妊娠中にヨウ素(海藻)は食べ過ぎて大丈夫?|昆布・わかめ・海苔の1日目安量と甲状腺への影響|しもやま内科

妊娠中にヨウ素(海藻)は食べ過ぎて大丈夫?

まず結論:
妊娠中のヨウ素推奨摂取量は1日250μg(WHO推奨)です。昆布・わかめ・海苔など海藻類を普通の食事量で食べる分には問題ありませんが、昆布のようにヨウ素含有量が極めて高い食品を毎日大量に摂取すると過剰になる可能性があります。特に妊娠中は胎児の甲状腺発達に影響を与えるため、適切な量を守ることが重要です。

🚨 緊急を要する場合: 妊娠中に急な動悸・息切れ・首の急激な腫れ・意識障害がある場合は 119番(救急車)へ連絡してください。

ヨウ素とは?妊娠中に重要な理由

ヨウ素は甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニンT3・サイロキシンT4)の材料となる必須ミネラルです。甲状腺ホルモンは胎児の脳や神経系の発達に不可欠であり、妊娠中は胎盤を通じて胎児に供給されます。妊娠初期(12週未満)は胎児自身の甲状腺がまだ機能していないため、母体の甲状腺機能が胎児の発育を支えています。そのため、妊娠中の適切なヨウ素摂取は母子ともに健康を維持する上で極めて重要です。

妊娠中のヨウ素摂取目安量

WHO(世界保健機関)は妊娠中のヨウ素摂取量を1日250μgと推奨しています。日本では厚生労働省が「日本人の食事摂取基準」で以下の値を示しています。

対象 推奨摂取量(1日) 耐容上限量(1日)
妊娠中 250μg(WHO推奨)
220μg(日本人基準)
1,100μg(WHO)
2,000〜3,000μg(日本人参考値)
授乳中 270μg 2,000〜3,000μg
非妊娠成人女性 130μg 3,000μg

※日本甲状腺学会・厚生労働省の基準を基に記載

食品別ヨウ素含有量比較

海藻の種類によってヨウ素含有量は大きく異なります。以下の表を参考に、日々の摂取量を意識しましょう。

食品 ヨウ素含有量(目安) 妊娠中の摂取目安
乾燥昆布(1g) 約2,000〜3,000μg だし程度にとどめる
乾燥わかめ(1g) 約30〜50μg 適量であれば問題なし
焼き海苔(1枚=約3g) 約30〜50μg 1日数枚までOK
魚(切り身1切れ) 約10〜80μg 適量であれば問題なし
卵(1個) 約20μg 適量であれば問題なし

昆布のヨウ素含有量は他の海藻の約50〜100倍と圧倒的に高いことがわかります。この違いを理解した上で、妊娠中の食事を計画することが大切です。

妊娠期間別の注意点

妊娠初期(〜12週)

胎児の甲状腺はまだ機能していません。母体の甲状腺ホルモンが胎児の脳・神経発達を支えるため、母体の甲状腺機能の安定が最優先です。この時期にヨウ素が不足すると胎児の脳発達に影響が出る可能性があり、過剰摂取も母体の甲状腺機能を狂わせるリスクがあります。バランスの良い食事を心がけ、昆布類の過剰摂取は避けてください。

妊娠中期(12〜27週)

胎児の甲状腺が機能し始め、ヨウ素を取り込み始めます。母体だけでなく胎児もヨウ素を必要とするため、適切な摂取が重要です。ただし、この時期も昆布の大量摂取は避け、わかめ・海苔など比較的ヨウ素量が少ない海藻を適量食べるようにしましょう。

妊娠後期(28週〜)

胎児の甲状腺機能がさらに活発になります。胎児の体重増加に伴い甲状腺ホルモンの需要も増加します。授乳を見据えてヨウ素を適切に摂取することも大切ですが、やはり昆布の過剰摂取には注意が必要です。

ヨウ素制限が必要なケース

以下のケースでは妊娠中に積極的なヨウ素制限が必要になる場合があります。

  • バセドウ病治療中(メルカゾール・プロパジール服用): 妊娠中は「ヨウ化カリウム」が併用されることがあり、その場合は食事からのヨウ素摂取を控える指導があります。
  • 橋本病(甲状腺機能低下症): ヨウ素過剰摂取により甲状腺機能がさらに低下する可能性があります。チラーヂン服用中でも注意が必要です。
  • 結節性甲状腺腫がある場合: ヨウ素過剰摂取が結節の増大を促す可能性があります。
  • 放射線ヨウ素治療歴がある場合: 治療後はヨウ素制限が必要な期間があります。

甲状腺疾患がある方や、以前に甲状腺の治療を受けたことがある方は、妊娠前からかかりつけ医とよく相談してください。

よくある質問と回答(全12問)

Q. 昆布を毎日食べています。大丈夫ですか?

A. 毎日大量の昆布を摂取している場合はヨウ素過剰になる可能性があります。特に妊娠中は甲状腺機能に影響が出やすいため、1日の摂取量を意識してください。

Q. 海苔やわかめはどれくらい食べてもいいですか?

A. 海苔やわかめは昆布に比べてヨウ素含有量が少ないため、普通の食事量であれば問題ありません。むしろ適度な海藻類は良い食物繊維源になります。

Q. 妊娠中にヨウ素が不足するとどうなりますか?

A. 胎児の脳や神経の発達に影響が出る可能性があります。特に妊娠初期は注意が必要です。不足しすぎも、摂り過ぎも良くありません。

Q. どのくらいの量で過剰になりますか?

A. 昆布を毎日5〜10g以上摂取し続けると過剰になるケースがあります。妊娠中は特に1日2,000μgを超えないよう注意してください。

Q. ヨウ素サプリメントは飲んでもいいですか?

A. 妊娠中は基本的に食事からの摂取で十分です。サプリメントを飲む場合は必ず医師に相談してください。

Q. 甲状腺の病気がある人はヨウ素に特に注意が必要ですか?

A. はい。特にバセドウ病や橋本病がある方はヨウ素の摂取量が病状に影響を与えることがあります。個別に相談してください。

Q. 妊娠中に昆布はどのくらい食べても大丈夫ですか?

昆布は他の海藻よりヨウ素含有量が圧倒的に多いため注意が必要です。乾燥昆布1gには約2,000〜3,000μgのヨウ素が含まれ、1日の推奨量(250μg)を超えます。昆布の摂取は「だしを取る程度」にとどめ、昆布そのものを大量に食べることは避けるべきです。特に結節性甲状腺腫や橋本病など甲状腺疾患がある妊婦さんは、昆布の過剰摂取に注意してください。昆布茶や昆布の佃煮なども同様に注意が必要です。

Q. 妊娠中にわかめや海苔は食べても大丈夫ですか?

わかめや海苔のヨウ素含有量は昆布よりはるかに少なく、適量であれば問題ありません。乾燥わかめ1gあたり約30〜50μg、焼き海苔1枚(約3g)あたり約30〜50μgのヨウ素を含みます。一般的な食事での摂取量(わかめ汁1杯・おにぎりの海苔1枚など)であれば、過剰摂取の心配はほとんどありません。ただし、毎日大量に食べ続ける場合や、橋本病など甲状腺疾患がある場合は医師に相談してください。

Q. 妊娠中のヨウ素の1日推奨量は?上限はありますか?

妊娠中のヨウ素推奨量は1日あたり250μg(WHO推奨)、上限は1日あたり1,100μg(耐容上限量)とされています。妊娠中は胎児の甲状腺ホルモン産生のためにヨウ素需要が増加するため、通常より多めの摂取が必要です。ただし、日本の食生活は海藻類の摂取によりヨウ素が豊富なため、通常の食事で不足することは稀です。一方、1,100μg/日を超える過剰摂取は胎児の甲状腺機能に影響を与える可能性があります。

Q. ヨウ素の摂り過ぎは胎児にどんな影響がありますか?

妊娠中のヨウ素過剰摂取は胎児の甲状腺に以下の影響を与える可能性があります:(1)胎児甲状腺腫(新生児の首の腫れ)(2)新生児甲状腺機能低下症(クレチン病のリスク)(3)胎児の脳発達への悪影響。特に妊娠初期(12週未満)は胎児自身の甲状腺がまだ機能していないため、母体の甲状腺機能が胎児の発育に直結します。昆布の過剰摂取による新生児甲状腺機能低下症の症例報告もあるため、妊娠中は昆布類の過剰摂取を避けることが推奨されています。

Q. 橋本病やバセドウ病の人が妊娠中に気をつけるヨウ素摂取は?

甲状腺疾患がある妊婦さんのヨウ素摂取は特に注意が必要です。橋本病(甲状腺機能低下症)でチラーヂンを服用中の方は、ヨウ素過剰摂取により甲状腺機能がさらに悪化する可能性があります。バセドウ病の治療中(メルカゾール・プロパジール服用中)の方も、ヨウ素制限が必要な場合があります。特に、バセドウ病の妊娠中は「ヨウ化カリウム」の併用が行われることがあり、その場合は食事からのヨウ素摂取を控えるよう指導されます。甲状腺疾患で妊娠中・妊娠希望の方は、かかりつけ医と相談の上でヨウ素摂取量を調整してください。

Q. 妊娠中にヨウ素不足になるとどんな影響がありますか?

妊娠中のヨウ素不足も胎児に重大な影響を与える可能性があります:(1)胎児の甲状腺ホルモン産生不足→脳の発達障害(知能低下のリスク)(2)流産・早産のリスク上昇(3)母体の甲状腺腫(甲状腺が大きくなる)。ただし、日本では海藻類を日常的に食べる食文化のため、通常の食事でヨウ素不足になることは極めて稀です。厳格なベジタリアンや、ヨウ素添加塩を使用しない方は注意が必要です。過不足なくバランスの良い食事を心がけることが最も大切です。

参考文献

  • 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診療ガイドライン 2018」
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
  • World Health Organization (WHO) Guidelines on Iodine Intake
  • American Thyroid Association Guideline on Thyroid Disease in Pregnancy (2017)

院長からのメッセージ

妊娠中は特に「これを食べ過ぎて大丈夫かな」と心配になりますよね。昆布・わかめ・海苔ではヨウ素含有量が大きく異なるため、「海藻=すべて同じ」と思わずに、種類ごとの特徴を理解することが大切です。

当院では妊娠希望・妊娠中の患者さんのヨウ素摂取状況も丁寧に確認しながら、個別にアドバイスをしています。どうぞ安心してご相談ください。

妊娠中のヨウ素摂取のご相談
TEL: 047-467-5500

最終更新:2026-08-23 監修:下山立志(総合内科専門医・甲状腺専門医)

最終更新日:2026-08-23

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

19/10/2025