まず結論:粘液水腫性昏睡は命に関わる緊急疾患です。
粘液水腫性昏睡(myxedema coma)は、甲状腺機能低下症が極度に進行した最重症型で、致死的な経過をたどることがあります。主症状は低体温(35℃以下)・意識障害・徐脈・低血圧。誘因として感染症・甲状腺ホルモン薬の中断・寒冷曝露などがあり、発症した場合は緊急入院・集中治療(ICU管理)が必要です。甲状腺機能低下症の治療を自己判断で中断しないことが最も重要な予防策です。
そもそも粘液水腫昏睡って?
甲状腺機能低下症が極度に進行し、体温・意識・呼吸・血圧など生命維持に関わる機能が低下した状態です。「昏睡」という名前からイメージされる通り、意識がもうろうとして最終的には昏睡状態に至ります。
補足すると「粘液水腫」という名前ですが、皮膚がブヨブヨに腫れるわけではありません(昔そう呼ばれていた名残です)。実際には全身の代謝が極端に落ちて、生命の危機に陥る状態——これが粘液水腫昏睡です。
なぜ起こるのか
甲状腺機能低下症の治療を自己判断で中断してしまった場合が最も多いです。「薬を飲むのを忘れて何ヶ月も経ってしまった」というケースや、「症状がないからもう大丈夫」と思って通院をやめてしまったケース。
その他、感染症や手術、外傷、寒さへの曝露などがきっかけになることもあります。
こんな症状が出たら要注意
- 極度の寒がりと体温低下——体温が35度以下になることも
- 意識の低下——ボンヤリしている、反応が鈍い、呼びかけに答えない
- 呼吸が遅くて浅い
- 顔やまぶたの腫れぼったさ
- 徐脈(脈拍が極端に遅い)
- 低血圧
🚨 低体温・意識障害など上記の症状が出たら
ためらわずに119番通報(救急車要請)を!
粘液水腫性昏睡は在宅での対応は不可能です。一刻も早く救急医療機関を受診してください。
甲状腺機能低下症の治療中で、「最近薬を飲んでいない」という方——今すぐ再開してください。そして早めに医療機関を受診しましょう。粘液水腫昏睡は、適切な甲状腺ホルモン補充を続けていればほぼ防げる病気です。
よくある質問(FAQ)
Q. 粘液水腫性昏睡の症状は?
主な症状は低体温(35℃以下)、意識障害(昏睡)、呼吸抑制です。その他、徐脈、低血圧、低血糖、低ナトリウム血症などを伴います。甲状腺機能低下症の既往がある方で、これらの症状が出た場合は緊急受診が必要です。
Q. 粘液水腫性昏睡の原因は?
甲状腺機能低下症の治療中断・放置が根本原因です。誘因として感染症、寒冷曝露、鎮静薬・麻薬の使用、外傷・手術などがあります。高齢者で甲状腺機能低下症の既往がある方は特に注意が必要です。
Q. 粘液水腫性昏睡の診断基準は?
臨床症状(低体温・意識障害・呼吸抑制)と血液検査(FT4低値・TSH高値)で診断します。重症度評価には日本甲状腺学会の診断基準が用いられます。甲状腺機能低下症の既往または未治療の方が対象です。
Q. 粘液水腫性昏睡の治療法は?
救急措置として静注レボチロキシン(甲状腺ホルモン)、副腎皮質ステロイド、受動的保温を行います。呼吸抑制があれば人工呼吸管理、低血糖があればグルコース投与も必要です。ICUでの集中治療が推奨されます。
Q. どのくらいの頻度で起こる?
非常に稀です。甲状腺機能低下症患者さんのうち、粘液水腫性昏睡を発症するのは0.1%未満と言われています。ただし、高齢者や薬を中断している方はリスクが高いので注意が必要です。
Q. 治療すれば回復する?
早期発見・早期治療が鍵です。甲状腺ホルモンの静脈注射や全身管理で回復が見込めますが、発見が遅れると命に関わることもあります。だからこそ「なる前の予防」が何より大事です。
Q. 甲状腺機能低下症で意識障害が出ることは?
はい、重度の甲状腺機能低下症では意識障害が出ることがあります。初期は倦怠感・眠気・反応鈍化から始まり、進行すると昏睡状態になります。粘液水腫性昏睡は甲状腺機能低下症の最重症型で、死亡率が高い緊急疾患です。
Q. 粘液水腫性昏睡の死亡率は?
報告によって差がありますが、粘液水腫性昏睡の死亡率は30〜60%と非常に高いとされています。高齢者や合併症のある患者さんでは特に予後不良です。しかし早期発見・早期治療により死亡率は低下します。予防が最も重要です。
Q. 粘液水腫性昏睡の予防方法は?
最も重要な予防法は、甲状腺機能低下症の治療を継続することです。甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン)を医師の指示通りに服用し、自己判断で中断しないことが最大の予防策です。定期的な通院と血液検査(TSH・FT4)によるコントロール状態の確認も重要です。感染症などで体調が優れない時は早めに受診しましょう。
この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。年間約480件の甲状腺エコーを実施し、甲状腺疾患の診断・治療に豊富な経験があります。
最終更新日:2026-08-23
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。