甲状腺機能低下症(橋本病)の検査と症状|TSH・FT4の基準値・数値の見方・治療開始目安



🔊 このページのポイント

  • 甲状腺機能低下症の検査は血液検査(TSH・FT4・FT3・甲状腺抗体)甲状腺エコーが中心
  • TSH高値+FT4低値なら甲状腺機能低下症と診断
  • 橋本病(慢性甲状腺炎)が原因のことが多い
  • 検査費用は血液検査約2,000〜3,500円、エコー検査約1,000〜1,500円(3割負担)
  • 甲状腺ホルモン剤を服用中の方は採血前に服用を控える必要あり

甲状腺機能低下症では、体重増加や脱毛、倦怠感、月経不順などの症状が現れることがあります。早期に診断してホルモン補充療法を開始すれば、症状は改善に向かいます。

実は、これは甲状腺機能低下症(橋本病など)の典型的な症状で、甲状腺ホルモンが不足することにより全身の代謝が低下する病気です。早期に診断してホルモン補充を開始すれば、症状は著しく改善します。

このページでは、甲状腺機能低下症の検査について、検査の種類・流れ・費用・結果の見方を専門医がわかりやすく解説します。

甲状腺機能低下症の検査と症状|専門医が解説|船橋市 しもやま内科

甲状腺機能低下症の検査の種類

甲状腺機能低下症の診断には、以下の検査を行います。

1. 血液検査(最も重要)

甲状腺機能低下症の診断で最も重要な検査です。以下の項目を測定します。

TSH(甲状腺刺激ホルモン)

  • 最も重要なスクリーニング項目です
  • 甲状腺機能が低下すると、脳が「もっと甲状腺ホルモンを作れ」と指令を出すため、TSHが上昇します
  • 正常値: 0.5〜5.0 mIU/L(施設により異なる)
  • 甲状腺機能低下症: TSHが正常値より高い(通常10 mIU/L以上)

FT4(フリーT4)

  • 甲状腺が産生するホルモンの一種で、血液中を遊離している(タンパク質と結合していない)形
  • 正常値: 0.9〜1.7 ng/dL
  • 甲状腺機能低下症: FT4が正常値より低い

FT3(フリーT3)

  • FT4が変換された、より活性の高いホルモン
  • 正常値: 2.3〜4.3 pg/mL
  • 甲状腺機能低下症では、FT4より遅れて低下することが多い

甲状腺自己抗体

  • TPO抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体): 橋本病の診断に重要
  • Tg抗体(抗サイログロブリン抗体): 橋本病の診断に補助的に使用
  • これらの抗体が陽性なら、橋本病が原因の甲状腺機能低下症と診断されます

2. 甲状腺エコー検査(超音波検査)

甲状腺の形・大きさ・内部構造を確認します。

  • 橋本病の特徴: 甲状腺がびまん性に腫大し、内部エコーが不均一(偽小葉構造)
  • 痛みなし: 首にジェルを塗ってプローブを当てるだけ
  • 所要時間: 約10〜15分
  • 当日結果説明: 検査後すぐに結果を説明します

3. その他の検査(必要に応じて)

  • コレステロール: 甲状腺機能低下症では高値になることが多い
  • CK(クレアチンキナーゼ): 筋酵素で、甲状腺機能低下症で上昇することがある
  • 貧血検査: 甲状腺機能低下症では貧血を合併することがある

甲状腺機能低下症の検査費用

検査費用は、健康保険(3割負担)の場合、以下の目安です。

検査項目 費用(3割負担)
血液検査(TSH・FT4・FT3・抗体) 約2,000〜3,500円
甲状腺エコー検査 約1,000〜1,500円
合計(検査費用のみ) 約3,000〜5,000円

※表示費用は検査代のみの目安です。実際の窓口支払額はこれに初診料・再診料や判断料などが加算されるため、初診時の合計で約4,000〜6,000円程度となります。

甲状腺機能低下症の検査の流れ

しもやま内科では、初診当日から検査が可能です。仕事や子育てで忙しい方でも、スムーズに受診できます。

STEP 1: 問診

  • 症状(疲れ・太る・冷え・むくみ・便秘など)を確認
  • 既往歴・家族歴・服用薬を確認
  • 所要時間: 約10〜15分

STEP 2: 採血

  • TSH・FT4・FT3・甲状腺抗体を測定
  • 所要時間: 約5分
  • 検査前の準備: 特別な準備は不要ですが、甲状腺ホルモン剤(レボチロキシン)を服用中の方は、採血前に服用を控えてください(服用後に採血するとFT4が高値に出るため)

STEP 3: 甲状腺エコー検査

  • 首にジェルを塗ってプローブを当て、甲状腺の形・大きさ・内部構造を確認
  • 所要時間: 約10〜15分
  • 痛みはありません

STEP 4: 結果説明

  • 血液検査結果: 通常1〜2週間後
  • エコー検査結果: 当日説明
  • 結果に基づいて、治療方針を相談

甲状腺機能低下症の検査結果の見方

典型的な甲状腺機能低下症のパターン

検査項目 甲状腺機能低下症 正常
TSH 高値(通常10 mIU/L以上) 0.5〜5.0 mIU/L
FT4 低値 0.9〜1.7 ng/dL
FT3 低値(FT4より遅れて低下) 2.3〜4.3 pg/mL
TPO抗体 陽性(橋本病の場合) 陰性

潜在性甲状腺機能低下症

TSHは高値だが、FT4が正常範囲内の状態です。症状が軽い場合や、妊娠希望の場合は治療を検討します。

  • TSH: 高値(通常4.5〜10 mIU/L)
  • FT4: 正常
  • 治療: 症状・妊娠希望・抗体陽性を考慮して判断

甲状腺機能低下症の症状チェック

甲状腺機能低下症は、全身に症状が現れるため、他の病気と間違われやすいです。以下の症状が続く場合は、検査をおすすめします:

全身症状

  • だるさ、疲れやすい、眠気
  • 体重増加(食欲は変わらないのに太る)
  • 寒がり(冷房が苦手になる)
  • むくみ(顔や手足が浮腫みやすい)
  • 筋力低下、筋肉痛

皮膚・毛髪・声の変化

  • 乾燥肌、肌荒れ
  • 脱毛(髪の毛が抜けやすい)
  • かかとのひび割れ
  • 声のかすれ、声が低くなる

循環器・消化器症状

  • 脈が遅い(徐脈)
  • 血圧のうち下の数値が高い(拡張期血圧上昇)
  • 食欲低下
  • 便秘

女性特有の症状

  • 月経異常(月経量が多くなる・周期が乱れる)
  • 不妊
  • 流産リスク上昇(未治療の場合)

これらの症状だけでは他疾患と区別が難しいため、血液検査(TSH・FT4)甲状腺エコーで正確な診断が必要です。

📄 よくあるご質問(FAQ)

甲状腺機能低下症の症状は?どんなことに気づけば受診すべき?

甲状腺機能低下症の代表的な症状:(1)全身の倦怠感・だるさ(最も多い)(2)眠気・集中力低下(3)体重増加・むくみ(顔・手足)(4)寒がりになった・冷え(5)肌の乾燥・髪の毛が抜ける(6)声がかすれる(7)便秘(8)気分の落ち込み・無気力(9)脈が遅い(徐脈)(10)筋肉痛・関節痛。これらの症状が複数・数週間以上続く場合は、甲状腺機能低下症の可能性があります。特に「最近なんとなく調子が悪い」「疲れが取れない」という方は、一度血液検査(TSH・FT4)を受けることをおすすめします。

甲状腺機能低下症の検査方法と費用を教えてください

甲状腺機能低下症の診断には血液検査が基本です。検査内容:(1)TSH(甲状腺刺激ホルモン)(2)FT4(遊離T4)(3)FT3(遊離T3)(4)抗TPO抗体・抗Tg抗体(橋本病の診断に必要)。費用(保険3割負担):TSH+FT4のみなら約1,500〜2,500円、抗体検査を追加すると約3,000〜5,000円程度。甲状腺エコー(超音波)を併用する場合は約3,000〜4,000円追加。当院では初診時に必要な検査をまとめて同日実施し、結果説明もその日に行っています。

TSH・FT4・FT3の基準値と数値の見方を教えてください

当院の基準値(検査機関により若干異なります):TSH:0.4〜4.0 mIU/L、FT4:0.9〜1.7 ng/dL、FT3:2.3〜4.3 pg/mL。数値の見方の基本:(1)TSH高値+FT4低値=顕性甲状腺機能低下症(治療必要)(2)TSH高値+FT4正常=潜在性甲状腺機能低下症(経過観察または治療開始を検討)(3)TSH低値+FT4高値=甲状腺機能亢進症(4)TSH低値+FT4正常=潜在性甲状腺機能亢進症。FT3は重症度評価に用いられ、FT3のみ低い場合は低T3症候群の可能性があります。

FT4の数値が高い・低い場合の意味を教えてください

FT4(遊離T4)の値の読み方:FT4が低い(0.9 ng/dL未満)→甲状腺機能低下症を示唆。治療開始の判断や、既にチラーヂンを服用中の方は補充不足の可能性。FT4が高い(1.7 ng/dL超)→甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)を示唆、またはチラーヂンの過剰投与の可能性。FT4が基準範囲内でも、TSHとの組み合わせで潜在性機能異常が診断できるため、単独の数値だけで判断せず、TSHとのバランスが重要です。

甲状腺機能低下症の治療開始の目安は?(TSHいくつから治療?)

甲状腺機能低下症の治療開始目安:(1)TSHが10 mIU/L以上→治療開始推奨(顕性機能低下症)(2)TSHが5〜10 mIU/LでFT4低い→治療開始推奨(3)TSHが5〜10 mIU/LでFT4正常(潜在性)→症状があるか妊娠希望・抗体陽性なら治療開始検討(4)TSHが3〜5 mIU/Lで抗体陽性→妊娠希望の場合は治療開始検討(5)TSHが基準範囲内(0.4〜4.0)→治療不要、半年〜1年後に再検。治療はチラーヂン(レボチロキシン)1日1回経口投与で、1〜2ヶ月ごとにTSHを確認しながら用量調整します。

甲状腺機能低下症と診断されたらどんな治療をするの?

治療はチラーヂン(レボチロキシンナトリウム)による甲状腺ホルモン補充療法が基本です。特徴:(1)1日1回朝食前(または就寝前)に服用(2)錠剤は非常に小さく(25〜50μg)、飲みやすい(3)治療開始後1〜2週間で症状が改善し始める(4)TSHを目標範囲に調整しながら用量を決定(5)基本的には生涯服用が必要だが、定期的な通院(3〜6ヶ月に1回)と採血だけで管理可能(6)副作用のリスクが低く、過剰投与に注意すれば安全に使用できる治療です。治療により症状は著しく改善し、日常生活に制限なく過ごせます。

甲状腺機能低下症の栄養・食事で気をつけることは?

甲状腺機能低下症の食事のポイント:(1)チラーヂン服用のタイミング:食前30分または就寝前に服用し、大豆製品(豆腐・納豆)・鉄剤・カルシウム剤とは4時間以上間隔を空ける(2)ヨウ素過剰摂取を避ける:昆布・わかめ・海苔などの海藻を大量に食べ過ぎない(3)セレンを含む食品:魚介類・卵・ナッツ類(ブラジルナッツなど)は甲状腺機能に良い影響(4)バランスの良い食事が基本:特定の食品だけに頼らず、全体的な栄養バランスを整えることが最も大切です。

甲状腺機能低下症で太るのはなぜ?ダイエット方法は?

甲状腺機能低下症で体重が増加する原因は:(1)基礎代謝の低下(甲状腺ホルモンは代謝を調節)(2)粘液水腫によるむくみ(水分貯留で2〜3kg増加することも)(3)活動量の減少(倦怠感で運動量が減る)。体重管理のポイント:(1)まずチラーヂンで甲状腺機能を正常化することが最優先→機能正常化後は代謝が戻り体重増加は止まります(2)むくみは治療開始後3〜4週間で改善(3)甲状腺機能正常化後に通常のダイエット(適度な運動・カロリーコントロール)が効果的。治療前に無理なダイエットをするとかえって体調を崩すことがあるので注意してください。

甲状腺機能低下症は治りますか?治らない病気ですか?

甲状腺機能低下症(橋本病)は自己免疫疾患であり、現時点では完全に治す治療法はありません。しかし、「治療ができない病気」ではありません。チラーヂン(甲状腺ホルモン補充薬)を1日1回服用するだけで甲状腺機能を正常に保つことができ、症状なく普通の生活を送ることができます。イメージとしては「近視の人がメガネをかける」のと同じで、薬を飲めば正常な状態を維持できる病気です。高血圧や糖尿病と同様に、長く付き合いながらも健康に過ごせる病気です。

🚨 緊急を要する場合: 急激な意識障害・低体温・徐脈(脈拍40未満)・呼吸が浅いなどの症状がある場合は粘液水腫性昏睡の可能性があります。ためらわずに 119番(救急車)へご連絡をおすすめします。

監修:しもやま内科 院長 下山立志(総合内科専門医・糖尿病専門医・循環器専門医・甲状腺専門医)

最終更新日:2026年8月23日

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最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

10/10/2025