このページの要点
- カーボカウントは「炭水化物量(g)」から食事インスリンを計算する方法です。
- C/I比(カーボ/インスリン比)で食事量、ISF(インスリン効果値)で補正量を求めます。
- 練習問題と、自動計算テンプレ(Google Sheets)を用意しています。
- 低血糖を避けるため、設定変更や投与量調整は医師の指導のもとで行ってください。
カーボカウントとは、食事に含まれる炭水化物(カーボ)の量を把握し、それに応じてインスリン量を調整することで血糖値をコントロールする方法です。1型糖尿病の方はもちろん、インスリン治療中の2型糖尿病の方にも応用できます。自己管理の精度を高めるための基本的なスキルのひとつです。
このページでは、カーボカウントの考え方から、C/I比(カーボ/インスリン比)やISF(インスリン効果値)の計算方法、使用例・練習問題まで、実践的に解説します。さらに、Googleスプレッドシートで使える自動計算テンプレートも公開しています。
🌾 カーボカウントとは?

➤ 基本の考え方
炭水化物(カーボ=Carbohydrate)は、血糖値に直接影響を与える栄養素です。カーボカウントは、食べ物に含まれる炭水化物量(g)を把握して、それに対応するインスリン量を計算し、血糖の調整を試みる方法です。炭水化物は食直後の血糖上昇に大きく関わります。
カーボカウントを行うための基本的な手順
- 食品の炭水化物量を知る(栄養成分表示・情報源を活用)
- 炭水化物の量を計測する(可能なら計量で精度UP)
- 食事全体の炭水化物量を合計する
- 表記に注意する(「総炭水化物」として表示されることがあります)
- 記録して見直し、必要に応じて調整する
カーボカウントは個々の状況に合わせて調整が必要です。投与量の変更は、必ず医師の指導のもとで行ってください。
⚖️ カーボ/インスリン比(C/I比)とは?
➤ 定義
「○gの炭水化物を処理するのに必要なインスリン量(単位)」のことです。
- C/I比 = 10 なら、「10gの炭水化物に対してインスリン1単位が必要」という意味。
➤ 計算例
例えば、朝食で炭水化物が 60g あるとします。C/I比が 10 の人は:
60g(炭水化物) ÷ 10(C/I比) = 6単位(食事インスリン)
💉 インスリン効果値(ISF:Insulin Sensitivity Factor)とは?
➤ 定義
「インスリン1単位で血糖値がどれだけ下がるか(mg/dL)」を表します。一般的な目安として(例)ISF ≒ 1700 ÷ 総インスリン量(TDD)などの計算式が使われることがあります(個人差・使用インスリンにより調整が必要です)。
- ISF = 50 の場合、「インスリン1単位で血糖値が50mg/dL下がる」という意味。
➤ 使用場面
食前血糖値が目標値より高い場合、その差を調整する「補正インスリン」の量を計算するために使います。
➤ 計算例
- 目標血糖値:120 mg/dL
- 実際の血糖値:220 mg/dL
- ISF = 50 の場合
(220 - 120) ÷ 50 = 2単位(補正インスリン)
🍽️ 総インスリン量の計算方法
総投与量 = 食事インスリン + 補正インスリン
- 炭水化物:60g → C/I比10 → 6単位
- 血糖値:220 → 目標120 → ISF50 → 2単位
- 総インスリン:6 + 2 = 8単位
📝 補足:C/I比やISFは人によって異なる
- 年齢、体重、活動量、インスリン抵抗性などで個人差があります。
- 時間帯によってもC/I比が異なることがあります(朝は感受性が低い、など)。
- 低血糖を避けるため、調整は医師の指導のもとで行いましょう。
🔁 覚えておくべきこと
| 項目 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| C/I比 | 炭水化物○gに対してインスリン1単位が必要 | g/unit |
| ISF | インスリン1単位で血糖値がどれくらい下がるか | mg/dL/unit |
📌 テンプレート(最短で使う)
まずはテンプレをコピーして、自分の C/I比・ISF・目標血糖 を入れるだけでOKです。
※リンクを開いたら「ファイル」→「コピーを作成」で、自分のGoogleドライブに保存して使います。
✏️ 練習問題(初級)+答えを見る
【問題1】
- 炭水化物:45g
- C/I比:15
- 食前血糖:180 mg/dL
- 目標血糖:110 mg/dL
- ISF:70
👉 総インスリンは何単位?
【問題2】
- 炭水化物:70g
- C/I比:10
- 血糖:95 mg/dL(目標に近い)
- ISF:50
👉 補正は必要? 総インスリン量は?
✅ 答え
【問題1】
- 食事インスリン:45 ÷ 15 = 3単位
- 補正インスリン:(180 - 110) ÷ 70 = 1単位
- 合計:4単位
【問題2】
- 補正:不要(目標に近い)
- 食事インスリン:70 ÷ 10 = 7単位
- 合計:7単位
⚠️ 注意事項(安全のため)+おすすめ教科書
- このページは一般的な計算の考え方を整理したもので、個別の投与量を指示するものではありません。
- インスリン投与量の決定や変更は、必ず医療専門家の指導のもとで行ってください。
- 低血糖リスクがあるため、体調不良や食事量が普段と違う場合は慎重に判断しましょう。
教科書
初心者におすすめ:
さらにかんたん! カーボカウント(大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学 編集/大阪市立大学医学部附属病院栄養部 編集)
合同会社クリニコ出版、2019年
当院ではこれを標準テキストとして使用しています。
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. カーボカウントとは何ですか?
食事に含まれる炭水化物(カーボ)量を把握し、それに合わせてインスリン量を計算して血糖を管理する方法です。食後血糖の上がり方を予測しやすくなり、自己管理の精度を高める助けになります。
Q2. C/I比(カーボ/インスリン比)とは何ですか?
「炭水化物○gを処理するのにインスリン1単位が必要」という目安です。たとえばC/I比10なら「炭水化物10gにインスリン1単位」が基本になります。
Q3. ISF(インスリン効果値)とは何ですか?
インスリン1単位で血糖がどれだけ下がるか(mg/dL)の目安です。食前血糖が目標より高いときの「補正インスリン」の計算に使います。
Q4. 補正インスリンはどう計算しますか?
一般的には (現在血糖 − 目標血糖)÷ ISF で概算します。ただし低血糖を避けるため、実際の投与量の調整は必ず主治医の指導のもとで行ってください。
Q5. 栄養成分表示は「糖質」か「炭水化物」どちらを見ればいいですか?
表示が「炭水化物」の場合はその値を基本にします。「糖質」の表示がある場合は製品によって定義が異なることがあるため、表示項目(炭水化物/糖質/食物繊維など)を確認しながら使い分けます。
Q6. カーボカウントは1型糖尿病だけの方法ですか?2型でも使えますか?
主に1型糖尿病で用いられますが、インスリン治療中の2型糖尿病でも食後高血糖の調整に役立つことがあります。適用は治療内容や低血糖リスクによるため、主治医と相談して進めるのが安全です。
Q7. C/I比やISFは誰でも同じですか?
個人差が大きく、時間帯・体調・活動量でも変わります(朝は感受性が低い、運動で感受性が上がる、など)。血糖の推移(CGM/SMBG)を見ながら、医師の指導のもとで調整します。
Q8. 低血糖を防ぐために注意することは?
運動量の増加、食事量の変化、体調不良、アルコール、嘔吐や下痢などで低血糖リスクが上がります。計算どおりに打つだけでなく、状況に応じて安全側に調整し、必要なら主治医に相談してください。
👨⚕️ この記事の監修医師
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。