「学校の健診で甲状腺が引っかかった」「子どもの首が少し腫れている気がする」——お子さんの甲状腺で不安になる親御さんも多いです。思春期は甲状腺疾患が出やすい時期の一つです。今回は、子どもの甲状腺疾患について、親御さんが知っておきたいポイントをまとめました。
📘 まず結論(要点まとめ)
- 当院(しもやま内科)は中学生以上(12歳~)の甲状腺疾患を対象としています。
- 小学生以下(11歳以下)のお子様は、小児科専門医のいる医療機関をご紹介いたします。
- 思春期に多い甲状腺疾患は橋本病、バセドウ病、先天性甲状腺機能低下症、甲状腺結節です。
- 学校の健診で指摘された場合や、首の腫れ・やせ・動悸・疲れやすさが気になる時は、内分泌専門医への受診をご検討ください。
⚠️ 当院の診療対象について
当院は中学生以上(12歳~)の甲状腺疾患を対象としています。小学生以下(11歳以下)のお子様の場合は、小児科専門医のいる医療機関をご紹介いたします。
この記事のポイント(2026年最新)
- 思春期は甲状腺疾患が出現しやすい年齢で、特に女の子に多い傾向があります。
- 橋本病(慢性甲状腺炎)は最も多く、早期発見で適切に治療すれば成長や学校生活に支障はありません。
- バセドウ病(Basedow病)は10~15歳に多く、大人と比べて再発しやすいのが特徴です。
- 先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)は新生児マススクリーニングで早期発見でき、早期治療で発達に問題はありません。
- 甲状腺結節(しこり)は思春期でも見つかることがあり、エコー評価と必要に応じた穿刺細胞診が重要です。
※日本甲状腺学会・小児内分泌学会のガイドラインに基づいています。
思春期に多い甲状腺疾患
① 橋本病(慢性甲状腺炎)——思春期で最も多い甲状腺疾患です。思春期以降の女の子に多く、のどが腫れる、疲れやすい、寒がりなどの症状が出ます。ただし、初期は無症状で健康診断で偶然見つかることもあります。
② バセドウ病(Basedow病/グレーブス病)——10~15歳に多く、女の子に多い傾向があります。動悸・発汗・体重減少・イライラなどの症状が特徴です。大人と比べて再発しやすいのが特徴です。
③ 先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)——生まれつき甲状腺の働きが弱い病気です。新生児マススクリーニングで見つかることがほとんどで、早期に治療を始めれば発達に問題はありません。
④ 甲状腺結節(しこり)——思春期でも甲状腺にしこりが見つかることがあります。思春期の結節は悪性の確率が大人より高い(20~30%)と言われているので、エコーによる精査が必要です。
どんな時に受診すればいい?
以下の症状や状況があれば、内分泌専門医(甲状腺内科)への受診をご検討ください。
- 首の前が腫れている
- 学校の健診で甲状腺を指摘された
- やせた/太った/身長の伸びが気になる
- 倦怠感が続く、元気がない
- 動悸や息切れがある
- 暑がり・寒がりが極端
- 成績や運動能力が急に落ちた
当院では中学生以上の診療が可能です。小学生以下のお子様の場合は、小児科専門医のいる医療機関をご紹介いたします。
検査でわかること
甲状腺の状態を知るためには、主に以下の検査を行います。
- 血液検査:TSH(甲状腺刺激ホルモン)、FT4(フリーT4)、甲状腺自己抗体(抗TPO抗体・抗Tg抗体など)を測定します。
- 甲状腺エコー(超音波検査):甲状腺の形・大きさ・しこりの有無・血流の状態を確認します。痛みもなく、短時間で終わります。
- 必要に応じて:甲状腺シンチグラフィーや細胞診(穿刺)などを行うことがあります。
治療の概要
橋本病(甲状腺機能低下症)の場合:
- 甲状腺ホルモン製剤(レボチロキシン・チラーヂン®)を服用します。
- 適切な用量で甲状腺機能を正常に保つことが、正常な成長には不可欠です。
- 薬のせいで成長が止まることはありません。逆に、治療せずに放置すると成長障害を起こすことがあります。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)の場合:
- 抗甲状腺薬(メルカゾールなど)で治療を開始します。
- 大人と比べて再発しやすいため、長期的な経過観察が必要です。
- 薬が効かない場合や再発する場合は、放射性ヨウ素治療や手術を検討することもあります(18歳以上が原則)。
甲状腺結節の場合:
- エコー所見に基づいて良性・悪性を鑑別します。
- 良性と判断されれば、経過観察で十分なことが多いです。
- 悪性が疑われる場合や、大きくなりすぎて呼吸や飲み込みに影響がある場合は、専門的な治療が必要です。
学校生活・部活への配慮
甲状腺疾患があっても、基本的には普通に学校生活を送ることができます。ただし、以下の点に配慮が必要です。
- 体育・部活:バセドウ病の子どもは心拍数が速くなりやすく、激しい運動で疲れやすいことがあります。担当の先生と相談しながら、無理のない範囲で活動しましょう。
- 熱中症対策:甲状腺ホルモンが多い(バセドウ病)と、体温が上がりやすく、熱中症のリスクが少し高まります。屋外活動では、こまめな水分補給と休息を徹底しましょう。
- 試験前・長時間の座学:甲状腺ホルモンの乱れは、集中力や気分にも影響することがあります。ストレスが高まる時期は、無理をさせず、十分な睡眠をとるようにしましょう。
- 薬の持参・服用:学校での薬の服用が必要な場合は、保健室で預かってもらうか、担任の先生に伝えておきましょう。
よくある質問
Q. 思春期の甲状腺疾患は遺伝しますか?
A. 橋本病やバセドウ病は「遺伝しやすい体質」が関係しますが、必ず遺伝するわけではありません。家族に甲状腺疾患の方がいる場合は、注意して経過を見ると良いでしょう。
Q. 甲状腺の薬は成長に影響しますか?
A. 適切な量の薬で甲状腺機能を正常に保つことが、正常な成長には不可欠です。薬のせいで成長が止まることはありません。逆に、治療せずに放置すると成長障害を起こすことがあります。
Q. バセドウ病は完治しますか?
A. 薬で治療すると多くの場合は寛解しますが、思春期は大人と比べて再発しやすいと言われています。再発しても、再び薬で治療することができます。
Q. 甲状腺のしこりが小さければ安心ですか?
A. 思春期では大きさよりも「エコー所見」が重要です。5mmでも高リスク所見があれば精査します。エコー評価を受けることが大切です。
Q. 薬を飲み忘れたらどうすればいい?
A. レボチロキシン(チラーヂン®)は朝空腹時に服用するのが基本です。飲み忘れた場合は、昼や夕方に気づいたらその時に服用しても構いません。ただし、鉄剤やカルシウム剤と同時に飲むと吸収が悪くなるので、間隔を空けてください。
Q. 部活や修学旅行に参加できますか?
A. 基本的に参加できます。ただし、バセドウ病の場合は心拍数に注意し、無理のない範囲で活動しましょう。担当医と相談しながら、部活顧問の先生にも伝えておくと良いです。修学旅行では薬の持参と服用タイミングの管理が必要です。
院長の実績と専門性
下山立志は日本甲状腺学会 甲状腺専門医・糖尿病専門医・循環器専門医の三冠を取得し、年間480件以上の甲状腺診療実績があります。子どもの甲状腺疾患については、小児科と連携しながら個別的に対応しています。
⚠ 緊急性の判断と受診の目安
- 高熱+脈が速い(1分間に140回以上)+意識がもうろうとする → 救急外来119番へ
- 首が急に腫れて呼吸が苦しい、飲み込みにくい → 今すぐお電話ください
- 強い振戦・興奮状態・全身状態の急激な悪化 → 早急に受診してください
最終更新日: 2026年7月26日
監修: 下山立志(総合内科専門医・糖尿病専門医・循環器専門医・甲状腺専門医)
※2026年時点の最新ガイドライン動向を踏まえて解説しています。
📚 参考文献
- 日本甲状腺学会 編「甲状腺疾患診療ガイドライン 2022」.
- 日本小児内分泌学会「小児甲状腺疾患の診療ガイドライン」.
- American Thyroid Association (ATA). "2016 Guidelines for Diagnosis and Management of Hyperthyroidism and Other Causes of Thyrotoxicosis." Thyroid, 2016;26(10):1343-1421.
最終更新日:2026-07-26
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。