甲状腺内科

甲状腺ホルモンと妊娠

06/10/2017

甲状腺ホルモンと妊娠

妊娠と甲状腺

妊娠と甲状腺

バセドウ病と妊娠

バセドウ病の患者さんの妊娠に関して最も重要なことは、抗甲状腺薬できっちりと甲状腺機能を正常化しておくことです。妊娠中には甲状腺機能は安定化することが多いのですが、少なくとも2か月に1回程度の甲状腺機能検査をすることが望ましいでしょう。

未治療であったり、不完全な治療のため甲状腺機能亢進状態の場合は、流産や早産の率は健常の妊婦さんより若干高くなります。診断がつき次第、治療することによって早く甲状腺機能を正常化することが大事です。

甲状腺刺激物質のTSH受容体抗体 (TRAb)は胎盤を通じて胎児に移行します。この活性が高いと、胎児の甲状腺も刺激して胎児が機能亢進となることがありますが、母親がきちんと抗甲状腺薬を内服していれば、抗甲状腺薬も胎児の方に移行し、一緒に治療されていますので心配は不要です。ただし産婦人科医との密接な連携が大事で、妊娠中は必ず担当医から紹介状を持参して受診してください。

出生後は胎児に移行していた抗甲状腺薬の作用が切れると、TRAbの刺激作用が優位となり、4〜5日経ったころから新生児が一時的な甲状腺機能亢進症を発症する場合もあります。ある程度発症を予測できることが多いです。そのような場合は小児科医との連携も必要です。

健康な方でも、奇形児が生まれてくるのではないかと心配されるものです。抗甲状腺薬の正しい使い方をすれば健常の妊婦さんと全く奇形のリスクは変わりません。心配は不要ですが、出産を予定している方は、必ず担当医と相談してください。

妊娠時の甲状腺ホルモンの重要な役割

卵巣、子宮内膜、トロホブラストに甲状腺ホルモン受容体が発現しており、甲状腺ホルモンが妊娠成立への4つの過程(排卵、受精、卵割、着床)のいずれにも深く関与しています。特に着床において、甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンは、成長因子やサイトカインなどと協調的に作用したり、それらの発現を調整したりすることで重要な役割を果たしています。さらに甲状腺ホルモンは、妊娠成立後の産科異常症(流死産、妊娠高血圧症候群など)の発生にかかわる胎盤形成(トロホブラストの増殖、分泌能、浸潤能)にも深く関係しています。そのため、甲状腺機能異常が不妊症や産科異常症を惹起する原因となりますが、甲状腺機能が正常でも、潜在性甲状腺機能低下症や甲状腺に対する自己抗体が陽性の場合にも、不妊症や産科異常症が起こります。一方、適切な甲状腺ホルモン補充、抗甲状腺薬の投与によって妊娠率の向上だけでなく、妊娠後の流産率や産科異常症発生率を低下させることができる可能性があります。

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