糖尿病内科

カーボカウント

11/04/2018

🌾 カーボカウントとは?

➤ 基本の考え方

炭水化物(カーボ=Carbohydrate)は、血糖値に直接影響を与える栄養素です。カーボカウントは糖質制限食や糖尿病の管理に使用される方法で、食べ物に含まれる炭水化物の量(グラム)を把握して、それに対応するインスリン量を計算して投与し、血糖値の調整を試みる方法です。炭水化物は、食事の中の主要な栄養素であり、食直後 の血糖値の上昇に大きく関わります。 たんぱく質や脂質でも血糖値はゆっくりと上昇しますが、カーボカウントでは、より早く血糖値があがる炭水化物に特に注目します。1型糖尿病患者さんだけでなく、2型糖尿病の患者さんにも応用できます。

カーボカウントを行うための基本的な手順は以下の通りです。

1. 食品の炭水化物量を理解する: 食品の炭水化物含有量を把握することが重要です。一般的には、栄養成分表示や食品の炭水化物量を示す情報源を活用します。

2. 炭水化物の量を計測する: 食事を準備する際に、使用する食材の炭水化物量を計量して正確に把握します。

3. 炭水化物量をトータルで計算する: 食事に含まれるすべての食品の炭水化物量を合計し、食事全体の炭水化物摂取量を計算します。

4. 表記に注意する: 食品の栄養成分表示に示される炭水化物量は、「総炭水化物」として表示されることがあります。そのため、食品のラベルを確認し、炭水化物の量を正確に把握します。

5. モニタリングと調整: 食事中に摂取した炭水化物の量をトラッキングし、必要に応じて摂取量を調整することが重要です。これにより、血糖値のコントロールや食事の管理が容易になります。

カーボカウントは個々のニーズや目標に合わせて調整されるべきなので、糖尿病管理プランを立てる際には、医師や栄養士と相談しながら適切な方法を見つけることが重要です。

⚖️ カーボ/インスリン比(C/I比)とは?

➤ 定義

**「○gの炭水化物を処理するのに必要なインスリン量(単位)」**のことです。

たとえば:

  • C/I比 = 10 なら、「10gの炭水化物に対してインスリン1単位が必要」という意味。

➤ 計算例

例えば、朝食でご飯・みそ汁・バナナを食べて炭水化物が 60g あるとします。

C/I比が 10 の人は:

60g(炭水化物) ÷ 10(C/I比) = 6単位(インスリン必要量)

これが「食事インスリン」です。


💉 インスリン効果値(ISF:Insulin Sensitivity Factor)とは?

➤ 定義

「インスリン1単位で血糖値がどれだけ下がるか(mg/dL)」を表します。
計算式 ISF=1700÷総インスリン量(Total Daily Dose of insulin: TDD)
大体の人で50mg/dL/Uから開始します。

たとえば:

  • ISF = 50 の場合、「インスリン1単位で血糖値が50mg/dL下がる」という意味。

➤ 使用場面

食前血糖値が目標値より高い場合、その差を調整する「補正インスリン」の量を計算するために使います。

➤ 計算例

  • 目標血糖値:120 mg/dL
  • 実際の血糖値:220 mg/dL
  • ISF = 50 の場合
(220 - 120) ÷ 50 = 2単位

この場合、血糖補正のために 2単位のインスリン が必要です。


🍽️ 総インスリン量の計算方法

総投与量 = 食事インスリン + 補正インスリン

例えば:

  • 炭水化物:60g → C/I比10 → 6単位
  • 血糖値:220 → 目標120 → ISF50 → 2単位
  • 総インスリン:6 + 2 = 8単位

📝 補足:C/I比やISFは人によって異なる

  • 年齢、体重、活動量、インスリン抵抗性などで個人差あり。
  • 医師の指導や、日々の血糖変化から調整が必要です。
  • 時間帯によってもC/I比が異なることがあります(朝は感受性が低いなど)。

🔁 覚えておくべきこと

項目意味単位
C/I比炭水化物○gに対してインスリン1単位が必要g/unit
ISFインスリン1単位で血糖値がどれくらい下がるかmg/dL/unit

📊 【自分用・簡易計算シート】

以下の表を紙やスマホのメモ、スプレッドシート(ExcelやGoogle Spreadsheets)などに書いておくと、毎食前にすぐ計算できます!

▶️ 必要な情報(あらかじめ設定)

項目数値備考
C/I比10 g/unitあなたの体に合った数値(例として10を使用)
ISF(インスリン効果値)50 mg/dL/unit1単位で血糖がどれくらい下がるか
目標血糖値110 mg/dL医師と相談して決める

▶️ 食前に使う計算表

項目入力例計算式説明
食事の炭水化物量60g60 ÷ C/I比 = 6単位食事に必要なインスリン量
現在の血糖値210 mg/dL(210 - 110) ÷ ISF = 2単位補正インスリン
合計インスリン量6 + 2 = 8 単位食事+補正実際に打つ量

✏️ 練習問題(初級編)

【問題1】

  • 朝ごはんで炭水化物を45g食べる予定です。
  • C/I比は15
  • 食前の血糖値は180 mg/dL
  • 目標血糖値は110 mg/dL
  • ISFは70

👉 総インスリンは何単位?


【問題2】

  • 昼ごはんの炭水化物量は70g
  • C/I比は10
  • 血糖値は95 mg/dLで目標血糖値とほぼ同じ。
  • ISFは50

👉 補正は必要? 総インスリン量は?


✅ 答え(初級編)

【問題1の答え】

  • 食事インスリン:45 ÷ 15 = 3単位
  • 補正インスリン:(180 - 110) ÷ 70 = 1単位
  • 合計インスリン:3 + 1 = 4単位

【問題2の答え】

  • 血糖補正:不要(目標に近い)
  • 食事インスリン:70 ÷ 10 = 7単位
  • 合計インスリン:7単位

💡 次のステップ

  • C/I比とISFを自分用に記録&調整する
  • 食べた物のカーボ量の目安を覚える
  • 実際の血糖変化をチェックして微調整!

Google Sheetsでカーボカウントとインスリン計算ができるシートを作るフォーマットを以下にご案内します。自動で計算してくれるように、関数も入れてあります。


✅ Google Sheets フォーマット(カーボカウント&インスリン計算)

以下のように列を並べて、関数を入力してください:

A列B列C列D列E列F列
項目入力値単位計算内容結果備考
C/I比10g/unit--炭水化物あたり必要なインスリン
ISF50mg/dL/unit--インスリン1単位でどれだけ下がるか
目標血糖値110mg/dL---
食事カーボ量60g=B5/B26食事に必要なインスリン
血糖値(現在)210mg/dL=(B6-B3)/B22補正インスリン
合計インスリン-単位=D5+D68食事+補正の合計

💡 入力すべきセル:

  • B2: C/I比(例:10)
  • B3: ISF(例:50)
  • B4: 目標血糖値(例:110)
  • B5: 食事のカーボ量(例:60)
  • B6: 現在の血糖値(例:210)

他の列(D列、E列)は自動で計算されます!


🔗 シート作成手順(Google Sheets)

  1. https://sheets.new にアクセスして新規シートを作成。
  2. 上記の表をコピー&ペースト。
  3. 数式をコピペまたは入力して、自動計算に。

🌟 オプション(応用)

  • 朝昼晩でC/I比を変える(例:朝は8、昼は10、夜は12)
  • 過去の記録を別シートに保存して、自己管理を強化
  • グラフで血糖変動を可視化

カーボカウントとインスリン投与量を計算できるGoogleスプレッドシートのテンプレートを作成いたしました。以下のリンクからアクセスしてご利用ください。

Googleスプレッドシート テンプレート: カーボカウント&インスリン計算シート

ご利用方法:

  1. 上記のリンクをクリックしてシートを開きます。
  2. シートが表示されたら、メニューの「ファイル」から「コピーを作成」を選択し、ご自身のGoogleドライブにコピーを保存してください。
  3. コピーしたシートで、以下のセルにご自身の情報を入力します。
    • B2セル: カーボ/インスリン比(例: 10)
    • B3セル: インスリン効果値(例: 50)
    • B4セル: 目標血糖値(例: 110)
  4. 食事ごとに以下の情報を入力します。
    • B5セル: 食事の炭水化物量(g)
    • B6セル: 現在の血糖値(mg/dL)
  5. 入力が完了すると、必要なインスリン単位数が自動的に計算され、D列およびE列に表示されます。

注意事項:

  • このシートは一般的な計算をサポートするものであり、個々の医療的なアドバイスを提供するものではありません。
  • 実際のインスリン投与量の決定や変更については、必ず医療専門家の指導のもとで行ってください。
  • シートの数式や設定を変更する際は、計算結果に影響を与える可能性があるため、慎重に行ってください。

このシートが、日々の血糖管理のお役に立てれば幸いです。

教科書

初心者におすすめなのが、
さらにかんたん! カーボカウント  大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学 編集/大阪市立大学医学部附属病院栄養部 編集
合同会社クリニコ出版、2019年
です。当院ではこれを標準テキストとして使用しています。

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