PCOS・排卵障害の糖代謝評価|OGTT・インスリン抵抗性・体重管理と内科紹介の目安(産婦人科の先生方へ)

PCOS/排卵障害では、妊活・不妊治療の前段階で「糖代謝(耐糖能異常)」を見落とさないことが重要です。
このページでは、OGTTを軸にした評価、インスリン抵抗性(IR)の実務的な見方、体重・生活指導の要点と、内科紹介の目安を整理しました。

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)や排卵障害の背景には、インスリン抵抗性や耐糖能異常が関与することが多く、妊活・不妊治療の進行と並行して代謝評価が必要になります。
国際ガイドラインでは、糖代謝評価として75gOGTTが最も正確な検査として推奨されています。
当院(船橋市・しもやま内科)では、産婦人科の先生方と連携し、OGTT結果・体重・生活背景を踏まえた外来での血糖/体重マネジメントと、必要時の治療導入を行っています。

📌 このページで扱う範囲(妊娠前〜不妊治療期)

  • PCOS/排卵障害における糖代謝評価(OGTT・IR)
  • 体重・生活指導の要点(“やり過ぎない”実務設計)
  • 内科併診・紹介の目安(いつ・何を添えるか)

※妊娠成立後の血糖目標やGDM診断基準は施設プロトコルで運用差があります。本ページは主に「妊娠前〜不妊治療期」の整理を目的とします。

① なぜOGTTが重要か(PCOS/排卵障害の代謝リスク)

PCOSは、体格にかかわらず耐糖能異常や2型糖尿病のリスクが上がり得るため、妊活・不妊治療の入口で代謝評価を組み込むと安全です。
国際ガイドラインでは、糖代謝の評価として75gOGTTが最も正確であり、可能であればOGTTを優先して評価することが推奨されています。

② OGTTの「実務的」な読み方(紹介判断に直結)

OGTTは「空腹時」と「2時間値」を軸に、まず正常/IGT(耐糖能異常)/糖尿病のどこに入るかを整理すると、紹介判断が明確になります。

区分 2時間値(75gOGTT) 実務メモ
正常 < 140 mg/dL 生活指導+必要時フォロー(体重・脂質・肝機能も合わせて)
IGT 140–199 mg/dL 内科併診を検討(妊活中は早めに介入して変動/体重を整える)
糖尿病 ≥ 200 mg/dL 原則、内科紹介(合併症・治療方針・妊娠計画と整合)

※上表の区分は、糖代謝の分類として広く用いられる基準(IGT:2時間値 140–199 mg/dL など)に基づきます。最終判断は患者背景と再検で調整します。

③ インスリン抵抗性(IR)の見方:数字より「状況整理」

IRの評価は多面的ですが、産婦人科外来での実務では「体重・腹囲・脂肪肝リスク」「OGTTの反応」「生活背景」をセットで捉えると、介入の優先順位がつけやすくなります。

IRを疑う“よくある所見”

  • 体重増加・内臓脂肪優位、食後の強い眠気、間食が増えやすい
  • 脂質異常、肝機能(ALT高め)などの代謝合併
  • OGTTで2時間値が高め(IGT域)や、空腹時も高め

実際の外来診療では、IRが疑わしい場合ほど「完璧な食事」よりも、継続できる体重/間食/夜食の整理を先に決めるほうが結果的に改善が早い印象です。

④ 体重・生活指導:妊活を止めない“現実解”

体重管理は重要ですが、妊活・不妊治療期は負荷が高くなりやすいため、「できることを絞る」設計が実務向きです。

  • 最初の1〜2週間は主食量・間食・夜食の見直しを優先(いきなり全制限にしない)
  • “運動”は短時間×高頻度(例:食後10分歩行)を優先
  • 体重・月経・食後症状と合わせて、OGTTやHbA1cの変化で評価

⑤ 内科紹介の目安(迷いどころを明文化)

次のいずれかに当てはまる場合は、妊活・不妊治療と並走して内科併診することで、短期間での代謝安定化が期待できます。

  • OGTT 2時間値がIGT(140–199)、または糖尿病域(≥200)
  • 体重増加が著明、脂質異常・肝機能異常など代謝合併が強い
  • 生活指導を行っても改善が乏しく、治療導入や評価設計に迷う
  • 妊娠計画(時期・治療ステップ)と代謝管理を同時に調整したい

紹介状には、月経歴・妊活状況(治療ステップ)・身長体重推移・OGTT(各時点)・HbA1c・脂質・肝機能・既往歴をご記載いただけると初回からスムーズです。

📑 ご紹介の流れ(返書・連絡手段)

初診で評価(OGTT結果の整理、生活背景の確認、必要に応じ追加採血)を行い、方針をまとめた返書を原則1週間以内にFAXいたします。
周産期や生殖医療の方針(分娩施設・治療計画)に合わせて、役割分担をご相談ください。

❓ よくあるご質問(PCOS/排卵障害 × 糖代謝)

PCOSでは、HbA1cや空腹時血糖が正常でもOGTTをやるべきですか?
はい。PCOSでは耐糖能異常が隠れることがあり、妊娠希望・不妊治療前後はOGTTで評価しておくと回り道が減ります。リスク因子(肥満、家族歴、既往GDMなど)があれば優先度は上がります。
OGTTの2時間値が140〜199 mg/dL(IGT)のとき、産婦人科で何をするのが現実的ですか?
まず生活習慣介入(体重・運動・食後高血糖の是正)を“妊活治療の一部”として位置付け、同時に内科併診を検討します。妊活のタイムラインに合わせて介入強度を上げるのがポイントです。
空腹時インスリンやHOMA-IRは全例で測るべきですか?
全例ルーチンより、目的がある症例に限定するのが実務的です。測定法や解釈が安定しにくい点があり、まずはOGTT(臨床アウトカムに直結)で耐糖能を押さえるのが優先です。
メトホルミンは「排卵」のために使う薬ですか?
主に代謝面(耐糖能異常、肥満など)の改善目的で検討されます。排卵誘発の設計とは分けて、妊活計画・体重・OGTT所見と統合して適応を判断します。
内科へ紹介する“最低ライン”はどこですか?
OGTT 2時間値が140 mg/dL以上(IGT以上)、HbA1c高値、肥満+合併症、妊娠希望で短期に代謝背景を固定したい場合は、早めの内科併診が有用です。

ご紹介・ご相談の連絡先
047-467-5500 | FAX 047-467-7500

※診療時間外はFAXにてご連絡ください。確認次第、折り返します。

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

📚 参考(ガイドライン等)

  • International evidence-based guideline for PCOS(2023)
  • Diagnosis & Classification of Diabetes(Standards of Care in Diabetes, 2025)

本ページは医療機関向けの連携案内です。具体的な治療や検査値目標は、患者さんの背景(妊活状況・併用薬・合併症など)により調整します。

🔁 関連(兄弟)ページ:妊活・不妊 × 内分泌

03/02/2026