妊娠中にヨウ素(海藻)は食べ過ぎて大丈夫?|昆布・わかめ・海苔の1日目安量と甲状腺への影響

📘 要点

  • 妊娠中のヨウ素推奨量は1日250μgです
  • 耐容上限は1日2,000μg。昆布そのもの(刻み昆布・佃煮・塩昆布・とろろ昆布・昆布茶)と、濃い昆布だしの習慣的な摂取は控えます
  • 乾燥昆布1gには約2,000〜3,000μgのヨウ素が含まれます
  • 乾燥わかめ1gは約100μg、焼き海苔1枚は約60μgです
  • わかめ・海苔は通常の食事量なら毎日食べても問題ありません
  • 橋本病やバセドウ病がある方は、摂取量に注意が必要です
  • 甲状腺疾患がある方は、妊娠前から主治医にご相談ください

妊娠中にヨウ素(海藻)は食べ過ぎて大丈夫?

🚨 緊急を要する場合: 妊娠中に急な動悸・息切れ・首の急激な腫れ・意識障害がある場合は 119番(救急車)へご連絡をおすすめします。

ヨウ素とは?妊娠中に重要な理由

ヨウ素は甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニンT3・サイロキシンT4)の材料となる必須ミネラルです。甲状腺ホルモンは胎児の脳や神経系の発達に不可欠であり、妊娠中は胎盤を通じて胎児に供給されます。妊娠初期(12週未満)は胎児自身の甲状腺がまだ機能していないため、母体の甲状腺機能が胎児の発育を支えています。そのため、妊娠中の適切なヨウ素摂取は母子ともに健康を維持する上で極めて重要です。

妊娠中のヨウ素摂取目安量

WHO(世界保健機関)は妊娠中のヨウ素摂取量を1日250μgと推奨しています。日本では厚生労働省が「日本人の食事摂取基準」で以下の値を示しています。

対象 推奨摂取量(1日) 耐容上限量(1日)
妊娠中 250μg 2,000μg
授乳中 280μg 2,000μg
非妊娠成人女性 140μg 3,000μg

※出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」。妊娠中・授乳中の推奨量は、18歳以上の推奨量(140μg/日)に付加量(妊婦+110μg/授乳婦+140μg)を加えた値です。耐容上限量は妊娠中・授乳中とも2,000μg/日です。WHOは妊娠中の推奨量を250μg/日としています。

食品別ヨウ素含有量比較

海藻の種類によってヨウ素含有量は大きく異なります。以下の表を参考に、日々の摂取量を意識しましょう。

食品 ヨウ素含有量(目安) 妊娠中の摂取目安
乾燥昆布(1g) 約2,000〜3,000μg そのまま食べるのは控えめに(だしも濃い場合は注意)
乾燥わかめ(1g) 約100μg 適量であれば問題なし
焼き海苔(1枚=約3g) 約60μg 1日数枚までOK
魚(切り身1切れ) 約20〜350μg 適量であれば問題なし
卵(1個) 約20〜40μg 適量であれば問題なし

出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに作成。ヨウ素の含有量は、海藻の産地や生育環境、調理法によって大きく変動します。

昆布のヨウ素含有量は他の海藻の約20〜100倍と圧倒的に高いことがわかります。この違いを理解した上で、妊娠中の食事を計画することが大切です。

妊娠期間別の注意点

妊娠初期(〜12週)

胎児の甲状腺はまだ機能していません。母体の甲状腺ホルモンが胎児の脳・神経発達を支えるため、母体の甲状腺機能の安定が最優先です。この時期にヨウ素が不足すると胎児の脳発達に影響が出る可能性があり、過剰摂取も母体の甲状腺機能を狂わせるリスクがあります。バランスの良い食事を心がけ、昆布類の過剰摂取は避けてください。

妊娠中期(12〜27週)

胎児の甲状腺が機能し始め、ヨウ素を取り込み始めます。母体だけでなく胎児もヨウ素を必要とするため、適切な摂取が重要です。ただし、この時期も昆布の大量摂取は避け、わかめ・海苔など比較的ヨウ素量が少ない海藻を適量食べるようにしましょう。

妊娠後期(28週〜)

胎児の甲状腺機能がさらに活発になります。胎児の体重増加に伴い甲状腺ホルモンの需要も増加します。授乳を見据えてヨウ素を適切に摂取することも大切ですが、やはり昆布の過剰摂取には注意が必要です。

食品ごとの「1日の目安」——わかめ・海苔・昆布の使い分け

ヨウ素の量は海藻の種類で大きく異なります。「妊娠中にどこまで食べてよいか」を迷いやすいわかめ・海苔・昆布について、食事としての現実的な目安をまとめます。

食品 1日の目安(実用量) ヨウ素のめやす
わかめ(乾燥わかめ) 味噌汁1杯・酢の物1皿(乾燥1〜2g) 約100〜200μg
焼き海苔 おにぎり1〜2個分(全形2〜3枚) 約60〜180μg
ひじき・もずく・ところてん 小鉢1皿 数十〜数百μg(食品で幅が大きい)
昆布だし 1日1回程度 煮出しだし1杯でも多め
昆布そのもの・塩昆布・佃煮・昆布茶 妊娠中は控えめに 1gで約2,000μg(少量で目安量を超えます)

ヨウ素の値は、文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」および国立健康・栄養研究所の情報をもとにしためやすです。産地・生育環境・調理法によって大きく変動します。

わかめは毎日食べても大丈夫?

乾燥わかめ1gあたりのヨウ素は約100μgで、味噌汁1杯(乾燥1〜2g)なら約100〜200μgです。水戻しわかめ1人前(10g)でも約190μg程度。妊娠中の1日の目安量(250μg)の範囲に収まりやすく、普通の食事量であれば毎日食べても問題ないと考えられます。食物繊維やミネラルの供給源としても役立ちます。

海苔は1日何枚まで?

焼き海苔は大1枚(約3g)で約60μgです。おにぎり・のり巻き・ふりかけなどで1日2〜3枚(約120〜180μg)程度であれば、目安の範囲内です。毎日の食事で普通に使う量は心配しすぎなくてよい一方、味付け海苔や韓国海苔はヨウ素よりも塩分が多めなので、食べ過ぎには注意してください。

昆布は「だし」でも注意が必要です

まこんぶ(乾燥)は100gあたり約200,000μg=1gで約2,000μgと、他の海藻の約20〜100倍です。だしを取るだけでもヨウ素は煮汁に移るため、「だしだからヨウ素は入っていない」わけではありません。日本食品標準成分表2020年版では、昆布だし(煮出し)100mLあたり約11,000μg(1杯150mLで約16,500μg)、水出しでも約5,300μg/100mLとされています。

一方で、日本人の1日のヨウ素摂取量は平均1〜3mgとされ、通常の食事でただちに過剰症が起きるものではないことも分かっています。避けたいのは、濃い昆布だしを毎日飲む・昆布を常備して毎日食べるといった「習慣」です。昆布茶・塩昆布・佃煮・とろろ昆布も同じ理由で控えめにしてください。

「食べ過ぎてしまった」ときはどうする?

1回うっかり多く食べただけでは、ただちに影響が出るとは考えにくいとされています。心配なのは毎日続ける習慣です。以下のように判断してください。

  • 昆布そのもの・昆布茶を毎日とっていた:いったん1〜2週間控え、だしも使いすぎていないか確認する。
  • 首の腫れ・動悸・強いだるさなど気になる症状がある:早めに受診し、甲状腺機能を採血で確認する。
  • 甲状腺疾患がある・チラーヂン内服中:食事を自己判断で変える前に、主治医に相談する(サプリの追加・中止も同様)。

ヨウ素制限が必要なケース

以下のケースでは妊娠中に積極的なヨウ素制限が必要になる場合があります。

  • バセドウ病治療中(メルカゾール・プロパジール服用): 妊娠中は「ヨウ化カリウム」が併用されることがあり、その場合は食事からのヨウ素摂取を控える指導があります。
  • 橋本病(甲状腺機能低下症): ヨウ素過剰摂取により甲状腺機能がさらに低下する可能性があります。チラーヂン服用中でも注意が必要です。
  • 結節性甲状腺腫がある場合: ヨウ素過剰摂取が結節の増大を促す可能性があります。
  • 放射線ヨウ素治療歴がある場合: 治療後はヨウ素制限が必要な期間があります。

甲状腺疾患がある方や、以前に甲状腺の治療を受けたことがある方は、妊娠前からかかりつけ医とよく相談してください。

よくある質問と回答(全17問)

Q. 昆布を毎日食べています。大丈夫ですか?

A. 毎日大量の昆布を摂取している場合はヨウ素過剰になる可能性があります。特に妊娠中は甲状腺機能に影響が出やすいため、1日の摂取量を意識してください。

Q. 海苔やわかめはどれくらい食べてもいいですか?

A. 海苔やわかめは昆布に比べてヨウ素含有量が少ないため、普通の食事量であれば問題ありません。むしろ適度な海藻類は良い食物繊維源になります。

Q. 妊娠中にヨウ素が不足するとどうなりますか?

A. 胎児の脳や神経の発達に影響が出る可能性があります。特に妊娠初期は注意が必要です。不足しすぎも、摂り過ぎも良くありません。

Q. どのくらいの量で過剰になりますか?

A. 昆布を毎日5〜10g以上摂取し続けると過剰になるケースがあります。妊娠中は特に1日2,000μgを超えないよう注意してください。

Q. ヨウ素サプリメントは飲んでもいいですか?

A. 妊娠中は基本的に食事からの摂取で十分です。サプリメントを飲む場合は必ず医師に相談してください。

Q. 甲状腺の病気がある人はヨウ素に特に注意が必要ですか?

A. はい。特にバセドウ病や橋本病がある方はヨウ素の摂取量が病状に影響を与えることがあります。個別に相談してください。

Q. 妊娠中に昆布はどのくらい食べても大丈夫ですか?

昆布は他の海藻よりヨウ素含有量が圧倒的に多いため注意が必要です。乾燥昆布1gには約2,000〜3,000μgのヨウ素が含まれ、1日の推奨量(250μg)を超えます。昆布は、だしを取る程度の使い方でもヨウ素が煮汁に移ります。昆布そのものを大量に食べることは避け、濃い昆布だしを毎日飲む習慣も控えてください。特に結節性甲状腺腫や橋本病など甲状腺疾患がある妊婦さんは、昆布の過剰摂取に注意してください。昆布茶・昆布の佃煮・とろろ昆布などの濃縮された昆布も同様に注意が必要です。

Q. 妊娠中にわかめや海苔は食べても大丈夫ですか?

わかめや海苔のヨウ素含有量は昆布よりはるかに少なく、適量であれば問題ありません。乾燥わかめ1gあたり約100μg、焼き海苔1枚(約3g)あたり約60μgのヨウ素を含みます。一般的な食事での摂取量(わかめ汁1杯・おにぎりの海苔1枚など)であれば、過剰摂取の心配はほとんどありません。ただし、毎日大量に食べ続ける場合や、橋本病など甲状腺疾患がある場合は医師に相談してください。

Q. 妊娠中のヨウ素の1日推奨量は?上限はありますか?

妊娠中のヨウ素推奨量は1日あたり250μg(WHO推奨)、上限は1日あたり2,000μg(日本人の食事摂取基準2025年版の耐容上限量)とされています。妊娠中は胎児の甲状腺ホルモン産生のためにヨウ素需要が増加するため、通常より多めの摂取が必要です。ただし、日本の食生活は海藻類の摂取によりヨウ素が豊富なため、通常の食事で不足することは稀です。一方、2,000μg/日を超える過剰摂取は胎児の甲状腺機能に影響を与える可能性があります。

Q. ヨウ素の摂り過ぎは胎児にどんな影響がありますか?

妊娠中のヨウ素過剰摂取は胎児の甲状腺に以下の影響を与える可能性があります:(1)胎児甲状腺腫(新生児の首の腫れ)(2)新生児甲状腺機能低下症(クレチン病のリスク)(3)胎児の脳発達への悪影響。特に妊娠初期(12週未満)は胎児自身の甲状腺がまだ機能していないため、母体の甲状腺機能が胎児の発育に直結します。昆布の過剰摂取による新生児甲状腺機能低下症の症例報告もあるため、妊娠中は昆布類の過剰摂取を避けることが推奨されています。

Q. 橋本病やバセドウ病の人が妊娠中に気をつけるヨウ素摂取は?

甲状腺疾患がある妊婦さんのヨウ素摂取は特に注意が必要です。橋本病(甲状腺機能低下症)でチラーヂンを服用中の方は、ヨウ素過剰摂取により甲状腺機能がさらに悪化する可能性があります。バセドウ病の治療中(メルカゾール・プロパジール服用中)の方も、ヨウ素制限が必要な場合があります。特に、バセドウ病の妊娠中は「ヨウ化カリウム」の併用が行われることがあり、その場合は食事からのヨウ素摂取を控えるよう指導されます。甲状腺疾患で妊娠中・妊娠希望の方は、かかりつけ医と相談の上でヨウ素摂取量を調整してください。

Q. 妊娠中にヨウ素不足になるとどんな影響がありますか?

妊娠中のヨウ素不足も胎児に重大な影響を与える可能性があります:(1)胎児の甲状腺ホルモン産生不足→脳の発達障害(知能低下のリスク)(2)流産・早産のリスク上昇(3)母体の甲状腺腫(甲状腺が大きくなる)。ただし、日本では海藻類を日常的に食べる食文化のため、通常の食事でヨウ素不足になることは極めて稀です。厳格なベジタリアンや、ヨウ素添加塩を使用しない方は注意が必要です。過不足なくバランスの良い食事を心がけることが最も大切です。

Q. わかめは毎日食べても大丈夫ですか?

A. 乾燥わかめ1gあたりのヨウ素は約100μgで、味噌汁1杯(乾燥1〜2g)なら約100〜200μg程度です。妊娠中の1日の目安量(250μg)の範囲に収まりやすく、普通の食事量であれば毎日食べても問題ないと考えられます。水戻しわかめ1人前(10g)でも約190μg程度です。ただし甲状腺疾患がある方は医師にご相談ください。

Q. 昆布を毎日食べていました。赤ちゃんへの影響が心配です。

A. 習慣的に大量の昆布をとり続けると、胎児の甲状腺機能に影響する可能性が指摘されています。まずは昆布そのもの・昆布茶・塩昆布・佃煮など「食べる昆布」をいったん控え、だしも使いすぎていないか確認してください。1回の過剰摂取でただちに影響が出るとは考えにくいとされていますが、心配な場合は次回の妊婦健診や当院で甲状腺機能の採血をご相談ください。

Q. 妊娠初期は海藻の量を変えたほうがよいですか?

A. 妊娠初期(12週未満)は胎児の甲状腺がまだ機能していないため、母体の甲状腺機能の安定が特に大切です。わかめ・海苔は通常の食事量で問題ありませんが、昆布類はこの時期から控えめにしてください。不足も過剰も避けることが大切で、サプリメントで追加する場合は医師にご相談ください。

Q. 塩昆布・昆布茶・昆布の佃煮は妊娠中は控えるべきですか?

A. これらは少量でもヨウ素が多く、塩分も多めです。昆布の佃煮は大さじ1杯(15g)で約1,650μgのヨウ素を含むとの報告があります。妊娠中は毎日ではなく、たまに少量にとどめるのが安心です。塩分の面からも、習慣的にとることは控えめがおすすめです。

Q. 昆布だしは毎日飲んでも大丈夫ですか?

A. 昆布だしにもヨウ素は移ります。日本食品標準成分表2020年版では、昆布だし(煮出し)100mLあたり約11,000μg(1杯150mLで約16,500μg)、水出しでも約5,300μg/100mLとされています。一方、日本人の1日のヨウ素摂取量は平均1〜3mgとされ、日常的にだしを使う食生活でも過剰症は稀です。味噌汁などの汁物1杯程度は通常の食事の範囲内と考えられますが、濃い昆布だしを毎日飲む習慣や、昆布茶・昆布水を日常的に飲む習慣は控えてください。顆粒だしや鰹・煮干し主体の合わせだしは、昆布100%のだしに比べてヨウ素は少なめです(配合によります)。甲状腺疾患がある方は、だしの量も含めて主治医にご相談ください。

参考文献

  • 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
  • 国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報:ヨウ素(食品中のヨウ素含有量)
  • World Health Organization (WHO) Guidelines on Iodine Intake
  • American Thyroid Association Guideline on Thyroid Disease in Pregnancy (2017)

院長からのメッセージ

妊娠中は特に「これを食べ過ぎて大丈夫かな」と心配になりますよね。昆布・わかめ・海苔ではヨウ素含有量が大きく異なるため、「海藻=すべて同じ」と思わずに、種類ごとの特徴を理解することが大切です。

当院では妊娠希望・妊娠中の患者さんのヨウ素摂取状況も丁寧に確認しながら、個別にアドバイスをしています。どうぞ安心してご相談ください。

妊娠中のヨウ素摂取のご相談
TEL: 047-467-5500

最終更新:2026-10-09

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👨‍⚕️ この記事の監修医師

監修・執筆:しもやま内科 院長(日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医/日本老年医学会 老年科専門医・指導医)
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

19/10/2025