beyond HbA1cとは?血糖変動・低血糖まで評価する糖尿病治療|船橋市

📘 要点

  • HbA1cは平均値の指標で、低血糖や血糖変動は評価できません
  • 強化療法でHbA1cを6.0%未満に下げると、死亡リスクが増加しました
  • ACCORD試験(2008年)では強化療法群で死亡が多くなりました
  • 65〜75歳で自立した方は、HbA1c 6.5%を下回らないようにします
  • 低血糖や血糖の乱高下が気になるときは、早めにご相談ください

糖尿病の治療では、血糖コントロール指標としてHbA1cが広く用いられています。
一般に「合併症予防のためにはHbA1c 7%未満」が目安として知られています。

ただし、HbA1cは過去1〜2か月の血糖の“平均値”であり、
低血糖や血糖の乱高下(血糖変動)を十分に評価できません。
HbA1cを下げることだけを追求すると、かえって危険が増える場合があります。
こうしたHbA1cでは捉えにくい領域は、“Beyond HbA1c(beyond HbA1c)”として注目されています。

beyond HbA1c(血糖変動と低血糖まで評価)を医師が解説するイメージ
HbA1c(平均)だけでは見えにくい血糖変動や低血糖を、CGMで評価する考え方を解説します。

HbA1cは低ければ低いほど良い?

HbA1cは低ければ低いほど良い?
HbA1cは低ければ低いほど良い?

「今月は運動を頑張ったのでHbA1cが下がった」「会食が増えてHbA1cが上がった」など、
HbA1cは多くの方にとって重要な目標です。

では、HbA1cを下げれば下げるほど、糖尿病の予後(健康で長生きできるか)は改善するのでしょうか?
残念ながら、必ずしもそうではありません。

HbA1cだけを追求してはいけない理由

HbA1cを6.0%未満など「厳格」に下げる強化療法が、本当に大血管症(心筋梗塞・脳梗塞など)を減らすかを検証するため、
大規模臨床試験が行われました。

その結果、厳しく下げても大血管症を抑制できず、さらに重症低血糖が増え、
死亡率が増加した試験結果さえ報告されました。

ここがポイント

  • HbA1cは平均値なので、低血糖が増えると“見かけ上”良くなることがあります。
  • 目標は「低いHbA1c」ではなく、低血糖を減らし、血糖変動を抑えた“質の良いコントロール”です。

時代を変えたのは、ACCORD試験(2008年)

大規模試験のひとつに、2008年に大きな注目を集めたACCORD試験があります1。
心血管疾患ハイリスクの2型糖尿病患者を対象に、強化療法(目標HbA1c<6.0%)と、
通常療法(目標HbA1c 7.0~7.9%)で心血管イベントを比較しました。

結果として、死亡は強化療法群で多く、死亡リスクが増加するという衝撃的な報告となりました(HR 1.22)1。
なぜこのような結果になったのか最終結論は一つではありませんが、HbA1cだけでは評価できない部分があることが、
“beyond HbA1c” として注目される背景になっています2,3。

低血糖をどう評価するのか

HbA1cだけで治療の良し悪しを判断しにくい大きな理由の一つが、低血糖を評価できないことです。
HbA1cは平均値なので、低血糖が起こると低く出やすくなります。

HbA1cと重症低血糖リスクの関連を検討した研究では、HbA1cが低いほど低血糖が増える傾向が報告されています4。
また、重症低血糖は心血管イベントや死亡のリスクと関連することも報告されています5。

そのため、低血糖をできるだけ減らしながら、安全にコントロールを整えることが重要です。
▶︎ 低血糖の解説:https://shimoyama-naika.com/diabetes/hypoglycemia/
/ https://shimoyama-naika.com/diabetes/hypoglycemia-2/

高齢者では「下げすぎ」に下限がある

高齢者では重症低血糖を起こしやすく、現役世代と同じ目標をそのまま適用するのは危険です。
2016年に日本糖尿病学会と日本老年医学会から、高齢者糖尿病の血糖コントロール目標が示されました6。

高齢者糖尿病のHbA1c目標(下限を含む)
高齢者糖尿病のHbA1c目標(下限を含む)

下げ過ぎに注意:薬剤によっては「下限」があります

インスリン、SU薬、グリニドなど低血糖が心配される薬を使用している場合に限り、
目標の下限も設定されます。これより低い値では低血糖リスクが高まると考えられます。

  • (例)65〜75歳で認知症なく自立している方:HbA1c 7.5%以下が目安でも、6.5%を下回らないようにする
  • (例)75歳以上で認知症なく自立している方:HbA1c 8%未満が目安でも、7%を下回らないようにする

CGMが役立つ理由(beyond HbA1cの実践)

HbA1cでは見えにくい「食後高血糖」や「深夜・早朝の低血糖」を把握するのに役立つのがCGM(持続血糖測定)です。
日々の波を可視化することで、安全性を保ちながら目標に近づけるヒントが得られます。

▶︎ CGMの解説:https://shimoyama-naika.com/diabetes/cgm/


関連ページ

📞 ご相談・受診のご案内

HbA1cが良いのに体調が不安定、低血糖が心配、血糖の乱高下が気になる方は、治療方針の見直しで楽になることがあります。
受診のご相談はお電話でどうぞ。

しもやま内科(電話):047-467-5500
※ Web予約は行っておりません。お電話でご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. HbA1cが6%台なら安心ですか?
A. HbA1cは平均値のため、低血糖や血糖変動が隠れている場合があります。薬剤や年齢、低血糖の有無を含めて総合的に評価することが大切です。
Q. HbA1cを下げるために薬を増やすのは良いことですか?
A. 低血糖が増えるような増量は、かえって危険になることがあります。HbA1cだけでなく、低血糖と血糖変動を減らす方向を重視します。
Q. 高齢者でHbA1cを下げすぎると何が問題ですか?
A. 重症低血糖が増えやすく、転倒や心血管イベントなどのリスクが高まる可能性があります。薬剤によっては「下限目標」が設定されています。
Q. beyond HbA1cを実践するには何を見ればいいですか?
A. 低血糖の頻度、食後高血糖、血糖変動(乱高下)などです。CGMを使うと見えやすくなります。

参考文献

  1. Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes Study Group. Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. N Engl J Med. 2008;358:2545-2559.
  2. Riddle MC, Gerstein HC, Cefalu WT. Maturation of CGM and Glycemic Measurements Beyond HbA1c. Diabetes Care. 2017;40:1611-1613.
  3. Agiostratidou G, et al. Standardizing Clinically Meaningful Outcome Measures Beyond HbA1c for Type 1 Diabetes. Diabetes Care. 2017;40:1622-1630.
  4. Lipska KJ, et al. HbA1c and risk of severe hypoglycemia in type 2 diabetes. Diabetes Care. 2013;36:3535-3542.
  5. Zoungas S, et al. Severe hypoglycemia and risks of vascular events and death. N Engl J Med. 2010;363:1410-1418.
  6. 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について|日本糖尿病学会(重要なお知らせ)

HbA1cが良いのに不安が残る方へ:
「低血糖」「血糖変動」「食後高血糖」を含めて見直すと、治療が安全に、楽になることがあります。
ご相談はお電話で:047-467-5500

← 検査ガイドへ戻る

受診をご検討の方、お気軽にご相談ください

月・火・木・金 9:00〜12:00 / 14:45〜17:30 土 9:00〜12:00

047-467-5500

診療時間外の緊急時は、119番へのご連絡をおすすめします。

最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

監修・執筆:しもやま内科 院長(日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医/日本老年医学会 老年科専門医・指導医)
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

20/05/2016