「先生、インスリンを打たないと、どうなっちゃうんですか?」
先日、60代の男性患者さんが、お薬の説明のあと、ぽつりとこう聞かれました。実はインスリンを処方されたものの、自分で注射するのが怖くて、まだ一度も打っていないそうです。
こういう方、意外といらっしゃいます。「針が怖い」「打ち始めたら一生やめられないんじゃないか」「もう少し我慢してみよう」——そんな不安、とてもよくわかります。
でも、インスリン治療が必要な状態で打たないままにしておくと、体は確実に悲鳴をあげ始めます。今日は、そうならないために知っておいてほしいことを、できるだけ身近な例でお話しします。
インスリンを打たないと、体の中で何が起きる?
インスリンが不足したままになると、体の中では「旱魃(かんばつ)」に似た状態が起きます。水が不足すると草木が枯れるように、細胞にブドウ糖が届かなくなり、全身の代謝が乱れていきます。
先日の患者さんのように「まだ自覚症状がないから大丈夫」と思っている間にも、以下のような変化が進んでいます。
- 血糖がどんどん上がる:食事を取っても、ブドウ糖が細胞に入らず血液に滞留します
- ケトン体が増える:代謝が脂肪に切り替わり、血中にケトン体が蓄積します
- 脱水と電解質異常:高血糖で多尿になり、水分と塩分が失われます
- 最悪の場合、ケトアシドーシス:緊急入院が必要な危険な状態です
「ケトアシドーシス」という言葉、難しいですよね。簡単に言うと、「体の中が酸性に傾いて、正常に動かなくなる」状態です。放置すれば意識障害にまで進むことがあります。
「食事を取れない日」は特に要注意
風邪をひいて食事が進まない、お腹が痛い——そんな日に「ご飯食べてないし、インスリンは今日はやめよう」と思う方がいます。でもこれ、実はとても危険な行動です。
先月も、体調不良で食事を抜いたからインスリンを中断した患者さんが、翌日に救急搬送されたケースがありました。熱が出ている日こそ、体はストレスホルモンを出して血糖を上げようとするため、インスリンは必要なのです。
当院では、こういう「シックデイ(体調不良の日)」の対処法を、初回のインスリン指導の時に必ずお伝えしています。不安な時は、遠慮なく電話で相談してください。047-467-5500 まで。
「打ち始めたら一生やめられない」は本当?
これ、一番多い質問ですね。正直なところ、答えは「人による」です。
1型糖尿病や、膵臓の機能が著しく低下している方は、基本的に生涯にわたってインスリンが必要になります。でも、2型糖尿病で一時的に血糖が高くなりすぎて(糖毒性状態)、インスリンを使っている方の中には、血糖が安定したあとに内服薬に戻せる方もいらっしゃいます。
大切なのは「今、必要な治療をきちんと受ける」こと。インスリンは依存性のある薬ではありません。必要な時に必要な分だけ補っているだけです。
インスリン治療が必要な方へ、当院からのメッセージ
針が怖い、自分で打つのが不安——そんな気持ち、誰にだってあります。当院では、初めての方にも使いやすい注射ペン型の機器をご案内し、看護師が丁寧に指導します。ほとんどの方は、1〜2週間もすれば自然に自分で打てるようになります。
「やっぱり今日から打つか…」と決心された先日の60代の患者さんは、今では朝晩スムーズに注射されています。「思ったより痛くなかった」とおっしゃっていました。
インスリン治療でお悩みの方、ぜひ一度ご相談ください。一緒に、安心できる治療の形を見つけていきましょう。
しもやま内科へのアクセス
当院は船橋市芝山4-33-5に位置し、京成電鉄松戸線「高根木戸駅」・東葉高速鉄道線「飯山満駅」から各々徒歩15分です。診療時間:月・火・木・金 9:00~12:00/14:45~17:30、土 9:00~12:00(水日祝休診)。電話:047-467-5500。