橋本病/慢性甲状腺炎
慢性甲状腺炎では甲状腺に慢性の炎症が生じます。1912年に日本の橋本策(はかる)先生が初めて報告され、橋本病とも呼ばれます。
橋本病は甲状腺の病気のなかでも女性の割合が特に多く、男女比は約1対20~30程度と言われています。年齢別では20歳代後半以降、特に30~40歳代が多く、幼児や学童の患者さんは稀です。
橋本病の原因は自己免疫の異常です。しかし、自己免疫の異常が何を契機に生じるのかは未解明のままです。自己免疫異常による炎症により甲状腺が腫脹、甲状腺機能異常を生じます。
すべての橋本病患者さんが甲状腺機能低下症になるわけではありません。甲状腺に慢性の炎症が起こるのが橋本病ですが、炎症の程度が軽度であれば甲状腺機能は正常であり、炎症が進行すると甲状腺の働きが悪くなり、甲状腺機能低下症となります。
甲状腺機能低下症の明らかな症状のある方は橋本病の約10%で、約20%は症状のない軽度の低下症で、残りの約70%は甲状腺機能が正常です。
橋本病の原因
自己免疫の異常によりリンパ球が自己の甲状腺組織を破壊して、慢性炎症が生じます。
橋本病の症状
橋本病では甲状腺全体が腫大して大きくなります。この腫れ(甲状腺腫)を健診などで指摘され、診断につながることがあります。甲状腺機能が正常の橋本病の方は、症状は現れません。甲状腺機能が低下している場合は、顔や手足のむくみ、寒がり、体重増加、脈が遅くなる、気力が減退する、脱毛、月経過多など、甲状腺機能低下症の特有の症状がみられます。
橋本病の治療
甲状腺機能が正常の場合には治療の必要はありません。甲状腺機能低下があれば甲状腺ホルモン剤(レボチロキシン、チラーヂン)の服用が必要となります。甲状腺機能低下は治る場合もあり、生涯にわたる内服が必要とは限りません。
レボチロキシンには副作用はほとんどありません。レボチロキシンを服用すると約1〜2か月で甲状腺ホルモン値が正常になり、自覚症状がとれます。内服を続ければ健康な方と全く変わらない生活をおくることができます。甲状腺ホルモン値が正常になっても何らかの症状がある時は、甲状腺以外の病気を考える必要があります。