・産後のフォローアップまで一貫してサポートしています。初めての方でも安心してご来院いただけます。
📋 産後のフォローアップ:
出産後の糖尿病リスクが高い方は、定期検査をお勧めします。
受診をご検討の方、お気軽にご相談ください
月・火・木・金 9:00〜12:00 / 14:45〜17:30 土 9:00〜12:00
診療時間外の緊急時は、119番へのご連絡を
最終更新日:2026-08-28
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。