妊娠中に「チラーヂン(一般名:レボチロキシン)の量は増えるのですか?」と心配される方は少なくありません。
妊娠すると血液量が増え、赤ちゃんの発育にも母体の甲状腺ホルモンが必要になるため、薬の量を調整するケースがよくあります。
ただし、増えるかどうか・どのくらい増えるかは人によって異なります。大切なのは、自己判断で量を変えず、定期的な採血で医師と一緒に確認することです。
このページでは、妊娠中のチラーヂン調整について、患者さんの不安に寄り添いながら、専門医がわかりやすく解説します。
妊娠中のチラーヂンは量が増えることがあります。自己判断せず、医師と定期的に採血で確認して調整することが大切です。
要点まとめ
- 妊娠中は血液量増加や胎児の発育によりチラーヂンが増量されることがある
- 増量の有無・幅は人によって異なる
- 採血でホルモン値を確認し、医師が調整することが重要
- 自己判断で増減するとリスクがあるため避ける

なぜ妊娠中に薬の必要量が変わるのか
- 妊娠中は血液量が増え、薬の血中濃度が変化します。
- 胎児の発育に母体の甲状腺ホルモンが必要です。
- hCGの作用などホルモン環境が変化するため、TSHや甲状腺ホルモンのバランスが変わることがあります。
どのくらい増えることが多いのか
一般に、妊娠初期にはチラーヂンの必要量が25〜30%増えることが多いといわれています。ただし、すべての方に当てはまるわけではなく、人によって必要量は異なります。
調整は必ず医師が行う理由
- TSHやFT4の採血で、ホルモンの状態を4〜6週ごとに確認します。
- 自己判断で薬を増減すると、甲状腺機能異常を招く危険があります。
- 妊娠中は少しの変動が母体・胎児に影響するため、医師の指示が不可欠です。
よくある質問(FAQ)
薬は増えるのが普通ですか?
妊娠初期に増える方は多いですが、全員ではありません。血液検査の結果を見て判断します。
薬を減らすこともありますか?
妊娠後期や出産後は必要量が減るケースもあります。定期的な検査で確認します。
増量した薬は出産後はどうなるのですか?
出産後は多くの方が妊娠前の量に戻ります。ただし産後甲状腺炎に注意が必要です。
飲み忘れたらどうすればいいですか?
気づいたときに1回分を服用してください。2回分をまとめて飲むのは避けてください。
まとめ:安心して妊娠・出産を迎えるために
妊娠中のチラーヂン調整は、多くの方にとって必要なプロセスです。
採血でホルモン状態を確認しながら適切に量を調整すれば、安心して妊娠・出産を迎えることができます。
不安を感じたときは自己判断せず、必ず主治医に相談してください。
👉 妊娠前から産後までの全体像については、橋本病と妊娠・出産のページもご覧ください。
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。
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最終更新:
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妊娠中のチラーヂン(レボチロキシン)調整について、自己判断は避け、医師にご相談ください。
初診の方もお気軽にお電話ください。
- 電話予約が混み合うことがあります。つながらない場合は時間をおいておかけ直しください。
- 妊娠中の方は、受診時に母子健康手帳をご持参ください。
📚 参考文献・ガイドライン
- 日本甲状腺学会.甲状腺疾患診療ガイドライン 2024(妊娠・授乳に関する章).2024.
- Alexander EK, Pearce EN, Brent GA, et al. 2017 Guidelines of the American Thyroid Association for the Diagnosis and Management of Thyroid Disease During Pregnancy and the Postpartum. Thyroid. 2017;27(3):315–389.
- De Groot L, Abalovich M, Alexander EK, et al. Management of Thyroid Dysfunction during Pregnancy and Postpartum: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2012;97(8):2543–2565.
- Korevaar TIM, Medici M, Visser TJ, Peeters RP. Thyroid disease in pregnancy: new insights in diagnosis and clinical management. Lancet Diabetes Endocrinol. 2017;5(8):660–672.
- PMDA(医薬品医療機器総合機構).チラーヂンS(レボチロキシン)添付文書.最新版を参照.
本文の記載は上記ガイドライン・レビューに準拠し、患者さん向けにわかりやすく再構成しています。個別の用量調整は検査結果や臨床状況により異なるため、自己判断は行わず主治医の指示に従ってください。