喘息・咳喘息の症状と治療|受診目安・検査・吸入薬

夜間・早朝に悪化する咳やヒューヒュー(喘鳴)が続く場合、喘息または咳喘息の可能性があります。しもやま内科(船橋市)では、問診・聴診に加え、スパイロメトリー(呼吸機能検査)による可逆性評価やFeNO(呼気一酸化窒素検査)などを用いて気道炎症の有無を評価し、吸入ステロイドを中心とした治療で発作と再発を抑えます。呼吸困難や会話が困難になるほどの症状がある場合は、早めの受診を検討してください。

喘息・咳喘息の症状・検査・治療フローのイメージ
喘息・咳喘息は適切な診断と治療でコントロール可能です。夜間・早朝の咳や息苦しさは早めに相談を。

喘息とは — 気道の慢性炎症

喘息(bronchial asthma)は、気道(空気の通り道)に慢性の炎症が持続する疾患です。この炎症により気道は過敏な状態となり、刺激に対して気道の粘膜が腫れたり、気管支の筋肉が収縮(気管支攣縮)したりすることで、空気の流れが制限されます。特徴的なのは、この気道閉塞が変動性・可逆性を示すことです。自然に、または治療により改善します。

2026年現在、日本では約400万人以上の患者さんがいると推定され、成人での発症も増加傾向にあります。適切に治療すれば日常生活への影響を最小限に抑えられる一方、放置すると気道リモデリング(気道の構造的変化)が進み、治療への反応が悪くなるため、早期の診断と治療開始が重要です。

喘息の症状 — 発作性咳嗽・喘鳴・呼吸困難

喘息の代表的な症状は以下の4つです。

  • 発作性の咳嗽(咳):特に夜間〜早朝にかけて悪化する咳が特徴的。乾いた咳(空咳)が続き、痰を伴うこともあります。
  • 喘鳴(ぜんめい):呼吸時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音が聞こえる。呼気(吐く息)で目立つことが多い。
  • 呼吸困難:息苦しさ、息が吸いづらい感覚。会話が続けにくくなることも。
  • 胸部圧迫感:胸が締めつけられるような感じ。

これらの症状は、夜間・早朝・運動後・冷気吸入・アレルゲン曝露で悪化しやすいのが特徴です。症状の強さは日内変動・日差変動があり、「調子のいい日もある」という経過をたどることが多いため、「大したことはない」と放置されがちですが、進行すると発作のリスクが高まります。

⚠ 緊急性の高い症状 — すぐに医療機関へ

  • 息苦しくて会話ができない
  • 呼吸数が明らかに増えている、肩で息をしている(肩呼吸)
  • 唇や爪の色が紫色になる(チアノーゼ)
  • 横になれず起き上がらないと呼吸が楽にならない(起坐呼吸)
  • 意識がぼんやりする

このような症状があれば、自己判断せずに当院または救急医療機関へご連絡をおすすめします。

咳喘息との違い — 「咳だけ」の見逃しやすい病態

咳喘息(cough variant asthma; CVA)は、喘息の亜型で、慢性の咳嗽(喀痰を伴わない空咳)が唯一または主症状であり、喘鳴や呼吸困難を伴わない病態です。喘息と同じく気道過敏性の亢進と好酸球性炎症を背景に持ちながら、症状が咳嗽に留まるため、見過ごされることが少なくありません。

  • 喘息との違い:喘鳴・呼吸困難がない/あっても軽度
  • 共通点:夜間早朝の悪化、冷気・運動・アレルゲンでの誘発、気道過敏性の亢進
  • 診断の鍵:8週間以上続く咳嗽、咳以外の原因が除外されている、気管支拡張薬で咳嗽が改善する

咳喘息は放置すると約30〜40%が古典的喘息に移行するといわれています。ICS(吸入ステロイド)による早期治療が、喘息への移行を防ぐ上で重要です。「ただの風邪の後の咳」と自己判断せず、3週間以上咳が続く場合は一度評価を受けましょう。

喘息の原因 — アレルギー・遺伝・環境・感染

喘息の発症・増悪には複数の因子が関与します。

  • アレルギー素因(アトピー):ダニ・花粉・カビ・ペットの毛・フケなどに対するIgE抗体の産生。小児期発症の喘息ではアレルギーの関与が大きい。
  • 遺伝的要因:家族歴(両親または兄弟に喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎がある場合に発症リスクが上昇)。
  • 環境因子:タバコ煙(受動喫煙含む)、大気汚染(PM2.5・ディーゼル排気微粒子)、職業性因子(小麦粉・木材・化学物質等の曝露)、居住環境のダニ・カビ。
  • 感染症:乳幼児期のRSウイルス・ライノウイルス感染が喘息発症のリスクを高める。成人では感冒・インフルエンザ後に症状が増悪。
  • その他増悪因子:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)によるアスピリン喘息、ストレス、気温変化、運動、肥満(BMI高値はコントロール不良と関連)。

診断方法 — 呼吸機能検査・可逆性試験・気道過敏性試験・FeNO

喘息の診断は、問診と身体所見に加え、以下の検査を組み合わせて行います。

スパイロメトリー(呼吸機能検査)

肺活量や一秒量(FEV1)を測定します。喘息の特徴として、FEV1/FVC比(70%未満)の低下と、気管支拡張薬吸入後のFEV1改善率(可逆性)が12%以上かつ200mL以上認められることが診断の根拠となります。

気道過敏性試験(メサコリン負荷試験・運動負荷試験)

安静時の呼吸機能が正常でも、メサコリン吸入や運動負荷により気道が過敏に反応するかを評価します。咳喘息の診断に有用です。

FeNO(呼気一酸化窒素検査)

気道の好酸球性炎症の程度を非侵襲的に測定します。FeNO高値(成人で50ppb以上)はICS治療への反応が期待できるマーカーです。検査は息を吐くだけで負担が少なく、当院でも必要に応じて実施します。

その他の補助検査

  • 胸部X線:他の肺疾患(肺炎・間質性肺炎・肺癌など)の除外
  • 血液検査:好酸球数・IgE値の評価
  • 抗原特異的IgE検査:アレルゲンの特定

咳が長引く場合の鑑別については、こちらの長引く咳(鑑別フロー)もご参照ください。

治療の基本 — 吸入ステロイド・長期管理薬・発作治療薬

喘息治療の目標は「症状がほとんどない状態を維持し、発作を予防すること」です。治療は長期管理(コントローラー)と発作時対応(リリーバー)の二本立てで進めます。

コントローラー(長期管理薬)

  • 吸入ステロイド(ICS):喘息治療の基本かつ第一選択。気道の慢性炎症を抑え、発作の発生を予防します。例:プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニド、シクレソニドなど。
  • ICS/LABA配合剤:ICSに長時間作用性β2刺激薬(LABA)を配合。中等症〜重症例で使用。
  • ICS/LAMA配合剤:ICSに長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を配合。重症・難治例に。
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA):内服薬。アレルギー性鼻炎合併例や運動誘発喘息に有用。

リリーバー(発作治療薬)

  • SABA(短時間作用性β2刺激薬):発作時に頓用。即効性があり気管支拡張を起こします。頻用はコントロール不良のサイン。
  • ICS/ホルモテロール配合剤:SMART療法として、発作時にも使用する方法が中等症〜重症例で選択されることがあります。

各薬剤の詳細な使い分け、副作用、具体的な製品名については、吸入薬の正しい使い方のページで解説しています。

吸入薬の種類と使い方 — 正しい手技が効果を左右

吸入薬は正しい手技で使用しないと、十分な効果が得られません。機種によって使用方法が異なるため、処方時に個別に指導します。

  • pMDI(加圧式定量噴霧吸入器):ゆっくり深く吸い込み、噴射と吸気のタイミングを合わせる。
  • DPI(乾燥粉末吸入器):強く速く吸い込む必要がある。吸気流速が低下している高齢者では注意。
  • SMI(ソフトミスト吸入器):ゆっくりした吸気でもエアロゾルが安定して届く。

いずれの機種でも、使用後は必ずうがいを行い、口腔内のステロイド残渣による鵞口瘡(カンジダ症)や声のかすれを予防します。

くわしい機種別手順は吸入薬の正しい使い方 ≫をご覧ください。

発作時の対応と予防

軽度〜中等度の発作では、まずSABAを吸入し、安静を保ちます。通常5〜10分で改善がみられるはずです。改善がない場合、または症状が進行する場合は、早めに医療機関への受診をおすすめします。

発作を予防するための日常のポイント:

  • コントローラー(特にICS)を処方通り毎日継続する — 「調子がいいから」と自己中断しない
  • ピークフローを朝晩測定し、自己管理に活用する
  • 症状の日内変動・SABA使用回数を記録し、受診時に見せる
  • トリガー(ダニ・花粉・カビ・煙・香水など)を把握し、可能な範囲で回避する
  • 感冒シーズン前のインフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種を検討

生活管理 — アレルゲン回避・禁煙・運動・ワクチン

薬物治療と並行して、生活環境の整備が喘息コントロールを大きく左右します。

  • ダニアレルゲン対策:寝室の掃除、防ダニ布団カバーの使用、湿度50%以下に保つ(除湿器の活用)
  • 禁煙:本人の喫煙はもちろん、家族の協力による禁煙・分煙も重要。受動喫煙は喘息コントロールを悪化させます。
  • 運動:コントロール良好であれば適度な運動は推奨。運動誘発喘息がある場合も、事前の吸入調整で対応可能です。ウォーキング・水泳など有酸素運動が適しています。
  • ワクチン:インフルエンザワクチン(毎年)、肺炎球菌ワクチンの接種により感染症による増悪を予防します。
  • 食物アレルギー:該当する場合は原因食物の除去。医師と相談の上で対応しましょう。

成人喘息と小児喘息の違い

項目 小児喘息 成人喘息
発症ピーク 2〜6歳 30〜50代(晩発発症)
アレルギーの関与 強い(アトピー型が多い) 弱い〜中程度(非アトピー型も)
自然寛解 思春期に約50%が改善 まれ
重症化傾向 ウイルス感染で増悪しやすい 非可逆性閉塞へ移行しやすい
合併症 アトピー性皮膚炎・食物アレルギー COPD(ACO)・GERD・副鼻腔炎・睡眠時無呼吸

成人喘息は小児喘息の遺残(小児期発症が成人後も持続する)と、成人になってから新規に発症する晩発発症の2パターンがあります。特に40歳以降で初めて診断される場合、喫煙歴や職業曝露の有無を確認し、COPDとのオーバーラップ(ACO)も考慮した評価が必要です。

しもやま内科での評価の流れ

  1. 問診・診察:発症時期、症状パターン、増悪因子、過去の治療歴、アレルギー歴、職業・環境要因
  2. スパイロメトリー:FEV1/FVCの評価と、気管支拡張薬による可逆性の確認
  3. 必要に応じてFeNO、胸部X線、血液検査(好酸球・IgE)
  4. 診断確定後、重症度に応じた治療計画の立案
  5. 吸入指導とアクションプランの作成

いつ受診・再診すべき? — コントロール評価の目安

  • 夜間症状が週1回以上ある
  • 日中活動(仕事・家事・学業)が症状で妨げられている
  • 週2回以上のSABA頓用(リリーバー使用)が続く
  • 季節・花粉期・感冒後などに毎年コントロールが崩れる
  • 前回処方された吸入薬を正しく使えているか不安

よくあるご質問(FAQ)

喘息の症状にはどのようなものがありますか?

代表的な症状は発作性の咳(特に夜間〜早朝に悪化)、ヒューヒュー・ゼーゼーという喘鳴、呼吸困難、胸部圧迫感です。症状には日内変動があり、冷気・運動・アレルゲン曝露で誘発されやすいのが特徴です。

咳喘息(CVA)と喘息はどう違うのですか?

咳喘息は慢性の咳嗽(空咳)が唯一または主症状であり、喘鳴や呼吸困難を伴わない喘息の亜型です。気道過敏性の亢進と好酸球性炎症は共通しています。放置すると約30〜40%が古典的喘息に移行するため、早期の診断と治療が重要です。

喘息の診断にはどんな検査をしますか?

問診・聴診に加え、スパイロメトリー(呼吸機能検査)で気管支拡張薬による可逆性を確認します。必要に応じてFeNO(呼気一酸化窒素検査)、気道過敏性試験、胸部X線、血液検査を組み合わせて診断します。

治療ではどんな薬を使うのですか?

長期管理薬(コントローラー)として吸入ステロイド(ICS)が基本です。症状に応じて長時間作用性β2刺激薬(LABA)や抗コリン薬(LAMA)を併用します。発作時には短時間作用性β2刺激薬(SABA)を頓用します。

吸入ステロイドは副作用が心配です

吸入ステロイドは気道に直接作用し、全身への影響は極めて少ないため安心して使用いただけます。副作用として口腔内カンジダ症や声のかすれがありますが、使用後のうがいで予防できます。内服ステロイドと違い、長期的な全身性副作用はほとんど報告されておらず、安全性は高いとされています。

発作が起きたらどうすればいいですか?

SABA(気管支拡張薬)を吸入し、安静を保ってください。5〜10分で改善しない場合、または症状が進行する場合は医療機関を受診してください。呼吸困難で会話ができない、唇や爪が紫色になるなどの症状があれば、すみやかに医療機関への受診をおすすめします。

喘息は治りますか?

現時点で喘息を完全に治す治療法はありませんが、適切な治療で症状をほぼ感じない状態(完全コントロール)を維持することは可能です。小児喘息の一部は思春期に改善しますが、成人喘息では治療によるコントロールが目標となります。

大人になってから喘息になることはありますか?

はい、あります。成人発症喘息(晩発発症)は30〜50代での発症が多く、アレルギー以外に喫煙・職業性曝露・肥満などの関与が指摘されています。成人喘息は自然寛解がまれで、適切な治療を継続することが重要です。

妊娠中でも喘息治療は続けられますか?

妊娠中の喘息治療は、母体と胎児への酸素供給の観点から、コントロールを維持することが最優先です。安全性に配慮した薬剤選択が可能ですので、自己中断せずに担当医にご相談ください。

運動はして大丈夫ですか?

コントロール良好であれば運動は推奨されます。運動誘発喘息がある場合も、事前の吸入調整やウォーミングアップで対応可能です。ウォーキングや水泳などの有酸素運動が適しています。

吸入薬の正しい使い方がわかりません

機種によって操作方法が異なります。当院では初回処方時に実技指導を行い、練習用デバイスで確認いただいています。くわしくは吸入薬の正しい使い方のページもご参照ください。

喘息の方が受けるべきワクチンはありますか?

毎年のインフルエンザワクチンと、肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されます。感染症による喘息増悪を予防する上で有効です。

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この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長/日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年科専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医

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最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

25/10/2025