尿中Na/K比(ナトカリ比)は、尿に含まれるナトリウム(Na)とカリウム(K)の濃度の比で、食塩のとりすぎとカリウム不足を同時に評価できる指標です。日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインでは、減塩の目標として尿中Na/K比2.0未満が示されており、外来の随時尿(自然尿)で手軽に確認できます。値が高いときは、減塩とカリウムを含む食品の増加で改善が期待できます。
このページの要点
- 尿中Na/K比(ナトカリ比)= 尿中ナトリウム濃度 ÷ 尿中カリウム濃度
- 高血圧治療ガイドライン(JSH2019)の目標は尿中Na/K比2.0未満、まずは4未満が現実的な目安
- 24時間の蓄尿は不要で、外来の随時尿(自然尿)でも評価できる
- 値が高い状態は「食塩が多い+カリウムが少ない」サイン。減塩と野菜・果物・海藻・豆類で改善を目指す
- 腎機能が低下している方、カリウム制限がある方、一部の降圧薬・利尿薬を使用中の方は、自己判断でのカリウム増量を避け、主治医に相談する
結論:尿中Na/K比は「2.0未満」が目標。まずは4未満を目指しましょう
尿中Na/K比(尿ナトリウム/カリウム比)は、食塩(ナトリウム)のとりすぎと、カリウム不足の両方を同時に映し出す指標です。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」では、減塩の目標として1日6g未満の食塩制限と、尿中Na/K比2.0未満が示されています。
ただし、日本人の尿中Na/K比は平均で3〜4程度と報告されており(調査により幅があります)、最初から2.0未満を目指すのは現実的ではありません。当院では「まずは4未満、できれば2未満」を現実的な目安としてお伝えしています。尿中Na/K比は食事内容を変えてから数週間で動き始めるため、減塩の効果を確かめる「見える化」の数値として活用できます。
尿中Na/K比(ナトカリ比)とは?
尿中Na/K比とは、尿の中にどれだけナトリウム(Na)が含まれ、どれだけカリウム(K)が含まれているかの比率です。次の式で計算します。
尿中Na/K比 = 尿中ナトリウム(mEq/L) ÷ 尿中カリウム(mEq/L)
ナトリウムは主に食塩(食塩1g=ナトリウム約400mg)から、カリウムは野菜・果物・海藻・豆類・いも類から摂取されます。つまり尿中Na/K比は、「塩分の量」と「カリウムの量」を一つの数値で表した食事のバランス指標です。
計算の具体例
| 尿中ナトリウム | 尿中カリウム | 尿中Na/K比 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 50 mEq/L | 50 mEq/L | 1.0 | 理想的 |
| 100 mEq/L | 50 mEq/L | 2.0 | 目標レベル |
| 160 mEq/L | 40 mEq/L | 4.0 | やや高め |
| 200 mEq/L | 33 mEq/L | 6.0 | 高い |
単位に注意:mEq比とmg比では値が違う
尿中Na/K比は、ふつうモル濃度(mEq/L、mmol/L)の比で計算します。一方、検査機関によってはナトリウムとカリウムの質量(mg)の比で表示されることもあります。mg比はモル比の約0.6倍の値になるため(例:モル比2.0 ≒ mg比1.2)、同じ「Na/K比2.0」でも単位が違えば意味が変わります。検査結果を見るときは、どちらの単位で表示されているかを確認しましょう。
なぜ尿中Na/K比が注目されるのか
1. 減塩の効果を数値で確認できる
「減塩しているつもりでも、実際には塩分が多かった」ということは珍しくありません。尿中Na/K比は、調味料や加工食品に含まれる「気づかない塩」も含めた実際の食事内容を反映するため、減塩の取り組みが効いているかを客観的に確認できます。
2. 24時間の蓄尿が不要で、外来の随時尿で評価できる
食塩摂取量の評価は本来24時間蓄尿が基準とされますが、患者さんへの負担が大きく、日常診療で毎回行うのは現実的ではありません。随時尿(自然尿)で計算するNa/K比は、24時間尿ほど正確ではないものの、食事の傾向をつかむ指標として有用とされています。
3. 「減塩」だけでなく「カリウム不足」も見える
尿中Na/K比が高い状態は、ナトリウムが多いだけでなく、カリウムが不足している可能性も示します。日本人は野菜・果物・海藻・豆類の摂取量が減っており、カリウムが不足しがちです。塩分を減らすだけでなく、カリウムを増やす視点が大切です。
4. 心血管リスクとの関連が報告されている
尿中Na/K比が高い人ほど心血管イベントのリスクが高いことが、大規模研究(INTERHEART研究など)で報告されています。単なる「塩分チェック」ではなく、心臓・血管のリスクを見る指標としても注目されています。
尿中Na/K比の基準値・目安
| 尿中Na/K比 | 評価 | 食事のポイント |
|---|---|---|
| 2.0未満 | 理想(ガイドラインの目標) | 現在の食事を維持する |
| 2.0〜4.0 | まずはこのレベルを目指す | 加工食品・調味料の見直しから |
| 4.0〜6.0 | 高め | 減塩とカリウム摂取の両方を改善 |
| 6.0以上 | 非常に高い | 食事内容の抜本的な見直しを検討 |
※日本人の平均は3〜4程度と報告されており、多くの方が「4未満」を目指すところから始めるのが現実的です。目標値は年齢・持病・腎機能によって変わるため、検査結果を持参して主治医にご相談ください。
尿中Na/K比が高くなる原因
- 加工食品・外食・中食の多い食生活:ハム・ソーセージ・練り物・漬物・インスタント食品・スープ類・麺類の汁
- 汁物の習慣:味噌汁・スープを1日複数杯飲む、麺類の汁を全部飲む
- 調味料の使いすぎ:醤油・ソース・ドレッシングを「かける」習慣
- 野菜・果物・海藻・豆類が少ない:カリウム摂取量そのものが不足している
- 腎機能の低下や加齢:ナトリウムの排泄が遅れ、カリウムの調節も変化する
- 一部の薬の影響:サイアザイド系・ループ系利尿薬ではカリウムが失われ、Na/K比が上がることがある
- 検査前日の食事・飲酒・発汗:前日だけ塩分が多い食事をとると、値が高く出ることがある
尿中Na/K比を下げる3つのポイント
1. 減塩は「かける塩」より「入っている塩」から
- 汁物は1日1杯まで、麺類の汁は残す
- ハム・ソーセージ・練り物・漬物・干物など、加工食品の頻度を減らす
- 調味料は「かける」より「つける」。小皿に取って少量を使う
- だし・香味野菜・酢・香辛料・レモンで味を足す
- 外食・中食は週の回数を決めておく。丼物・麺類・定食の汁物は塩分が多め
食塩1gはナトリウム約400mgに相当します。加工食品の栄養成分表示にある「食塩相当量」を確認する習慣が役立ちます。
2. カリウムは1日3,000mg以上を目安に
高血圧治療ガイドラインでは、カリウムを1日3,000mg以上摂ることが推奨されています(腎機能が低下している方は除きます)。カリウムは水に溶けやすいため、生野菜・サラダ・蒸し料理・汁ごと食べられる料理のほうが効率よく摂取できます。
| 食品(100gあたり) | カリウム量の目安 |
|---|---|
| 納豆 | 約660mg |
| 里いも | 約640mg |
| アボカド | 約590mg |
| ほうれん草(ゆで) | 約490mg |
| じゃがいも | 約410mg |
| バナナ | 約360mg |
| トマト | 約210mg |
※日本食品標準成分表に基づく目安です。同じ食品でも調理方法や食べる量で実際の摂取量は変わります。
3. DASH食の考え方を取り入れる
野菜・果物・全粒穀物・低脂肪乳製品を多く、飽和脂肪酸と塩分を控える「DASH食」は、血圧を下げる食事として知られています。減塩一辺倒ではなく、「塩を減らしながら、カリウムの多い食品を増やす」という発想が、尿中Na/K比の改善につながります。詳しくは高血圧の食事療法(減塩・DASH食)をご覧ください。
カリウムを増やす前に確認したいこと
⚠️ カリウムのとりすぎに注意が必要な方
慢性腎臓病(CKD)などで腎機能が低下している方、透析中の方、高カリウム血症を指摘されたことがある方、カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン等)・ACE阻害薬・ARB・一部の抗菌薬などを使用中の方は、カリウムが体内にたまりやすく、危険な不整脈につながることがあります。カリウムのサプリメントや野菜・果物の急な増量は自己判断で行わず、必ず主治医にご相談ください。
尿中Na/K比の改善は「減塩」と「適切な量のカリウム摂取」の両輪です。腎機能や内服薬によって目標とする値や食事内容は変わるため、検査結果を持参して相談されることをおすすめします。
尿中Na/K比の測定方法と注意点
随時尿で評価できるが、日差変動がある
尿中Na/K比は、朝の尿や外来での随時尿(自然尿)で評価できます。ただし1回の値は前日の食事や水分摂取、発汗の影響を受けて変動するため、1回の結果だけで一喜一憂せず、数週間から数か月の推移で見ることが大切です。検査の前日だけ特別に減塩すると実際の習慣が反映されませんので、ふだんどおりの食事で受けてください。
血液検査(血清カリウム・腎機能)とあわせて評価する
尿中Na/K比は食事の傾向を示す指標であり、体内のカリウム量や腎臓の働きそのものを示すものではありません。血清カリウム値・eGFR(腎機能)・血清ナトリウムなどをあわせて確認することで、安全な減塩とカリウム摂取の計画を立てられます。当院では、診察での問診・血圧測定に加え、採血(腎機能・電解質・コレステロール・血糖など)や尿検査、心電図・心エコー・頸動脈エコーなどを組み合わせて、血圧と心血管リスクの全体像を評価しています。
受診をご検討いただきたい方
- 家庭血圧が135/85mmHg以上で続いている
- 減塩しているつもりでも血圧が下がらない、数値が安定しない
- 高血圧・心不全・慢性腎臓病・糖尿病で治療中で、食事の見直しをしたい
- むくみ・息切れ・動悸などの症状がある
- 腎機能を指摘されたことがあり、カリウムのとり方に不安がある
- ご家族に高血圧・脳卒中・心筋梗塞の方がいる
よくある質問(FAQ)
尿中Na/K比(ナトカリ比)とは何ですか?
尿中Na/K比は、尿に含まれるナトリウム(Na)の濃度をカリウム(K)の濃度で割った値です。食塩のとりすぎとカリウム不足の両方を1つの数値で表せるため、減塩の効果を確認する指標として使われます。「ナトカリ比」とも呼ばれます。
尿中Na/K比の基準値はいくつですか?
日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインでは、減塩の目標として尿中Na/K比2.0未満が示されています。ただし日本人の平均は3〜4程度と報告されているため、まずは4未満を目指し、慣れてきたら2未満を目標にするのが現実的です。目標は年齢や持病、腎機能によって変わることもあります。
尿中Na/K比はどうやって計算しますか?
尿中ナトリウム濃度(mEq/L)を尿中カリウム濃度(mEq/L)で割るだけで計算できます。たとえば尿中ナトリウム100mEq/L、尿中カリウム50mEq/Lであれば、Na/K比は2.0です。検査機関によっては質量(mg)の比で表示されることもあり、mg比はモル比の約0.6倍の値になります。
24時間の尿をためないと測れませんか?
いいえ、24時間蓄尿は必要ありません。外来の随時尿(自然尿)や朝の尿で評価できます。24時間尿のほうが正確ではありますが、日常生活で毎回行うのは負担が大きいため、随時尿のNa/K比が食事の傾向を見る指標として用いられています。
尿中Na/K比が高いと、体にどのような影響がありますか?
尿中Na/K比が高い状態は、食塩のとりすぎとカリウム不足を示します。この状態が続くと血圧が上がりやすくなり、高血圧・心不全・脳卒中・腎臓病などのリスクが高まることが知られています。また、尿中Na/K比が高い人ほど心血管イベントが多いという大規模研究の報告もあります。
尿中Na/K比を下げるには、何を食べればよいですか?
減塩とカリウム摂取の増加の両方が必要です。汁物を1日1杯までにして麺類の汁を残す、加工食品・漬物・練り物の頻度を減らすといった減塩と、野菜・果物・海藻・豆類・いも類(納豆、ほうれん草、アボカド、里いも、バナナなど)を毎日の食事に取り入れることを組み合わせます。カリウムは1日3,000mg以上がひとつの目安です。
カリウムのサプリメントを飲めば尿中Na/K比は下がりますか?
サプリメントでカリウムを補うことは、腎機能が低下している方では危険な不整脈につながる可能性があり、おすすめできません。また、食事から摂るカリウムのほうが心血管への良い影響が期待できるとされています。野菜・果物・海藻・豆類など、食品から摂ることを基本にご検討ください。
腎臓病があると言われましたが、野菜や果物を増やしてもよいですか?
慢性腎臓病などで腎機能が低下している場合、カリウムが体内にたまりやすく、食事制限が必要なことがあります。尿中Na/K比が高くても、自己判断で野菜や果物を増やすのは避け、主治医や管理栄養士に相談のうえで内容を決めてください。
食事を変えてから、どのくらいで値は変わりますか?
個人差はありますが、減塩やカリウム摂取の改善は数週間から数か月で尿中Na/K比に反映されてくることが多いとされています。1回の検査で判断せず、定期的に確認しながら食事の改善を続けることが大切です。
健康診断の尿検査で尿中Na/K比はわかりますか?
一般的な尿検査(蛋白・糖・潜血・尿沈渣など)には、尿中ナトリウムとカリウムの測定は含まれていません。尿中Na/K比を知りたい場合は、尿中Na・Kを測定する検査が必要になります。健康診断の結果で腎機能や電解質を指摘された方は、診察時にご相談ください。
血圧が正常でも尿中Na/K比は気にしたほうがよいですか?
血圧が正常な方でも、食塩のとりすぎとカリウム不足は将来の高血圧や心血管疾患のリスクにつながります。ご家族に高血圧・脳卒中・心筋梗塞の方がいる方、減塩しているつもりでも食生活が偏りがちな方は、一度確認してみる価値があります。
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監修:しもやま内科 院長 下山立志(総合内科専門医・糖尿病専門医・循環器専門医・甲状腺専門医)
最終更新日:2026年9月16日
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最終更新日:2026-09-16
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。