甲状腺エコーTI-RADS分類とは——TR1〜TR5の評価基準と穿刺適応
TI-RADS(Thyroid Imaging Reporting and Data System/甲状腺画像報告データシステム)は、甲状腺エコー検査で見つかった結節(しこり)を、国際的な統一基準で悪性リスク評価するための分類システムです。エコーで「何かある」と言われても、それがどの程度心配すべきものなのか、数値で客観的に示してくれるのがTI-RADSの最大のメリット。TR1(良性)からTR5(悪性の疑いが高い)までの5段階でリスクを等級分けし、その後の経過観察や穿刺検査の要不要を判断します。船橋市のしもやま内科では年間480件以上の甲状腺エコー検査を実施し、全例でTI-RADSに基づく評価を行っています。
TI-RADS(甲状腺画像報告データシステム)とは
TI-RADSは、米国放射線学会(American College of Radiology/ACR)が2017年に発表した甲状腺結節評価のための標準化システムです。エコーで観察される5つの評価項目にスコアを割り当て、その合計点に応じてTR1〜TR5のカテゴリーに分類します。
甲状腺結節は40歳以上の約40〜50%に認められるほど頻度の高い所見ですが、その大部分(90〜95%)は良性です。しかし、ごく一部に悪性(甲状腺がん)が含まれるため、どの結節を穿刺して細胞診を行うべきか、客観的な基準が必要になります。TI-RADSはこの「どの結節を拾い上げるか」を統一ルールで決めるためのツールです。
以前は医師の経験や勘に頼る部分が大きく、同一の画像でも評価が分かれることがありました。TI-RADSを用いることで、医師によるバラつきを最小限に抑え、患者さんにも根拠を示しながら説明できるようになりました。
TI-RADSの目的——結節の悪性リスク評価
TI-RADSの主な目的は以下の3点です:
- 不要な穿刺(FNA)を減らす — 良性と判断できる結節にまで針を刺す必要はありません。TR1〜TR2の結節は基本的に穿刺不要です。
- 悪性の見落としを防ぐ — TR4〜TR5の結節には積極的に穿刺を推奨し、甲状腺がんの早期発見につなげます。
- 患者と医師の共通言語を作る — TR3だから半年後にもう一度見よう」「TR5だから来週穿刺しましょう」と、数値で示すことで患者さんの納得感が高まります。
TI-RADSの5つの評価項目
TI-RADSでは、エコー画像から以下の5項目をそれぞれスコア化(0〜3点)し、その合計点でカテゴリーを決定します。
① 構成(Composition)
結節が液体で満たされているか(囊胞性)、中身があるか(充実性)を評価します。完全な囊胞や海綿状(スポンジのように見える)は0点と低リスクですが、充実性が高くなるほどスコアが上がります。
- 完全囊胞/海綿状:0点
- 混合性(囊胞+充実):1点
- 充実性(ほぼ全体に中身がある):2点
② エコー輝度(Echogenicity)
結節が周囲の甲状腺組織と比べてどの程度の明るさ(エコー輝度)かを評価します。低エコー(黒っぽく映る)ほど悪性の可能性が高まります。
- 無エコー:0点
- 高エコー/等エコー:1点
- 低エコー:2点
- 著しい低エコー:3点
③ 形状(Shape)
結節の形状が「横長(wider-than-tall)」か「縦長(taller-than-wide)」かを評価します。縦長(高さ>横幅)の結節は悪性の徴候とされ、3点が加算されます。
- 横長:0点
- 縦長(taller-than-wide):3点
④ 境界(Margin)
結節の輪郭が滑らかか、ぼやけているか、不整(ギザギザ)かを評価します。不整な境界や、甲状腺の外側に飛び出している所見は悪性を疑います。
- 滑らか:0点
- 不明瞭:0点
- 分葉状/不整:2点
- 甲状腺外進展:3点
⑤ 石灰化(Echogenic Foci)
結節内部に白く光る石灰化像を評価します。特に微小石灰化(点状の輝点)は乳頭がんに特徴的な所見として知られています。
- なし/大きな彗星様アーチファクト:0点
- 粗大石灰化:1点
- 辺縁石灰化(殻状):2点
- 微小石灰化(点状輝点):3点
TR1〜TR5の分類と悪性リスク
上記5項目の合計点(0〜最大15点)に基づき、以下の5段階に分類します。
| 分類 | 合計点 | 評価 | 悪性の確率 | 対応 |
|---|---|---|---|---|
| TR1 | 0点 | 良性(Benign) | 0% | 追加処置不要。定期検診でOK |
| TR2 | 1〜2点 | 良性と考えられる(Not suspicious) | <2% | 穿刺不要。定期検診でOK |
| TR3 | 3点 | 低度の疑い(Mildly suspicious) | 2〜5% | 経過観察(6〜12ヶ月後再検査) |
| TR4 | 4〜6点 | 中度の疑い(Moderately suspicious) | 5〜50% | 穿刺(FNA)を推奨(1.5cm以上が目安) |
| TR5 | 7点以上 | 高度の疑い(Highly suspicious) | >50% | 穿刺(FNA)を強く推奨(1.0cm以上が目安) |
穿刺適応(FNA適応)の目安
TI-RADSのカテゴリーと結節の大きさを組み合わせて、穿刺(吸引細胞診/FNA)の適応を判断します。ACRガイドラインの推奨は以下の通りです:
- TR3(低度の疑い):2.5cm以上の場合に穿刺を考慮
- TR4(中度の疑い):1.5cm以上で穿刺推奨
- TR5(高度の疑い):1.0cm以上で穿刺強く推奨
- TR1・TR2:穿刺不要(大きさに関わらず)
ただし、これらの基準はあくまで目安であり、結節の急な増大や頸部リンパ節腫大、声がれなどの症状を伴う場合は、TI-RADSスコアに関わらず穿刺や追加精査を検討します。
ACR TI-RADSとEU-TIRADSの違い
TI-RADSには複数のバージョンが存在します。代表的なものは以下の2つです:
- ACR TI-RADS(米国):2017年にACRが発表。5項目のスコア合計でTR1〜TR5を決定。世界的に最も広く使われています。
- EU-TIRADS(欧州):2017年に欧州甲状腺学会が発表。評価項目や定義に一部違いがあり、TR1〜TR5の分類もやや異なります。
当院では国際標準であるACR TI-RADSを採用しています。両者に大きな矛盾はなく、いずれも「不要な穿刺を減らし、必要な結節を確実に拾う」という目的は共通しています。
検査の流れ——結果を受け取るまで
- 問診・触診:頸部の触診で結節の有無を確認します。
- 甲状腺エコー検査:ベッドに仰向けになり、首にゼリーを塗ってプローブを当てます。痛みはなく、約10〜15分で終了します。
- TI-RADSスコアリング:医師がエコー画像の5項目を評価し、合計点とカテゴリーを決定します。
- 結果説明:モニター画面を見ながら、その場で所見を説明します。TR3以上の場合は経過観察や穿刺の提案を行います。
- 必要に応じて穿刺(FNA):TR4〜TR5でサイズ基準を満たす場合、別日または同日内に穿刺検査を実施します。
緊急性分岐——危険サインを見逃さない
⚠️ こんな症状がある場合は早めに受診を
- 首のしこりが短期間で急に大きくなった
- 声がれ(甲状腺がんが反回神経を圧迫している可能性)
- 頸部リンパ節の腫れ(転移の可能性)
- 飲み込みにくい(嚥下障害)
- 息苦しい(呼吸困難)
当院の甲状腺エコー診療
しもやま内科(船橋市)では、年間480件の甲状腺エコー検査実績を持つ専門医が、ACR TI-RADSに基づく客観的な評価を提供しています。エコー検査は予約制で、結果はその場で説明します。「エコーで何かあると言われたけど説明がよくわからなかった」という方も、TI-RADSの数値を一緒に見ながら、わかりやすく説明します。
当院では甲状腺専門ページでさまざまな情報を公開しています。あわせてご覧ください。
関連ページ
- 甲状腺エコー検査 — 検査の流れや料金について
- 甲状腺結節・甲状腺がん — 結節の基礎知識から治療まで
- 良性と悪性の見分け方 — TI-RADS以外の評価ポイントも解説
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最終更新日:2026年8月26日|監修:しもやま内科
最終更新日:2026-08-25
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。