甲状腺機能低下症の検査|TSH・FT4・抗体検査の流れと費用|専門医が解説

📘 まず結論

  • 甲状腺機能低下症の検査は、血液検査(TSH・FT4・FT3・甲状腺抗体)甲状腺エコー検査が中心です
  • TSHが高値でFT4が低値なら甲状腺機能低下症と診断されます
  • 橋本病が原因のことが多いです
  • 検査費用は血液検査で約5,000〜8,000円、エコー検査で約3,000〜5,000円(3割負担の場合)
  • 検査前に特別な準備は不要ですが、甲状腺ホルモン剤を服用中の方は採血前に服用を控える必要があります

「最近急に太って、髪が抜けやすくなって、朝起きられなくなった……」——先日、35代の女性患者さんが、涙ながらに相談されました。3ヶ月で5kg増加し、生理も不順になったそうです。

実は、これは甲状腺機能低下症(橋本病など)の典型的な症状で、甲状腺ホルモンが不足することにより全身の代謝が低下する病気です。早期に診断してホルモン補充を開始すれば、症状は劇的に改善します。

このページでは、甲状腺機能低下症の検査について、検査の種類・流れ・費用・結果の見方を専門医がわかりやすく解説します。

甲状腺機能低下症の検査の種類

甲状腺機能低下症の診断には、以下の検査を行います。

1. 血液検査(最も重要)

甲状腺機能低下症の診断で最も重要な検査です。以下の項目を測定します。

TSH(甲状腺刺激ホルモン)

  • 最も重要なスクリーニング項目です
  • 甲状腺機能が低下すると、脳が「もっと甲状腺ホルモンを作れ」と指令を出すため、TSHが上昇します
  • 正常値: 0.5〜5.0 mIU/L(施設により異なる)
  • 甲状腺機能低下症: TSHが正常値より高い(通常10 mIU/L以上)

FT4(フリーT4)

  • 甲状腺が産生するホルモンの一種で、血液中を遊離している(タンパク質と結合していない)形
  • 正常値: 0.9〜1.7 ng/dL
  • 甲状腺機能低下症: FT4が正常値より低い

FT3(フリーT3)

  • FT4が変換された、より活性の高いホルモン
  • 正常値: 2.3〜4.3 pg/mL
  • 甲状腺機能低下症では、FT4より遅れて低下することが多い

甲状腺自己抗体

  • TPO抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体): 橋本病の診断に重要
  • Tg抗体(抗サイログロブリン抗体): 橋本病の診断に補助的に使用
  • これらの抗体が陽性なら、橋本病が原因の甲状腺機能低下症と診断されます

2. 甲状腺エコー検査(超音波検査)

甲状腺の形・大きさ・内部構造を確認します。

  • 橋本病の特徴: 甲状腺がびまん性に腫大し、内部エコーが不均一(偽小葉構造)
  • 痛みなし: 首にジェルを塗ってプローブを当てるだけ
  • 所要時間: 約10〜15分
  • 当日結果説明: 検査後すぐに結果を説明します

3. その他の検査(必要に応じて)

  • コレステロール: 甲状腺機能低下症では高値になることが多い
  • CK(クレアチンキナーゼ): 筋酵素で、甲状腺機能低下症で上昇することがある
  • 貧血検査: 甲状腺機能低下症では貧血を合併することがある

甲状腺機能低下症の検査費用

検査費用は、健康保険(3割負担)の場合、以下の目安です。

検査項目 費用(3割負担)
血液検査(TSH・FT4・FT3・抗体) 約5,000〜8,000円
甲状腺エコー検査 約3,000〜5,000円
合計 約8,000〜13,000円

※費用は施設により異なります。初診料・再診料は別途必要です。

甲状腺機能低下症の検査の流れ

しもやま内科では、初診当日から検査が可能です。仕事や子育てで忙しい方でも、スムーズに受診できます。

STEP 1: 問診

  • 症状(疲れ・太る・冷え・むくみ・便秘など)を確認
  • 既往歴・家族歴・服用薬を確認
  • 所要時間: 約10〜15分

STEP 2: 採血

  • TSH・FT4・FT3・甲状腺抗体を測定
  • 所要時間: 約5分
  • 検査前の準備: 特別な準備は不要ですが、甲状腺ホルモン剤(レボチロキシン)を服用中の方は、採血前に服用を控えてください(服用後に採血するとFT4が高値に出るため)

STEP 3: 甲状腺エコー検査

  • 首にジェルを塗ってプローブを当て、甲状腺の形・大きさ・内部構造を確認
  • 所要時間: 約10〜15分
  • 痛みはありません

STEP 4: 結果説明

  • 血液検査結果: 通常1〜2週間後
  • エコー検査結果: 当日説明
  • 結果に基づいて、治療方針を相談

甲状腺機能低下症の検査結果の見方

典型的な甲状腺機能低下症のパターン

検査項目 甲状腺機能低下症 正常
TSH 高値(通常10 mIU/L以上) 0.5〜5.0 mIU/L
FT4 低値 0.9〜1.7 ng/dL
FT3 低値(FT4より遅れて低下) 2.3〜4.3 pg/mL
TPO抗体 陽性(橋本病の場合) 陰性

潜在性甲状腺機能低下症

TSHは高値だが、FT4が正常範囲内の状態です。症状が軽い場合や、妊娠希望の場合は治療を検討します。

  • TSH: 高値(通常4.5〜10 mIU/L)
  • FT4: 正常
  • 治療: 症状・妊娠希望・抗体陽性を考慮して判断

甲状腺機能低下症の症状チェック

甲状腺機能低下症は、全身に症状が現れるため、他の病気と間違われやすいです。以下の症状が続く場合は、検査をおすすめします:

全身症状

  • だるさ、疲れやすい、眠気
  • 体重増加(食欲は変わらないのに太る)
  • 寒がり(冷房が苦手になる)
  • むくみ(顔や手足が浮腫みやすい)
  • 筋力低下、筋肉痛

皮膚・毛髪・声の変化

  • 乾燥肌、肌荒れ
  • 脱毛(髪の毛が抜けやすい)
  • かかとのひび割れ
  • 声のかすれ、声が低くなる

循環器・消化器症状

  • 脈が遅い(徐脈)
  • 血圧のうち下の数値が高い(拡張期血圧上昇)
  • 食欲低下
  • 便秘

女性特有の症状

  • 月経異常(月経量が多くなる・周期が乱れる)
  • 不妊
  • 流産リスク上昇(未治療の場合)

これらの症状だけでは他疾患と区別が難しいため、血液検査(TSH・FT4)甲状腺エコーで正確な診断が必要です。

甲状腺機能低下症の検査でよくある質問

Q. 甲状腺機能低下症の検査は空腹で受けるべき?

甲状腺機能検査(TSH・FT4・FT3)は、空腹・食後を問いません。ただし、コレステロールや血糖値も同時に検査する場合は、空腹での採血をおすすめします。

Q. レボチロキシンを服用中ですが、検査前に飲むべき?

採血前にレボチロキシンを服用しないでください。服用後に採血するとFT4が高値に出るため、正確な評価ができません。採血後に服用してください。

Q. 甲状腺機能低下症の検査結果はどのくらいでわかる?

血液検査結果は通常1〜2週間後にわかります。エコー検査結果は当日に説明します。緊急の場合は、TSHのみを迅速検査で当日に確認することも可能です。

Q. 甲状腺機能低下症の検査は何科で受ける?

内分泌内科または甲状腺専門医のいる内科で受けるのがおすすめです。しもやま内科では、甲状腺専門医が当日エコー検査も行っています。

Q. 甲状腺機能低下症は何歳からなる?

何歳でも発症しますが、女性では30〜50代に多く見られます。橋本病が原因のことが多く、加齢とともに発症リスクが高まります。

Q. 甲状腺機能低下症は治る?

橋本病が原因の甲状腺機能低下症は、完治は難しいですが、レボチロキシン(甲状腺ホルモン剤)で症状をコントロールできます。適切に治療を続ければ、普通の生活が送れます。

Q. 甲状腺機能低下症で血圧は上がる?

はい、拡張期血圧(下の数値)が上昇することがあります。甲状腺ホルモンが不足すると、血管の柔軟性が低下し、血圧が上がることがあります。治療で甲状腺機能が正常に戻れば、血圧も改善することが多いです。

Q. 甲状腺機能低下症で貧血になる?

はい、甲状腺機能低下症では貧血を合併することがあります。甲状腺ホルモンは赤血球の産生にも関与しているため、不足すると貧血になりやすくなります。治療で改善することが多いです。

Q. 甲状腺機能低下症の検査は痛い?

血液検査は通常の採血と同じで、針を刺す時の痛みがあります。甲状腺エコー検査は、首にジェルを塗ってプローブを当てるだけで、痛みはありません

Q. 甲状腺機能低下症の検査前に気をつけることは?

特別な準備は不要ですが、以下の点に注意してください:

  • レボチロキシン服用中の方は、採血前に服用を控える
  • ビオチン(ビタミンB7)サプリメントを服用中の方は、検査2日前から中止(検査結果に干渉する可能性)
  • 普段通りの生活で受診可能

⚕️ 院長の実績と専門性

下山立志は、日本甲状腺学会 甲状腺専門医・日本糖尿病学会 糖尿病専門医・日本循環器学会 循環器専門医の三冠専門医です。

当院では年間480件以上の甲状腺疾患を診療しており、甲状腺機能低下症の診断・治療にも豊富な経験があります。当日エコー検査も可能です。

疲れが取れない」「太りやすい」「冷え性」という方は、ぜひご相談ください。

️ 受診の目安

  • 疲れやすい・眠気が続く方
  • 体重増加・むくみが気になる方
  • 冷え性・便秘で悩んでいる方
  • 検診でTSH高値を指摘された方
  • 甲状腺機能低下症の検査を受けたい方

📞 047-467-5500

関連ページ

参考文献

  • 日本甲状腺学会 編集「甲状腺疾患診療ガイドライン 2022」
  • American Thyroid Association (ATA). "Guidelines for the Management of Hypothyroidism." Thyroid, 2012;22(12):1200-1235
  • Garber JR, et al. "Clinical practice guidelines for hypothyroidism in adults." Thyroid, 2012;22(12):1200-1235
医療者向け補足:甲状腺機能低下症の診断・治療アルゴリズム

診断基準

  • overt hypothyroidism: TSH高値 + FT4低値
  • subclinical hypothyroidism: TSH高値 + FT4正常
  • TPO抗体陽性: 橋本病の診断に有用

治療開始の目安

  • TSH > 10 mIU/L: 治療開始を推奨
  • TSH 4.5-10 mIU/L: 症状・抗体・妊娠希望を考慮して判断
  • 妊娠希望: TSH 2.5 mIU/L以下を目標

レボチロキシン用量調整

  • 初期用量: 12.5-25 μg/日(高齢者はさらに少量から)
  • 維持用量: 1.6-1.8 μg/kg/日(体重ベース)
  • モニタリング: 開始後6-8週でTSH・FT4を測定
  • 目標TSH: 0.5-2.5 mIU/L(年齢・合併症により調整)

相互作用

  • 鉄剤・カルシウム剤・PPI: レボチロキシンの吸収を阻害→4時間以上間隔
  • ビオチン: 検査結果に干渉→検査2日前から中止

最終更新日:2026-08-05

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

10/10/2025