内分泌内科

複合内分泌腫瘍症候群(MEN)とは?MEN1・MEN2・MEN4をわかりやすく解説|しもやま内科(船橋市)

09/03/2025

複合内分泌腫瘍症候群(MEN)は、遺伝的背景によって複数の内分泌腺に腫瘍が発生するまれな疾患です。副甲状腺や膵臓、甲状腺など、ホルモンを分泌する器官に影響し、症状や治療法も多岐にわたります。本記事では、MENの種類ごとの特徴、遺伝との関係、診断や治療の流れまで、専門医の視点からわかりやすく解説します。

複合内分泌腫瘍症候群(MEN)の種類と主な腫瘍の組み合わせを図解|MEN1・MEN2・MEN4の特徴を一覧で解説|しもやま内科(船橋市)

複合内分泌腫瘍症候群(MEN)とは?

複合内分泌腫瘍症候群(Multiple Endocrine Neoplasia:MEN)は、複数の内分泌腺に腫瘍が発生する遺伝性疾患です。良性または悪性の腫瘍によって、ホルモンの過剰分泌や機能異常が起こり、全身にさまざまな症状が現れます。

主に以下の3つのタイプがあります。

MEN1型

MEN1遺伝子の変異によって起こる常染色体優性遺伝性疾患です。

病変 内容
副甲状腺機能亢進症 高カルシウム血症、骨粗鬆症、結石など
膵・消化管神経内分泌腫瘍 インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマなど
下垂体腫瘍 プロラクチノーマ、成長ホルモン産生腫瘍など

診断基準:
2つ以上の主要腫瘍を有する、または1つ+家族歴+遺伝子変異確認

MEN2型

RET遺伝子の変異により発症します。MEN2AとMEN2Bに分類されます。

MEN2A

病変 内容
甲状腺髄様癌 進行すると転移や嗄声、誤嚥を起こす
褐色細胞腫 高血圧、動悸、頭痛などの発作
副甲状腺機能亢進症 高カルシウム血症だが比較的軽度

MEN2B

病変 内容
甲状腺髄様癌 MEN2Aより進行が速い
褐色細胞腫 発作的な高血圧など
粘膜神経腫 唇や舌などに光沢のある結節
マルファン様体型 細身で手足が長い体型

診断基準:
髄様癌+褐色細胞腫、または1つ+家族歴+RET遺伝子変異

MEN4型

CDKN1B遺伝子の変異によって発症し、症状はMEN1に類似しています。

遺伝とスクリーニング

MENは常染色体優性遺伝形式で遺伝し、遺伝子検査により早期発見が可能です。MEN2ではRET遺伝子の変異があれば、予防的甲状腺全摘術が推奨されることがあります。

治療法

  • 手術: 腫瘍摘出(インスリノーマ、褐色細胞腫など)
  • 薬物療法: ホルモン分泌の抑制や腫瘍増殖の抑制
  • 放射線・化学・分子標的療法: 進行癌や手術不能例に

✅ よくある質問(FAQ)

MENとは何の略ですか?
「Multiple Endocrine Neoplasia(多発性内分泌腫瘍症候群)」の略です。複数の内分泌腺に腫瘍ができる遺伝性の病気です。
MEN1とMEN2はどう違いますか?
MEN1は副甲状腺・膵消化管・下垂体に腫瘍ができやすく、MEN2は甲状腺髄様癌・褐色細胞腫・副甲状腺機能亢進が特徴です。
MENは遺伝しますか?
はい。MEN1もMEN2も常染色体優性遺伝で家族に遺伝します。遺伝子変異の有無を調べる検査があります。
家族にMENの人がいます。私は検査すべきですか?
はい、遺伝学的検査を早期に受けることで、発症前に腫瘍を見つけ治療することが可能です。
どんな症状が出たら注意が必要ですか?
高カルシウム血症、低血糖、潰瘍、下痢、高血圧、甲状腺のしこりなど、腫瘍の部位によって異なる症状が出現します。
MENはがんの一種ですか?
MEN自体は疾患群であり、良性腫瘍から悪性腫瘍まで含まれます。特にMEN2の甲状腺髄様癌は悪性腫瘍です。
MENの治療はどんな方法がありますか?
腫瘍があれば手術が基本ですが、薬物療法や放射線・化学療法も選択されることがあります。
MENの診断にはどのような検査が必要ですか?
血液検査(ホルモン値)、画像検査(CTやMRI)、内視鏡、遺伝子検査などが行われます。
MENの発症年齢は決まっていますか?
小児期から成人初期に発症することが多く、MEN2では小児期に予防的手術を行うこともあります。
しもやま内科ではMENに対応していますか?
当院ではMENの疑いがある方に対し、適切な検査・診療機関への連携を行い、内分泌疾患の管理を行っています。

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👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

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