甲状腺と不整脈|バセドウ病(動悸・心房細動)・橋本病(徐脈・期外収縮)の原因と治療

甲状腺の異常は心臓に大きな影響を与えます。バセドウ病(甲状腺機能亢進症)では動悸や心房細動期外収縮が、橋本病(甲状腺機能低下症)では徐脈・期外収縮・高血圧・動脈硬化が起こりやすくなります。甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、心拍数・心筋の興奮性・血管の状態が変化し、さまざまな不整脈を引き起こします。

このページの要点

  • バセドウ病(甲状腺機能亢進症)→ 動悸心房細動・期外収縮・心不全
  • 橋本病(甲状腺機能低下症)→ 徐脈・期外収縮・高血圧・動脈硬化・心拡大
  • 甲状腺機能正常化で多くの不整脈は改善する
  • 当日エコー・採血・心電図でスピーディーに診断

甲状腺と心臓の関係

class=”speakable-content”甲状腺ホルモン(T3・T4)は、心臓の鼓動数・収縮力・心筋の興奮性・血管の緊張度を調節する重要なホルモンです。甲状腺機能が亢進(過剰)でも低下(不足)でも、心臓にさまざまな影響を及ぼします。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)と心臓

甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、心臓が過活動になります:

  • 動悸:心拍数が上がり、胸がドキドキする
  • 心房細動:心臓のリズムが乱れる不整脈。脳梗塞のリスク増加。バセドウ病患者の約10〜20%に合併
  • 期外収縮:心臓が「飛んだ」「とまった」感じがする
  • 心不全(高拍出性心不全):長期の亢進で心臓が疲弊する。心房細動合併でリスクさらに上昇
  • 頻脈:安静時でも脈が100以上になることが多い

甲状腺機能低下症(橋本病など)と心臓

甲状腺ホルモンが不足すると、心臓の機能が低下します:

  • 徐脈:心拍数が低下し、脈が遅くなる(50〜60未満)
  • 期外収縮:心筋の活動電位変化により脈が飛ぶ感じが出現
  • 高血圧:血管が硬くなる(拡張期血圧上昇)
  • 動脈硬化進行:コレステロール上昇で血管が詰まりやすくなる
  • 心拡大・心不全:心臓の収縮力が低下し心拡大をきたす
  • 心嚢液貯留:心臓の周りに水分が溜まる

当院での診断・治療の流れ

当院の院長は、甲状腺専門医と循環器専門医の両方を兼ねているため、甲状腺と心臓の両方を1人の医師でワンストップに診療します。

STEP 1:問診・身体診察

症状(動悸・息切れ・体重変化・疲労感・脈の乱れ・ふらつきなど)や既往歴を確認。甲状腺の腫れ・眼球突出・皮膚の状態を診察します。

STEP 2:採血検査(当日)

  • 甲状腺機能:TSH・FT3・FT4
  • 甲状腺抗体:TPO抗体・Tg抗体・TRAb
  • 心筋マーカー:BNP(心不全の指標)

STEP 3:甲状腺エコー(当日)

甲状腺の形・大きさ・血流を超音波で評価。バセドウ病の特徴的な血流増加や、橋本病の特徴的な低エコー像・線維化を確認します。

STEP 4:心電図・心エコー(当日)

不整脈の有無や心臓の機能を評価。心房細動や期外収縮があれば早期発見します。期外収縮の頻度が少ない場合は、必要に応じて24時間ホルター心電図も対応可能です。

STEP 5:治療計画

甲状腺の治療と心臓症状の管理を並行して行います。バセドウ病の治療で心臓症状が改善することも多いですが、心房細動が慢性化している場合は、抗不整脈薬や抗凝固薬(DOAC)による脳梗塞予防が必要になることもあります。橋本病による徐脈や期外収縮は、甲状腺ホルモン補充療法(チラーチンSなど)で正常化することで多くが改善します。

よくある質問

甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)と不整脈の関係を教えてください
甲状腺ホルモンは心臓の収縮力・心拍数・心筋の興奮性に直接影響を与えます。バセドウ病(甲状腺機能亢進症)ではホルモン過剰により心拍数が増加し、動悸・心房細動(不整脈)・心不全のリスクが上昇します。橋本病(甲状腺機能低下症)では逆に心拍数が低下し、徐脈・期外収縮・心拡大・動脈硬化促進のリスクがあります。甲状腺疾患の治療により多くの場合これらの心症状は改善します。
バセドウ病で心房細動になるリスクはどのくらいですか?
バセドウ病患者さんの約10〜20%に心房細動が合併すると報告されています。特に50歳以上の男性や、甲状腺ホルモン値が高コントロール不良の症例でリスクが高まります。心房細動は放置すると脳梗塞のリスクを約5倍に上げるため、バセドウ病患者さんでは甲状腺機能の正常化による治療が最優先され、それでも心房細動が続く場合は抗凝固療法(DOACなど)を検討します。
橋本病で不整脈(期外収縮・徐脈)が出るのはなぜですか?
橋本病では甲状腺ホルモンが低下するため、心臓の興奮伝導が遅くなり、心拍数が減少します(徐脈)。また、心筋細胞の活動電位に影響が出るため、期外収縮(脈が飛ぶ感じ)が出現することがあります。さらに、橋本病では動脈硬化が進行しやすく、冠動脈疾患のリスクも上昇します。甲状腺ホルモン補充療法(チラーチンなど)で甲状腺機能を正常化することで、多くの不整脈症状は改善します。
バセドウ病の動悸(心拍数が多い)の対処法は?
バセドウ病による動悸の根本治療は抗甲状腺薬(メルカゾール・チウラジール)で甲状腺ホルモン値を正常化することです。それまではβ遮断薬(プロプラノロール・ビソプロロール)を併用することで、動悸・手の震え・発汗などの症状を速やかに改善できます。安静・カフェイン・アルコールを避けることも有効です。動悸が強い場合や胸痛を伴う場合は早めに医療機関を受診してください。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)で心不全になることはありますか?
はい、「高拍出性心不全」といって、心拍数が極端に速い状態(頻脈)が続くと心臓に負担がかかり、心不全を発症することがあります。特に心房細動を合併すると、心房の収縮がなくなることで心拍出量がさらに低下し、心不全リスクが高まります。治療は甲状腺機能の正常化が最優先で、β遮断薬で心拍数をコントロールし、心不全に対しては必要に応じて利尿薬やACE阻害薬を使用します。
甲状腺疾患の治療で不整脈は治りますか?
多くの場合、甲状腺機能を正常化することで不整脈は改善・消失します。バセドウ病による心房細動は、甲状腺機能が正常化した後に約50〜60%が自然に洞調律に戻るとされています。ただし長期間心房細動が続いていた場合や、高齢者の場合は自然復帰しにくく、抗不整脈薬や電気的除細動(カーディオバージョン)が必要になることもあります。
バセドウ病で脈が遅くなる(徐脈)ことはありますか?
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)では通常は頻脈(脈が速い)が特徴ですが、まれに「バセドウ病で徐脈」というケースもあります。原因として:(1)β遮断薬の過剰投与、抗甲状腺薬の過剰による薬剤性甲状腺機能低下症、(2)高齢者ではもともとの洞不全症候群が顕在化、(3)基礎疾患による心臓伝導系の障害。徐脈を認めた場合は原因を見極めて適切に対応する必要があります。
甲状腺の不整脈(期外収縮)はどんな検査でわかりますか?
まずは心電図(安静時12誘導)と甲状腺採血(TSH・FT3・FT4・TRAb)を行います。期外収縮の頻度が少ない場合は24時間ホルター心電図で詳細な評価が可能です。同時に甲状腺エコー検査で甲状腺の形態・血流評価も行います。当院では同日に採血・心電図・甲状腺エコーが可能で、甲状腺と心臓の両面から総合的に評価できます。
甲状腺の不整脈で注意すべき症状は?救急受診の目安は?
以下の症状がある場合は早急な対応が必要です:(1)動悸が急に始まり止まらない・脈が極端に速い(150以上)(2)胸痛・圧迫感を伴う動悸(3)意識が遠くなる・失神しそうになる(4)息切れが急に出現(5)夜間横になれない呼吸困難。また、心房細動による脳梗塞予防として、不整脈がある方は抗凝固療法の検討が必要です。気になる症状があればためらわずに医療機関を受診してください。

受診をご検討の方、お気軽にご相談ください

月・火・木・金 9:00〜12:00 / 14:45〜17:30 土 9:00〜12:00

047-467-5500

診療時間外・緊急時は、119番へのご連絡もご検討ください

監修:しもやま内科 院長 下山立志(総合内科専門医・糖尿病専門医・循環器専門医・甲状腺専門医)

最終更新日:2026年8月22日

🚨 緊急を要する場合: 動悸が止まらない・脈が極端に速い(150以上)・胸痛・意識が遠くなる・横になれない息切れがある場合は、ためらわずに 119番(救急車)へご連絡をご検討ください。

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最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

17/03/2026