高血圧の食事療法|減塩・DASH食で血圧を下げる方法

高血圧の食事療法の基本は減塩(1日6g未満)とDASH食(野菜・果物・低脂肪乳製品を多く摂り、飽和脂肪酸・コレステロールを控える食事)です。カリウム・マグネシウム・カルシウムを豊富に含む食品を積極的に取り入れ、減塩だけでなく栄養バランスの改善が血圧コントロールに効果的です。

高血圧における食事療法の重要性

高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がないまま動脈硬化や脳卒中・心筋梗塞・腎不全などの重大な病気を引き起こします。日本人の高血圧の最大の原因は食塩(ナトリウム)の過剰摂取です。日本人は世界的に見ても塩分摂取量が多い民族であり、それが高血圧の患者数が多い一因となっています。

食事療法は高血圧治療の土台です。薬物療法よりも先に、あるいは並行して取り組むべきもので、正しい食事を続けることで、薬を減らしたり、場合によっては薬なしで血圧をコントロールできることもあります。とくに軽症〜中等症の高血圧では、食事療法だけで十分な効果が期待できるケースも少なくありません。

DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)の基本

DASH食とは、高血圧を防ぐ食事法としてアメリカ国立衛生研究所(NIH)が開発した食事パターンです。世界中のガイドラインで推奨されており、日本高血圧学会でも積極的に勧めています。

DASH食の3つの柱

  • 野菜と果物を積極的に摂る:1日350g以上の野菜と果物を目安に。カリウム・マグネシウム・食物繊維が豊富で、血圧を下げる効果があります。
  • 低脂肪・低コレステロールのたんぱく質を選ぶ:魚、鶏肉(皮なし)、大豆製品を中心に。赤身の肉や加工肉は控えめに。
  • 全粒穀物(玄米・全粒粉パンなど)を摂る:白米や精製小麦よりも食物繊維が豊富で血糖値の急上昇を抑えます。

DASH食は「我慢する食事」ではなく、「食べ方を変える食事」です。無理な制限ではなく、摂るものを賢く選ぶことで、自然に血圧が下がる体質をつくります。

減塩の目標値——1日6g未満

日本高血圧学会の治療ガイドラインでは、高血圧患者の食塩摂取目標は1日6g未満と定められています。一方、日本人の平均摂取量は約10g/日。つまり、現在の約6割に減らす必要があります。

「6gってどれくらい?」——具体的な目安:

  • ラーメンのスープを飲み干す:2〜3g
  • 味噌汁一杯:約1.5g
  • 梅干し1個:約2g
  • 醤油小さじ1杯(約6ml):約0.9g
  • 塩小さじ1杯:約6g(つまり1日の上限!)
  • 食パン1枚:約0.8g
  • プロセスチーズ1個:約0.5g

これらを合計すると、普通の食事をしていれば1日10g前後になるのがわかります。まずは、どこに塩分が隠れているかを知ることが、減塩の第一歩です。

減塩の具体的な実践方法

調味料の工夫

  • 醤油・ソースは「かける」より「つける」:全体にかけるのではなく、小皿に出して少しつけるだけで使用量が半分以下になります。
  • 酢・レモン・ゆずを活用:酸味は減塩でも満足感を補ってくれます。サラダはドレッシングの代わりにレモン汁とオリーブオイルで。
  • 香辛料・ハーブを味方に:コショウ、カレー粉、七味、しょうが、にんにく、バジル、ローズマリーなどで風味をつければ、塩を減らしても物足りなさを感じません。
  • 減塩醤油・減塩味噌の活用:通常の半分の塩分で同じ風味を出せる商品もあります。使い分けるだけで効果的。

外食の注意点

外食はどうしても塩分が多くなります。とくに注意すべきメニュー:

  • ラーメン・そば・うどん:スープに大量の塩分。汁は半分以上残しましょう。
  • 定食・丼もの:味噌汁・漬物・メインのおかずの塩分が三重にかかります。ご飯を少なめにして調整を。
  • 中華料理:炒め物には多くの調味料が使われています。あっさりした蒸し料理を選ぶとよい。
  • ファストフード:ハンバーガー・フライドポテトは塩分・脂質のダブルパンチ。頻度を減らしましょう。
  • 居酒屋:おつまみの塩分が高めです。枝豆や冷ややっこなど、塩分控えめのメニューを選ぶ。

外食のコツは「汁物を残す」「ドレッシングは別添えにする」「メニュー選びで塩分を予測する」こと。これだけで、外食の塩分を半分近くに減らせます。

加工食品・調理済み食品の注意

加工食品には「見えない塩分」が多く含まれています。以下の食品は特に注意:

  • ハム・ソーセージ・ベーコン(100gあたり約2g)
  • 練り物(かまぼこ・ちくわ・はんぺん)
  • インスタント食品(カップ麺1食で約5g!)
  • 市販の惣菜・お弁当
  • 漬物(たくあん3切れで約1g)
  • スナック菓子・せんべい

食材を選ぶときは「栄養成分表示」の食塩相当量を確認する習慣をつけましょう。

カリウムを多く含む食品のすすめ

カリウムには、体内の余分なナトリウム(塩分)を尿と一緒に排出する働きがあります。つまり、カリウムをしっかり摂ることで減塩効果をサポートできるのです。

カリウムが豊富な食品:

  • 野菜:ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、かぼちゃ、さつまいも、じゃがいも
  • 果物:バナナ、キウイ、アボカド、メロン、スイカ
  • 海藻:わかめ、昆布、ひじき
  • 豆類:大豆、納豆、枝豆
  • その他:トマトジュース(食塩無添加)、牛乳、ヨーグルト

目安として、野菜は1日350g以上(小鉢で5〜6皿分)、果物は1日200g程度を目標にしましょう。

※ただし、慢性腎臓病(CKD)の方はカリウム制限が必要な場合があります。腎機能に問題がある方は、医師に相談してからカリウム摂取量を調整してください。

控えるべき食品——脂質・アルコール・カフェイン

脂質

高血圧に加えて脂質異常症を併発している方は少なくありません。油脂の多い食品(天ぷら・からあげ・ステーキの脂身・バター・マーガリン)は、動脈硬化を促進します。揚げ物は週に1〜2回に抑え、調理方法は焼く・蒸す・茹でるを基本にしましょう。

アルコール

適量(日本酒1合、ビール中瓶1本、ワイングラス2杯程度)までは許容されますが、それ以上は血圧を上昇させます。とくに注意すべきは「お酒のおつまみで塩分過多になる」という悪循環。焼き鳥のタレ、枝豆の塩、干物など、おつまみの塩分は侮れません。週に2〜3日の休肝日を設けることをご検討ください。

カフェイン

コーヒーや緑茶に含まれるカフェインには一時的な血圧上昇作用があります。習慣的に大量に摂取している方は、1日2〜3杯までに抑えるとよいでしょう。カフェインレスコーヒーや麦茶・ルイボスティーへの切り替えも検討してください。

肥満改善と食事療法の併用

肥満(とくに内臓脂肪型肥満)は高血圧の強い危険因子です。脂肪細胞から分泌される生理活性物質が血圧を上昇させることがわかっています。体重が5kg減るだけで血圧が5〜10mmHg低下するというデータもあります。

食事療法で減量を目指すポイント:

  • ご飯やパンなどの炭水化物を適量に(極端な糖質制限は続かない)
  • 野菜を先に食べる(ベジファースト)で自然にカロリーコントロール
  • 間食・夜食をやめる
  • 揚げ物より焼き魚・蒸し料理
  • ゆっくりよく噛んで食べる(満腹中枢が刺激されるまで約20分)

1日の食事メニュー例

以下は、減塩+DASH食の考え方に基づく1日のメニュー例です。塩分は1日6g未満に抑えています。

食事 メニュー 減塩・DASHのポイント
朝食 玄米ご飯(150g)・納豆(減塩タレ)・焼き鮭(塩分控えめ)・味噌汁(減塩味噌・わかめと豆腐)・バナナ 玄米で食物繊維UP。納豆とわかめでカリウムを補給。果物でビタミンも。
昼食 野菜たっぷりの蒸し鶏サラダ(レモン+オリーブオイルドレッシング)・全粒粉パン(2枚)・無脂肪ヨーグルト ドレッシングを使わず減塩。蒸し鶏で低脂肪。全粒粉で血糖上昇を緩やかに。
夕食 鯖の塩焼き(塩はひとつまみ)・ほうれん草のおひたし(醤油は「つける」方式)・具沢山の野菜スープ(コンソメ不使用・だしで風味)・小松菜のおかか和え・玄米ご飯(100g) 鯖のEPA・DHAで血管ケア。だしを効かせて減塩。緑黄色野菜でカリウム補給。
間食 キウイ1個 または ナッツ(無塩)ひと掴み 果物でカリウム補給。無塩ナッツで良質な脂質。

※個人の体格・活動量・合併症により適切な総カロリーは異なります。詳しくは当院の診察でご相談ください。

運動療法との組み合わせ

食事療法だけではなく、適度な運動を組み合わせることで、血圧低下効果はさらに高まります。日本高血圧学会は週5日以上、1日30分以上の有酸素運動を推奨しています。

おすすめの運動:

  • ウォーキング:特別な道具が不要で始めやすい。1日20〜30分、やや早足で。
  • 水中歩行・水泳:関節に負担が少なく、続けやすい。
  • サイクリング:無理のない負荷で週3回程度。
  • ラジオ体操・ストレッチ:筋力を維持し、血流を促進。

運動は食前より食後30分〜1時間後に行うと、血糖値の上昇も抑えられて効果的です。ただし、すでに血圧が高い方は、急な運動で血圧がさらに上昇するリスクがあるため、医師の指導のもとで始めましょう。

食事療法だけでは不十分な方へ

減塩とDASH食を3ヶ月程度続けても血圧が改善しない場合、あるいはすでに薬を飲んでいるのに血圧が高いままの場合は、自己判断で食事療法を続けずに循環器専門医にご相談ください。原因として遺伝的要因や二次性高血圧(睡眠時無呼吸症候群・腎疾患・内分泌疾患など)が隠れている可能性があります。当院では血液検査やABI検査など各種検査を行い、患者さま一人ひとりに最適な治療方針を提案します。まずはお気軽にご予約・ご来院ください。

⚠️ こんな症状があったらすぐ相談を——高血圧緊急症のサイン

食事療法は大切ですが、以下の症状がある場合は、高血圧緊急症(高血圧クリーゼ)の可能性があります。自己判断で食事だけで対処しようとせず、速やかに医療機関を受診してください。

  • 激しい頭痛(とくに後頭部のズキズキする痛み)
  • めまい・ふらつき
  • 吐き気・嘔吐
  • 視力の低下・物が二重に見える
  • 胸の痛み・動悸
  • 手足のしびれ・麻痺
  • 息切れ・呼吸困難

これらの症状がある場合は、119番へのご連絡もご検討ください。

❓ よくある質問

高血圧に良い食べ物は?

カリウムが豊富な野菜(ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、かぼちゃ)、果物(バナナ、キウイ、アボカド)、海藻類(わかめ、ひじき)、豆類(納豆、枝豆)がおすすめです。DASH食の考え方に基づき、魚(特に青魚)や低脂肪のたんぱく質も積極的に摂りましょう。

DASH食とは何ですか?

Dietary Approaches to Stop Hypertensionの略で、アメリカ国立衛生研究所(NIH)が開発した高血圧を予防・改善するための食事法です。野菜・果物を多く摂り、脂肪を控え、全粒穀物を積極的に取り入れることで、無理なく血圧を下げる効果が科学的に証明されています。

1日の塩分摂取量の目標は?

日本高血圧学会のガイドラインでは、高血圧患者の食塩摂取目標は1日6g未満です。日本人の平均摂取量は約10gなので、現在の約6割に減らす必要があります。ラーメンのスープを飲み干すだけで2〜3gになりますので、汁物を残す習慣をつけましょう。

カリウムの多い食品は?

野菜ではほうれん草、小松菜、ブロッコリー、かぼちゃ、さつまいも。果物ではバナナ、キウイ、アボカド、メロン。海藻ではわかめ、昆布、ひじき。豆類では納豆、枝豆が代表的です。ただし腎機能が低下している方はカリウム制限が必要なので医師に相談してください。

お酒は飲んでもいいですか?

適量(日本酒1合、ビール中瓶1本、ワイングラス2杯程度)までは許容範囲で、むしろ少量のアルコールには血管拡張作用もあります。しかし、過度な飲酒は血圧を上昇させ、おつまみの塩分過多にもつながる悪循環に陥ります。休肝日を週2〜3日設け、飲酒量をコントロールすることをご検討ください。

コーヒーは飲んでも大丈夫?

カフェインには交感神経を刺激して一時的に血圧を上昇させる作用があります。習慣的に大量(1日5杯以上)摂取している方は注意が必要で、1日2〜3杯までに抑えましょう。カフェインレスコーヒーや麦茶・ルイボスティー・たんぽぽコーヒーへの切り替えも検討してください。

外食するときの注意点は?

外食は塩分が多くなりがちです。汁物は半分以上残す、ドレッシングは別添えにする、麺類のスープは飲まない、あっさりしたメニュー(蒸し料理・焼き魚など)を選ぶ。居酒屋では枝豆や冷ややっこなど塩分控えめなおつまみを選びましょう。

血圧の薬を飲んでいても食事療法は必要?

必要です。薬を飲んでいても減塩を続けたほうが、より少ない薬の量で血圧がコントロールできます。逆に薬だけに頼って塩分を摂り続けると、薬が効きにくくなります。「薬を減らせました」という患者さんは、減塩と運動を続けてくれています。

減塩しても血圧が下がらない…どうすれば?

減塩だけでは不十分な場合もあります。遺伝的な要因やストレス、睡眠時無呼吸症候群(SAS)、肥満などが原因のことも。当院では食事療法だけでなく生活習慣全体を評価し、必要に応じて薬物療法も提案します。一度ご相談ください。

高血圧の食事療法で体重はどのくらい減らせばいい?

体重が5kg減るだけで血圧が5〜10mmHg下がるというデータがあります。BMIが25以上の方は、まず現在の体重から5%減量を目標にしましょう。食事療法単独ではなく運動も併用することで、より効果的に減量・血圧低下が期待できます。

「血圧を下げるには」——まずはお塩の見直しとDASH食から始めましょう。

高血圧に関するご相談は、船橋市の循環器内科専門医「しもやま内科(循環器内科)」まで。

月・火・木・金 9:00〜12:00 / 14:45〜17:30 土 9:00〜12:00(水・日・祝休診)

☎ 047-467-5500

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最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

20/04/2026