糖尿病内科

糖尿病教室① 糖尿病とは?1型・2型の違いと症状の基本|しもやま内科

03/04/2019

🔊 このページの要点(糖尿病教室①)

  • 糖尿病は「血糖(ブドウ糖)が高い状態が続く病気」で、初期は症状がないことが多いです。
  • 原因は大きく1型(インスリンが出ない)と2型(効きにくい/出にくい)に分かれ、治療の考え方が異なります。
  • 放置すると目・腎臓・神経・心血管などの合併症につながるため、早めに方針を立てることが大切です。

しもやま内科 糖尿病教室 第1回「糖尿病とは? 1型・2型の違いと症状の基本」のアイキャッチ画像
糖尿病教室①:糖尿病とは?
1型・2型の違いと症状の基本を、やさしく整理します。

糖尿病教室

糖尿病患者さんを対象とした糖尿病教室のWeb版です。よろしくお願いいたします。

糖尿病と言われた患者さんへ

糖尿病と言われて戸惑っていませんか?

  • 何も症状がないけれど、本当に治療が必要なのか?
  • 飲み薬、インスリンを始めたら一生やめられないのか?

心配しないでください。正しく理解し、正しく対処すれば、糖尿病は怖い病気ではありません。

しもやま内科の糖尿病教室では、糖尿病はどんな病気か、どんなことが起きるのか、どうすれば上手に対処できるのか、わかりやすく解説します。

糖尿病とはどんな病気か

表:糖尿病とはどんな病気か
糖尿病の“全体像”を先に整理すると、治療への不安が減ります。

病気の本質 血糖(ブドウ糖)が高い状態が続く病気です。
なぜ血糖が上がる? インスリンが「出にくい」「効きにくい」、またはその両方が関係します。
初期に症状が少ない理由 高血糖はゆっくり進むことが多く、体が慣れてしまい自覚症状が出にくいためです。
よくある症状 口渇・多飲・多尿・倦怠感・体重減少など。
ただし症状がない方も多いのが特徴です。
放置すると起きうること 目(網膜)・腎臓・神経の合併症、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患のリスクが上がります。
治療の目的 血糖を「安全に」整え、合併症を予防し、生活の質を守ることです。

糖尿病はどんな状態?尿の病気?

糖尿病とは、インスリンの分泌や働きが低下することで、ブドウ糖を正常に代謝できなくなる疾患です。その結果、血液中のブドウ糖(血糖)が増え、高血糖の状態が続きます。

血糖が高いと尿中にブドウ糖が出て甘い尿が出るため、「糖尿病」と名付けられました。

症状は全身倦怠感、口渇、多飲、多尿ですが、当初は自覚症状がない人が多いです。放置すると失明、腎不全、神経障害、心筋梗塞など様々な合併症を起こすおそれがあります。

ブドウ糖が正常に燃やせないのが糖尿病

ブドウ糖代謝が正常にできないと、エネルギーを必要とする細胞にブドウ糖がうまく運ばれません。そのため血糖値が高い状態が続きます。

膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが、血液中のブドウ糖を細胞の中に取り入れる役割を果たしていますが、このインスリンの量が不足したり、働きが悪くなったりすると、ブドウ糖が細胞内に取り込まれなくなり、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高くなってしまいます。

糖尿病が進行すると体の細胞にエネルギーであるブドウ糖が十分に補給されず、喉がかわいたり、多尿、頻尿、倦怠感、体重減少、できものができる、傷が治りにくいなどの症状が現れます。

また、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害などの合併症にも注意が必要です。糖尿病はその結果、全身に合併症がもたらされます。

血液中のブドウ糖の濃度が高くなった状態を高血糖と呼びます。インスリンは膵臓で作られ、血糖を正常範囲に保つ役割をしますが、インスリンの作用不足により血糖が高くなってしまいます。恐ろしいことに、糖尿病は初期の間はほとんど自覚症状がなく、知らない間に進行してしまいがちです。

糖尿病の分類

表:糖尿病の分類
“タイプ”によって治療の考え方が変わります。

分類 主な特徴 治療の考え方(概要)
1型糖尿病 自己免疫などで膵β細胞が障害され、インスリンが作れなくなる(作れにくくなる)。 インスリン治療が基本(必要量を補う)。
2型糖尿病 インスリンが「出にくい」「効きにくい」ことが組み合わさる。体質+生活習慣などが関与。 食事・運動+必要に応じて内服/注射/インスリンを組み合わせる。
その他の糖尿病 肝疾患、膵疾患、内分泌疾患、薬剤(ステロイド等)など、原因が明確なもの。 原因への対応(基礎疾患・薬剤調整)+血糖管理。
妊娠糖尿病 妊娠中に初めてわかった、糖尿病には至っていない血糖上昇。 食事療法が基本。必要時インスリン。産後フォローも重要。

糖尿病は大きく4つのタイプに分類できます。主要な2つが1型・2型糖尿病ですが、その他の糖尿病、妊娠糖尿病もあります。

1型糖尿病(約3%)

1型糖尿病はインスリンを作る膵臓の細胞(β細胞)が自己免疫のために破壊されてしまう病気です。膵臓からのインスリン分泌が極端に落ちてしまうため、血糖値が高くなります。

生きていくために、注射でインスリンを補う治療が必須となります。この状態を インスリン依存状態 といいます。

2型糖尿病(約95%)

2型糖尿病はインスリンが不足、またはその働きが悪くなる病気です。いわゆる「生活習慣病」の糖尿病のことです。

2型糖尿病となる原因は、遺伝的な影響に加えて、食べ過ぎ、運動不足、肥満などの環境的な影響があるといわれています。生活療法(食事療法と運動療法)が基本になります。

すべての2型糖尿病患者さんに生活習慣の問題があるわけではありませんが、血糖値を望ましい範囲にコントロールするためには、食事や運動習慣の見直しがとても重要です。飲み薬や注射なども必要に応じて利用します。

その他の糖尿病

糖尿病以外の病気や、治療薬の影響で血糖値が上昇するものがその他の糖尿病です。肝性糖尿病、膵性糖尿病、遺伝子異常によるものなどです。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病 とは、妊娠中に初めてわかった、まだ糖尿病には至っていない血糖の上昇をいいます。もともと糖尿病であることがわかっていて、その方が妊娠した場合は「糖尿病合併妊娠」として分けています。

多くの場合、高い血糖値は出産の後に戻りますが、妊娠糖尿病を経験した方は将来糖尿病になりやすいと言われています。

1型糖尿病と2型糖尿病は違う

1型糖尿病(インスリン欠乏による糖尿病です)

1型糖尿病の病態(インスリン欠乏):自己免疫による膵β細胞障害→インスリン低下→高血糖・ケトン増加の流れを示す図
図:1型糖尿病の病態(インスリン欠乏)
自己免疫などで膵β細胞が障害 → インスリンが出にくい → 糖が細胞に入れない → 血糖↑/脂肪分解→ケトン↑(悪化でケトアシドーシスに注意)

1型糖尿病は糖尿病全体の3〜5%です。生活習慣病ではありません。原因ははっきりしていませんが、環境要因、ウイルス感染などが影響していると考えられています。

何らかの原因で膵臓のβ細胞が破壊され、膵臓がインスリンをほとんど、またはまったく作ることができません。

よって、インスリンを注射しなければなりません。このような状態を「インスリン依存状態」といいます。そのため、以前は「インスリン依存型糖尿病」とも呼ばれていました。

インスリンの不足によって、正常にブドウ糖を燃やすことができなくなります。代わりに脂肪を燃やすことになり、脂肪の燃えカスであるケトン体(毒性があります)がたまり、食欲がなくなる、だるくなるなどの症状が出ます。ひどい口渇、多尿、急激な体重減少などが起きます。

生活習慣病ではなく、「インスリンが出なくなる病気」です。治療の基本はインスリンを必要なだけ補っていくことです。「食べてはいけない」「ガマン」というイメージは誤解です。

2型糖尿病(インスリン分泌不全とインスリン抵抗性による糖尿病です)

2型糖尿病の病態:体質・生活習慣→インスリン抵抗性→高血糖→糖毒性→インスリン分泌低下の流れを示す図
図:2型糖尿病の病態(抵抗性+分泌低下)
体質(遺伝など)+生活習慣など → インスリンが効きにくい(抵抗性) → 高血糖 → 糖毒性 → インスリン分泌低下(出にくさも加わる)

2型糖尿病ですが、以前は「インスリン非依存型糖尿病」と呼ばれていました。両親からの遺伝で、インスリンがもともと出にくい体質(両親にはっきり糖尿病の方がいなくても糖尿病遺伝子は隠れていることがあります)を持つ条件と、運動不足や脂肪の過剰な摂取などの生活習慣の結果、インスリンの働きが悪くなる条件が組み合わさって発症します。

初期のうちはインスリン分泌力は保たれており、インスリンが効きにくいだけのインスリン抵抗性が主体ですが、高血糖が長い間続くと、糖毒性によってインスリン分泌低下が加わってきます。

膵臓からのインスリンの出る量が十分ではない(インスリン分泌不全)か、作られたインスリンが十分作用しない(インスリン抵抗性)の両者が絡み合って進行します。

日本の糖尿病患者さんの約95%以上の方は2型糖尿病です。若い人でも発症する場合もありますが、40歳を過ぎてから発症する場合がほとんどです。

2型糖尿病は適切な食事指導と運動、糖尿病薬の内服・注射やインスリンで治療します。砂糖など甘いものの取り過ぎばかりが原因ともいえませんので、糖尿病にかかったのは、決して本人のせいだけではないのです。

インスリン分泌が保たれている早いうちに治療を開始して、インスリン分泌が落ちてしまわないようにすることが重要です。

早期に治療を開始したほうが、内服薬やインスリン治療を必要としないで済む可能性が高いです。

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▶ 糖尿病教室 全6回まとめ

糖尿病の正しい知識・治療法・合併症予防を、医師監修でやさしく学べるシリーズです。


▶ 糖尿病教室 全6回をもう一度見る

よくある質問(糖尿病教室①)

糖尿病って「尿」の病気ですか?
糖尿病は本質的には「血糖(ブドウ糖)が高い状態が続く病気」です。血糖が高いと尿に糖が出やすくなり、そこから「糖尿病」と呼ばれるようになりました。
1型糖尿病と2型糖尿病は何が違いますか?
1型は、体内でインスリンがほとんど作れなくなるタイプで、インスリン治療が基本になります。2型は、インスリンが「出にくい」「効きにくい」ことが組み合わさって起こり、食事・運動・薬を組み合わせて治療します。
症状がないのに、なぜ治療が必要ですか?
糖尿病は初期に自覚症状が乏しくても、血糖が高い状態が続くと合併症が静かに進むことがあります。早い段階で「何をどこまで下げるか」を決めることで、将来のリスクを下げられます。
血糖値とHbA1cの違いは何ですか?
血糖値は「その瞬間の血糖」、HbA1cは「過去1〜2か月の平均的な血糖状態の目安」です。両方を見て、現状の把握と治療方針を立てます。
糖尿病の診断は、どんな基準で決まりますか?
日本糖尿病学会の基準では、空腹時血糖(例:126 mg/dL以上)や随時血糖(例:200 mg/dL以上)、OGTT 2時間値(例:200 mg/dL以上)などを用い、慢性的な高血糖が確認されるかで判断します。
合併症にはどんなものがありますか?
代表的には、網膜(目)・腎臓・神経の障害に加え、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患のリスクも上がります。合併症は早期からの予防が重要です。
「1型か2型か」はどうやって判定しますか?
体格や経過だけでは判別が難しいこともあります。必要に応じて、自己抗体(GAD抗体など)やCペプチド(インスリン分泌の指標)を参考にして判断します。

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