ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)とは?作用機序・副作用・ACE阻害薬との違い

  • ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)は高血圧治療の第一選択薬で、血管を拡張させ血圧を低下させます
  • ACE阻害薬と比べて咳の副作用が極めて少ないのが特徴です
  • 腎保護作用があり、糖尿病性腎症の患者さんに優先して用いられます
  • 定期的な採血で腎機能とカリウム値のモニタリングが重要です

ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)とは

ARBは、高血圧治療の第一選択薬として広く用いられている内服薬です。血圧を上昇させる生理活性物質「アンジオテンシンII」が血管の受容体に結合するのをブロックすることで、血管を拡張させ、血圧を低下させます。加えて、心臓や腎臓への負担を軽減する臓器保護作用が期待できるため、合併症の有無や患者様の体質に合わせて選択されます。日本高血圧学会のガイドラインでも、年齢や併存疾患に関わらず、多くのケースで推奨される標準的な降圧薬です。

ACE阻害薬との違い

項目 ACE阻害薬 ARB
作用機序 アンジオテンシン変換酵素を阻害し、アンジオテンシンIIの産生を抑える アンジオテンシンIIが受容体に結合するのを直接阻害する
咳嗽(せき) ブラジキニンの分解抑制により、5~10%程度で乾いた咳が出ることがある ブラジキニンに影響しないため、咳嗽の発現は極めて少ない
血管浮腫 まれ(ブラジキニン関連) さらにまれ
主な適応 高血圧、心不全、糖尿病性腎症、心筋梗塞後 高血圧、心不全、糖尿病性腎症、CKD

一般的には両剤ともに降圧効果や臓器保護作用は類似していますが、咳嗽の

※薬物治療と並行して、食事療法(DASH食・減塩)も重要です。生活習慣の改善で薬が減量できることもあります。

副作用が問題となる場合や、服薬継続性を重視する場合にはARBが選択されることが一般的です。なお、患者様の病態や遺伝的背景によっては、一方が他方より有効となる場合もあります。

代表的なARB薬剤と特徴

以下の薬剤はすべて保険適応があり、作用持続時間や代謝経路、併用効果に特徴があります。開始用量や増量幅は、年齢・腎機能・血圧の目標値に応じて個別に設定されます。

ロサルタン(商品名:ニューロタン)カリウム(ニューロタン)
特徴:臨床経験が長く、世界的にも標準的に使用される薬剤
用量:一般的な開始用量は50mg/日(朝食後)
特長:尿酸排泄を促進する作用があり、高尿酸血症や痛風を合併する方に考慮されることがあります。

バルサルタン(商品名:ディオバン)(ディオバン)
特徴:血中濃度が安定しており、24時間持続する降圧効果が期待できる
用量:一般的な開始用量は80mg/日(朝食後)
特長:心不全治療におけるエビデンスが豊富で、心臓の拡大抑制や予後改善が期待されています。

カンデサルタン(商品名:ブロプレス)(ブロプレス)
特徴:受容体への結合親和性が高く、安定した降圧作用を示す
用量:一般的な開始用量は8~16mg/日(朝食後)
特長:心不全や慢性腎臓病に対する臓器保護作用のエビデンスが蓄積されています。

オルメサルタン(オルメテック)
特徴:作用持続性が長く、早朝の血圧上昇(モーニングサージ)の抑制にも期待できる
用量:一般的な開始用量は20mg/日(朝食後)
特長:食後の服用による影響を受けにくく、生活リズムに合わせやすい傾向があります。

アジルサルタン(アジルバ)
特徴:同クラスの中でも降圧作用が強く、難治性高血圧にも有用
用量:一般的な開始用量は20mg/日(朝食後)
特長:他の降圧薬との併用時にも効果が持続しやすく、目標血圧達成が困難なケースで選択されます。

テルミサルタン(ミカルディス)
特徴:PPARγ部分作動作用を持ち、インスリン感受性の改善や脂質代謝への好影響が期待される
用量:一般的な開始用量は40mg/日(朝食後)
特長:メタボリックシンドロームや糖尿病を合併する高血圧の方に考慮されることがあります。

イルベサルタン(アバプロ、イルベタン)
特徴:肝代謝型であり、腎機能低下時にも用量調節が比較的容易
用量:一般的な開始用量は100mg/日(朝食後)
特長:糖尿病性腎症の進展抑制に関する臨床データが豊富です。

主な適応症と治療の目的

本態性高血圧:血管の柔軟性を保ち、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを長期的に低下させる
糖尿病性腎症・慢性腎臓病(CKD):尿たんぱく排泄を抑制し、腎機能の悪化スピードを遅らせる
心不全:心臓の後負荷を軽減し、心機能の維持や再入院予防につなげる
動脈硬化性疾患の予防:血管内皮機能の改善を通じて、全身の動脈硬化進展を抑制する

高血圧の程度や合併症によっては、カルシウム拮抗薬や利尿薬と併用することで、より確実な血圧コントロールが可能となります。一般的には単剤から開始しますが、目標血圧に達しない場合は、段階的な併用や製剤の変更が検討されます。

副作用と服薬上の注意点

ARBは一般的に忍容性が高く、長期服薬に適した薬剤ですが、以下の点に注意が必要です。

主な副作用
高カリウム血症:血液中のカリウム値が上昇することがあります。腎機能低下時やカリウム製剤・保カリウム利尿薬を併用している場合に起こりやすいため、定期的な血液検査でモニタリングします。
腎機能の変動:初期に血清クレアチニンがわずかに上昇することがありますが、これは腎臓内の血流量再分布による生理的な反応であることが多く、一般的には経過観察となります。ただし、著しい変動や脱水状態がある場合は用量調整や一時中止を考慮します。
めまい・ふらつき:血圧が低下しすぎた場合に生じることがあります。立ち上がり時や入浴時に注意してください。
血管浮腫:顔や喉のむくみ、呼吸困難が生じた場合はごくまれですが、服薬を中止し医療機関を受診してください。

重要な注意事項
妊婦または妊娠の可能性のある方には使用できません。胎児の腎機能障害や羊水過少症を引き起こすリスクが報告されています。
非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)との併用は、腎機能低下や降圧効果減弱を招くことがあるため、鎮痛薬を使用する場合は事前に医師・薬剤師に相談してください。
自己判断での服薬中止は血圧の急変やリバウンド現象を招くことがあるため、調子が悪い場合や副作用が疑われる場合は、必ずしもやま内科までご連絡ください。

しもやま内科での診療

船橋市芝山のしもやま内科では、日本循環器学会認定の循環器専門医が高血圧・心血管疾患の診療を担当しています。ARBの処方だけでなく、患者様の年齢・腎機能・糖尿病や甲状腺疾患の有無・生活背景を総合的に評価し、最適な薬剤選択と用量調節を行います。

降圧治療の効果判定や合併症のスクリーニングとして、頸動脈エコー(脳血管障害リスクの評価)や心エコー(心臓の構造・機能・拡張能の評価)を当日実施可能です。また、糖尿病や内分泌疾患の専門的な知見を活かし、代謝異常を伴う高血圧に対する統合的なアプローチも提供しています。

定期的な血圧記録の持参や、家庭血圧測定値の共有をお願いしております。これにより、診察室血圧だけでは捉えきれない「隠れ高血圧」や「白衣高血圧」の識別、薬剤効果の正確な評価が可能になります。

診療時間

月・火・木・金:9:00~12:00 / 14:45~17:30
土:9:00~12:00
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アクセス

・住所:千葉県船橋市芝山4-33-5
・最寄駅:高根木戸駅(京成電鉄松戸線)徒歩15分
・駐車場:7台完備(予約不要・無料)

よくある質問(FAQ)

ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)とは何ですか?作用機序を教えてください

ARBはアンジオテンシンIIという血圧を上昇させるホルモンの受容体を直接ブロックすることで、血管を拡張させ血圧を下げる降圧薬です。ACE阻害薬と似た作用ですが、ARBはアンジオテンシンIIの産生経路ではなく受容体そのものをブロックするため、より直接的かつ選択的に作用します。また、ブラジキニンの分解に影響しないため、ACE阻害薬で起こりやすい咳の副作用がほとんどないのが特徴です。

ARBとACE阻害薬の違いは何ですか?

最大の違いは副作用と適応です。ACE阻害薬はブラジキニンを分解する酵素も阻害するため、空咳や血管性浮腫の副作用が出ることがあります。ARBはこれらの副作用が極めて少ないです。腎保護効果や心保護効果はいずれも優れており、どちらも第一選択薬です。糖尿病性腎症にはARBが優先されることが多い一方、心不全にはACE阻害薬またはARBが使われます。

ARBで高カリウム血症になるのはなぜですか?

ARBはアンジオテンシンIIの作用を抑えることで、副腎からのアルドステロン分泌を減少させます。アルドステロンはカリウムを尿中に排泄する働きがあるため、アルドステロンが低下すると体内にカリウムが貯留しやすくなり、高カリウム血症を起こすことがあります。特に腎機能が低下している患者さんや、カリウム保持性利尿薬・NSAIDsを併用している場合にリスクが高まるため、定期的な採血でのモニタリングが必要です。

ARBの代表的な種類と特徴を教えてください(ロサルタン・バルサルタン・カンデサルタンなど)

主なARBとしては、ロサルタン(ニューロタン)、バルサルタン(ディオバン)、カンデサルタン(ブロプレス)、テルミサルタン(ミカルディス)、オルメサルタン(オルメテック)、アジルサルタン(アジルバ)、イルベサルタン(アバプロ)などがあります。ロサルタンは尿酸排泄促進作用があり高尿酸血症の患者さんに有用、カンデサルタンは心不全エビデンスが豊富、テルミサルタンはPPARγ作用でインスリン抵抗性改善が期待されるなど、薬剤ごとに特徴があります。

ARBにカリウムの調整機能はありますか?

ARBに直接カリウムを調整する機能はありませんが、前述の機序でカリウム値に影響します。軽度の高カリウム血症(K 5.5mEq/L未満)であれば経過観察で問題ないことが多いですが、K 5.5以上では減量・休薬や食事指導(カリウム含有食品の摂取制限)を検討します。ARB服用中は腎機能とカリウムの定期的なチェックが重要です。

ARBで咳は出ますか?ACE阻害薬との違いは?

ARBでは咳はほとんど出ません。ACE阻害薬の副作用である空咳(ブラジキニンの蓄積が原因)がARBでは生じないため、ACE阻害薬で咳が出た患者さんはARBに切り替えることが一般的です。この点がARBの最大のメリットの一つです。ただし、まれにARBでも咳を感じる方がいますが、その頻度はACE阻害薬と比較すると格段に低いです。

ARBは腎臓に優しいって本当ですか?

はい、ARBは強力な腎保護作用を持つことが多くの臨床試験で示されています。糖尿病性腎症の進行抑制(RENAAL試験:ロサルタン、IDNT試験:イルベサルタン)、慢性腎臓病(CKD)での腎機能低下抑制、蛋白尿減少効果が確認されています。ただし、腎機能が高度に低下したCKDステージG4〜5(eGFR 30未満)では、導入時に腎機能とカリウムの急変に注意が必要で、慎重な用量調整と定期的フォローが必須です。

ARBとNSAIDsの併用は問題ありますか?

ARBとNSAIDs(ロキソニン・ボルタレン・イブプロフェンなど)の併用は注意が必要です。NSAIDsは腎血流を低下させ、プロスタグランジン合成を阻害することでARBの降圧効果を減弱させ、同時に腎機能低下や高カリウム血症のリスクを高めます。「ARB + NSAIDs + 利尿薬」の3剤併用は急性腎障害のリスクが特に高いため、可能な限り避けるべきです。どうしてもNSAIDsが必要な場合は、アセトアミノフェンなど代替薬の検討や、最低限の期間・用量での使用を心がけます。

ARBは妊娠中に使えますか?

ARBは妊娠中禁忌です。ARB(およびACE阻害薬)は胎児の腎発育に悪影響を与え、羊水過少症・胎児腎不全・胎児死亡などのリスクがあります。妊娠が判明した場合は直ちにARBを中止し、代替の降圧薬(メチルドパ・ニフェジピンなど妊娠可能な薬剤)に切り替える必要があります。妊娠を計画している女性でARBを服用中の方は、事前に降圧薬の変更を検討してください。

監修:しもやま内科 院長 下山立志(総合内科専門医・糖尿病専門医・循環器専門医・甲状腺専門医)

最終更新日:2026年8月22日

🚨 緊急を要する場合: ARB服用中に急な脱力感・動悸・意識障害・手足のしびれが出た場合は、高カリウム血症の可能性があります。 119番(救急車)へご連絡をご検討ください。

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監修医師からのメッセージ

監修:しもやま内科 院長 下山立志

日本内科学会 総合内科専門医/日本循環器学会 循環器専門医

ARBは高血圧治療の中心的な薬剤の一つであり、適切に使用すれば長期的な心血管イベントの抑制が期待できます。患者様一人ひとりの腎機能や合併症、併用薬によって注意点が異なります。当院では循環器専門医として、血圧の数値だけでなく全身の状態を考慮した薬剤選択を心がけています。

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最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

15/04/2026