【要点まとめ】
- 早朝高血圧とは、朝起きた直後の血圧が高い状態で、心筋梗塞・脳卒中のリスクを高めます。
- 「モーニングサージ(早朝急上昇型)」と「持続性高血圧型」の2タイプがあります。
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)や甲状腺機能亢進症(バセドウ病)が関与することもあります。
- 朝の血圧測定を継続し、早朝高血圧の発見と治療を心がけましょう。
早朝高血圧にご注意ください

高血圧が動脈硬化を起こす
高血圧の患者さんは、血圧が高いです。血圧とは、血液が心臓から押し出されて血管(動脈)を通る時、血管にかかる圧力のことです。常に血管に高い圧がかかることで、血管がダメージを受けます。その結果、動脈硬化が起こります。
動脈硬化がさらに血圧を高くする悪循環へ

早朝高血圧
動脈硬化が起こると、動脈が固くなってしまうので、高い圧をかけないと血液が流れていきません。そのため血圧はさらに高くなっていきます。狭心症や心筋梗塞、脳出血、脳梗塞のリスクが高くなります。高血圧が原因のひとつとなって起こると考えられている脳卒中や心筋梗塞の発作は、起床から3時間以内に多く発生することが分かっています。これは、早朝高血圧が起こっている時間帯と同じ時間帯です。早朝の血圧が高い・夜間の血圧が下がらないことが、心臓や脳の血管に負担をかけ、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなります。この「早朝高血圧」の危険性が注目されています。日中の血圧はコントロールできている方の中にも、早朝高血圧が起こっている場合があります。家庭で、朝起きてすぐに測った血圧が、収縮期血圧135mmHg/拡張期血圧85mmHg以上の場合は、早朝高血圧の疑いがあります。
早朝高血圧はなぜ起きる?
正常な人であっても、体が目覚めるための準備を行うために、血圧は起床前から徐々に上昇し始めます。高血圧の人は過度に上昇しやすいのが特徴で、これを早朝高血圧(モーニングサージ)と呼びます。主に2種類あり、朝目が覚めると同時に急激に上がるタイプと、もともと夜間の血圧が下がらないタイプがあります。私たちの血圧は、睡眠中の深夜に最も低くなり、早朝からは活動の準備のために少しずつ上昇しはじめます。ところが早朝の血圧が、危険なレベルにまで上昇するタイプの高血圧があります。これが「早朝高血圧」で、大別すると2つのタイプがあります。

早朝高血圧の2つのタイプ
モーニングサージ
睡眠中の深夜には血圧が低くなるものの、早朝に急激に血圧が上昇するタイプ。高齢者や血糖値・コレステロール値が高い人に多くみられます。
また、軽度の脳梗塞を起こしていることもあり、脳卒中を起こすリスクが高いので注意が必要です。
持続性高血圧
深夜にも血圧があまり下がらず、早朝になるとそのまま持続して高くなるタイプ。血糖値が高い人、腎臓障害がある人のほか、大いびきをかく人(睡眠時無呼吸症候群)などに多くみられます。睡眠中にも心臓や血管に負担がかかるため、心疾患を起こすリスクが高いので危険です。
甲状腺ホルモンと早朝高血圧の関係
甲状腺ホルモンが過剰になる甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)では、心拍数や心拍出量が増え、血管の収縮・拡張のバランスが崩れることで収縮期血圧の上昇や脈圧の増大が見られます。
このため、夜間の血圧低下が不十分となり、早朝に血圧が高くなる「早朝高血圧」の要因となることがあります。特に交感神経が優位になる高齢者や心疾患のリスクがある方では、バセドウ病の血圧への影響に注意が必要です。
当院では、こうした背景疾患の見落としを防ぐために、必要に応じて甲状腺ホルモンの採血や甲状腺エコー検査を実施しております。気になる症状がある方は、ぜひご相談ください。
▶ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)と早朝高血圧の関係
SASは夜間の低酸素状態と覚醒反応により交感神経が活性化し、早朝の血圧を異常に上昇させることがあります。
日本高血圧学会ガイドライン(JSH2019)でも、早朝高血圧の原因の一つとしてSASが挙げられています。
CPAP治療によって早朝高血圧が改善する可能性があり、早朝高血圧を指摘された方はSASの検査を検討する価値があります。
服薬治療を受けている患者さんにも、早朝高血圧がみられることが少なくありません。原因は夕食後に服用した降圧薬の効果が、深夜や早朝には切れてしまうためです。この場合には薬の種類や服用時間などを変更する必要があるので、医師に相談してください。早朝高血圧をみつけるためには家庭での朝の血圧測定が大切です。朝の血圧が高い場合には、早朝高血圧を疑ってみましょう。
ご相談・受診をご希望の方へ
早朝高血圧は、年齢のせいと諦めてしまいがちな方が多いものの、治療によって大きく改善する可能性があります。
良くならずお困りの方はお気軽にご相談ください。
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👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
高血圧、心疾患、内分泌疾患の診療に長年携わり、地域密着の総合内科医として多くの患者様に対応しています。