糖尿病の定期検査〜予防医学が命を守る〜
糖尿病は「自覚症状がないうちに合併症が進行」する怖い病気です。血糖値が高めの状態が続くと、全身の細い血管が傷つき、網膜症(失明)・腎症(透析)・神経障害(足壊疽)といった三大合併症を引き起こします。これらの合併症は、いったん進行すると元に戻すことが難しく、定期的な検査で早期発見・早期治療することが極めて重要です。
船橋市のしもやま内科では、糖尿病専門医が必要な検査をタイミングよく実施し、合併症リスクを最小限に抑える管理を行っています。
各検査の目的と頻度・基準値
糖尿病の定期検査は、「毎回受診時に行う検査」「年1回の合併症スクリーニング」「必要に応じて行う検査」の3層構造になっています。それぞれの検査について詳しく解説します。
1. HbA1c(ヘモグロビンA1c)— 3ヶ月ごと
HbA1cは、過去1〜2ヶ月の平均的な血糖値を反映する指標です。食事の影響を受けないため、血糖コントロールの状態を最も正確に評価できる検査として、糖尿病診療の基本となります。
- 頻度: 1〜3ヶ月ごと(コントロール不良時は1ヶ月ごと)
- 目標値: 7.0%未満(日本糖尿病学会推奨。年齢・合併症により個別化)
- 注意点: 貧血・腎不全があると正確な値が出にくい場合があります
📊 HbA1cについて詳しく:
HbA1cの詳細・グリコアルブミン(GA)についてもご覧ください。
2. eGFR/尿中アルブミン — 年1回以上(腎症スクリーニング)
eGFR(推算糸球体濾過量)は、血液中のクレアチニン値から計算される腎機能の指標です。糖尿病腎症は、初期には尿中に微量のアルブミン(たんぱく質)が漏れ出すことから始まります。尿中アルブミン検査(ACR:アルブミン/クレアチニン比)とeGFRの組み合わせで、腎症の早期発見が可能です。
- 頻度: 年1回以上(腎症が疑われる場合は3〜6ヶ月ごと)
- eGFR基準値: 60 mL/min/1.73m²以上が正常。60未満は慢性腎臓病(CKD)
- 尿中アルブミン基準値: 30 mg/gCr未満が正常。30〜299が微量アルブミン尿(早期腎症)、300以上が顕性アルブミン尿(顕性腎症)
⚠️ 糖尿病腎症の早期発見:
尿たんぱくの異常は糖尿病腎症(DKD)の初期サインです。年1回の尿アルブミン検査が重要です。
3. 眼底検査 — 年1回(網膜症スクリーニング)
糖尿病網膜症は、成人の失明原因の第1位と言われる病気です。初期には全く自覚症状がなく、視力低下を自覚したときには進行していることが多いため、年1回の眼底検査が必須です。
- 頻度: 年1回(網膜症ありの場合は3〜6ヶ月ごと)
- 方法: 散瞳薬(瞳孔を拡大する目薬)を使って精密検査。当院では院内で実施可能
- 進行度: 単純網膜症 → 増殖前網膜症 → 増殖網膜症 の順に進行
4. 神経障害検査 — 年1回
糖尿病性神経障害は、三大合併症の中で最も早期に発症するとされる合併症です。手足のしびれ・痛み・感覚低下などの症状が現れます。進行すると足の感覚が麻痺し、小さな傷に気づかずに潰瘍・壊疽に至ることがあります。
- 頻度: 年1回(症状がある場合は3〜6ヶ月ごと)
- 検査方法: 神経伝導速度検査(当院では必要に応じて連携施設で実施)
- 簡易チェック: モノフィラメント検査(足の感覚テスト)も併用
5. 心電図・頸動脈エコー — 必要に応じて
糖尿病は心血管疾患のリスクを2〜4倍に高めることが知られています。心電図や頸動脈エコーは、自覚症状がない心筋虚血や脳梗塞リスクを評価するために行います。
- 心電図: 年1回(高血圧・脂質異常症合併者は必須)
- 頸動脈エコー: 動脈硬化の進行度評価。喫煙者・高血圧合併者に推奨
- 下肢血管エコー: 足の冷え・歩行時痛がある場合に実施
糖尿病検査の基準値一覧表
以下に、糖尿病の定期検査で使用される主な項目の基準値をまとめました。目標値は年齢・合併症の有無によって個別に設定されます。
| 検査項目 | 正常値 | 糖尿病目標値 |
|---|---|---|
| HbA1c | 5.5%以下 | 7.0%未満(個別化あり) |
| 空腹時血糖 | 70〜109 mg/dL | 80〜130 mg/dL |
| 食後2時間血糖 | 140 mg/dL未満 | 180 mg/dL未満 |
| eGFR | 60 mL/min/1.73m²以上 | 60以上を維持 |
| 尿中アルブミン(ACR) | 30 mg/gCr未満 | 30未満を維持 |
| LDLコレステロール | 70〜139 mg/dL | 120 mg/dL未満(高リスク群は100未満) |
| 中性脂肪(TG) | 50〜149 mg/dL | 150 mg/dL未満 |
| 血圧 | 130/85 mmHg未満 | 130/80 mmHg未満 |
| BMI | 18.5〜24.9 | 25未満 |
患者さん向け 検査スケジュール表(目安)
糖尿病の定期検査は、以下のスケジュールが一般的な目安です。経過が安定している方も、年1回の合併症スクリーニングは必ず受けましょう。
| 頻度 | 検査項目 | 目的 |
|---|---|---|
| 1〜3ヶ月ごと | 血糖(空腹時・食後)・HbA1c・体重・血圧 | 日常の血糖コントロール評価 |
| 年1回 | 眼底検査 | 網膜症スクリーニング |
| eGFR・尿中アルブミン | 腎症スクリーニング | |
| 神経障害検査 | 神経症スクリーニング | |
| 脂質(LDL・HDL・TG)・肝機能・尿酸 | 動脈硬化リスク・脂肪肝評価 | |
| 心電図 | 心筋虚血・不整脈スクリーニング | |
| 必要に応じて | 頸動脈エコー・下肢血管エコー・神経伝導速度 | 動脈硬化・神経障害の精密評価 |
結果の見方・数値の解説
検査結果を受け取ったとき、数字が正常範囲かどうかだけでなく、前回からの変化(トレンド)を見ることが重要です。
HbA1cの見方
7.0%未満が一般的な目標ですが、高齢者や合併症が進行している方はもう少し緩やかな目標(7.5〜8.0%未満)が設定されることもあります。逆に若くて合併症がない方は、6.5%未満を目指すこともあります。重要なのは急激な上昇や変動がないかです。
eGFRの見方
eGFRは年齢とともに自然に低下します。60 mL/min/1.73m²を下回ると慢性腎臓病(CKD)ステージ3と診断されます。30未満になると腎臓内科との連携、15未満では透析や腎移植の準備が必要です。eGFRの年間低下速度(通常は1〜2/年)が大きい場合は要注意です。
尿中アルブミンの見方
30 mg/gCr未満が正常。30〜299が微量アルブミン尿で、この段階で発見できれば適切な治療で正常化が期待できます。300以上になると顕性アルブミン尿(顕性腎症)で、より強力な治療が必要です。
こんな症状があればすぐに受診を(緊急性分岐)
⚠️ 以下の症状がある場合は、定期検査を待たずに早めの受診を検討してください
- 急な視力低下・視野が欠ける → 網膜症の進行や眼底出血の可能性
- 足の色が変わった・傷が治らない → 壊疽のリスク。すぐに受診を
- 胸の痛み・息切れ → 心筋梗塞の可能性
- 顔や足の急なむくみ → 腎機能の急激な低下の可能性
- 激しい喉の渇き・体重減少 → 血糖コントロールの急激な悪化
「しもやま内科」の定期検査の特徴
1. リニングレポートでの経過管理
- HbA1c・血糖・血圧・体重の推移をグラフ化
- eGFRと尿たんぱくの変化を可視化
- 患者様ご自身でも変化を実感しやすく、治療継続のモチベーション向上
2. 専門医による精密検査
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医が診療
- 眼底検査(瞳孔拡大)を院内で実施
- 必要に応じて頸動脈エコー・下肢血管エコー・心電図を実施
3. 高次医療機関との連携
- 眼科(網膜症治療)
- 腎臓内科・透析施設(高度腎症)
- 循環器内科(心血管治療)
- 血管外科(下肢血管治療)
よくある質問
Q: 糖尿病の定期検査はなぜ必要ですか?
A: 自覚症状がないまま網膜症・腎症・神経障害などの合併症が進行するためです。定期的な検査で早期発見すれば、重い合併症を予防できます。
Q: eGFRの正常値はいくつですか?
A: 60 mL/min/1.73m²以上が正常範囲です。60未満の場合は慢性腎臓病(CKD)と診断され、糖尿病腎症の可能性を精査します。
Q: 眼底検査はどれくらいの頻度で受ければいいですか?
A: 年1回が推奨です。網膜症がない場合でも、年に1回は必ず受けましょう。網膜症と診断された方は3〜6ヶ月ごとが必要です。
Q: 検査結果はいつわかりますか?
A: HbA1cや血糖値などの血液検査はその日のうちに結果が出ます。尿中アルブミンは数日後、眼底検査の結果は検査後すぐにお伝えできます。
Q: 検査前に食事をしてもいいですか?
A: 空腹時血糖を測る場合は、検査前8時間以上の絶食が必要です。HbA1cは食事の影響を受けないため、食事後でも測定可能です。当日の指示に従ってください。
Q: 検査は毎回必要ですか?
A: HbA1cと血糖は1〜3ヶ月ごと、眼底・腎機能・神経検査は年1回が推奨です。血糖コントロールが安定していても、合併症は進行することがあるため、定期検査は欠かせません。
Q: 検査をサボるとどうなりますか?
A: 糖尿病の合併症(網膜症・腎症・神経障害)は自覚症状がないうちに進行します。気づいたときには進行していることもあるため、定期検査での早期発見が重要です。
Q: 前回の検査で問題なかったのに、今回異常が出ることはありますか?
A: はい。糖尿病の合併症は進行性であり、血糖コントロールの状態によって進行スピードが変わります。昨年正常でも今年は異常が出ることもあります。
Q: 神経障害の検査はどんなことをしますか?
A: 問診(しびれ・痛みの有無)に加え、モノフィラメント検査(足の感覚テスト)や神経伝導速度検査を行います。足の裏に細いナイロン糸を当てて感覚を確認する簡単な検査です。
Q: 糖尿病の定期検査は健康保険が使えますか?
A: はい、糖尿病の定期検査はすべて保険診療の範囲内で行われます。自己負担額は3割の方で、検査内容によりますが数百円〜2,000円程度です。
Q: 頸動脈エコーはどのような人が受けるべきですか?
A: 糖尿病に加えて高血圧・脂質異常症がある方、喫煙習慣のある方、脳梗塞や心筋梗塞の既往がある方に推奨します。動脈硬化の程度を評価し、脳梗塞リスクを早期に発見できます。
Q: HbA1cの目標値は年齢によって変わりますか?
A: 変わります。若年で合併症がない方は6.5%未満を目指しますが、高齢者や合併症が進行している方は7.5〜8.0%未満と緩やかな目標を設定することがあります。患者さん一人ひとりの状況に応じて、医師が目標値を設定します。
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最終更新日:2026-08-28
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。