糖尿病内科

緩徐進行1型糖尿病

28/05/2016

緩徐進行1型糖尿病 SPIDDM

2型糖尿病のように始まり、だんだん1型糖尿病の姿が明らかに。

SPIDDM (Slowly Progressive Insulin-dependent (Type 1) Diabetes Mellitus)はその名の通り、何年もかけてゆっくりと膵臓のβ細胞が死滅していく1型糖尿病です。発症当初は膵臓からのインスリン分泌低下が著明ではなく、一見すると2型糖尿病のように見えます。最初のうちは2型糖尿病と思われ内服薬を処方されますが、治療してもよくならず、どんどん悪くなっていきます。2型糖尿病と思われて治療されていて、うまくいっていない方の中にはこのSPIDDMが意外に多いです。数年でインスリン依存状態になるものもあれば10年以上経ってもインスリン依存状態にならないものもあります。このようなタイプが緩徐進行1型糖尿病 SPIDDMです。何年も内服治療を続けるとインスリン分泌がどんどん落ちていくので早期発見が大事ですが、実際、30歳以降に発症した1型糖尿病のうち、40%近くが2型糖尿病と診断されていると報告されています。(Diabetologia. 2019 Apr 10.doi: 10.1007/s00125-019-4863-8.)
このような患者さんに治療にSU剤を使用した群に比べインスリンを使用した群でインスリン分泌能の低下が有意に遅かったという報告がなされています (Tokyo Study:Ann N Y Acad Sci. 1005:362-369,2003)。

緩徐進行1型糖尿病の診断基準をお示しします。

緩徐進行1型糖尿病の診断基準(2012)

緩徐進行1型糖尿病の診断基準(2012)

Maruyama T, et al: Multicenter prevention trial of slowly peogressive type 1 diabetes with small dose of insulin (the Tokyo study):preliminant report.Ann NY Acad Sci 1005:36

抗GAD抗体をチェックすると、弱陽性(少しだけ高い)のが発見の契機となります。

抗GAD抗体のような膵島関連自己抗体は現在または過去の時点において単独または複数陽性で、経過とともにインスリン分泌能が年単位で低下していきます。自己抗体のなかではでGAD抗体価が最も関連し、”GAD抗体≧10U/ml”がひとつのカットオフ値ですが(J Clin Endocrinol Metab 93:2115-2121, 2008)、2016年にGAD抗体の測定方法が変わったため、現在はこのカットオフ値を使用することはできません。

しもやま内科では、初診の患者さんに対して原則としてC-ペプチド(インスリン分泌能)と抗GAD抗体を調べるようにしています。なぜなら、糖尿病治療を開始するにあたり、SPIDDMの患者さんを2型糖尿病と誤診しないことが非常に重要だからです。

SPIDDMにはインスリン治療が必須です。

SPIDDMにはインスリン治療が必須です。最初のうちは内服薬で効果がある例もみられますが、膵臓を刺激してインスリン分泌を促す薬剤はかえって膵臓を疲弊させてしまいます。できるだけ早くインスリン治療を開始して、膵臓の負担をなくしてあげることが重要です。そうすれば膵臓のβ細胞のインスリン分泌機能を温存できます。インスリン治療は続けていく必要がありますが、少ない量で済みます。内服薬で粘って膵臓のβ細胞が死滅してからインスリン治療に切り替える場合はインスリン投与量が増えてしまいます。インスリン投与量が増えると、低血糖のリスクが高くなり、長い間には心血管イベント(心筋梗塞や狭心症)で亡くなるリスクが高くなってしまいます。

インスリン治療が原則ですが、SGLT2阻害薬のような、膵臓にインスリン分泌をさせずに別のルートで血糖を下げる薬を併用することは有意義です。最近になって1型糖尿病にSGLT2阻害薬を併用することが保険診療で認められるようになりました。SPIDDMにも有効です。

2型糖尿病と言われているけど、治療がうまくいっていない患者さんはしもやま内科にご相談ください。

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