先生、妊娠してバセドウ病があるんですが、薬を変えないといけないって聞いたんですが……——先日、妊娠8週の女性患者さんが、不安そうな表情で相談されました。妊娠前はメルカゾールを服用していたそうですが、産婦人科からPTU(プロパジール)に変えてと言われたそうです。実は、妊娠初期(12週まで)は胎児の奇形リスクを減らすためPTUが推奨され、中期以降は肝機能障害のリスクを減らすためメルカゾールに戻すのが標準的なんです。
🔊 このページの要点
妊娠初期はPTUを第一選択、妊娠中期以降はMMIへ戻すのが基本。最小有効量でFT4を上限〜やや高めに保ち、2〜4週ごとに採血で調整します。
本ページは、妊娠中のバセドウ病(甲状腺機能亢進症)における抗甲状腺薬の使い分けを、実臨床での運用を軸に整理したものです。個々の状況により最適解は異なりますので、最終判断は担当医とご相談ください。
※PTUは一般名。国内ではプロパジール/プロパジールなどの製品名が用いられます。
よくあるご質問(FAQ)
妊娠初期はどの薬を使いますか?
一般に妊娠初期はPTUを優先します。MMIの胚形成期(6–10週頃)における催奇形性リスクへの配慮です。
中期以降に薬を切り替える理由は?
PTUは稀に重篤な肝障害があるため、中期以降はMMIへ切替を検討します。母体安全性に配慮した運用です。
どのくらいの頻度で採血が必要ですか?
2–4週ごとにFT4/TSHで調整します。コントロールが安定したら4–6週へ延長することもあります。
授乳中でも服用できますか?
少量のMMI(〜20–30mg/日)やPTU(〜300mg/日)は授乳と両立可能とされます。最小有効量・授乳直後の内服などで対応します。
メルカゾールとプロパジールの違いは何ですか?
メルカゾール(MMI:チアマゾール)は1日1回の服用で済み、効果が安定しています。プロパジール(PTU:プロピルチオウラシル)は1日2〜3回の分服が必要で、胎盤通過率が低いため妊娠初期に優先されます。ただし、プロパジールには肝障害リスクがあるため、妊娠中期以降はメルカゾールへの切り替えを検討します。
メルカゾールで赤ちゃんに奇形は出ますか?
メルカゾールを妊娠初期(特に妊娠6週頃までに organogenesis の時期)に使用した場合、頭皮欠損(aplasia cutis)や後鼻孔閉鎖など稀な奇形のリスクがわずかに上昇するとの報告があります。ただし、絶対的な発生率は極めて低く、専門医の管理下で最小用量を守ればリスクは大幅に低減します。妊娠初期は原則としてプロパジールを使用し、このリスクを避けます。
プロパジールの肝障害は心配ありませんか?
プロパジールにはメルカゾールに比べて重篤な肝障害の報告が多く、FDAから Black Box Warning(黒枠警告)が出ています。そのため、妊娠中期以降は肝機能(AST, ALT, ビリルビン)を定期的にモニタリングし、メルカゾールへの切り替えを検討します。急な倦怠感・黄疸・尿の色変化がある場合は速やかに受診してください。