ヨウ素サプリと甲状腺|橋本病・バセドウ病での注意点(昆布・わかめ・海苔)

📘 要点

  • ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料になるミネラルです。
  • 成人の1日の推奨量は140μg、上限は3,000μgです。
  • 乾燥昆布1gには約2,000〜3,000μgのヨウ素が含まれます。
  • 橋本病ではヨウ素の過剰摂取が炎症を悪化させることがあります。
  • ケルプや海藻エキスのサプリは避けるのが無難です。
  • 動悸や息切れ、高熱がある場合は、すぐに119番へのご連絡をおすすめします。

ヨウ素は甲状腺ホルモンを作るのに欠かせないミネラルですが、摂りすぎも摂り足りないも、甲状腺に負担をかけることがあります。特に昆布などの海藻やサプリメントは、思っている以上に多量のヨウ素を含んでいることがあり、橋本病の方では症状を悪化させることもあります。適切な量を知って、安心して日常の食事を楽しむことが大切です。

ヨウ素(ヨード)は、甲状腺ホルモン(T4・T3)をつくるために欠かせないミネラルです。日本人は海藻をよく食べる食習慣があるため、過剰摂取が問題になるケースが少なくありません。一方で、不足が続くと甲状腺腫や機能低下を招くこともあります。

このページでは、食事・サプリ・ヨウ素造影剤が甲状腺に与える影響と、日常・受診前の実践的な注意点をまとめました。

お子さん・思春期のお子さんの食事とヨウ素については、小児・思春期の食事とヨウ素で年齢別の目安量とサプリの注意点をまとめています。

ヨウ素とは?甲状腺ホルモンの原料

ヨウ素は、甲状腺がホルモンを作るために絶対に必要なミネラルです。食事から摂取されたヨウ素は、甲状腺に取り込まれ、そこでT4(チロキシン)やT3(トリヨードサイロニン)というホルモンに変換されます。

日本では、海藻類を含む和食が一般的なため、過剰摂取のリスクが高い国の一つと言われています。一方、ヨウ素をほとんど含まない地域(内陸部など)では、かつて甲状腺腫(ゴイター)が多く見られました。適切な量を摂ることが、甲状腺の健康を保つカギです。

ヨウ素の1日の摂取目安(成人・妊娠中・授乳中)

対象 推奨摂取量(目安) 上限量(目安)
成人男性・女性 140 μg/日 3,000 μg/日
妊娠中 250 μg/日 2,000 μg/日
授乳中 280 μg/日 2,000 μg/日

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」。妊娠中・授乳中の推奨量は、18歳以上の推奨量(140μg/日)に付加量(妊婦+110μg/授乳婦+140μg)を加えた値です。耐容上限量は妊娠中・授乳中とも2,000μg/日です。

ただし、甲状腺疾患のある方や妊娠中は、一般の目安と異なる場合があります。具体的な摂取量は、主治医にご相談ください。

昆布・海藻と甲状腺|過剰摂取の注意点

昆布、わかめ、ひじきなどの海藻は、日本人の食卓に欠かせない食材です。しかし、中でも昆布はヨウ素含有量が非常に高く、乾燥昆布数グラムで1日の推奨量を大きく超えることがあります。

海藻などに含まれるヨウ素の量(目安)

食品 量 ヨウ素の量(目安)
乾燥昆布 1 g 約2,000 μg
刻み昆布 1食(8 g) 約18,000 μg
昆布だし(煮出し) 1杯(150 mL) 約16,500 μg
昆布の佃煮 大さじ1(15 g) 約1,650 μg
ひじき(ゆで) 1食(60 g) 約580 μg
焼き海苔 1枚(約3 g) 約60 μg
乾燥わかめ(カットわかめ) 1食(0.5 g) 約50 μg

出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに作成。ヨウ素の含有量は海藻の産地や生育環境、だしの取り方(昆布の使用量)によって大きく変動します。昆布だしの値は、昆布を3%の割合で使った濃いだしの場合の目安です。

昆布茶や濃い昆布だしを毎日続けると、耐容上限を超える可能性があります。甲状腺に影響が出ることをWolff–Chaikoff効果と呼び、一時的に機能が低下します。また、甲状腺の結節がある方では、過剰なヨウ素で機能亢進を引き起こすJod-Basedow現象が起こることもあります。

ヨウ素サプリメントの選び方と注意点

市販のマルチビタミンやミネラルサプリには、ヨウ素が含まれている製品が多くあります。特に「ケルプ」「海藻エキス」「昆布エキス」と表記されているものは、含有量が高い場合があります。

  • 甲状腺疾患のある方:基本的にヨウ素入りサプリは避けるのが無難です。
  • 妊娠中・授乳中:必要以上のヨウ素摂取は避け、産婦人科または内分泌専門医に相談してください。
  • 健康な方でも:「甲状腺にいい」という謳い文句のサプリを安易に飲むのは避けましょう。

摂取しているサプリがあれば、来院時に現物や写真をお持ちください。成分表を確認し、適切なアドバイスをいたします。

造影剤(CT検査)と甲状腺の影響

CT検査などで使用されるヨウ素造影剤は、1回の検査で大量のヨウ素を体内に取り込むことになります。多くの方では一過性ですが、甲状腺疾患の素因がある方では、以下のような影響が現れることがあります。

  • 甲状腺機能の一時的な低下または亢進
  • TSHやFT4などの検査値の変動

造影剤検査前に伝えるべきこと

  • 甲状腺疾患の有無(橋本病、バセドウ病、甲状腺結節など)
  • 過去の甲状腺治療歴(手術、放射性ヨウ素治療など)
  • 今後の放射性ヨウ素治療やシンチグラフィーの予定

放射性ヨウ素治療やシンチの予定がある場合、造影剤検査後は数週間〜数か月の間隔を空ける必要があります。必ず撮影部門と担当医に伝えてください。

病態別の注意点(橋本病・バセドウ病・妊娠中)

橋本病(慢性甲状腺炎)・甲状腺機能低下症

過剰なヨウ素は、炎症を助長し、機能低下を進めることがあります。海藻は常識的な量に抑え、サプリは基本的に控えるのが安全です。レボチロキシン内服中の方は、鉄剤・カルシウム・PPI(胃酸抑制薬)などとの相互作用も併せて確認しましょう。

バセドウ病(甲状腺機能亢進症)

治療中はヨウ素過剰でコントロールが不安定になることがあります。海藻の大量摂取や昆布サプリは避けてください。抗甲状腺薬治療時は、食習慣についても必ず医師に伝えてください。

妊娠中・授乳中

胎児・乳児の発育にヨウ素は必要ですが、過剰摂取は新生児の甲状腺機能異常の原因となることがあります。妊娠中のヨウ素サプリは原則不要で、海藻も食べ過ぎに注意しましょう。詳しくは「甲状腺と妊娠」のページもご参照ください。

⚠️ 緊急受診の目安:動悸・息切れ・意識障害・高熱などがある場合は直ちに119番へのご連絡をおすすめします。受診のタイミングに迷う場合は、047-467-5500までお電話ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 橋本病の人はヨウ素(昆布・わかめ)を控えるべき?

はい。橋本病ではヨウ素過剰が炎症を悪化させ機能低下を進行させるリスクがあります。昆布サプリや海藻エキスは避け、海藻も常識的な量に抑えるのが安全です。

Q. バセドウ病の人はヨウ素を制限すべき?

バセドウ病治療中はヨウ素過剰がコントロールを不安定にします。特にRAI治療前は厳格な制限が必要です。海藻サプリは避け、食事内容を医師に相談してください。

Q. ヨウ素の1日の摂取目安は?

成人推奨量140μg/日、上限3,000μg/日。妊娠中250μg/日、授乳中280μg/日。乾燥昆布1gで約2,000〜3,000μg含むためサプリや昆布茶の過剰摂取に注意。

Q. 昆布を食べすぎるとどうなる?

過剰ヨウ素でWolff-Chaikoff効果(一過性機能低下)やJod-Basedow現象(機能亢進)を起こす可能性があります。症状は首の腫れ・だるさ・動悸・体重変化など。

Q. ヨウ素サプリは甲状腺にいいの?

いいえ。甲状腺に良いという宣伝のヨウ素サプリは過剰摂取リスクがあり推奨できません。ケルプや昆布エキスを含むサプリは含有量が高く甲状腺疾患の方は避けるべきです。

Q. CTの造影剤で甲状腺に影響はある?

ヨウ素造影剤は大量のヨウ素を投与するため甲状腺疾患では一過性の機能異常を起こす可能性があります。RAI治療やシンチ予定がある場合は数週間〜数ヶ月の間隔が必要。

Q. 妊娠中・授乳中のヨウ素摂取は?

妊娠中250μg/日、授乳中280μg/日が推奨(日本人の食事摂取基準2025年版)。過剰摂取は新生児の甲状腺機能異常の原因となるためサプリは原則不要で海藻も食べ過ぎないように。

Q. 甲状腺の薬とヨウ素の相互作用は?

レボチロキシン服用中は鉄剤・カルシウム剤・PPIとの相互作用に注意。抗甲状腺薬服用中はヨウ素過剰が治療効果を不安定にする可能性があります。

Q. 甲状腺にいい食べ物・悪い食べ物は?

甲状腺に特別に良い食べ物はなくバランスの良い食事が基本。橋本病はヨウ素過剰とセレン不足に注意。バセドウ病ではカフェイン過剰が動悸を悪化させる可能性があります。

主な参考資料:日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」(2024年11月21日改定)/日本甲状腺学会「バセドウ病治療ガイドライン2019」/日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン 産科編2026/婦人科外来編2026」(2026年4月発行)

作成・更新:2026-09-24|本ページは一般的な医学情報の提供を目的としたものです。診断・治療については受診のうえご相談ください。

糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。年間約480件(2025年度実績)の甲状腺エコーを実施し、甲状腺疾患の診断・治療に豊富な経験があります。

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最終更新日:2026-09-24

👨‍⚕️ この記事の監修医師

監修・執筆:しもやま内科 院長(日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医/日本老年医学会 老年科専門医・指導医)
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

12/10/2025