原発性アルドステロン症

✅ この記事でわかること

  • 原発性アルドステロン症(PA)とは何か
  • どんな人が検査を受けるべきか
  • 血液検査(ARR)の受け方と注意点
  • 治療:手術で治せるタイプと薬でコントロールするタイプ
  • 放置した場合のリスク

📌 要約:原発性アルドステロン症(PA)は副腎からのアルドステロン過剰分泌が原因の病気。治療抵抗性高血圧や低カリウム血症があれば血液検査(ARR)でスクリーニング。片側性なら手術で治癒可能。

原発性アルドステロン症(PA)とは?〜難治性高血圧の隠れた原因〜

原発性アルドステロン症(Primary Aldosteronism:PA)は、副腎(腎臓の上にある小さな内分泌腺)からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌される病気です。アルドステロンは血圧を上げる作用を持つため、PAの患者さんは高血圧になりやすく、多くの場合は複数の降圧薬を飲んでも血圧が下がりにくい「難治性高血圧」の状態になります。

PAは、高血圧患者の5〜10%に存在すると言われており、長年「ただの高血圧」とされてきた方の中にも、実はPAだったケースが少なくありません。早期に発見し適切に治療することで、心筋梗塞・脳卒中・心不全などの合併症リスクを大幅に減らすことができます。

PAが起こる仕組み

アルドステロンは通常、ナトリウム(塩分)の再吸収を促進し、カリウムの排泄を増やすホルモンです。PAではこのアルドステロンが過剰に分泌されるため、以下の悪循環が起こります。

  1. アルドステロンが過剰に分泌される
  2. 腎臓でナトリウム・水分が再吸収され、血圧上昇
  3. カリウムが尿中に排泄され、低カリウム血症
  4. 低カリウムにより不整脈・筋肉の脱力などの症状

PAの症状〜多くは「自覚症状なし」が危険〜

PAの最大の特徴は、多くの方が自覚症状を感じないことです。高血圧や低カリウムが「沈黙の進行」を続け、気づいた時には心臓・血管・腎臓に障害が進行していることもあります。

あるかもしれない症状

症状 原因
高血圧 アルドステロンによるナトリウム・水分貯留
低カリウム血症 アルドステロンによるカリウム排泄亢進
筋肉の脱力・けいれん 低カリウムによる筋細胞の機能低下
頻尿・多尿 腎臓濃縮機能の低下
不整脈(心室頻拍など) 低カリウムによる心筋の電気的活動異常
頭痛・めまい 高血圧の影響

こんな人はPAの可能性があります

  • 降圧薬を3種類以上飲んでいても血圧が下がらない方
  • 健診でカリウムが低いと指摘された方
  • 高血圧を発症した年齢が40歳未満の方
  • 高血圧合併症(脳卒中・心筋梗塞)の家族歴がある方
  • 睡眠時無呼吸症候群を合併している方

PAの診断〜ARR検査と副腎静脈サンプリング(AVS)〜

PAの診断は、スクリーニング検査(ARR検査)→確定診断(負荷試験)→病型診断(AVS)の3段階で行います。

1. スクリーニング検査:ARR(血漿レニン活性/アルドステロン比)

最も簡便なスクリーニング検査です。朝、安静時に採血し、レニン(血圧降下ホルモン)とアルドステロンの値を測定します。PAの場合は、レニンが抑制され、アルドステロンが上昇しているため、ARRが高値になります。

項目 PAありの場合 PAなし(原発性高血圧)の場合
血漿レニン活性(PRA) 低値(抑制されている) 正常または高値
血清アルドステロン濃度(PAC) 高値 正常
ARR(PAC/PRA比) 高値(20以上) 正常

※ARR検査は、降圧薬の影響を受けやすいため、検査前に医師の指示に従い薬を調整する必要があります。

2. 確定診断:負荷試験(食塩負荷試験またはカプトプリル負荷試験)

ARRが高値の場合、次に負荷試験を行い、アルドステロン分泌が自律的(コントロールされない)ことを確認します。具体的には、アルドステロン分泌を抑制しても低下しないことを証明します。

3. 病型診断:副腎静脈サンプリング(AVS)

PAには、手術で治せるタイプ薬でコントロールするタイプがあります。その区別を正確に行うために、副腎静脈サンプリング(Adrenal Venous Sampling:AVS)という検査が必要です。

AVSは、カテーテルを股の血管から挿入し、副腎の静脈に直接入って血液を採取する検査です。左右の副腎からのアルドステロン分泌量を比較し、どちらの副腎に異常があるかを特定します。

PAの病型〜APAとBHA〜

PAの原因となる副腎の異常には、主に2つの病型があります。

病型 正式名称 特徴 治療
APA アルドステロン産生腺腫(Conn症候群) 副腎に良性の腫瘍(腺腫)がある。片側のみ。若年者にも多い 手術(腹腔鏡下副腎摘除術)で根治可能。薬物治療も可
BHA 两侧副腎過形成(IHA) 両側の副腎が慢性的に肥大・過形成している。高齢者に多い 薬物治療が原則。MR拮抗薬(スピロノラクトン等)

PA全体の約60%がBHA、35%がAPAとされています。APAは片側の副腎に限局しているため、手術で摘除すれば根治する可能性が高いのが特徴です。

PAの治療〜手術か薬物療法か〜

PAの治療方針は、病型(APAかBHAか)と患者さんの年齢・合併症・希望によって決定します。

手術治療:腹腔鏡下副腎摘除術(APAの場合)

  • 適応:APAと診断された方で、全身状態が手術に耐えられる方
  • 方法:お腹に小さな穴を開けて、副腎を摘出する腹腔鏡手術(最小侵襲手術)
  • 入院期間:約3〜7日
  • 効果:約60〜80%の方が高血圧が改善し、降圧薬が減量または中止可能に
  • 注意点:手術後、一時的にアルドステロンが不足し、高カリウム血症や低血圧になることがあるため、術後の経過観察が重要

薬物治療:MR拮抗薬(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)

BHAの方や、手術を希望しないAPAの方は、MR拮抗薬という薬で治療します。MR拮抗薬は、アルドステロンの作用を遮断する薬です。

薬剤名 特徴 注意点
スピロノラクトン(アルダクトン等) 第一選択薬。効果が強く安価 乳房の張り・女性化乳房・高カリウム血症に注意
エプレレノン(セララ等) スピロノラクトンより副作用が少ない 費用が高い。高カリウム血症に注意
エサキセレノン(イニュラ等) 最新のMR拮抗薬。副作用がさらに少ない 費用が高い。保険適用には条件あり

MR拮抗薬を服用する場合は、カリウム値と腎機能を定期的にモニタリングする必要があります。カリウムが上昇しすぎると不整脈のリスクが増加するため、医師の指示に従ったフォローが不可欠です。

PAを放置するとどうなる?〜合併症のリスク〜

PAは「ただの高血圧」と考えて放置すると、原発性高血圧よりも心・血管・腎臓へのダメージが進みやすいことが知られています。

  • 心筋梗塞・脳卒中:原発性高血圧に比べリスクが2〜4倍高いとされる
  • 心房細動:低カリウム・高血圧により不整脈が起こりやすい
  • 心不全:心臓の筋肉に負担がかかり、心不全に進行するリスク
  • 腎機能低下:長期的な高血圧とアルドステロンの過剰分泌により腎臓が損傷

PAの早期発見・適切な治療により、これらの合併症リスクを大幅に減らすことができます。

受診の目安〜こんな方は内分泌専門医への相談を〜

しもやま内科では、内分泌専門医として、難治性高血圧や副腎関連の疾患の診断・治療を行っています。以下のような方は、ぜひご相談ください。

  • 降圧薬を3種類以上飲んでいても血圧が下がらない方
  • 健診でカリウムが低いと指摘された方
  • 若年(40歳未満)で高血圧になった方
  • 高血圧に加えて不整脈がある方
  • PAの家族歴がある方

PAの検査は、当院でARR検査・負荷試験まで行い、AVSや手術が必要な場合は信頼できる専門施設をご紹介しています。副腎疾患に関するご相談は、お気軽に当院までお問い合わせください。

原発性アルドステロン症(PA)を疑うチェックポイント

以下に1つでも当てはまる高血圧の方は、ARR(アルドステロン/レニン比)検査を検討してください。

  • 降圧薬を3種類以上使っても血圧が下がらない
  • 30〜40代で高血圧と診断された
  • 血液検査で低カリウム血症を指摘されたことがある
  • 夜間多尿・頻尿が強い
  • 筋力低下や手足のしびれを自覚する
  • 高血圧+糖尿病・脂質異常症が合併している

原発性アルドステロン症(PA)の解説アイキャッチ画像。「治らない高血圧」の原因、血液検査(ARR)、低カリウム血症の重要性について、しもやま内科が専門的に解説しています。
原発性アルドステロン症(Primary Aldosteronism:PA)は、副腎からアルドステロンが過剰に分泌され、高血圧低カリウム血症、心血管リスクの上昇につながり得る病気です。

近年は「思っているより多い」とされ、ガイドラインでもスクリーニング(見つけるための検査)の重要性が強調されています。
[1]

実際の外来診療では、血圧が高いのに薬が増えていく健診でカリウムが低い若い頃から高血圧といった場面で、早めに「PAのスクリーニング」を検討することで治療方針が大きく変わることがあります。


1. どんな人がスクリーニング(ARR検査)の対象ですか?

PAは「高血圧の二次性原因」として重要で、まず血液検査(ARR)で拾い上げ、疑わしければ段階的に精査します。
[1]

  • 低カリウム血症(または利尿薬なしでもカリウムが低め)
  • 治療抵抗性の高血圧(薬を複数使っても目標に届きにくい)
  • 若年発症の高血圧、家族に若年高血圧や脳卒中がいる
  • 副腎偶発腫(副腎に腫瘍が見つかった)+高血圧
  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)など、背景因子を伴う高血圧で疑いが強い場合

なお近年は「より広くスクリーニングする」方向性も議論されており、Endocrine Societyの新しいガイドライン(2025)では、より多くの高血圧患者を視野に入れた推奨が示されています。
[2]

2. 症状はありますか?(ないことも多い)

PAは症状がはっきりしないことも少なくありません。典型例は高血圧ですが、以下のようなサインが手がかりになります。

  • 血圧が高い(若い頃から・薬が増える)
  • 低カリウム:だるさ、こむら返り、筋力低下など
  • 頭痛・動悸など(他疾患でも起こるため、総合的に判断)

⚠️ よくある誤解と事実

誤解1:「低カリウムがないから原発性アルドステロン症ではない」
✗ 誤り✓ 正解:カリウムが正常でもPAの可能性はあります。治療抵抗性高血圧だけでもスクリーニング推奨。

誤解2:「CTで副腎腫瘍が見つかればそれが原因」
✗ 誤り✓ 正解:偶発腫は機能していないことも多いです。ホルモン検査(ARR)が必須。

誤解3:「血圧の薬でコントロールできているなら問題ない」
✗ 誤り✓ 正解:アルドステロン過剰は血圧とは独立して心血管リスクを高めます。原因治療が重要。

3. 診断の流れ(当院 → 必要時に専門施設へ)

Step 1:ARR(アルドステロン/レニン比)でスクリーニング

最初の入口は血液検査(ARR)です。薬剤や採血条件で値が変動することがあるため、検査のタイミングや前処置は医師の指示に従ってください。
[1]

Step 2:確認検査(確定/除外のための検査)

ARRが高い場合、ガイドラインに沿って確認検査(いくつかの負荷試験など)で「PAらしさ」を確認します。
[1]

Step 3:病型診断(片側か両側か)

治療方針を決めるために、画像検査(CT等)と、必要に応じて副腎静脈サンプリング(AVS)で「片側性(手術で治せる可能性)」か「両側性(薬で管理)」かを評価します。
[3]
[1]

4. 治療(手術で治せるタイプ/薬でコントロールするタイプ)

📋 原発性アルドステロン症の治療選択肢
病型 治療法 期待される効果
片側性(ALD・APA) 副腎摘出術(腹腔鏡下) 高血圧の改善・治癒、低カリウムの正常化
両側性(IHA) 薬物療法(MRA:スピロノラクトン、エプレレノン) 血圧コントロール、低カリウム改善、心血管保護
手術不能・希望しない MRAによる長期管理+降圧薬併用 血圧・カリウム管理、合併症予防

病型判断は画像だけでは不十分なことがあり、AVSが重要になることがあります。
[1]

5. 受診の目安(こんなときは早めに相談を)

  • 健診でカリウムが低いと言われた
  • 血圧が高い/薬が増えているのに下がりにくい
  • 副腎の腫瘍(偶発腫)が見つかった
  • 家族に若年の高血圧や脳卒中がいる

当院では、まずスクリーニング(ARR)を含む初期評価を行い、精密検査や手術が必要な場合は高次医療機関と連携してご案内します。

📚 関連ページ

原発性アルドステロン症について、よくある疑問(検査の流れ・治療・放置リスク)をQ&Aでまとめました。

よくあるご質問(原発性アルドステロン症)

まず不安を整理(症状がなくても大丈夫?)

Q. 症状がないこともありますか?

あります。外見上の変化は乏しく、血清カリウムが正常の方もいるため、症状だけでは見逃されることがあります。

疑うポイント(どんな人が対象?)

Q. どんな人が疑われますか?

薬を飲んでも下がりにくい高血圧、若年発症の高血圧、低カリウム、脳卒中や心肥大など臓器障害を伴う高血圧などでは疑います。

Q. よくある誤解はありますか?

『低カリウムがないから違う』とは限りません。カリウム正常例も少なくないため、治りにくい高血圧ではスクリーニングが大切です。

検査(まず何をする?)

Q. まず何を検査しますか?

アルドステロンとレニンを同時に測定するスクリーニング検査が基本です。結果により、追加の確認検査や画像検査を検討します。

Q. 画像検査(CT/MRI)だけで診断できますか?

画像だけでは確定できません。ホルモン検査の結果と合わせて評価し、必要に応じて専門的な検査が行われます。

症状(低カリウムが関係すること)

Q. 低カリウムだとどんな症状が出ますか?

脱力感、筋力低下、多尿などが起こることがあります。

治療(手術?薬?)

Q. 治療は手術ですか?薬ですか?

片側が原因の場合は手術で血圧改善が期待できます。両側の場合などは薬(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬など)でコントロールします。

Q. 放置すると何が問題ですか?

早期から腎障害、心肥大、脳卒中、心筋梗塞などの臓器障害を合併しやすいとされ、早期診断・早期治療が重要です。

しもやま内科でできること

Q. しもやま内科では何ができますか?

高血圧の背景評価としてホルモン検査(スクリーニング)を行い、結果によりCT/MRIなどの紹介検査や高次医療機関との連携(確定診断・手術検討)を進めます。

📚 参考文献(ガイドライン・一次情報)

  1. Naruse M, Katabami T, Shibata H, et al.
    Japan Endocrine Society clinical practice guideline for the diagnosis and management of primary aldosteronism 2021.
    Endocr J. 2022;69(4):327-359.
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj/69/4/69_EJ21-0508/_html/-char/ja
  2. Adler GK, Stowasser M, Correa RR, et al.
    Primary Aldosteronism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline.
    J Clin Endocrinol Metab. 2025;110(9):2453-2495.
    https://www.endocrine.org/clinical-practice-guidelines/primary-aldosteronism-2
  3. Funder JW, Carey RM, Mantero F, et al.
    The management of primary aldosteronism: Case detection, diagnosis, and treatment: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline.
    J Clin Endocrinol Metab. 2016;101(5):1889-1916.
    https://academic.oup.com/jcem/article/101/5/1889/2804729

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最終更新日:2026-06-19

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

22/04/2026