このページの要点
糖尿病性腎症(DKD)は、糖尿病の合併症として腎臓に負担がかかる病気で、早期発見と治療が腎機能を守る鍵です。検査(尿中アルブミン・eGFR)の見方、ステージ別の治療、食事療法の具体的数値、緊急時のサインまでを専門医が解説します。
- 糖尿病性腎症は尿中アルブミンとeGFRで評価し、早期に対策するほど進行を抑えやすくなります。
- 治療の柱は血糖管理・血圧管理・薬物療法(SGLT2阻害薬など)・減塩の4本柱です。
- 食事療法では塩分1日6g未満、病期に応じたたんぱく質調整(0.8〜1.0g/kg/日)が目安になります。
- 急なむくみ・尿量減少・息切れは緊急サインです。早めに受診しましょう。

糖尿病性腎症(DKD)は、糖尿病に伴って腎臓のフィルター(糸球体)に負担がかかり、尿中アルブミンの増加や腎機能(eGFR)の低下が進む状態です。放置すると慢性腎臓病(CKD)が進行し、心血管リスクも高まります。
DKDの治療では、血糖管理・血圧管理・薬物療法・減塩の4本柱が重要です。とくに尿中アルブミン陽性となった段階(早期腎症〜顕性腎症)では、生活の工夫と適切な薬物療法で進行を抑えることが期待できます。最近ではSGLT2阻害薬の腎保護効果も注目されています。
糖尿病性腎症のステージ分類(1〜5期)
糖尿病性腎症は、尿中アルブミン量とeGFR(腎機能)の組み合わせで以下のように分類されます。自身の状態を把握し、適切な治療目標を立てることが大切です。
| ステージ | 病期 | 尿中アルブミン | eGFR(mL/分/1.73m²) | 管理目標 |
|---|---|---|---|---|
| ステージ1 | 早期腎症期 | 30〜299 mg/gCr(微量アルブミン尿) | ≧60(G1〜G2:正常〜軽度低下) | 血糖・血圧管理、減塩、SGLT2阻害薬導入検討 |
| ステージ2 | 早期腎症期(進行) | 30〜299 mg/gCr(持続) | 30〜59(G3a〜G3b:中等度低下) | 血糖・血圧厳格管理、減塩強化、ARB/ACE阻害薬考慮 |
| ステージ3 | 顕性腎症期 | ≧300 mg/gCr(顕性アルブミン尿) | 30〜89(G2〜G3b) | 血圧厳格管理、減塩・たんぱく質調整開始、眼科受診 |
| ステージ4 | 腎不全期 | 多様(程度に応じて変動) | 15〜29(G4:高度低下) | 腎臓内科連携、透析準備、薬剤調整、電解質管理 |
| ステージ5 | 透析期 | — | <15(G5) | 透析導入・維持、全身管理、生活の質維持 |
※尿中アルブミン値は随時尿のアルブミン/Cr比(mg/gCr)。eGFRは年齢・性別で補正された推算値。ステージ分類は日本腎臓学会・日本糖尿病学会の DKD ステージ分類に準拠。
ポイント
DKDは「腎臓だけの問題」ではなく、心血管イベントのリスクと直結します。尿・腎機能・血圧・血糖をセットで見直すことが大切です。早期(ステージ1〜2)からの介入ほど、進行抑制効果が高いことが分かっています。
糖尿病性腎症(DKD)で「まず確認する検査」
- 尿中アルブミン(アルブミン尿):腎障害の“早期サイン”。正常は30mg/gCr未満、30以上で微量アルブミン尿(早期腎症)と診断されます。
- eGFR(推算糸球体濾過量):腎臓の「働き」の目安。60未満で慢性腎臓病(CKD)と診断されます。
- 血圧:腎・心血管を守るために極めて重要。130/80mmHg未満が目標。
- 血糖(HbA1c + 血糖変動):HbA1c 7%未満が目安ですが、低血糖や血糖の乱高下にも注意が必要です。
🔍 eGFRが低下したらどうなる?
eGFRが低下すると、体内の老廃物(尿素窒素・クレアチニン)が排泄されにくくなり、倦怠感・貧血・電解質異常(高カリウムなど)・骨代謝異常などが現れることがあります。早期発見・早期対応が重要です。
治療の基本:4本柱
- 血糖管理:HbA1c 7%未満を目標に、低血糖や血糖変動も含めて安全に最適化。SGLT2阻害薬は血糖改善と腎保護の両面で有用。
- 血圧管理:130/80mmHg未満を目標。ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)やACE阻害薬は降圧と腎保護の両方に有効。
- 薬物療法:SGLT2阻害薬(血糖降下+腎保護)、ARB/ACE阻害薬(降圧+腎保護)が中心。病期に応じて利尿薬・尿酸管理薬などを併用。
- 生活・食事療法:減塩・たんぱく質調整・体重管理が柱。病期に応じて個別対応が必要。
▶ 薬物療法を含む治療戦略を深掘り:DKDの治療戦略(4ピラーズ/四本柱)
食事療法の基本方針と具体的数値
食事療法は血糖管理と腎保護の両面から重要です。以下の数値を目安に、医師と相談しながら個別に調整しましょう。
- 塩分制限:1日6g未満を目標に。減塩だけで血圧が5〜10mmHg下がることも。加工食品・外食は塩分過多になりやすいため注意。
- たんぱく質調整:
- ステージ1〜2(早期):特別な制限は不要。標準的な摂取(1.0〜1.2g/kg/日)を維持。
- ステージ3(顕性腎症):0.8〜1.0g/kg/日(標準体重換算)を目安に調整。
- ステージ4〜5(腎不全期):0.6〜0.8g/kg/日への制限を検討(低たんぱく食)。
- エネルギー確保:25〜30kcal/kg/日(標準体重換算)を確保。制限で体重が落ちすぎないように注意。
- カリウム・リンの管理:eGFR 30未満では高カリウム血症に注意。果物・野菜の摂り方を含め医師の指示に従う。
⚠️ 自己判断の過度な制限は危険
「腎臓に良い」とされる情報の中には、極端な制限を勧めるものもあります。過度なたんぱく質制限は低栄養・筋肉量低下・フレイルを招き、命に関わることも。必ず医師の指導のもとで調整してください。
減塩の工夫
- 香辛料(唐辛子・わさび・生姜)・酸味(酢・レモン)・だし(昆布・かつお節の旨味)を活用して減塩。
- 汁物は残す、めん類のスープは飲まない。
- 味噌汁・醤油・ソースは「かける」より「つける」習慣に。
- 加工食品・外食は週2〜3回までに抑え、選ぶ際に「塩分控えめ」「減塩」表示を確認。
▶ 減塩のコツ(具体策):/diabetes/salt/
たんぱく質の選び方
- 魚、卵、大豆製品(豆腐・納豆)など「質の良い」たんぱく質を優先。
- 肉類は赤身を選び、脂身の多い部位は控えめに。
- 「制限しすぎず、コントロールする」意識が大切。
緊急サイン:こんな症状が出たらすぐに相談を
以下の症状は、糖尿病性腎症の進行や合併症が疑われる緊急サインです。該当する場合は早めに医療機関へ相談してください。
- 急なむくみ(顔・まぶた・足・全身)— ネフローゼ症候群や腎不全進行の可能性
- 尿量の減少— 腎機能の急激な低下を示唆
- 息切れ・呼吸困難— 肺水腫(体内の水分過剰)の可能性
- 手足のしびれ・脱力感・動悸— 高カリウム血症による症状
- 急激な体重増加— 体内に水分がたまっているサイン
- コントロール困難な高血圧(家庭血圧150/90mmHg以上)
サポートを受けながら続けましょう
食事療法は必ず個別対応が必要です。腎機能や血糖の状態に応じた調整が不可欠で、自己流の強い制限は体調不良につながることがあります。
しもやま内科では、患者さま一人ひとりの生活に合わせて「続けられる方法」を一緒に考えます。食事・薬・生活習慣の見直しをトータルにサポートいたします。
よくある質問(FAQ)
Q. 尿中アルブミンが陽性と言われました。もう腎不全が近いのでしょうか?
Q. eGFRが保たれていれば、アルブミン尿があっても大丈夫ですか?
Q. たんぱく質制限はいつから始めるべきですか?
Q. 減塩はどのくらい必要ですか?
Q. HbA1cが良いのに腎症が進むことはありますか?
Q. どんなタイミングで腎臓専門医(腎臓内科)に紹介が必要ですか?
Q. SGLT2阻害薬は本当に腎臓に良いのですか?
Q. 糖尿病性腎症(DKD)と慢性腎臓病(CKD)の違いは?
Q. eGFRが低下したらどうなりますか?どんな症状が出ますか?
Q. 糖尿病性腎症は治りますか?逆戻りは可能ですか?
Q. 腎症の緊急サインを教えてください。どんな時にすぐ受診すべき?
受診をご検討の方、お気軽にご相談ください
月・火・木・金 9:00〜12:00 / 14:45〜17:30 土 9:00〜12:00
診療時間外・緊急時は、119番へのご連絡もご検討ください
最終更新日:2026-08-28
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。