妊娠中のバセドウ病の初期対応|産婦人科医が迷いやすい判断ポイント

このページの要点(産婦人科の初期対応)

  • 妊娠中の甲状腺中毒症状は、まずTSH+FT4で重症度を把握します。
  • TSH低値だけでバセドウ病と断定しない(妊娠初期はhCG影響あり)。
  • FT4が明らかに高値/頻脈・体重減少など中毒症状が強い場合は早期紹介が安全です。
  • 抗甲状腺薬は妊娠週数で考え方が変わるため、自己判断で開始せず、迷った時点で内分泌内科へ。
  • 紹介状には妊娠週数・症状・脈拍・TSH/FT4、既往と内服歴を記載すると初期判断が早まります。

本ページは、妊娠中にバセドウ病(Basedow病)が疑われる、あるいは既知のバセドウ病患者が妊娠した場合の
産婦人科外来での初期対応と紹介判断をまとめた実務ページです。
「どこまで産婦人科で評価し、どの時点で専門紹介するか」を最短ルートで整理します。


1.妊娠中のバセドウ病で“初期対応”が重要な理由

バセドウ病の甲状腺機能亢進は、母体の頻脈・体重減少・脱水を悪化させるだけでなく、重症化すると妊娠経過にも影響します。
一方で妊娠中は生理的変化も大きく、検査値の解釈・薬剤選択・目標値が非妊娠時と異なります。

したがって、「疑い」の段階であっても、重症度を短時間で見極めることが実務上の鍵になります。

2.産婦人科外来でまず行う検査(最小セット)

  • TSH
  • FT4

初期対応としてはこの2つで十分なことが多いです。FT3は必須ではなく、必要に応じて専門側で追加します。
既往(バセドウ病・甲状腺手術・放射性ヨウ素治療)と、抗甲状腺薬やレボチロキシンの内服歴は必ず確認してください。

3.TSH低値を見たときの考え方(妊娠初期の落とし穴)

妊娠初期はhCGの影響でTSHが低下しやすく、TSH低値だけでバセドウ病と断定しないことが重要です。
初期の分岐は「TSH」よりも、FT4の高さ臨床症状で行います。

経過観察になりやすいパターン

  • TSH低値だがFT4が正常
  • FT4が軽度高値でも、症状が軽く全身状態が安定

早期紹介が望ましいパターン

  • FT4が明らかに高値(上限を大きく超える)
  • 頻脈(安静時でも脈が速い)、体重減少、手指振戦、発汗など中毒症状が強い
  • 脱水や嘔吐が強く、悪阻との鑑別が難しい/全身状態が悪い
  • 甲状腺腫大、眼症状、既知のバセドウ病で妊娠判明

4.抗甲状腺薬を“その場で始めない”方が安全な理由

妊娠中の抗甲状腺薬は、妊娠週数により薬剤選択・投与量の考え方が変わるため、
初期の時点で自己判断で開始すると、過量投与や薬剤選択のミスマッチが起こり得ます。

実務のポイント:
・「TSH低いから薬を出す」ではなく、FT4の高さ+症状+週数で判断します。
・開始が必要な病態ほど、専門側での迅速な治療設計が重要になります。
・迷う時点での早期紹介が、安全性とスピードの両方を担保します。

5.妊娠週数で変わる“注意点”

妊娠中は、母体だけでなく胎児への影響(甲状腺機能や発育)も考慮するため、評価・治療の設計が週数で変わります。
産婦人科外来では、週数の明記が紹介連携の質を大きく左右します。

  • 妊娠初期:TSH低下が生理的に見られることがあり、鑑別が重要
  • 妊娠中期以降:母体のコントロール状態と胎児側の評価(必要時)が課題
  • 既往あり妊娠:内服調整・目標設定を早めに行うほどリスクが下がる

6.産婦人科外来での初期対応まとめ(実践表)

状況 産婦人科で確認すること 紹介の目安
TSH低値・FT4正常 症状・脈拍・週数を確認、必要なら2〜4週で再評価 症状強い/既往あり/FT4上昇傾向で紹介
TSH低値・FT4高値 頻脈・脱水・体重減少など全身状態を評価 早期紹介(治療設計が必要)
既知のバセドウ病で妊娠判明 妊娠週数、内服薬、直近のTSH/FT4、症状 早期紹介(薬剤・目標値調整)
全身状態不良(頻脈・脱水・強い中毒症状) バイタル、脱水、必要時の緊急対応 当日〜早期紹介

7.早期紹介が必要なケース(チェックリスト)

  • FT4が明らかに高値
  • 安静時頻脈、体重減少、手指振戦、発汗などの中毒症状が強い
  • 脱水や嘔吐が強く、全身状態が悪い
  • 既往のバセドウ病で妊娠判明(内服調整が必要)

紹介・相談の受付(しもやま内科)

妊娠中にバセドウ病が疑われる症例、既往バセドウ病の妊娠判明例について、初期評価と方針相談を承ります。
紹介状があると情報連携がスムーズです。

電話:047-467-5500

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👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

12/01/2026