小児・思春期の食事とヨウ素|海藻の目安量とサプリの注意点

📘 要点

  • ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料になる必須ミネラルです。
  • 日本では、ふつうの食事でヨウ素が不足することはまれです。
  • 推奨量は1〜2歳で1日50μg、12〜14歳で140μgです。
  • 耐容上限量は1〜2歳600μg、12〜14歳2,500μgです。
  • 昆布は1gで約2,000μgと、他の海藻より桁違いに多い食品です。
  • だるさ・むくみ・動悸が続くときは、早めに受診をご検討ください。

昆布やわかめ、海苔などの海藻は、日本の食卓に欠かせない食材です。一方で、海藻、とくに昆布はヨウ素を非常に多く含み、食べる量によっては甲状腺の働きに影響することがあります。「海藻は毎日食べても大丈夫だろうか」「サプリメントを与えたほうがよいのだろうか」と、お子さんの食事について迷われる保護者の方は少なくありません。

ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料になる必須のミネラルで、子どもの成長や脳・神経の発達、からだの代謝に関わっています。日本は海藻を食べる習慣があるため、ふつうの食事をしていればヨウ素が不足することはまれで、むしろ摂りすぎに注意が必要な国といわれています。

このページでは、年齢別のヨウ素の目安量、食品に含まれるヨウ素の量、家庭の食事や学校給食での考え方、サプリメントの注意点、甲状腺の病気がある場合の食事のポイントをまとめました。

⚠️ 当院の診療対象について

当院は中学生以上(12歳~)の甲状腺疾患を対象としています。小学生以下(11歳以下)のお子様の場合は、小児科専門医のいる医療機関をご案内しています。このページは、お子さんの食事についての一般的な医学情報として、乳児期・幼児期を含む年齢別の値を掲載しています。

ヨウ素は子どもの成長に必要なミネラル

ヨウ素は、甲状腺で甲状腺ホルモン(T4・T3)をつくる材料になる必須ミネラルです。甲状腺ホルモンは、からだの代謝を調整し、体温や心拍を保ち、子どもの身長の伸びや骨の成熟に関わります。胎児期から乳幼児期にかけては、脳と神経の発達にも重要な役割を担います。

ヨウ素が不足すると、甲状腺が腫れたり(甲状腺腫)、甲状腺ホルモンが足りなくなったりしますが、日本は海藻を食べる食習慣があり、ふつうの食事をしていれば不足することはまれです。

逆に、ヨウ素を摂りすぎると、甲状腺ホルモンの合成が一時的に抑えられ、甲状腺機能が低下することがあります(Wolff-Chaikoff効果)。日本人のヨウ素摂取量は平均で1日1〜3mg程度と推定されており、これは海外の平均より多い量です。ヨウ素は「不足」よりも「摂りすぎ」に注意が必要で、とくに昆布の食べ過ぎには気をつける必要があります。

年齢別のヨウ素の目安(日本人の食事摂取基準 2025年版)

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、年齢ごとにヨウ素の摂取量の基準が示されています。ヨウ素の基準値は男女で同じです。単位はすべてμg/日です。

ヨウ素の食事摂取基準(μg/日・男女共通・2025年版)
年齢等 推定平均必要量 推奨量 目安量 耐容上限量
0〜5か月 — — 100 250
6〜11か月 — — 130 350
1〜2歳 35 50 — 600
3〜5歳 40 60 — 900
6〜7歳 55 75 — 1,200
8〜9歳 65 90 — 1,500
10〜11歳 75 110 — 2,000
12〜14歳 100 140 — 2,500
15〜17歳 100 140 — 3,000
18歳以上 100 140 — 3,000
妊婦(付加量) +75 +110 — 2,000
授乳婦(付加量) +100 +140 — 2,000

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(2024年)。妊婦・授乳婦の耐容上限量は2,000μg/日です。妊娠中・授乳中は、18歳以上の値に付加量を加えた量が目安になります。

推定平均必要量は、集団の半分の人が必要量を満たす量、推奨量はほとんどの人が満たす量、目安量は一定の栄養状態を保つのに十分な量、耐容上限量は健康に悪影響が出ないとみなされる上限の量です。

2025年版では、日本人のデータを踏まえて基準値が見直されました。成人の推奨量は130μgから140μgに引き上げられ、小児の耐容上限量も大きく引き上げられています(例:1〜2歳は300μgから600μg、10〜11歳は900μgから2,000μg)。これは「多少多くても問題になりにくい」という意味ではありません。昆布を数g食べるだけで、これらの量を大きく超えることがあります。

食品に含まれるヨウ素の量

食品ごとのヨウ素の量を比べると、昆布がとくに多いことがわかります。わかめや海苔は、昆布に比べると少なめです。

主な食品に含まれるヨウ素(目安)
食品 量の目安 ヨウ素の量の目安
刻み昆布 1食(8g) 約18,000μg
昆布だし(煮出し) 1杯(150mL) 約16,500μg
昆布だし(水出し) 1杯(150mL) 約8,000μg
乾燥昆布(まこんぶ) 1g 約2,000μg
昆布の佃煮 大さじ1(15g) 約1,650μg
ひじき(ゆで) 1食(60g) 約580μg
まだら(生) 1切れ(80g) 約280μg
焼き海苔 1枚(約3g) 約60μg
カットわかめ(乾) 1食(0.5g) 約50μg
鶏卵 1個(50g) 約20〜40μg

出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに作成。ヨウ素の含有量は、海藻の産地や生育環境、だしの取り方(昆布の使用量)によって大きく変動します。昆布だしの値は、昆布を3%の割合で使った濃いだしの場合の目安です。

乾燥昆布1gに含まれるヨウ素は約2,000μgで、これは12〜14歳の推奨量(140μg)の10倍以上にあたります。昆布だしを濃くとる習慣や、昆布の佃煮・とろろ昆布・塩昆布を毎日食べる習慣がある場合は、知らないうちに多くのヨウ素を摂っていることがあります。

家庭の食事・学校給食での考え方

ふつうの食事は、そのままで大丈夫です

みそ汁に入れるわかめ、おにぎりに巻く海苔、給食で出る海藻サラダなどは、いずれも1回の量は多くありません。これらを「甲状腺に悪いから」と除いてしまう必要はなく、バランスのよい食事の一部として考えてください。

量と頻度を見直したい食品

  • 昆布の佃煮、塩昆布、とろろ昆布、おぼろ昆布
  • 昆布茶、昆布エキス入りの飲料
  • 昆布を多く使った濃いだしを毎日とる習慣
  • だしを取ったあとの昆布をそのまま食べる習慣
  • 昆布入りのふりかけや、海藻ミックスの大量摂取

これらは「まったく食べてはいけない」ものではありません。毎日続けるかどうか、1回の量が多くないかという点で見直すとよいでしょう。たとえば、昆布の佃煮を毎日食べていた場合は、週に1〜2回に減らす、1回の量を小さじ1杯程度にするといった工夫があります。

学校給食について

学校給食では、わかめ・海苔・ひじきなどの海藻が週に数回使われることがあります。1回に使われる量は多くないため、給食だけでヨウ素が過剰になる心配は少ないと考えられます。家庭の食事で昆布の佃煮や昆布茶を毎日続けている場合は、給食と合わせた1日の合計を意識するとよいでしょう。

サプリメントの注意点

市販のサプリメントには、ヨウ素が含まれているものがあります。とくに「ケルプ」「海藻エキス」「昆布エキス」といった表示のある製品は、ヨウ素の含有量が多いことがあります。また、マルチビタミン・ミネラルの製品や、のどの飴、栄養ドリンクにもヨウ素が含まれていることがあります。

  • 甲状腺の病気がないお子さん:ヨウ素サプリメントは原則として必要ありません。
  • 甲状腺の病気があるお子さん:ヨウ素を含むサプリメントは避けてください。
  • 妊娠中・授乳中の方:必要以上のヨウ素摂取は避け、産婦人科または内分泌専門医にご相談ください。

「甲状腺に良い」という宣伝文句でヨウ素サプリメントが売られていることがありますが、甲状腺の病気がある方にとっては逆に負担になることがあります。購入を検討されている場合は、成分表示(ヨウ素のμg数)を確認し、主治医にご相談ください。

当院では、ヨウ素を含むサプリメントの販売や、自由診療としてのサプリメント指導は行っておりません。診療は保険診療の範囲で対応し、市販のサプリメントについては成分表をお持ちいただければ内容を確認します。

ヨウ素を摂りすぎるとどうなるか

ヨウ素を一時的に多く摂ると、甲状腺ホルモンの合成が抑えられ、甲状腺機能が低下することがあります(Wolff-Chaikoff効果)。多くは一過性で、摂取量が減ると元に戻りますが、長期にわたる過剰摂取では機能低下が続くことがあります。

見られやすい症状は、だるさ、眠気、むくみ、便秘、体重の増加、寒がり、集中力の低下などです。子どもの場合は「朝起きられない」「授業に集中しにくい」といった形で気づかれることもあります。甲状腺に結節や自己免疫の変化がある場合は、逆にホルモンが多くなる(Jod-Basedow現象)こともあります。

橋本病(慢性甲状腺炎)では、ヨウ素の過剰摂取が炎症を悪化させたり、機能低下を進めたりすることがあります。バセドウ病(甲状腺機能亢進症)では、治療中にヨウ素を多く摂るとコントロールが不安定になることがあります。心配な場合は、血液検査(TSH・FT4・FT3)で甲状腺の状態を確認できます。

甲状腺の病気がある子どもの食事

橋本病(甲状腺機能低下症)

昆布などヨウ素を多く含む食品の多量摂取を避け、わかめ・海苔は常識的な量にとどめます。海藻を完全に除く必要はありません。チラーヂンS(レボチロキシン)を服用している場合は、鉄剤・カルシウム剤・胃酸を抑える薬と服用時間を4時間以上あけてください。

バセドウ病(甲状腺機能亢進症)

治療中はヨウ素の過剰摂取でコントロールが不安定になることがあるため、海藻の大量摂取や昆布サプリは避けてください。放射性ヨウ素治療や検査の前後は、より厳格なヨウ素制限が必要になることがあり、その場合は医療機関から個別に指示されます。カフェインの多い飲み物は動悸を強く感じることがあるため、量を控えめにするとよいでしょう。

経過観察中・治療が終わったあと

通常の食事で問題ありませんが、昆布の佃煮や昆布茶を毎日続ける習慣がある場合は、量と頻度を見直してください。食品で甲状腺の病気を治すという考え方は勧めていません。食事は「からだの負担を増やさない」という視点で整え、治療は主治医の指示に沿って続けることが大切です。

相談・受診の目安

次のような場合は、医療機関で相談をご検討ください。

  • 昆布の佃煮・昆布茶・とろろ昆布を毎日食べている、ヨウ素サプリを続けている
  • だるさ、むくみ、便秘、体重の増加、寒がりが続いている
  • 動悸、体重の減少、手指のふるえ、汗が増えた状態が続いている
  • 首の腫れを指摘された、学校の健康診断で甲状腺を指摘された
  • 甲状腺の病気で治療中に、食事内容をどうすればよいか迷っている

血液検査と甲状腺エコーで状態を確認できます。食事については、ふだん食べている海藻の量や種類を具体的にお伝えいただくと、見直すポイントが整理しやすくなります。実際に食べているものをメモしてお持ちいただくのもよい方法です。

高熱と1分間に140回以上の脈が続き、意識がもうろうとするとき、首が急に腫れて呼吸が苦しいときは、すぐに119番へのご連絡をおすすめします。夜間・休日で緊急性が高いと感じられるときも同様です。

よくある質問

Q. 子どもはヨウ素をどのくらい摂ればよいですか?

A. 年齢によって異なります。日本人の食事摂取基準(2025年版)では、推奨量は1〜2歳で1日50μg、3〜5歳で60μg、6〜7歳で75μg、8〜9歳で90μg、10〜11歳で110μg、12〜14歳で140μg、15〜17歳で140μgです。耐容上限量は1〜2歳で600μg、12〜14歳で2,500μg、15歳以上で3,000μgです。日本人は海藻を食べる習慣があるため、ふつうの食事をしていれば不足することはまれです。

Q. 毎日みそ汁にわかめを入れるのは問題ですか?

A. 一般的な量であれば問題は少ないと考えられます。乾燥わかめは1食0.5gほどでヨウ素は約50μg程度です。毎日続けていても、この量であれば耐容上限量を大きく超えることはありません。ただし、わかめを大量に使う汁物や、わかめの酢の物を毎食食べるような場合は量を見直してください。

Q. 昆布だしで作った味噌汁や煮物は子どもに問題ですか?

A. だしとして使う場合は、昆布そのものを食べるより摂取量は少なくなります。ただし、昆布を多く使った濃いだしを毎日とる場合や、だしを取ったあとの昆布をそのまま食べる場合は、摂取量が多くなります。だしを取った昆布は、少量を細かく刻んで使うなど、量を意識するとよいでしょう。

Q. 昆布の佃煮・昆布茶・とろろ昆布はどうですか?

A. これらはヨウ素を多く含む食品です。昆布の佃煮は大さじ1杯(15g)で約1,650μg、刻み昆布は1食(8g)で約18,000μgのヨウ素を含みます。毎日食べ続ける習慣がある場合は、頻度や量を減らすことをご検討ください。

Q. 焼き海苔は毎日食べてもよいですか?

A. 焼き海苔1枚(約3g)のヨウ素は約60μgで、昆布と比べるとかなり少なめです。おにぎり1個に巻く程度であれば、通常の食事の範囲と考えられます。一方、味付け海苔や海苔の佃煮を毎日多く食べる場合は、量を意識してください。

Q. ヨウ素サプリは子どもに飲ませてよいですか?

A. 甲状腺の病気がないお子さんでは、通常の食事で不足することはまれなため、ヨウ素サプリメントは原則として必要ありません。ケルプ(海藻)や海藻エキスを含む製品は含有量が多いことがあり、甲状腺の病気がある場合は避けてください。成分表示を確認し、迷う場合は主治医にご相談ください。

Q. 学校給食は心配ですか?

A. 学校給食では、わかめ・海苔などの海藻が週に数回使われることがあります。1回に使われる量は多くないため、給食の範囲でヨウ素が過剰になる心配は少ないと考えられます。家庭の食事で昆布の佃煮や昆布茶を毎日続けている場合は、給食と合わせた1日の合計を意識するとよいでしょう。

Q. 甲状腺の病気がある子どもの食事で気をつけることは?

A. 橋本病(甲状腺機能低下症)では、昆布などヨウ素を多く含む食品の多量摂取を避け、わかめ・海苔などは常識的な量にとどめます。バセドウ病(甲状腺機能亢進症)では、治療中はヨウ素過剰でコントロールが不安定になることがあるため、海藻の大量摂取は避けてください。極端な食事制限は成長に影響することがあるため、自己判断での制限は行わず、主治医にご相談ください。

参考文献

  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書. 2024.
  • 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」.
  • 日本甲状腺学会 編「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」.
  • 日本小児内分泌学会・日本甲状腺学会「小児期発症バセドウ病診療のガイドライン2016」.
  • WHO/UNICEF/ICCIDD. “Assessment of iodine deficiency disorders and monitoring their elimination: a guide for programme managers.” 3rd ed. 2007.

※本ページは一般的な医学情報に基づきます。摂取量の最終的な判断は担当医によります。甲状腺の病気がある方は、自己判断で食事を極端に制限せず、主治医にご相談ください。

関連ページ

受診をご検討の方、お気軽にご相談ください

月・火・木・金 9:00〜12:00 / 14:45〜17:30 土 9:00〜12:00

047-467-5500

診療時間外の緊急時は、すぐに119番へのご連絡をおすすめします

最終更新日:2026-09-24

👨‍⚕️ この記事の監修医師

監修・執筆:しもやま内科 院長(日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医/日本老年医学会 老年科専門医・指導医)
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

24/09/2026