血糖値の正常値と血糖管理の目標|CGM・SMBGを活用したコントロール法

📘 要点

  • 血糖管理の目的は、糖尿病合併症の発症と進行を防ぐことです
  • HbA1cの目標は、多くの方で7.0%未満が目安です
  • CGMのTIRは70〜180mg/dLの時間70%以上が目標です
  • SMBGは1日4回以上、CGMは数分おきに測定します
  • シックデイは2〜4時間おきに測定し、水分を補給します
  • 血糖250mg/dL以上が続くときは、早めにご相談ください

糖尿病の血糖管理(血糖コントロール)は、HbA1cだけでは見えない日内変動の把握が合併症予防の鍵です。自己血糖測定(SMBG)と持続血糖測定(CGM)の使い分けや、HbA1c・TIRの目標値、季節変動・シックデイ対策まで、しもやま内科(船橋市)の糖尿病専門医が解説します。

糖尿病の血糖管理とは?基本の知識

血糖管理の目的

血糖管理(血糖コントロール)の目的は、血糖値を正常範囲に近づけ、糖尿病合併症(網膜症・腎症・神経障害)の発症・進行を防ぐことです。

単に「血糖値を下げる」だけでなく、低血糖を起こさずに、いかに安定した血糖を維持するかが重要です。

SMBG(自己血糖測定)とCGM(持続血糖測定)

血糖管理には大きく分けて2つの測定方法があります。

項目 SMBG(自己血糖測定) CGM(持続血糖測定)
測定方法 指先を穿刺し、血液を測定 皮下センサーで間質液を測定
測定頻度 1日数回(点データ) 数分おき(連続データ)
わかること その時点の血糖値 24時間の血糖変動全体
保険適用 全糖尿病患者 条件付き(インスリン治療中など)
コスト 低い 比較的高い

SMBGはすべての糖尿病患者様に必要な基本的な測定法です。CGMはそれを補完し、より精密な管理を可能にします。

血糖管理の目標値|HbA1cとTIR

HbA1cの目標値

HbA1c(ヘモグロビンA1c)は、過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映する指標です。日本糖尿病学会のガイドラインでは、以下の目標値が推奨されています。

区分 HbA1c目標値 対象
合併症予防 7.0%未満 多くの糖尿病患者様(基本目標)
正常化目標 6.0%未満 若年・発症早期・肥満改善が期待できる方
低血糖リスク 8.0%未満 高齢者・重症低血糖リスクがある方

TIR(Time In Range)とは?

TIRはCGMで得られる新しい指標で、1日のうち血糖値が目標範囲(70〜180mg/dL)にあった時間の割合を示します。

  • TIR(70〜180mg/dL):70%以上が推奨目標
  • TAR(180超):25%未満
  • TBR(70未満):4%未満(うち54未満は1%未満)

HbA1cとTIRを組み合わせることで、より正確な血糖管理の評価が可能になります。

血糖値の季節変動と対策

血糖値は季節によって変動します。一般的に、冬季は血糖値が上昇し、夏季は低下する傾向があります。

冬に血糖が上がりやすい理由

  • 寒さによるストレスホルモン(コルチゾール)の分泌増加
  • 運動量の減少
  • 冬場の高カロリー食事(鍋・おせちなど)
  • 感染症(風邪・インフルエンザ)の増加

夏に血糖が下がりやすい理由

  • 発汗による脱水でインスリン感受性が変化
  • 食欲低下による摂取カロリー減少
  • 暑さで代謝が活発に

対策:季節の変わり目には1週間程度集中的に測定し、薬剤の調整が必要か医師に相談しましょう。特に冬場はHbA1cが上昇しやすいため注意が必要です。

シックデイ(病気の日)の血糖管理

風邪や発熱、下痢などの病気のとき(シックデイ)は、血糖値が大きく変動します。シックデイの対応を誤ると、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)などの重篤な状態に陥る可能性があります。

シックデイの基本ルール

  1. こまめな血糖測定:通常より頻回に(2〜4時間おき)測定する
  2. 水分補給:脱水を防ぐため、十分な水分(水・お茶・経口補水液)を摂る
  3. インスリン治療中の方:自己判断で中止しない(かえってケトアシドーシスを招くリスク)
  4. 食事が摂れない場合:炭水化物を含む飲料(スポーツドリンク・ジュースなど)で補給
  5. 受診の判断:38℃以上の発熱が続く、嘔吐で水分が摂れない、血糖が250mg/dL以上続く場合はすぐに医療機関へ

隠れ高血糖の見つけ方

「隠れ高血糖」とは、HbA1cが正常範囲でも、食後に急激な血糖スパイクが起きている状態を指します。

隠れ高血糖のサイン

  • 食後の強い眠気:特に炭水化物中心の食事後に耐えられない眠気がある
  • 食後のだるさ・疲労感:血糖スパイク後の急降下による
  • 喉の渇き・多飲:高血糖の典型的な症状
  • 食後1〜2時間の集中力低下:脳のエネルギー不足による

見つけ方と対策

SMBGで食後1〜2時間の血糖を測定するか、より精密にはCGMを一定期間装着することで隠れ高血糖を可視化できます。当院では、HbA1cが目標範囲でも「何となく体調が優れない」「食後眠気が強い」といった患者様に、積極的にCGM導入をお勧めしています。

CGM(持続血糖測定器)とは?

CGMでできること

CGM(Continuous Glucose Monitoring)は、上腕や腹部に貼り付けるコインサイズのセンサーが、数分おきに皮下の間質液から血糖値を測定し、スマートフォンや専用リーダーにデータを送信するシステムです。

CGMの主なメリット

メリット 詳細
リアルタイム監視 24時間、数分おきに血糖値を自動測定
血糖変動の可視化 食事・運動・睡眠の影響がグラフで一目瞭然
アラート機能 高血糖・低血糖を事前に通知
データ共有 家族や医療従事者とデータを共有可能
指先穿刺の削減 従来の自己測定の回数を大幅に減らせる

CGMが特に有効な場面

  • 🌙 夜間低血糖が心配な方
  • 🍽️ 食後の血糖スパイクを確認したい方
  • 🏃 運動時の血糖変動を把握したい方
  • 👶 お子様の糖尿病管理で保護者が確認したい方(当院は中学生以上(12歳~)を対象としています。小学生以下は小児科専門医へご相談ください)
  • 📊 治療効果の評価を詳しく知りたい方

当院で導入可能なCGM機種

しもやま内科では、FreeStyle Libre 2とDexcom G7の2機種を取り扱っています。

項目 FreeStyle Libre 2 Dexcom G7
測定間隔 15分 5分(リアルタイム)
アラート 高・低血糖アラートあり 即時通知(遅延ほぼなし)
装着期間 14日 10日
おすすめの方 コスト重視・簡便性重視 リアルタイム監視重視

▶ 詳しい機種比較はこちら

しもやま内科の血糖管理サポート

専門医によるパーソナライズドケア

当院では、日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・指導医が、最新のCGMデータを活用した血糖管理指導を行っています。

血糖管理の流れ

  1. 初診・ご相談
  2. 保険適応条件の確認
  3. CGMセンサー装着(当日対応可)
  4. アプリ設定・使い方指導
  5. 【2週間のデータ取得期間】
  6. 専門医によるデータ解析
  7. 治療計画の調整・生活指導
  8. 継続的なフォローアップ

CGMデータの活用例

当院では、CGMで取得したデータをもとに、以下のような指導を行っています:

データからわかること 具体的な指導
朝の高血糖(夜間低血糖の反動) 就寝前のインスリン量調整・間食の見直し
食後の血糖スパイク 食事の質・量、食べる順番の改善指導
運動時の血糖変動 運動前後の血糖管理方法の指導
ストレスによる血糖上昇 ストレス管理・睡眠改善のアドバイス

🚨 緊急性の判断基準——速やかに医療機関を受診すべき症状

血糖管理において、以下の症状がある場合はすぐに受診が必要です。

状況 対応
意識障害・昏睡・呼びかけに応じない 🚑 119番へのご連絡をおすすめします。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 血糖管理の目標値はどれくらいですか?

A. 日本糖尿病学会のガイドラインでは、合併症予防の基本目標としてHbA1c 7.0%未満が推奨されています。ただし、年齢や合併症の有無、低血糖リスクによって個別に目標が設定されます。CGMをお使いの場合は、TIR(Time In Range)70%以上も指標になります。

Q2. CGMのメリットは何ですか?

A. CGMの最大のメリットは、24時間の血糖変動をリアルタイムで把握できることです。従来の自己血糖測定(SMBG)では点でしか見えなかった血糖値が、グラフで連続的に可視化されます。夜間の低血糖や食後の血糖スパイクを見逃さず、アラート機能で事前に通知を受けられるため、安全性と管理精度が格段に向上します。

Q3. 1日の血糖測定は何回必要ですか?

A. SMBG(自己血糖測定)の場合、インスリン治療中の方は1日4回以上(空腹時+各食前+就寝前)が推奨されます。経口薬のみの方は1日1〜2回でも可能ですが、治療の最適化にはCGMの併用が効果的です。

Q4. CGMは保険適用されますか?

A. 適応条件があります。主にインスリン治療中の方、血糖コントロールが不安定な方などが対象になります。受診時に詳しくご説明します。

Q5. センサーの装着は痛いですか?

A. 針は非常に細く、装着時の痛みはほとんどありません。痛みはほとんどありません。

Q6. スマホがなくても使えますか?

A. はい。専用のリーダー機器でも測定データの確認が可能です。ただし、スマホアプリを使うとデータの詳細分析や家族共有が便利になります。

Q7. センサーは水に濡れても大丈夫ですか?

A. 防水仕様になっていますので、シャワーや軽い水仕事は問題ありません。ただし、長時間の入浴やプール・温泉は避ける必要があります。

Q8. どのくらいの頻度で受診が必要ですか?

A. CGM導入後は、1〜2週間後にデータ解析のための受診をお願いします。その後は、治療状況に応じて1〜3ヶ月に1回の受診が一般的です。

Q9. 糖尿病でなくてもCGMは使えますか?

A. 糖尿病でない方(いわゆる健康な方)へのCGMは、現時点では保険適用外(自由診療)となります。当院では健康な方向けのCGM自由診療は行っておりません。CGMのリスクとして、センサー装着時の軽度の皮膚刺激・かぶれ、まれにアレルギー反応が報告されています。血糖値が気になる方は、まずは当院の保険診療内で検査・診断を受け、医学的必要性を評価した上で必要に応じてCGM導入をご検討ください。

Q10. 血糖値の季節変動はどう対策すればいいですか?

A. 冬季は血糖値が上がりやすく、夏季は下がりやすい傾向があります。季節の変わり目には1週間程度集中的に血糖測定を行い、薬剤調整が必要か医師に相談しましょう。当院ではCGMデータをもとに、季節ごとの細かな調整を提案しています。

Q11. シックデイ(発熱・下痢)のときはインスリンを中止すべきですか?

A. 絶対に自己判断で中止しないでください。インスリン治療中の方がシックデイにインスリンを中止すると、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)のリスクが高まります。こまめに血糖を測定しながら、指示された量を継続することが基本です。判断に迷う場合は当院までお電話ください。

Q12. 食後に眠くなるのは血糖値と関係ありますか?

A. はい。食後の強い眠気は、血糖スパイク(急激な血糖上昇)とその後の急降下が原因であることが少なくありません。いわゆる「隠れ高血糖」のサインです。HbA1cが正常範囲でも、このような症状がある場合はCGMで実際の血糖変動を確認することをお勧めします。

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主な参考資料:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」(南江堂、2024年5月30日発行)/日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本循環器学会・日本甲状腺学会・日本高血圧学会等の診療ガイドラインおよび厚生労働省の公表資料

作成・更新:2026-08-28|本ページは一般的な医学情報の提供を目的としたものです。診断・治療については受診のうえご相談ください。

糖尿病診療において、CGMデータを活用した個別化医療(Precision Medicine)を重視しています。患者様一人ひとりのライフスタイルに合わせた血糖管理指導を心がけています。

※このページの情報は2026年8月時点のものです。最新の情報は受診時にご確認ください。

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最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

監修・執筆:しもやま内科 院長(日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医/日本老年医学会 老年科専門医・指導医)
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

18/03/2026