先生、バセドウ病で放射性ヨウ素治療を勧められたんですが、入院中どうなるんですか?——先日、35代の女性患者さんが、複雑な表情で相談されました。薬物治療で再発を繰り返し、手術も避けたいそうです。実は、放射性ヨウ素治療は内服薬で比較的簡便ですが、低ヨウ素食の準備期間や、服用後の隔離期間、退院後の妊娠タイミングなど、事前の準備が重要なんです。
放射性ヨウ素(RAI)治療は、甲状腺がんの術後アブレーション/再発抑制や、バセドウ病(Graves病)の根治治療の選択肢です。
実施前は低ヨウ素食と内服調整が重要。入院中は決められた安全基準に従い、退院後も一定期間の生活上の配慮が必要です。授乳は中止、妊娠は一定期間避けます。

放射性ヨウ素(RAI:Radioactive Iodine、ヨード内用療法)は、甲状腺がんの術後アブレーション/残存抑制、再発病変の治療、およびバセドウ病(Graves病)の根治治療に用いられます。ヨウ素は甲状腺に取り込まれる性質があり、放射性ヨウ素(I-131)を内服すると、標的となる甲状腺組織を選択的に治療できます。
当院では適応の判定・事前準備・関連診療科との連携を行い、連携病院でのRAI実施をスムーズにサポートします。
1. 適応
- 甲状腺がん関連:分化型甲状腺がん(乳頭癌・濾胞癌)の術後アブレーション、持続/再発病変の治療、遠隔転移のコントロールなど。適応は腫瘍リスク分類・病理・術後サイログロブリン(Tg)・画像所見で総合判断します。
参考:甲状腺がんの種類 / 甲状腺がん術後フォローアップ - バセドウ病(Graves病):抗甲状腺薬で副作用/コントロール不良・再燃を繰り返す場合、妊娠計画や生活背景を考慮して選択。眼症の程度や甲状腺腫の大きさも検討材料です。
関連:バセドウ病(Graves病)
2. 準備(低ヨウ素食・内服調整・検査)
低ヨウ素食(目安 1〜2週間)
体内のヨウ素を減らし、放射性ヨウ素の取り込みを高めるために低ヨウ素食を行います。
控える:海藻(昆布・わかめ・ひじき・海苔)、海藻由来加工品(だし、佃煮)、ヨウ素含有サプリ、ヨードうがい薬、ヨード造影剤既往は事前申告。
使える:米・小麦・いも類、肉・卵、野菜・果物、乳製品は病院指示に従い少量可否が異なります。加工食品は成分表示を確認。
内服薬の調整
- バセドウ病の抗甲状腺薬:治療前に一時中止が必要となる場合があります(薬剤・病状により中止期間が異なるため、必ず指示に従ってください)。
- レボチロキシン(術後の甲状腺ホルモン:がんのアブレーションでは、ホルモン休薬またはrhTSH(チロトロピンアルファ)補充のいずれかでTSHを上げてから実施します。
- ヨウ素を含む薬/うがい薬/サプリ:事前に申告し、指示に従って中止/代替。
実施前の検査・調整
- 採血(TSH, FT4/FT3, Tg/抗Tg抗体 ほか)、必要に応じて妊娠反応、腎機能
- 画像(頸部エコー、必要時シンチ、CT等)
- がん術後例では、病期/リスク評価・TSH目標の共有
3. 入院中の流れ
- 入院・説明:治療目的・手順・安全対策の最終確認。
- 放射性ヨウ素内服(I-131):通常はカプセルで内服。以降は所定の病室で過ごします。
- 安全管理:医療スタッフの指示に従い、病室内での行動・排泄物の取り扱い・洗面/入浴などのルールを遵守します。
- 放射線量の確認:退院の目安は病院の基準に基づき、測定値で判断されます。
4. 退院後の注意(一定期間の生活配慮)
退院後も、小児や妊婦への長時間の至近距離接触を控える、寝室を分ける、タオルや食器を分けて使用、トイレ後の十分な洗浄など、病院で指示された期間は配慮を継続してください。公共交通機関や外出の目安、仕事復帰の可否も個別の投与量と施設基準で異なります。必ず退院時の説明書に従ってください。
5. 授乳・妊娠に関する留意点
- 授乳:RAI実施前に完全中止が必要です(再開不可)。乳汁うっ滞の対策を事前に相談します。
- 妊娠:一定期間の避妊が必要です(一般には数か月〜1年の範囲で個別指示)。バセドウ病治療後の妊娠計画は、甲状腺機能が安定してから主治医と調整します。
- 家族計画:配偶者への影響を含め、適切な時期に再評価(採血・画像)を行います。
よくあるご質問
Q. RAIは何回くらい必要ですか?
目的(がんのアブレーション/再発病変の治療/Graves病)や反応性により回数は異なります。初回後に採血・画像で効果判定を行い、必要時に追加を検討します。
Q. 低ヨウ素食はどの程度厳密に行うべきですか?
病院の指示に従ってください。海藻・ヨウ素含有サプリ・ヨードうがい薬は原則避けます。加工食品は成分表示の確認が有用です。
Q. 退院後、子どもと一緒に過ごしても大丈夫?
投与量と施設基準で異なります。一定期間は密接な接触を避けるなどの配慮を求められます。退院時に渡される文書の指示に従ってください。
Q. 放射性ヨウ素治療とは?
放射性ヨウ素(RAI)治療は、ヨウ素131という放射性同位体を用いた治療法です。甲状腺細胞(または甲状腺がん細胞)がヨウ素を取り込む性質を利用し、放射線で細胞を破壊します。甲状腺がんの術後アブレーションや、バセドウ病の根治治療に用いられます。
Q. 放射性ヨウ素治療の副作用は?
主な副作用は、吐き気・唾液腺の腫れ・味覚障害・頸部の痛みなどです。多くは一過性で数日〜数週間で改善します。長期的な副作用として、二次がんのリスクがわずかに上昇する可能性がありますが、適切な適応で治療すれば利益がリスクを上回ります。
Q. 放射性ヨウ素治療の入院期間は?
通常、投与後3-5日間の入院が必要です。放射線の安全基準に従い、一定期間の隔離生活を送ります。退院後も、家族との密接な接触を一定期間(通常1-2週間)避ける必要があります。
Q. 低ヨウ素食はなぜ必要?
低ヨウ素食(1-2週間)を行うことで、甲状腺細胞のヨウ素取り込み能力を最大化します。これにより、放射性ヨウ素の治療効果を高めます。海藻・ヨウ素含有サプリ・ヨードうがい薬は原則避けます。
この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。年間約480件の甲状腺エコーを実施し、甲状腺疾患の診断・治療に豊富な経験があります。
本ページは一般的な解説です。施設の実施基準・投与量・個別状況により指示は異なります。最終的な判断と具体的な行動は、連携病院の説明・書面に従ってください。
最終更新日:2026-08-23
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。