バセドウ病と妊娠
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)は、妊娠可能年齢の女性に多く見られる自己免疫性疾患です。適切な管理と治療により、妊娠・出産は十分に可能ですが、母体と胎児の健康を守るためには、専門的な知識と綿密な対応が求められます。
バセドウ病の主な症状と原因
バセドウ病では、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、代謝が過剰に高まり、以下のような症状が現れます:
- 動悸や手の震え
- 発汗過多や暑がり
- 体重減少
- 情緒不安定
- 眼球突出
- 甲状腺の腫れ
自己免疫の異常によって、TSHレセプター抗体(TRAb)が作られ、甲状腺を過剰に刺激することが原因です。この抗体は妊娠管理においても重要な検査項目です。
妊娠中のバセドウ病のリスク
バセドウ病を未治療またはコントロール不良のまま妊娠すると、以下のような合併症が起こる可能性があります:
- 流産や早産
- 胎児発育不全
- 妊娠高血圧症候群
- 新生児の甲状腺機能亢進症(母体由来TRAbによる)
特にTRAbの数値が高い方や、甲状腺手術歴のある方は、胎児への影響に注意が必要です。
妊娠中の甲状腺機能の変化
妊娠中はホルモン環境が変わることで、甲状腺機能が以下のように変動します:
- 妊娠初期:hCGの作用で一時的に甲状腺が刺激され、機能が高まることがあります。
- 中期~後期:免疫抑制状態が続くため、症状が落ち着くこともあります。
- 産後:免疫機能が回復することで、バセドウ病が再燃する可能性があります。
このような変化に応じて、定期的な甲状腺機能検査が不可欠です。
妊娠中の抗甲状腺薬の使い方
バセドウ病の治療薬である抗甲状腺薬は、妊娠時期によって使い分けが必要です:
- 妊娠初期:プロピルチオウラシル(PTU)が推奨されます。
- 妊娠中期以降:メチマゾール(MMI)への切り替えが行われます。
MMIは妊娠初期に使用すると、先天異常の報告があるため注意が必要です。授乳中はどちらの薬も使用可能ですが、少量(MMIは10mg/日以下)であれば断乳の必要はありません。
妊娠を希望される方へ
- 妊娠前にバセドウ病をしっかりとコントロールしておくことが大切です。
- 妊娠が判明した時点で速やかに主治医に相談し、治療内容を調整しましょう。
- 妊娠中はTRAbやFT4などの定期的な検査を受けてください。
まとめ
バセドウ病があっても、適切な治療と妊娠管理により、安全な出産は十分に可能です。不安なことがあれば、専門医に相談しましょう。
船橋市のしもやま内科では、バセドウ病と妊娠に関するご相談を承っています。
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