甲状腺にしこりが見つかったとき、「良性か悪性か」を確かめるための検査が穿刺吸引細胞診(FNA)です。「針を刺す」と聞くと怖いイメージがありますが、実際には採血より細い針で、麻酔もするので痛みはほとんどありません。このページでは、FNAの目的・対象・流れを詳しく説明します。
そもそも、なぜFNAが必要なの?
甲状腺エコーでしこり(結節)が見つかった場合、エコーの画像である程度「良性っぽい」「悪性っぽい」という推測はできます。でも、それはあくまで「見た目の印象」。確定診断をするには、実際に細胞を取って顕微鏡で見る必要があります。
そこで行うのがFNA(Fine Needle Aspiration/穿刺吸引細胞診)です。細い針をしこりに刺して、中の細胞を吸い上げて調べます。
「そこまでしなくても…」と思う方もいるかもしれません。でも、エコーで「良性そうだね」と言われたしこりの中に、まれに悪性の細胞が紛れていることがあります。逆に「ちょっと形が気になる」と言われても、実際に調べてみたら良性だった——ということも。FNAは、この「見た目と中身のギャップ」を埋めるための検査です。
FNAの対象になるのはどんなしこり?
エコーで見つかったすべてのしこりにFNAが必要なわけではありません。以下のような基準で、必要なケースを判断します。
- 大きさ:1cm以上のしこりが基本。1cm未満でもエコーで「悪性を疑う所見」があれば検討します。
- エコー所見(TI-RADS分類):TI-RADSという国際基準で、しこりの形・境界・内部エコー・カルシウムの有無などをスコア化。スコアが高いほどFNAを積極的に検討します。
- 急な増大:短期間で大きくなっているしこりは要注意。
- リスク因子:甲状腺がんの家族歴がある、小児期に頸部への放射線照射歴がある、など。
当院ではFNAは実施していません——当院ではエコーによるTI-RADS評価と適応判断を行い、FNAが必要な場合は連携する医療機関をご紹介します。FNA後の結果説明や経過フォローは引き続き当院で行いますので、ご安心ください。
FNAでわかること・わからないこと
わかること:
- しこりが良性か悪性か(判断の確度は90%以上)
- 悪性の場合、どのタイプの甲状腺がんなのか(乳頭がん・濾胞がんなど)
わからないこと:
- 「濾胞性腫瘍」と診断された場合、良性か悪性かの確定には手術でしこり全体を取り出して調べる必要があります(FNAでは濾胞がんの確定診断は難しいため)
- しこりの正確な大きさ・広がり(それはエコーやCTの役割)
📄 よくあるご質問(FAQ)
Q. FNAってどんな検査?痛いの?
FNA(穿刺吸引細胞診)は、甲状腺のしこりに細い針を刺して細胞を吸引する検査です。採血の針より細い針を使用し、局所麻酔もするため、痛みはほとんどありません。所要時間は5〜10分程度で、検査後はすぐに帰宅できます。
Q. FNAの結果はどのように分類される?(ベセスダ分類)
結果は国際的なベセスダシステムで分類されます。I〜VIまでの6段階:I(不適正)、II(良性)、III(意義不明/濾胞性病変)、IV(濾胞性腫瘍)、V(悪性疑い)、VI(悪性)。この分類に基づき、経過観察か手術かの方針が決まります。
Q. FNAの結果が「悪性」だったらどうなる?
甲状腺がんと診断された場合、一般的には手術(甲状腺切除術)が検討されます。ただし甲状腺がなは進行が非常に遅いものが多く、すぐに手術が必要とは限りません。微小がん(1cm未満)であれば、経過観察という選択肢もあります。がんのタイプや大きさ、年齢などを総合的に判断します。
Q. 良性だったらその後どうする?
良性と確認できれば、年に1回程度のエコー経過観察で大丈夫です。大きさや形に変化がないかをチェックします。良性であっても、数年後に大きくなってきた場合は再度FNAを検討することもあります。
Q. FNAの結果はどのくらいでわかる?
採取した細胞を病理医が顕微鏡で詳しく調べるため、結果が出るまでに約1週間かかります。結果が出次第、ご連絡して詳しく説明します。
Q. FNAと針生検(CNB)の違いは?
FNAは細い針で細胞を吸引する検査で、CNB(Core Needle Biopsy)は少し太い針で組織の芯を採取します。FNAは外来で簡単に行える利点がありますが、CNBの方がより多くの組織が取れるため、不適正検体が少なく診断率が高いとされています。当院ではFNAの適応判断と紹介を行っています。
Q. FNAの合併症やリスクは?
一般的に安全な検査ですが、穿刺部の内出血(血腫)・軽度の痛み・まれに感染が起こることがあります。内出血は数日で自然に吸収されます。抗凝固薬(血液サラサラの薬)を服用中の方は、事前に医師に相談してください。
Q. FNA後の注意点は?
検査後は穿刺部位を清潔に保ち、当日の激しい運動や飲酒は避けてください。止血のために検査後10分程度圧迫することがあります。シャワーは当日から可能ですが、穿刺部を強くこすらないようにしましょう。痛みや腫れが強い場合は早めに受診してください。
Q. FNA(穿刺吸引細胞診)で異常なし(ベセスダII)の場合、その後どうなりますか?
ベセスダII(良性)と診断された場合、そのしこりが悪性である確率は0〜3%未満と非常に低いです。対応:(1)CTRが低いため精密なエコーやFNAは避けて、経過観察で構わない (2)年1回の甲状腺エコーで大きさの変化をチェック (3)急に大きくなる・声がかすれる・飲み込みにくくなるなどの症状が出た場合は再評価。ベセスダIIは基本的に「良性」で安心してよい結果ですが、まれに採取部位によって悪性細胞を採取できていない可能性もあるため、定期的なフォローアップは必要です。
監修:しもやま内科 院長 下山立志(総合内科専門医・糖尿病専門医・循環器専門医・甲状腺専門医)
最終更新日:2026年8月23日
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最終更新日:2026-08-28
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。