糖尿病内科

糖尿病教室(5) 合併症はこんなに怖い

投稿日:19/04/2019 更新日:

糖尿病の合併症はこんなに怖い

神経障害

糖尿病神経障害

糖尿病神経障害

糖尿病の神経障害は、障害を受ける神経の種類によって以下のように分かれます。

感覚神経の障害:感覚・近くをつかさどる神経の障害です。

運動神経の障害:全身の運動をつかさどる神経の障害です。

自律神経の障害:多種多様な仕事をしている、自律神経の障害です。

感覚神経の障害

感覚神経の障害

感覚神経の障害

感覚、知覚の障害では、手先、足先がピリピリ痺れる、ジンジンする。

足に針で刺されるような痛みがあり、夜眠れない。

足の裏が皮をかぶったように感じる。

痛みを感じなくなる、触ってもわからない。

こむら返りをよく起こす。

などの症状が生じます。

自律神経障害

自律神経障害

自律神経障害

自律神経の障害では、胃腸の調子が悪くなり便秘、下痢などを起こしやすくなります。

立ちくらみがする。

汗をかきにくい。

残尿がある。

性機能低下など

が生じます。いずれも生活の質(QOL)を著しく下げるものです。また、厄介なことに一度起きてしまうと、そこから糖尿病治療を強化してもなかなか消えません。

神経障害への対応

神経障害への対応

糖尿病神経障害への対応ですが、神経障害を起こしてしまうと直すよい方法がないので予防のために血糖コントロールが大切です。
神経障害があると、足にけがをしても痛みを感じないため大したことはないと思ってしまいますが、糖尿病のコントールが悪いと感染に対しても弱くなりますので、ひどい感染を起こします。

足をよく観察しましょう。

傷はないか、もし傷はなくても魚の目、タコはないか、爪の手入れはしているか、水虫は治療されているかを確認しましょう
こういったものが感染の原因になります。

糖尿病性壊疽

糖尿病性壊疽

足にできた傷をほうっておくとこのような壊疽になります。
足の指が溶けてしまっています。糖尿病患者さんでは血流も悪いため傷の治りが悪く
治療のためには広範囲に切除することになり下腿から切断せざるを得ないこともあります。

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症を起こすと視力が低下し、最終的には失明することもあります。
我が国では毎年1万2,000人程度が失明しますが、緑内障と並んで失明原因の2割を占めるのが糖尿病網膜症です。
目の奥には、光を感じる細胞の集まった網膜があります。カメラでいえばフィルムに相当し、非常に大事なところです。網膜には毛細血管が網の目のように張り巡らせられていますが、高血糖が続くと細い血管が徐々に詰まってきます。何年もかけて徐々に視力が落ち、しまいには失明します。

単純網膜症

単純網膜症

(左)正常な人の眼底 (右)単純網膜症の眼底

正常な人の眼底は、毛細血管が網の目のように張り巡らされています。初期の網膜症(単純網膜症)になると、細い血管が詰まってきます。そこから出血が起きてきます(眼底出血といいます)。最初は少しですが、だんだん眼底出血が広がってきます。

単純網膜症

単純網膜症

進行してくるとこうなります。

(左)前増殖網膜症 (右)増殖網膜症

前増殖網膜症になると、毛細血管があらかた詰まってしまい、太い血管しか残っていない状態です。光を感じる細胞はかなり抜け落ちています。しかし、ここまで来ても、視力低下を自覚することは困難です。増殖網膜症になると、さすがに視力低下を自覚しますが、網膜はほとんど潰れてしまい、眼底出血で真っ赤です。もはや回復は不能です。

網膜症をよくするには

網膜症をよくするには

糖尿病網膜症にならないようにするにはどうすればよいでしょうか。それは、血糖コントロールを十分にすることです。HbA1c 7%未満(=6.9%以下)がここでも出てきます。これを目標に頑張りましょう。ただし、既に増殖網膜症がある患者さんの血糖を急激に下げると、網膜症が悪化してしまうことがあります。そんな場合にはゆっくり時間をかけて下げていきます。そのためにも、事前に眼科受診をしていることが重要です。

定期的な眼科受診を

定期的な眼科受診を

糖尿病網膜症で失明するには、5-10年以上の長い経過を経てそこに至ります。毎年1回の定期受診をしていれば、知らない間に網膜症が進行してしまうなどということは考えにくいです。「自覚症状がないから」と言っている人が眼科受診すると眼底出血していることが往々にしてあります。自覚症状がなくても、年に1回は眼科受診をしましょう。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は、血糖コントロールが悪い状態でいることで腎機能低下が生じる合併症です。最終的には腎不全となり、人工透析が必要になるケースが少なくありません。現在、我が国で人工透析を受ける方の2人に1人がは糖尿病が原因であるという現実を知ってください。

糖尿病性腎症は増加している

糖尿病性腎症は増加している

過去数十年の間、我が国では糖尿病患者さんの数が右肩上がりで増え続けました。その結果、2000年代に入ってからは糖尿病が人工透析導入の原因となる病気のナンバーワンになっています。それも、他の疾患を圧倒的に引き離しています。

糖尿病性腎症の症状

糖尿病性腎症の症状

なぜ、透析になるほど糖尿病性腎症が進んでしまうことが避けられないのでしょうか?

それは、他の合併症と同じく初期には自覚症状がほとんどないからです。初期には精密な検査でしか現れない僅かな変化(尿中アルブミンなど)しかなく、自覚症状はほぼありません。しかし、その時期に手を打たないと糖尿病性腎症はどんどん進行していきます。そのうち、体がむくむ(浮腫)、貧血(腎性貧血)、体がだるい・食欲がないなど(尿毒症)の症状が出るようになってきます。この時点で気づいても、残念ながら手遅れです。1年後に透析開始だったのを2年後に引き延ばすのがやっとです。透析を免れるために治療を頑張らないといけないのは、自覚症状がない初期のうちなのです。

糖尿病性腎症から透析へ

糖尿病性腎症から透析へ

人工透析は、腎機能がほとんどなくなってしまった方が生きて行くために行う治療です。これを週3回程度行わないと、生命が維持できません。週3回、1回4時間拘束されるうえ、透析終了後にはぐったり疲れてしまう、透析中には血圧が下がったり、不整脈が出るなど合併症も少なくありません。何より、2型糖尿病から人工透析になった患者さんの5年生存率は50%です。人工透析にならないように、糖尿病の治療を早期から頑張りましょう。

糖尿病性腎症の病期

糖尿病性腎症の病期

早期とはいつでしょうか?

糖尿病性腎症は1期から5期までに分かれています。1期は正常、5期が透析が必要な状態です。4期になってから治療を強化しても、透析を引き延ばすくらいしかできず、透析を免れるようにするのは難しいです。3期ですと、4期に近くない限りは頑張ればなんとか透析を免れることができるかもしれません。しかし、2期の方より減塩、蛋白制限などかなり厳格にやることを求められ、大変です。できれば微量アルブミン尿が出ているだけの2期のうちに発見し、しっかりコントロールすることで、そのまま数十年間悪化せずに腎機能を維持したいものです。そしてそれは決して難しいことではありません。

糖尿病性腎症を防ぐには

糖尿病性腎症を防ぐには

腎機能を悪化させず、人工透析を受けないで済むようにするためには、他の合併症と同じく血糖をコントロールすること、血圧をコントロールすること、塩分制限、蛋白制限が必要になります。この3本柱が腎機能を悪化させないためには非常に重要です。

腎機能を低下させないために、一緒に治療を頑張りましょう。

動脈硬化の合併症

糖尿病合併症 動脈硬化

糖尿病合併症: 動脈硬化

最も恐ろしい合併症が動脈硬化の合併症です。糖尿病患者さんは心臓の冠状動脈が細くなる・詰まってしまう(狭心症、心筋梗塞)、脳の血管が詰まってしまう脳梗塞、足の血管が細くなる・詰まってしまう(閉塞性動脈硬化症、足壊疽など)を起こしやすくなります。

動脈硬化の起きる様子

動脈硬化の起きる様子

健康な方の動脈は、右上図のように、内膜・中膜・外膜の3層構造をしています。糖尿病のコントロールが悪い状態でいると、右下図のように動脈の壁が厚くなり、盛り上がってきて、内腔が狭くなってきます。まるで古い水道管が錆びて水の流れが悪くなってしまうようなものです。これが全身の血管の至る所で起こってきます(左図)。心臓の冠状動脈、脳動脈、足の動脈がこのようになっていくのです。

糖尿病は狭心症や心筋梗塞を起こす

糖尿病は狭心症や心筋梗塞を起こす

代表的な動脈硬化性疾患といえば、心臓の冠状動脈が狭窄する狭心症や、詰まってしまう心筋梗塞でしょう。左の図は健康な方の冠状動脈を造影剤で造影した写真です。3本の太い冠状動脈がきれいに映し出されています。一方、右の写真は左の冠状動脈が根本で狭窄しているため、造影されず、虫食い状に造影されます。このような病変があると、軽い運動で胸痛や息切れがしてしまうので日常生活に支障を来します。何より、狭窄したところが完全に詰まってしまえば心筋梗塞になり、心臓の左半分が壊死してしまうため、生命の危険があります。

動脈硬化の危険因子

動脈硬化の危険因子

動脈硬化の危険因子は糖尿病だけではありません。

高血圧症、脂質異常症、肥満(特に内蔵肥満)、喫煙、加齢が動脈硬化の危険因子です。

糖尿病患者さんは動脈硬化の危険が高い

糖尿病患者さんは動脈硬化の危険が高い

健康な人の心筋梗塞のリスクを1と仮定しましょう。

糖尿病があるだけで2倍以上のリスクです。高血圧症も同様のリスクです。ご注意いただきたいのは、それぞれ糖尿病・高血圧症だけの場合のリスクであるということです。糖尿病があって、高血圧症もあって・・・という方のほうが多いと思います。複数のリスク(マルチプルリスク)を抱えている方は、そのリスクが5倍にも10倍にもなってしまうことを覚えていてください。

全ての危険因子をコントロールする

全ての危険因子をコントロールする

動脈硬化を予防するには、すべての危険因子をコントロールすることが不可欠です。

残念ながら、糖尿病だけ頑張っても十分な治療はできません。血糖を下げるだけでなく、血圧コントロール、脂質のコントロールもしっかりすることが重要なのです。そうすることで初めて動脈硬化の予防ができるのです。

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